
🍒子どもの詩Anthology -7
子どもの詩を紹介するnoteです。
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詞華集(7)「ファイト」
心を奮う
白い空手の道着に帯がゆれる
決勝戦
腹から出したはずの「押忍(おす)」の声は
かき消えてしまいそうだった
たたみの上にしぼみそうなかげを
ふりはらうように
帯と心をギュッとしめなおす
大きく吸って止めた息の向こうに
相手がひとまわり大きく見える
かまえた体にジワッと汗が冷たい
フーッと吐いた息が頭にジーンとしみる
「はじめ!」の号令とともに
大砲のような前げりが飛び込んでくる
はらう手にかする打げきが骨にひびく
首に風がヒュッと走り
カマキリのカマでねらわれているみたい
打っても打っても
こんにゃくのようにはね返されて
こぶしが
心が
折れてしまいそう
息が上がって目に汗がしみる
もうだめだ‥
いやまだだ!
心臓からふりしぼるようにくり出した
こん身のつきがガツッと通る確かな手応え
追い打ちでたたきこんだ回しげりに
相手がよろけるのが見えた
ひびく笛の音としんぱんの声
自分の呼吸で音が聞こえない
周りを必死で見回す
勝負を告げる旗はどっちだ?
ぼくか 相手か
自分の色の旗が天に突き上がる
家族と道場のみんなのわっと喜ぶ歓声が
ようやく耳に聞こえ始める
ギュッと閉じた目のおくがツーンとする
交わした礼にかすれて出ない声
代わりにふき出したのは
ふいてもふいても止まらない
まつ毛にしたたる熱い玉のような汗と
涙
4年 たく
今 風になる
「また同じ失敗をしないだろうか」
目の前に並ぶ九つのハードル
スタートラインで足がふるえ始めた
去年のリレーカーニバルでの失敗が
一瞬にして頭をよぎった
慣れていなかったスターティングブロック
きん張のあまりスタートでよろけ
自分の力が出せなかった‥‥
急にこわくなった気持ちをふりはらい
心を落ち着かせようと大きく深呼吸をした
今日こそ今までの練習の成果を発揮したい
昨夜 私の足をマッサージしながら
母が私を産んだときの話をしてくれた
「どうか元気な子でありますように
どうか無事に生まれてくるように」
ずっとずっと考えてくれていたのだ
何時間も何時間も苦しんで産んだ私が
期待通りに生まれてここまでに成長し
こんな大きな大会に出るまでになった
その喜びと幸せを話してくれた
毎日毎日先生や仲間と練習を続けてきた
しんどくて休みたい日もあった
やめたいと思ったこともあった
でも私は走ることが好きだ
走っているときの
風を感じるあのしゅん間が大好きなのだ
そして私は今ここに立っている
今日の私は今までの私とは違う
私の苦しみはたったの何秒間
私を産んでくれた苦しみと比べたら‥‥
もう一度大きく深呼吸をして
九つのハードルをはっきり見すえた
そして私は
風になるためにスタートを切った
6年 ともみ

ボールとれたあ
カキーン
まさし君が打ったボールが飛んできた
今はツーアウト
「福田」に20点以上入れられている
このボールはぜったいとらなきゃ
試合にはまけてもいい
でもこのボールはとりたい
とってみんなに喜んでほしい
ぜったいぜったいとるぞ
心ぞうがバクバクと鳴った
グローブを大きく上に上げた
ボールが落ちてくる位置に着いた
よし まちがいない
とれる
パン!
手がとてもいたくなったけどがまんした
お母さんたちがうちわをたたいて
「みゆきすごい ナイス」と言ってくれた
やったあ
ノーバンでボールがとれた
「みゆき ナイス」
ちょっとだけ照れてしまった
でもすごくうれしかった
試合は負けた
でも「福田」から1点とれて
まさし君の打ったボールがノーバンでとれた
私にもできるんだ
これからも練習をがんばるぞ
4年 みゆき

陸上競技場
「あ 終わったな‥‥もう一位にはなれない」
つまずいてころんだ時に思った
でもまだ追い返せるかも
立ち上がって走り出した時最下位になっていた
学校では五年生で一位になった
陸上大会でも一位になりたくて
毎日毎日いっぱい走った
大会の日きんちょうして
おしっこがもれそうになった
先生がほっぺをつんつんしながら
「そんなにきんちょうするな」って
やさしく言ってくれた
スタートの合図がして走り出した
あせらずゆっくり走った
最初のコーナーを過ぎたとこで
くぼみがありこけた
こけるなんて思ってもいなかった
心が折れかけたけど
がんばって最後まで走った
10人追い抜いた
7位でゴールした
走り終わったら足と手がいたくなってきた
こけたときはいたみがなかったのに‥‥
みんなが心配してくれた
いっぱい抜いてすごいとほめられた
あきらめなくてよかった
陸上競技場なんて大きらいだけど
来年はぜったいこけずに走るから
待ってろよ陸上競技場
リベンジだ!
5年 とうご
わたしの一番すきな時間
「オン・ユア・マークス」
スタート地点に立って前を見る
百メートル先のゴールをにらんで
そのまま手を地面につけた
それまでうるさかったスタンドもシンとなる
「セット」
耳をすませて力をためる
しんぞうがバクバクしている音が聞こえてくる
「バーン」
大きな音
ためていた力で一気に前に出る
うでをふり地面をける
大きな音のおかげかまわりの声は
何も聞こえない
自分の必死な足音が聞こえるだけ
地面も風も空も
全部わたしのものになったみたいだ
わたしはこの時間がすき
だれにもじゃまされないわたしだけの時間
4年 ちひろ