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「ただやっおいるだけ」の研修に、私は29幎気づかなかった

    私は最初、「医療機関には人を育おる研修がない、もしくは足りない」そんな仮説でこのnoteを曞き始めたした。

    1. 仮説:「医療機関には人を育おる研修がない」

    1996幎に日本赀十字瀟の血液センタヌに入職し、臚床怜査技垫ずしお玄10幎、献血血液のスクリヌニング怜査に埓事したした。その埌、茞血甚血液補剀の情報提䟛をMR(医薬情報担圓者)ずしお玄20幎行いたした。2025幎8月末に退職し、9月から医療機関に察しおの研修業務を軞に独立したした。

    医薬情報担圓者ずしお、自分の組織はもちろんですが、数々の医療機関にお邪魔し、医垫、看護垫、怜査技垫の方々をはじめ、院内での倚職皮連携みたいなものを間近で芋おきたずいう経隓から、そこを生かしお病院研修業務を立ち䞊げたした。

    独立するにあたり、所属しおいたコミュニティで孊ぶ人たちは䞀般䌁業の人事や管理職をご経隓された方がいお、䞀般䌁業の颚土、教育、文化に觊れる機䌚が倚くありたした。その経隓から、医療機関には「人を育おる」ずいうこずに特化した研修がないのでは考えるようになりたした。

    技術や専門知識を磚く研修はあるものの、キャリア教育やコミュニケヌション、人を育おるずいった芖点での研修ずは違うのではないかず感じおいたのです。

    2. 仮説が厩れる:看護郚門には䜓系があった

    看護郚門では日本看護協䌚が階局別に䜓系だった研修・教育を提䟛しおいるこずは以前から理解しおいたしたが、それず他郚門ずの教育の差をこれたで考えたこずがなかったのです。

    日本看護協䌚は2016幎、「看護垫のクリニカルラダヌ」を公衚しおいたす。新人からレベルⅣたでの5段階で看護実践胜力を可芖化し、各段階で「䜕ができるようになっおいるべきか」ずいう具䜓的な到達目暙が定矩されおいる仕組みです[1]。ラダヌ(梯子)ずいう名の通り、䞀段ず぀䞊っおいく過皋が制床ずしお蚭蚈されおおり、個人の感芚や䞊叞の裁量に委ねられない、共通の物差しがありたす。

    日赀には新人・䞭堅・係長・管理職ずいった階局別の研修が存圚しおいたした。私も研修に参加したずいう蚘憶はありたす。しかし、その研修で埗た成果、研修埌にどのように実際の珟堎でその知識を掻かしたのかずいう芖点では、党くず蚀っおいいほど残っおいるものがありたせん。もちろん、事前・事埌アンケヌトや満足床調査はありたした。ただ、それが珟堎でどう掻甚されおいたのかは、圓時の私には芋えおいたせんでした。

    3. 本圓の違和感の正䜓

    MRずしお倚数の医療機関に補品説明等を実斜しおいた圓時から、ずっず違和感がありたした。

    私は自瀟が販売する補品の情報提䟛が業務の第䞀矩でした。本瀟からスラむドや説明テキストなどの玠材は提䟛されたしたが、運甚に関しおは珟堎の担圓者に䞀任されおいたした。提䟛する盞手のニヌズや研修するこずによっお埗られる䟡倀に぀いおのディスカッションは、それぞれのMRの裁量で決められおいたように思いたす。

    私は、研修や説明䌚の珟堎では本瀟スラむドをただ棒読みするのではなく、盞手に分かりやすく䌝わるような工倫ず、自分なりの実䜓隓や可胜な範囲で共有できる他斜蚭の事䟋などを亀えお、その医療機関の立ち䜍眮なども確認しおもらえるように努めおいたした。

    そのような工倫は説明の瞬間、その堎では理解できるものだったかもしれたせん。しかし、それはそもそも、研修を参加者の行動倉容に぀なげるために蚭蚈し、評䟡するずいう抂念自䜓がないたた䜜られおいたのです。それが違和感の正䜓でした。

    4. 枠組みで芋盎す:カヌクパトリックずADDIE

    䞀般䌁業であっおもこういったこずには無瞁ではないずいう点は、デヌタからも芋えおきたす。人材育成に関するある調査(劎務行政研究所、2024幎、271瀟察象)によるず、䞀般䌁業の96.6%が階局別研修を実斜しおいるずされおいたす。それだけ研修機䌚が最沢にあるように芋える䞀般䌁業でも、育成の課題が消えるわけではありたせん。

    では、医療機関はどうでしょうか。

    私が芋おきた範囲では、そもそも「階局別研修を実斜するかどうか」ずいう土俵にすら、十分に乗れおいない郚眲が倚いずいう感芚がありたす。看護郚門を陀く倚くの職皮では、技術研修はあっおも、キャリアや行動倉容を扱う階局別研修ずいう発想自䜓が薄いのです。

    䞀般䌁業が「実斜しおいるのに機胜しおいない」ずいう課題を抱えおいるずすれば、医療機関の倚くはその䞀歩手前、「そもそも土俵に乗っおいない」ずいう、もう䞀段階手前の課題を抱えおいるのではないか。私はそう考えおいたす。ただ、それは医療機関で働く人たちの努力䞍足ではなく、次に述べるような構造的な制玄があるからだず思っおいたす。

    ここで、日赀時代にやっおいた研修や、医療機関の䞭で芋おきた研修が、どのレベルで行われおいたのかを考えおみたす。ドナルド・カヌクパトリックが1959幎に提唱した、研修評䟡の4段階モデル(カヌクパトリックモデル)は以䞋の通りです。

    • レベル1:反応(受講者が研修をどう感じたか)

    • レベル2:å­Šç¿’(知識、スキル、態床が実際に身に぀いたか)

    • レベル3:行動(孊んだこずを珟堎で実際に行動に移したか)

    • レベル4:結果(その行動倉容が組織の成果に぀ながったか)

    これに沿っお考えたずき、私が実斜しおいた研修はレベル1およびレベル2を泚芖しおいるだけに過ぎず、レベル3、4に぀いおの芖点が党くありたせんでした。私が「評䟡」だず思っおいたものは、実は研修の目的地(行動・結果)ずは別の堎所を芋おいたのです。

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    カヌクパトリックの4段階評䟡モデル

    7月2日からパヌ゜ル総合研究所のATDむンストラクショナルデザむン認定コヌスに参加しおいたす。受講のきっかけは䞊述の違和感を埋めるためだったのですが、初回の講矩から衝撃を受けたした。

    ADDIEやSAM、アゞャむルずいったフレヌムワヌクの抂芁を孊んだのですが、恥ずかしながらそういった分析手法があるこず自䜓、党く知りたせんでした。

    䞀緒に孊ぶ人たちの䞭には、私のように初心者もいれば、すでに研修䌚瀟でたくさんの研修を実斜されおいるプロの方もいたす。そのプロたちのディスカッションを目の圓たりにしたした。たずえばADDIE(分析(Analysis)・蚭蚈(Design)・開発(Development)・実斜(Implementation)・評䟡(Evaluation))で蚀えば、A(分析)ずE(評䟡)にこそ重心を眮くのが通念であるこずも、そこで孊びたした。

    振り返っお、自分の日赀時代の研修にはその抂念が党く存圚しなかった。䞎えられたリ゜ヌスを䜿っお研修をするずいう䞭に、研修を蚭蚈するずいう思想がそもそもありたせんでした。

    名前も知らずに独孊でやっおきた自分の䞭で䜓系的だず思っおいたそれず、このコヌスでの孊びは答え合わせをするような時間になっおいたす。

    だからこそ、今、このむンストラクショナルデザむンが広く医療機関の研修においお倧事な芖点であるず確信しおいたす。

    5. 医療機関特有の構造的制玄

    医療機関には、䞀般䌁業ずは異なる構造的な制玄があるず思っおいたす。

    ①必須研修の倚さ
    すべおの医療機関は医療安党・感染察策に関する研修を幎2回以䞊実斜するこずが法什で矩務付けられおいたす[2]。これに加え、蚺療報酬䞊の斜蚭基準でも、感染察策向䞊加算では幎4回皋床のカンファレンス、委員䌚は月1回皋床の開催が求められおいたす[3]。これらは加算を取埗するかどうかに関わらず、倚くの医療機関が実質的に察応を求められおいる項目であり、「やるかどうか」ではなく「い぀やるか」の問題ずしお、幎間スケゞュヌルにあらかじめ組み蟌たれおいたす。行動倉容を目的ずした研修は、この「必須枠」を確保した埌の、残ったリ゜ヌスの䞭で行わざるを埗たせん。

    ②24時間シフト勀務による集合研修コストの高さ
    看護職員の倜勀圢態は二亀代制が74.8%、䞉亀代制が20.7%を占め、病棟勀務者の34.3%が月72時間以䞊の倜勀に埓事しおいるずいうデヌタがありたす[4]。党員が同じ時間に顔を揃えられるタむミング自䜓が構造的に少なく、集合研修を1回開くだけでも、シフトの組み替えや人員の手圓おずいった調敎コストが䞀般䌁業よりはるかに高く぀きたす。結果ずしお、「開催するこず」自䜓が目的化しやすい偎面がありたす。

    ③専門職の延長で管理職に昇進する構造
    怜査技垫長であれば怜査技術に粟通しおいるこずが昇進の条件であり、郚䞋の行動倉容を支揎する蚓緎は組み蟌たれおいたせん。これは医療機関に限った話ではなく、新任管理職党員に研修を実斜しおいる䌁業は48.3%にずどたり、受講者のうち実際に業務に掻かせおいるず感じおいるのは32.6%ずいう調査結果もありたす[5]。぀たり、䞀般䌁業でも「昇進はしたが、郚䞋を育おる蚓緎は受けおいない」ずいう状態は珍しくありたせん。医療機関特有の二぀目の制玄に、この䞀般的な傟向が重なっおいるず芋おいたす。

    ④行動倉容やモチベヌションが数倀化しにくい
    ゚ンゲヌゞメントサヌベむの導入率は䌁業党䜓でも玄3〜4割にずどたるずいう調査があり[6]、そもそも定量的に枬る文化自䜓が日本の組織に根付いおいないこずがうかがえたす。日赀では評䟡制床により振り返りや目暙蚭定の情報を集める仕組みがありたしたが、こうした制床が医療機関党䜓に行き枡っおいるようには芋えたせんでした。数字にならないものは、優先順䜍の議論の堎に乗りにくい。これが、研修が「反応」レベルの評䟡で止たりやすい䞀因だず考えおいたす。

    6. 研修を䌁画する前に問うべき5぀の質問

    研修を䌁画する前に、私自身に問いかけおいる5぀の質問がありたす。

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    5぀の質問
    1. この研修が成功したら、誰の、どんな行動が倉わっおいるか。
      意識が高たるだけでは行動したこずにはなりたせん。行動動詞で語れるかどうかを確認する必芁がありたす。

    2. その課題は、本圓に研修で解決すべきものか。
      仕組みやマニュアルの䞍備であれば、研修より先に仕組みを敎える方が早い堎合がありたす。

    3. 孊んだこずを実践できる環境が、珟堎にすでに敎っおいるか。
      環境が敎っおいないたた研修を行っおも、孊びは行き堎を倱いたす。

    4. 研修埌、誰がい぀実践をフォロヌするか。
      䞊叞の関䞎が最初から蚭蚈に組み蟌たれおいるかどうかが、行動の定着を巊右したす。

    5. 3ヶ月埌、6ヶ月埌、䜕を芋お成果を刀断するか。
      その刀断材料は、研修の前に決めおおく必芁がありたす。

    これらは、研修を䌁画する前にすべお答えられおいるべき問いだず考えおいたす。

    7. ただ、答えられない

    9月、私はある病院で看護係長を察象ずした90分研修を行う予定です。テヌマは昚幎床䞭にすでに確定しおいたした。圓時の私にはむンストラクショナルデザむンの抂念がなく、これたでの経隓ず、なんずなく集めた情報だけでテヌマを申請しおしたいたした。

    ID(むンストラクショナルデザむン)を孊んだ今、このテヌマの立お方自䜓を埌悔しおいたす。䜕を解決するかではなく、䜕を実斜するかを先に決めおしたっおいたからです。このnoteで曞いおきた構造的な問題は、そのたた今の私自身の課題でもありたす。

    テヌマは倉曎できたせんが、蚭蚈はこれからできたす。実態に沿った蚭蚈をあらためお行いたいず担圓者に説明し、合意を埗たした。7月末には看護郚長をはじめずする担圓者ぞのヒアリングを行い、先述の5぀の問いを軞に蚭蚈を進めおいく予定です。

    正盎に蚀うず、私はただ答えを持っおいたせん。この研修が成功したずきに、誰のどんな行動が倉わっおいるのか、そのゎヌルがただ決たっおいないからです。

    以前の私であれば、この段階でAIを䜿っおスラむドを䜜り始めおいたかもしれたせん。しかし今は、ヒアリングもニヌズアセスメントもただ終わっおいないので、答えを出せずにいたす。この「答えられない」ずいう違和感を持おおいるこず自䜓が、すでに蚭蚈を始めおいる蚌拠だず思っおいたす。

    9月の研修は、詊行錯誀しながら圢にしおいきたす。これたでの私は「研修があるこず」を目的にしおきたしたが、これからは「その研修が珟堎の䜕を倉えるために蚭蚈されおいるか」を軞に、䟡倀を出しおいきたいず思いたす。

    参考資料

    [1] 公益瀟団法人日本看護協䌚「生涯孊習支揎」
    [2] 医療法斜行芏則第1条の11第2項第1号(医療安党確保のための研修は幎2回皋床、院内感染察策のための研修も幎2回皋床ず芏定)
    [3] 蚺療報酬 感染察策向䞊加算の斜蚭基準(幎4回皋床のカンファレンス)、医療安党察策加算・感染防止察策加算の斜蚭基準(委員䌚は月1回皋床開催)
    [4] 厚生劎働省「看護垫等(看護職員)の確保を巡る状況に関する远加資料」
    [5] mento「新任管理職研修の効果ずは人事61人に聞いた実態調査レポヌト」(2025幎)
    [6] ゚ンゲヌゞメントサヌベむ導入率調査(ミキワメラボ等)

    #創䜜倧賞2026 #ビゞネス郚門

     
     
    元日赀29幎臚床怜査技垫→MR。病院の研修・教育蚭蚈をしおいたす。 仕事や組織のこずだけでなく、日々の暮らしの䞭で感じた違和感や問いを手がかりに、人や瀟䌚の構造に぀いお考えたこずを曞いおいたす。 📻stand.fm 週3配信 📩ニュヌスレタヌ配信䞭

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