
散文詩|君が気にいると思ったから
「君が気にいると思ったから」
庭は広く、喧騒から少し離れたところにある平屋のおうち。素焼きの瓦屋根、クリーム色の壁と奥まった木のドア。
あの時は、あんなに冷たく突き放したくせに。
かわいい平屋に一人、似つかわしくない彼がいる。
連絡をしなくなって、3年。付き合っていた時間のちょうど半分。別々に歩いて、ちゃんとそれなりにやっていた。いつでも連絡はできたはずなのに——。
「怖かったから」とあなたは言った。
誰かを好きになったの?
もう、私のことなんて忘れた?
そう思っていたのは、お互い様。
私も怖かった。
会うことは、針に毛糸を通すくらい無理なことだって思ってた。でも
「もう探さなくて良いんだ」
その思いは消えないで、私を自由にしてくれた。
「会いに行く勇気もないくせに、君が気にいるだろう家を見つけたら、他の人に渡したくないと思った。一緒になるなんて、そんな希望はもう無くしていたけれど。ここに住んでいるだけで、幸せだったんだ」
いつもそう。私たちは、自分を一番信じない。そのくせ、不安ばかりを信じてしまう。だから、来る予定のない、いつかそのうちの妄想に怯え、相手のせいにして傷つけ合った。一番好きだから、怖くなる。
嫌いになりたくてもなれなくて、忘れたくても、忘れられない人。
それは、触れ合えなくても、存在してくれているだけで安心できる人だった。
「ごめん……中は、汚いよ(笑)。そこは、どうして良いかわからなくて」
彼は、照れた顔で苦笑い。
小さな平屋の家。外は彼が、中は私が整える。
二人でちょうど一つのおうち。
帰る場所は、ずっとここだった。