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【ショート・ショート】大阪発、健太のチャレンジ


ショート・ショート三連発!大阪発、健太のチャレンジ

登場人物

  • 健太(けんた): 大阪生まれ大阪育ちの22歳。お調子者でおしゃべり好き、でも根は真面目なフリーター。学習能力に疑問符がつく。

  • アヤ: 健太の幼馴染で、しっかり者。健太の軽口にも動じないツッコミ担当。もはや健太の保護者の域。

  • 謎のセールスマン(その1): フェイスウェアを売った、胡散臭い笑顔のおっちゃん。

  • 謎のセールスマン(その2): フェロモン香水を売りに来た、さらに胡散臭い笑顔のおばちゃん。

  • 謎のセールスマン(その3): 声を売りに来た、やけにダンディな中年男。

大阪発、イケメンマスクの秘密

あらすじ

いつも通りネットサーフィンを楽しんでいた健太のもとに、突然、胡散臭いセールスマンが訪問してくる。セールスマンが熱弁するのは「フェイスウェア」という、整形せずに好きな顔になれるという画期的な商品。巧みな話術に乗せられた健太は、半信半疑ながらもついつい購入してしまう。翌朝、フェイスウェアを装着した健太は、憧れのイケメン俳優そっくりの顔に変身!すっかり有頂天になった健太は、その新しい顔で街へ繰り出すが、思わぬ騒動に巻き込まれていく。

ストーリー

「ピンポーン」
健太がいつものようにソファでゴロゴロしながらスマホをいじくっていると、玄関のチャイムが鳴った。
「誰やねん、こんな時に…」
だるそうにドアを開けると、そこに立っていたのは、どこか胡散臭い笑顔のおっちゃんやった。スーツは妙にテカテカしてて、手にはやたらとでかいカバンを持ってる。
「はい、もしもし!わたくし、株式会社ビューティーフューチャーの顔面チェンジ・アドバイザーと申します!」
「か、顔面チェンジャー?なんやそれ?」
健太が訝しげな顔をすると、セールスマンはカバンからキラリと光る薄っぺらいフィルムを取り出した。
「お客様、あなたは今の自分のお顔に100%満足されていますか?もう少し鼻が高ければ…とか、目が大きければ…とか、思われたことはございませんか?」
「え、まあ、そら…」
図星を突かれて、健太は思わずモゴモゴする。
「ですよね!そこで!ご紹介したいのが、こちらの**『フェイスウェア』**でございます!」
セールスマンは得意げにフィルムを掲げた。透明で、手のひらサイズ。
「なんやこれ、ただのビニールとちゃうんか?」
「いえいえ!これは最先端のナノテクノロジーとバイオフィードバックを融合させた、夢の第二の皮膚でございます!肌にそっと当てるだけで、あなたの顔はたちまち理想の姿に…!整形手術のような痛みもリスクも一切ございません!朝、コンタクトレンズをつけるように装着し、夜、外すだけ!」
セールスマンはマシンガンのように喋りまくる。なんか、すごいこと言ってるのはわかるけど、話が早すぎてついていかれへん。
「え、ホンマに?そんなん、あるん?」
「ございますとも!現に、今やハリウッドセレブや世界のVIPの間では、常識となりつつあるんですよ!試しに、こちらのカタログをご覧ください!」
差し出された分厚いカタログには、外国人俳優やモデルらしき人物が、ビフォーアフターの写真でズラリ。どれもこれも、劇的な変化や。
「…これ、CGとかやないんか?」
「とんでもない!すべてはフェイスウェアのなせる業でございます!さあ、お客様!あなたの憧れの顔を、今こそ手に入れてみませんか?初回限定で、驚きの特別価格でご提供させていただきます!」
特別価格、という言葉に健太のアンテナがピクッと反応した。
「ま、マジで?いくらなん?」
セールスマンはニヤリと笑って、電卓を叩いた。提示された金額は、健太の今月のバイト代ほぼ全部だった。
「た、高っっか!」
「とんでもない!この夢のような体験を考えれば、破格の値段でございます!それに、今なら特別に、全顔パターン対応、さらに永久保証付きで!」
「全顔パターン…永久保証…」
健太の頭の中で、イケメンになった自分を想像した。モテまくり、羨望の眼差しを浴びまくり…。
「うーん…、でも、万が一、効果なかったらどうすんねん?」
「ご安心ください!効果がなければ、全額返金保証でございます!ただし、保証期間はご購入から24時間以内とさせていただきますが!」
「24時間!?短かっ!」
「ご決断はお早めに!このチャンスを逃したら、二度と手に入らないかもしれませんよ!」
セールスマンの言葉巧みな煽りに、健太は完全に踊らされた。バイト代のほぼ全額をはたいて、健太はその場で「フェイスウェア」を購入した。
「まいどありー!」
セールスマンはニヤニヤしながら、まるで煙のように消えていった。残された健太は、手にした小さな箱をじっと見つめた。
「…ホンマに、俺、イケメンになれるんやろか?」
翌朝。
健太は、恐る恐るフェイスウェアを顔にペタッと貼ってみた。透明なフィルムは、スッと肌に吸い付くように貼り付く。違和感はまったくない。そして、鏡に映る自分を見て、健太は思わず「ひゃー!」と叫んだ。
そこにいたのは、健太ちゃうかった。先日、テレビで見たばっかりの、国民的イケメン俳優、速水リョウやった!
「うっそーん!俺、速水リョウになっとるやんけ!」
ホンマか?と、顔をぐりぐり触ってみても、自分の顔やない。肌の質感まで速水リョウそのものや。これ、夢か?頬をパチンと叩いた。痛い。夢ちゃう。
「おいおい、アヤ!アヤ!見てみぃやこれ!」
隣の部屋で朝ごはん食べてた幼馴染のアヤが、訝しげな顔で出てきた。
「なんやの健太、朝からうるさいわね。…って、誰!?」
アヤは健太の顔を見て、持ってたお茶碗を落としそうになった。
「誰って、俺やん!健太やで!」
「はぁ!?何言うてんのアンタ。健太はそこのテーブルに座ってるじゃない。…って、あれ?」
アヤが指差す先には、健太のいつもの顔でご飯を食べてる自分がいる…わけない。アヤは目をゴシゴシ擦って、もう一度健太の顔を見た。
「え、健太…なの?うそでしょ、速水リョウそっくりじゃない!」
「やろー!これ、あん時セールスマンに買わされた『フェイスウェア』ってやつやねん!」
健太は得意げに説明した。アヤは呆れた顔で健太の顔をまじまじと見つめる。
「確かに、肌の感じとか、めっちゃ自然…。でも、こんなんして何が楽しいのよ?」
「何が楽しいって、そらもう!イケメンになった気分味わえるやん!よし、ちょっとこれでコンビニ行ってくるわ!」
健太はウキウキしながら家を飛び出した。速水リョウの顔で街を歩く。すれ違う女子高生がキャーキャー言ってる。これはホンマもんの快感や!コンビニに入ると、店員のお姉さんが妙にニコニコしてる。
「いらっしゃいませ…あら、もしかして、速水リョウさん…ですか?」
「いえ、まあ、よく言われるんですけどね…」
健太はわざとらしく低い声で答えた。恥ずかしいけど、ちょっと気持ちええ。レジに並んでると、後ろから「キャー!」という黄色い声が。振り向くと、女子高生の集団がスマホを構えて健太を凝視してる。
「速水リョウだ!やばい!本物だよ!」
「サインください!写真撮ってください!」
あっという間に囲まれて、健太はタジタジになった。
「あ、いや、僕はその…」
慌てて誤魔化そうとするが、もう遅い。スマホのシャッター音が鳴り響き、フラッシュが焚かれる。健太はパニックになった。
「や、やめとくれ!俺、速水リョウちゃうねん!ホンマにちゃうねん!」
健太がそう叫んだ瞬間、ペリッと顔から何かが剥がれる感触がした。女子高生たちの視線が、一斉に健太の顔に集中する。
「…え?誰?」
「え、なんか…フツーの人になった…」
女子高生たちの声が、みるみるうちに冷たくなっていく。健太の顔から剥がれたフェイスウェアは、ひらひらと床に落ちていた。
家に帰ると、アヤが玄関で腕組みして待ってた。
「どうだった?イケメンライフは?」
「あかんかったわ…。結局、俺は俺や。このフツーの顔で生きていくしかないんやな…」
健太はため息をついた。アヤはクスッと笑って言った。
「当たり前でしょ。でも、健太は健太のままで、結構面白いんだから、それでいいじゃない。ねえ、そのフェイスウェア、いくらしたの?」
健太は財布の中身を見て、もう一度ため息をついた。

「何が楽しいって、そらもう!イケメンになった気分味わえるやん!よし、ちょっとこれでコンビニ行ってくるわ!」
健太はウキウキしながら家を飛び出した。速水リョウの顔で街を歩く。すれ違う女子高生がキャーキャー言ってる。これはホンマもんの快感や!コンビニに入ると、店員のお姉さんが妙にニコニコしてる。
「いらっしゃいませ…あら、もしかして、速水リョウさん…ですか?」
「いえ、まあ、よく言われるんですけどね…」
健太はわざとらしく低い声で答えた。恥ずかしいけど、ちょっと気持ちええ。レジに並んでると、後ろから「キャー!」という黄色い声が。振り向くと、女子高生の集団がスマホを構えて健太を凝視してる。
「速水リョウだ!やばい!本物だよ!」
「サインください!写真撮ってください!」
あっという間に囲まれて、健太はタジタジになった。
「あ、いや、僕はその…」
慌てて誤魔化そうとするが、もう遅い。スマホのシャッター音が鳴り響き、フラッシュが焚かれる。健太はパニックになった。
「や、やめとくれ!俺、速水リョウちゃうねん!ホンマにちゃうねん!」
健太がそう叫んだ瞬間、ペリッと顔から何かが剥がれる感触がした。女子高生たちの視線が、一斉に健太の顔に集中する。
「…え?誰?」
「え、なんか…フツーの人になった…」
女子高生たちの声が、みるみるうちに冷たくなっていく。健太の顔から剥がれたフェイスウェアは、ひらひらと床に落ちていた。
家に帰ると、アヤが玄関で腕組みして待ってた。
「どうだった?イケメンライフは?」
「あかんかったわ…。結局、俺は俺や。このフツーの顔で生きていくしかないんやな…」
健太はため息をついた。アヤはクスッと笑って言った。
「当たり前でしょ。でも、健太は健太のままで、結構面白いんだから、それでいいじゃない。ねえ、そのフェイスウェア、いくらしたの?」
健太は財布の中身を見て、もう一度ため息をついた。


大阪発、フェロモンの罠


あらすじ

憧れのイケメンになれる「フェイスウェア」に大金をはたいた健太は、あっという間に夢から覚め、もう二度と怪しい商品には手を出さないと心に誓う。しかし一週間後、懲りずに現れたのは、またもや謎のセールスウーマン。今度は「女性を惹きつける」というフェロモン香水を言葉巧みに売りつけられ、健太は再び甘い誘惑に抗えなくなる。

ストーリー

「ピンポーン」
一週間後。健太はソファでスマホをいじりながら、あの悪夢のような出来事を思い出してた。バイト代のほぼ全額をはたいて買った「フェイスウェア」。結局、数分でバレて、女子高生には「フツーの人」呼ばわり。アヤには呆れられるし、ホンマ、ええカモやったわ。
「もう二度と、あんな怪しいもんには手出さへん!」
固く心に誓った、まさにその時、玄関のチャイムが鳴った。
「誰やねん、またこのタイミングで…」
懲りもせずドアを開けると、そこに立っていたのは、前回のおっちゃんとは違う、派手な服を着たおばちゃんやった。顔にはやたら濃い化粧、口元にはキラリと光る金歯。
「はい、もしもし!わたくし、株式会社ビューティーフューチャー、モテモテ・ライフコーディネーターでございます!」
「ビューティーフューチャー…またかよ!」
健太は思わずドアを閉めようとしたが、おばちゃんの足がドアの隙間に挟まった。
「ちょっと!痛い!お客様、せっかくのご縁をムダにされますか!?」
「ご縁も何も、あんたらんとこの『フェイスウェア』で散々な目に遭うたんや!もうええわ!」
「あらあら、それは失礼いたしました!しかし、そちらはあくまで『見た目』の話。人間の魅力は『見た目』だけではございませんのよ!」
おばちゃんはニヤリと笑って、胸元から小さなガラスの瓶を取り出した。中には、ほんのりピンク色の液体が入っている。
「お客様、おモテになりたいですか?意中のあの女性を振り向かせたいですか?」
「そ、そら…」
健太の耳元で、おばちゃんの声が甘く囁く。
「ご安心ください!わたくしがご紹介するのは、**『フェロモン・ラブパフューム』**でございます!シュッとひと吹きするだけで、あなたの持つ潜在的な魅力を最大限に引き出し、周囲の女性をトリコにする、夢の香水でございますのよ!」
「フェロモン…香水?」
健太は訝しげに瓶を見た。ただの香水に見えるけど…。
「これはただの香水ではございません!科学的に調合された特殊なフェロモンが、女性の脳に直接作用!あなたの魅力を数十倍にも高める、まさに『魔法の液体』でございます!これ一本で、もう女性に困ることはございません!」
おばちゃんは得意げに胸を張る。健太の脳裏に、先日アヤに呆れられた顔がよぎった。でも、もし、本当にモテるようになるなら…。
「ホンマにそんな効果あるんか?また騙されへんのやろな?」
「もちろん!お客様がもし効果にご不満でしたら、1週間以内であれば全額返金保証でございます!ただし、香水は使い切っていただいて結構ですわよ!」
「使ってもええの!?」
「ええ!それだけ商品に自信がある証拠でございます!」
「うーん…でも、結構高かったら、今月またヤバいしな…」
「ご安心ください!今なら、モニター特別価格!通常価格の半額でございます!しかも、この一本で半年間は持ちますのよ!」
半額、という言葉に健太はグラついた。それに、半年も持つなら、一回の値段はそんなに高くない…?
「それに、お客様、考えてもごらんなさい。今のままでは、いつまでたっても理想の相手には巡り合えませんわよ。しかし、この香水があれば…」
おばちゃんは健太の未来を想像させるように、言葉を畳みかけた。イケメンになれなくても、モテる男になれるなら…!健太は財布を取り出した。
「わ、わかった!買うわ!」
「まいどありー!」
おばちゃんは満面の笑みで香水を手渡し、健太の目の前からパッと姿を消した。残された健太は、香水をじっと見つめた。
「…今度こそ、ホンマもんやろな?」
その日の夜。健太はアヤに、新しい香水を買ったことを自慢した。
「見てみぃや、これ!今度こそホンマもんやで!フェロモン香水やて!」
アヤは健太から香水を奪い取り、プシュッとひと吹き。
「…ただのいい匂いの香水じゃない。これ、高いんでしょ?」
「せやねん!でもな、セールスのおばちゃんが言うには、女性をトリコにする魔法の液体なんやって!」
アヤは呆れた顔で健太の額をデコピンした。
「アンタ、また騙されたんじゃないの?」
「だ、騙されてへん!今度こそ大丈夫や!」
翌日。健太は意気揚々と香水を振りまいて街へ繰り出した。通勤中の電車内、カフェ、どこへ行っても、女性たちが健太に視線を送っている気がする。いつもなら絶対に話しかけてこないような美女が、目の前を通り過ぎるたびに、健太の方をチラリと見ていく。
「どや!これぞフェロモン効果や!」
健太は心の中でガッツポーズをした。カフェでコーヒーを飲んでいると、隣の席に座っていたOL風の女性が、健太の方を向いてニコリと微笑んだ。
「あの…もしよかったら、一緒にコーヒー飲みませんか?」
「え、あ、はい!」
健太は内心大興奮!まさか自分にこんな日が来るなんて!女性と会話が弾む。連絡先も交換した。
「す、すごすぎる…!やっぱりホンマもんやったんや!」
気分はもう最高潮。その日の夜、健太はアヤに今日の出来事を興奮気味に話した。
「アヤ!聞いたか!?今日、カフェで声かけられてん!可愛い子やったで!連絡先も交換したんや!」
アヤは健太の顔をじっと見て、ふいにクンクンと鼻を鳴らした。
「なんか…いつもより、おばちゃんちの猫の匂いがするわね、アンタ。」
「はぁ?猫の匂い?ちゃうわ!フェロモンや!フェロモン!」
「…もしかして、それ、猫よけの香水とかじゃないの?」
「猫よけ!?そんなアホな!」
健太は慌てて香水の箱を探し、隅っこに小さく書かれた注意書きを見つけた。
「※本製品は、猫科動物の特定フェロモンに類似する成分を配合しております。過度な使用は、猫科動物を引き寄せる可能性がございますのでご注意ください。」
「猫…猫科動物…」
健太は顔面蒼白になった。そして、今日、電車の中で自分を見ていた女性たちの視線、カフェの隣の女性の微笑み…。
「…まさか、俺、今日一日中、猫にモテてたんか…?」
アヤは健太の顔を見て、声を出して笑った。
「フェロモンって、そういう意味だったのね。ホント、懲りないんだから。」
健太は、がっくりと肩を落とした。財布の中身を見て、もう一度、深くため息をついた。


大阪発、イケボ・ボイスキャンディ



あらすじ

憧れのイケメンになれる「フェイスウェア」と、女性を惹きつけるはずが猫を集めた「フェロモン香水」に大金をはたいた健太は、もう二度と怪しい商品には手を出さないと固く誓っていた。しかし一か月後、またしてもあの「株式会社ビューティーフューチャー」のセールスマンがやってくる。今度の獲物は「イケボになる飴」。今度こそと期待に胸を膨らませた健太は、またもや新たな騒動に巻き込まれていく。

ストーリー

「ピンポーン」
一か月が経った。健太は、ここ最近の惨敗を思い出し、深く反省していた。フェイスウェアで一時的にイケメンになった気分を味わったものの、すぐに元通り。フェロモン香水に至っては、女性どころか近所の猫にやたらと懐かれる始末。あれから、道端の猫を見るたびに、ちょっと複雑な気持ちになるようになった。
「ホンマ、俺はアホや。もう絶対、あんな怪しいもんには手出さへん!」
固く心に誓い、二度と鳴らないはずのチャイムの音を無視して、健太はソファでマンガを読んでいた。しかし、ピンポーン、ピンポーン、と執拗に鳴り続ける。
「なんやねん、しつこいな!」
渋々ドアを開けると、そこに立っていたのは、見慣れない男やった。年の頃は50代くらいか。ビシッと決めたスーツに、オールバックの髪型。そして、何よりも目を引いたのは、その声。
「はい、もしもし!わたくし、株式会社ビューティーフューチャー、ボイス・イノベーション・コンサルタントでございます。」
その声は、まるでラジオの深夜番組のDJかのような、低く響く、セクシーな声やった。健太は思わずゴクリと唾を飲んだ。
「ビューティーフューチャー…またアンタらの会社か!俺はもう、何も買わへんからな!」
健太はドアを閉めようとしたが、男はにこやかに片足をドアの隙間に差し込んだ。その笑顔は、どこか見覚えがある胡散臭い笑みやった。
「まあまあ、お客様。そうお急ぎなさらなくても。今回は、お客様の**『声』**にフォーカスした、画期的な商品でございますよ。」
男は胸ポケットから、小さな袋を取り出した。中には、キラキラしたカラフルな飴が入っている。
「『声』にフォーですか?なんやそれ?」
「お客様は、ご自分の声に100%自信がおありでしょうか?もう少しハスキーだったら…、もっと男らしければ…、なんて思われたことは?」
「そ、そら…」
またもや図星を突かれて、健太はタジタジになる。自分の声は、良く言えば若々しい、悪く言えばちょっと甲高いのがコンプレックスやった。
「ですよね!そこで!ご紹介したいのが、こちらの**『イケボ・ボイスキャンディ』**でございます!」
男は、手に持った飴をキラキラさせて見せた。
「これはただの飴ではございません!特殊な音響共鳴粒子と、喉の筋肉に作用するナノカプセルを配合!これを舐めるだけで、あなたの声は瞬時に、女性を虜にする**『イケボ』**へと変貌いたします!まるでプロのナレーターのような、深みと響きのある声に!朝、一つ舐めて、一日中モテモテの声!まるで夢のようでしょう?」
男は、自分のイケボで熱弁する。説得力がハンパない。健太の頭の中で、自分の声が低く渋く変化し、女性をうっとりさせる妄想が膨らんだ。
「ホ、ホンマにそんなことあんのか?また猫よけみたいになったらどうすんねん!」
健太は思わず以前の失敗を持ち出した。男は涼しい顔で、健太の言葉を一蹴した。
「それは当社の別部署の製品かと存じます。わたくしどもが取り扱うのは、『声』の領域。そして、今回のこのキャンディは、お客様に**『確かな効果』**をお約束いたします!」
男は自信満々に微笑む。
「もし効果がなければ、飴をすべて食べきっていただいた上で、購入から48時間以内であれば、全額返金保証でございます!」
「48時間!ちょっとだけ伸びたな!」
健太は少しだけ前向きになる。それに、飴なら気楽に試せるんじゃないか?
「それに、お客様。考えてもごらんなさい。どんなに容姿が良くても、声が残念だと…台無しでございます。しかし、このキャンディがあれば、あなたの魅力は無限大に広がります!」
男は健太のコンプレックスを巧みに刺激する。確かに、イケメンになっても声がこれじゃ…、という思いはあった。アヤにも「健太の声、ちょっと高いよね」と言われたこともある。
「うーん…、で、いくらなん?」
健太は財布を取り出した。提示された金額は、またしても今月のバイト代の半分以上。
「た、高っっか!」
「とんでもない!この夢のような『イケボ』を考えれば、破格の値段でございます!さあ、このチャンスを逃す手はございませんよ!」
セールスマンの畳み掛けるような営業トークに、健太は抗えなかった。結局、半信半疑ながらも、健太は「イケボ・ボイスキャンディ」を購入した。
「まいどありー!」
男はニヤリと笑って、颯爽と去っていった。健太は、手にした袋をじっと見つめた。
「…今度こそ、今度こそは…!」
その日の夜。健太はアヤに、新しい飴を買ったことを自慢した。
「アヤ!見てみぃやこれ!今度こそホンマもんやで!イケボになる飴やて!」
アヤは健太から飴の袋を奪い取り、一つ口に放り込んだ。
「ふーん…ただのフルーツ味の飴じゃない。ねえ、いくらしたのよ?」
「それは聞かんといてくれ…。でもな、これを舐めたらな、声がな…」
健太は、飴を一つ口に含んで、アヤに話しかけた。
「…な、どう?俺の声、変わったやろ?」
しかし、アヤは何も言わず、健太の顔をまじまじと見つめた後、フッと吹き出した。
「ふふふ…健太、あんた…声は変わってないけど、顔がなんか…」
健太は慌てて鏡を見た。そこに映っていたのは、いつもの自分の顔。しかし、口の周りが、なぜかうっすらと緑色になっていた。
「え!?なんやこれ!?」
アヤは笑いをこらえながら言った。
「それ、抹茶味の飴なんじゃないの?口の周りが緑色になってるわよ。」
「抹茶…!?嘘やろ!?」
健太は袋の裏側を見た。小さく**「フレーバー:特濃抹茶」**と書いてある。そして、その下にはさらに小さな文字でこう書かれていた。
「※本製品は、声帯の粘膜を一時的に収縮させ、発声をスムーズにする効果がございます。声質そのものを変化させるものではございません。また、抹茶成分により、一時的に口の周りが着色される場合がございます。」
「声質そのものは変化させへんのかい!しかも口緑色ってなんやねん!」
健太は絶望した。イケボどころか、抹茶色の口元で、ただの抹茶飴を舐めている自分が情けなかった。
アヤは相変わらず笑い転げている。
「健太、懲りないんだから。ねえ、次は何を買うの?今から楽しみだわ。」
健太は、がっくりと肩を落とし、財布の中身を見て、もう一度、いや、何度目か分からない深いため息をついた。

一か月後また「ピンポーン」と玄関のベルが鳴る・・・

おしまい

あとがき

健太の「株式会社ビューティーフューチャー」との奇妙な攻防、いかがでしたでしょうか。
「好きな顔になれるマスク」「女性を惹きつけるフェロモン香水」「イケボになる飴」…。次々と現れる胡散臭い商品に、毎回懲りずに手を出してしまう健太の姿は、もしかしたら私たちの心の中に潜む「楽して変わりたい」「もっとこうなったらいいのに」という願望の現れなのかもしれません。
しかし、物語の結末はいつも、健太が「結局、俺は俺や」と現実を突きつけられる、ちょっぴり切なくもコミカルなものばかりでした。アヤの冷静なツッコミは、読者の皆さんの心の声でもあったのではないでしょうか。
現代社会には、健太が騙されたような、甘い言葉で誘惑する商品や情報が溢れています。今回のショートショートが、そんな誘惑に少しだけ立ち止まって考えるきっかけになれば幸いです。
そして何より、健太のように失敗しながらも、結局は自分のままで面白いと思えること、そして、そんな健太を呆れながらも温かく見守るアヤのような存在がいることの尊さを、少しでも感じていただけたなら、筆者としてこれ以上の喜びはありません。
これからも、健太の明日はどっちだ!? 次はどんな「夢の商品」が健太の前に現れるのか、それはまた別のお話…。












チップがわりにこれをやってみてね🤗




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