
はじめに
「検算をしろ」「計算を見直せ」と言われることがあると思う.
同じことを繰り返すのはつまらない.また,同じ計算を同じように繰り返しただけだと,同じところでまた躓くリスクがある.
ならば違った方法で確認したい.
これは言い換えると「完全に別の観点から検証する」ことと言える.
検算方法の整理
さて,不定積分を求めた場合,微分すると元に戻るということが知られている.また,方程式を解いた際に出てきた答えを方程式の左辺に代入すると,右辺と等しくなることも確認できる.大学範囲の数学を学んでいる人は,逆行列の計算にも取り組んでいるはずだ.
こういった検算方法を整理してみよう.
不定積分の検算
例えば, の不定積分は, である.
それを微分すると になる.
さて, の不定積分は,とも答えられる.
これを展開するととなる.
最初に出てきたとは一見違うように見えるが,これら2つは同じということは自信を持って言えるだろうか.
つまり,最初のが何でも良いのと同じく,2つ目のもやはりなんでも良いので,同じことを言っている,ということだ.
結局微分すれば同じ元の形に戻るということなのだが,任意の積分定数が必要になる不定積分の問題において,少しややこしいかもしれない.
方程式の検算
また,という二次方程式の解を考えてみよう.
これは答えがあるいはになる.
仮に,何かの手違いによりしか出なかったとする.
その値を元の式の左辺に代入すると,確かにになる.
であるから,が答えであることは正しい.
しかし,本来二次方程式の解を求めよ,と言われると,それは解を全て求めよ,ということであるから,検算によって他の解の存在に気づくことはない.
つまり,「その答えが正しい」という確認はできるが,「他に答えがない」ということまでは保証されない.
二次方程式の互いに異なる解が最大で2つあるという知識を持っていなければ,完全な検証はできない.
したがって,「それで答えは全部です」という検算と,「それは合っているが他にもあるかもしれません」という検算の2種類がある,ということに気づくのである.このあたりの話をきちんと考える出発点が,実は高校数学の論理(必要条件・十分条件)という考え方に繋がってくる.
逆行列の検算
また,線形対数を学んでいる人は,行列(A)の逆行列(B)を計算することがある.まず, AとBの積を計算すると単位行列になる,ということに注意.
“行列Aとその逆行列B”は,“行列Bとその逆行列A”とも言い換えられることからわかるように,AとBは2人で1組であり,一方が確定すればもう一方は1人に決まる.
よって,逆行列の検算は,自信を持って答えを1つに特定できる.
まとめ
したがって,不定積分の検算,方程式の検算,逆行列の検算は皆,意味合いが違っていることがわかる.
ざっくりいうと一番安心感のある検算が逆行列であり,続いて不定積分,最後に方程式と言えよう.
検算はあくまでミス検出の一手段にしか見えないかもしれないが,検算の種類の検討を通じて,論理,さらには写像の概念(今回の場合,問題とその回答の対応関係)に関心をもつ手がかりになり得る存在といえる.
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