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はじめに

「検算をしろ」「計算を見直せ」と言われることがあると思う.

同じことを繰り返すのはつまらない.また,同じ計算を同じように繰り返しただけだと,同じところでまた躓くリスクがある.

ならば違った方法で確認したい.

これは言い換えると「完全に別の観点から検証する」ことと言える.

検算方法の整理 


さて,不定積分を求めた場合,微分すると元に戻るということが知られている.また,方程式を解いた際に出てきた答えを方程式の左辺に代入すると,右辺と等しくなることも確認できる.大学範囲の数学を学んでいる人は,逆行列の計算にも取り組んでいるはずだ.

こういった検算方法を整理してみよう.

不定積分の検算

例えば,(x+1)(x+1) の不定積分は, 12x2+x+C\dfrac{1}{2}x^2 +x+\mathrm{C}である.

それを微分すると(x+1)(x+1) になる.

さて,(x+1)(x+1) の不定積分は,12(x+1)2+C\dfrac{1}{2}(x+1)^2+\mathrm{C}とも答えられる.

これを展開すると12x2+x+12+C\dfrac{1}{2}x^2 +x+ \dfrac{1}{2}+\mathrm{C}となる.

最初に出てきた12x2+x+C\dfrac{1}{2}x^2 +x+\mathrm{C}とは一見違うように見えるが,これら2つは同じということは自信を持って言えるだろうか.

つまり,最初の+C+\mathrm{C}が何でも良いのと同じく,2つ目の+12+C+ \dfrac{1}{2}+\mathrm{C}もやはりなんでも良いので,同じことを言っている,ということだ.

結局微分すれば同じ元の形に戻るということなのだが,任意の積分定数C\mathrm{C}が必要になる不定積分の問題において,少しややこしいかもしれない.

方程式の検算 

また,(x−1)(x−2)=0(x-1)(x-2)=0という二次方程式の解を考えてみよう.

これは答えがx=1x=1あるいは22になる.

仮に,何かの手違いによりx=1x=1しか出なかったとする.

その値を元の式の左辺に代入すると,確かに(=0) (=0) になる.

であるから,x=1x=1が答えであることは正しい.

しかし,本来二次方程式の解を求めよ,と言われると,それは解を全て求めよ,ということであるから,検算によって他の解の存在に気づくことはない.

つまり,「その答えが正しい」という確認はできるが,「他に答えがない」ということまでは保証されない.

二次方程式の互いに異なる解が最大で2つあるという知識を持っていなければ,完全な検証はできない.

したがって,「それで答えは全部です」という検算と,「それは合っているが他にもあるかもしれません」という検算の2種類がある,ということに気づくのである.このあたりの話をきちんと考える出発点が,実は高校数学の論理(必要条件・十分条件)という考え方に繋がってくる.

逆行列の検算

また,線形対数を学んでいる人は,行列(A)の逆行列(B)を計算することがある.まず, AとBの積を計算すると単位行列になる,ということに注意.

“行列Aとその逆行列B”は,“行列Bとその逆行列A”とも言い換えられることからわかるように,AとBは2人で1組であり,一方が確定すればもう一方は1人に決まる.

よって,逆行列の検算は,自信を持って答えを1つに特定できる.

まとめ

したがって,不定積分の検算,方程式の検算,逆行列の検算は皆,意味合いが違っていることがわかる.

ざっくりいうと一番安心感のある検算が逆行列であり,続いて不定積分,最後に方程式と言えよう.

検算はあくまでミス検出の一手段にしか見えないかもしれないが,検算の種類の検討を通じて,論理,さらには写像の概念(今回の場合,問題とその回答の対応関係)に関心をもつ手がかりになり得る存在といえる. 


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