
一家離散への道 | (第7話)柚(ゆず)の種
控えめに言って、子供が苦手だ。
ぶっちゃけて言うと、嫌いだ。
ルーツは、人生最古の記憶のひとつに遡る。
その時、幼きぼくは姉と共にテレビに夢中だった。
「お母さん、買い物に行くけど八朔(はっさく)も一緒に行く?」と聞かれ、「行かない」とテレビから目も離さず即答した。
「そう?じゃ、お留守番お願いね」と言って母親が出て行って間もなく、じわじわとこみ上げてきた。
やっぱり行ぐぅぅぅぅぅ!
半狂乱になって母親の後を全力疾走で追うが、見当たらない。
やっぱり行ぐぅぅぅぅぅ!
何度も叫びながら闇雲に走り回る。
と、ひょいっと身体が宙に浮き、見上げるとお巡りさんに抱きかかえられていた。
同時に、姉がぼくの靴を手に追い付いて、「すいません、すいません」とお巡りさんに謝っている。
裸足で家を飛び出し、横断歩道を信号無視して駆け抜けたところをお巡りさんに捕獲されたのだ。
泣け叫ぶ自分を抱える警官と、その警官にひたすら謝りながら靴を履かせる姉、母性本能に引き寄せられるように現れた母親。
その時ぼくは泣き叫びながらも、「なんかスゴイことになってんな」と、その光景を見つめていた。
これだから子供は嫌いなのだ。
このことは、蜜柑(みかん)にも結婚前から何度か話していた。
蜜柑は、「じゃあ、猫を飼おう。猫ならいいよね。」と思いがけずアッサリ受け入れてくれた。
そういうわけで、マンションは二人+一匹を前提に選んだ。
購入したのは建築に1年を要する新築マンションで、元の3LDKの一室をぶち抜き広いリビングを確保し、階下にペットの生活音が響かぬようフローリングの部屋には全てカーペットを敷き詰めた。
あとは完成を待つのみという段になったある日、降って湧いたように子供ができた。
後の「柚(ゆず)」である。
蜜柑は狂喜乱舞した。
八朔は複雑な気持ちだったが、喜ばないわけにもいかないので、喜んだ。
-----
第8話は、こちら。
マガジン:一家離散への道~12年の別居生活