メインコンテンツへスキップ
見出し画像

事務方クエスト(11)~いざ、最終決戦?へ

    くりす

    「賢者様~レベルアップおめでとうございますっ!」

    画像

    「とうとう俺も『LV50』かぁ・・・
     小さい頃はLV50まで生きてるなんて、
     思ってなかったんだけどね」

    「賢者様、冒険者になった時は、
     『戦士志望』だったんですよねぇ?
     戦士だったら死んでたと思いますぅ!」

    悪気なく?そう言うアイラをジト目で睨む。
    だけど実際、その通りかもしれない。
    まぁ『もう死んでる』とまでは思わないが、
    今のような上位職になっているとは、
    それ以上に思えない。

    「賢者様、賢者様!
     LV50到達パーティーしましょうよぉ。
     アイラってばその日に備えて、
     『お好み焼き』の腕を磨いてるんです!」

    「それで料理教室に通っていたの?
     その気持ちは嬉しいけれど・・・」

    いやまて『お好み焼きパーティー』か。
    クリスは少し考え込んでから答えた。

    「いいかもね!
     どうせなら何人か招待しようよ。
     ハルカさんと、そうだなリカさんも誘おう」

    「えーじゃぁ、私も1人誘っていいですかぁ?
     料理教室の先生に来て欲しいですぅ!」

    「かまわないけど。
     じゃ、その人とハルカさんに声かけてくれる?
     あ、リカさん誘うのは内緒でね。
     久々だし、サプライズでいこう」

    「リカさん誘うの内緒ですか・・・?
     ま、何でもいいですけどぉ~
     じゃ、早速誘ってきますぅ!」


    出かけるアイラを見送ってから、
    クリスは、モリノに声をかけた。

    「・・・モリノさん。
     パーティーまでに調べて欲しいことあるんだけど。
     お願いできるかな?」

    クリスは手許にあった書類を数枚取り出して、
    彼女に手渡した。

    「・・・!?」

    モリノは一瞬、怪訝な顔を見せたが。
    その表情はすぐに消し、クリスの指示に従った。

    「承知いたしました、賢者様。
     3日ほど頂けますか?
     パーティーの日付は、
     それに合わせて調整をお願いします」

    説明しなくても、クリスが何をしたいのか。
    彼女はそれをちゃんと理解していた。

    「うんそれで十分、お願いね」

    クリスはモリノの対応に満足しながら、
    自らもリカを誘うため、
    『戦士団詰所』に向かうことにした。

    「クリスさんの・・・
     レベルアップパーティーですか?」

    日中に訪れる戦士団詰所は、
    数名の事務方以外、誰もいない。

    その方が話しやすいと、
    クリスは1人で書類と格闘していた、
    リカを呼び出した。

    「まぁ、俺の件はついでだよ。
     久々に『事務方だけ』で楽しもうと思ってね。
     リカさんも戦士連中にはストレス多いでしょ?」

    (久々も何も・・・
     クリスさんからこの手の誘い、
     はっきり言って初めてじゃない?)

    やはり、何か疑われているのだろうか?
    だとしたらそのパーティーで、
    何か仕掛けてくるつもりかもしれない。

    「アイラさんが俺のために、
     『お好み焼き』を習ってるらしくてね。
     屋外で焼き物パーティーで楽しもうよ」

    例え「何か」があるんだとしても、
    断るのも不自然だ。

    「えぇ、じゃあ・・・楽しみにしてます」

    「ホント?よかったよ。
     お好み焼き好きだけど数は食べれないからね。
     じゃ、戦士連中に見つかる前に消えるわ。
     当日はよろしくね!」

    出ていくクリスを見送ってから、
    リカは改めて考える。

    私が『魔王』だと、疑われてる可能性。
    クリスさんが、そこに思い至る可能性。
    リカには全く心当たりがない。
    彼の後ろには、やはり『誰か』いる?

    そう言えば彼等の調査を頼んだ、
    ハルミは一体どうしたんだろう?
    『すぐにでも連絡する』
    そう言ってたはずなのだが。

    今日の仕事は早めに切り上げて、
    ハルミをもう一度訪ねよう。
    そう決めて、リカは書類との格闘を再開した。

    「ポンコツ新人」が辞めて以来、
    教える手間がなくなったのは救いだったが、
    仕事がたまってることには変わりがない。
    『定時』までに帰るのは、今日も難しそうだった。

        ・
        ・
        ・

    「あ、あなたもパーティーに誘われたですって!」

    結局、残業を終えてからの遅い時間。
    待ち合わせたハルミからの言葉に、
    リカは大きく息をのんだ。

    調べようとしていた相手から、
    逆にアプローチされるだなんて、
    やっぱり、何か疑われている?

    「わ、私っ、魔王様のことバレるようなミス、
     やってないですよ・・・多分」

    リカも同じパーティーに誘われたと聞いて、
    ハルミの方も動揺を隠せない。

    あの子、アイラに何か悟られた?
    いや、そんなはずはない。
    だって私は「探りを入れる」のを、
    そもそも、忘れてたんだから。
    楽しく一緒に、お好み焼きを焼いてただけ。

    ・・・とは、魔王様には言えないけれど。

    「・・・分かったわ。
     ともかく参加してみましょう。
     その『お好み焼きパーティー』に」

    疑われているのか、そうでないのか?
    行けばはっきりするだろう。

    だけど最悪、私が『魔王』だと彼らにバレた時。
    私は彼等をどうするのだろう?
    戦うことにでもなれば、結果はどうあれ。
    私はもうココにはいられない。

    「仕事の残務処理・・・
     しといた方がいいかしら」

    こんな状況でも、仕事が頭から離れない。
    仕事も職場も、そんなに好きな訳じゃない。
    なのになぜ、頭から離れないんだろうか?

    リカは結局、家には帰らず、
    再び職場に向かって歩き出していた。

        ・
        ・
        ・

    「おっ好み焼き~おっ好み焼き~♪
     もう完璧にマスターしましたぁ~♪
     これでパーティーは怖いものなしっ!」

    画像

    「ハルカさんも来てくれるって言ってたしぃ~
     私の料理の実力を認識してもらう、
     チャンスですぅ!」

    アイラはすっかりご機嫌で、お好み焼きの練習中だ。
    ハルミに教わった『肉玉そば』は、
    もういつでも完璧に再現できる。

    「・・・あ、でも待つのです。
     『肉玉そば』だけじゃ飽きられますっ!
     レパートリー何かないでしょうかぁ~
     麺をラーメンにしたら美味しいかなぁ~?」

    アイラはラーメンの麺を確保するため、
    慌てて外に飛び出していった。

        ・
        ・
        ・

    「今日も何の収穫もなし。
     この国に何かある気がするのって、
     私の気のせいなのかしら・・・」

    画像

    宿屋の窓から空を見上げながら、
    ハルカはこれからのことを考えていた。

    魔王がこの国で覚醒してるなら、
    兆候くらいあるだろう。
    そう思って町を調べているのだが、
    今だに何の収穫も得ていない。

    「明日のパーティー終わったら、
     また旅に出ようかしら?
     ココにいると会いたくない人にも、
     結構出くわしちゃうし・・・」

    何の手がかりもないからこそ、
    「この国に何かある」
    そう思いたいだけかもしれない。
    見る限りこの国は平和なのだから、
    『勇者』は必要ないのだろう。

    「・・・明日終わってから、考えよ」

    どーせ明日、クリスやアイラ達と会うのだ。
    そこで彼等に相談してからでも遅くない。

    それにしても『お好み焼きパーティ』って、
    お好み焼きしか出ないのかしら?
    量は食べられないわよねぇ。

        ・
        ・
        ・

    「あぁぁ~全然終わらないっ。
     というか、あのポンコツ新人のヤツ。
     今だに色々ミスが発覚するって、
     どーいうことよっ!?」

    画像

    自分しかいない真夜中の事務所に、
    書類をめくる音だけが響く。

    『最悪の辞退』
    を想定して、
    最低限、仕事を片付けようとしてるのに、
    もう辞めてから1ヶ月にもなる、
    『ポンコツ新人』のやらかしが、
    次から次へと出てくるのだ。
    その後処理ばかりで、
    リカの残務処理は一向に進まない。

    「もう知らない!
     明日、もし私が人として暮らせなくなったら、
     残りは戦士長にやってもらおう!」

    戦士長宛に、手紙の1つも必要だろうか?
    ・・・いや、辞めておこう。
    恨み言ばかり、書いてしまいそうな気がする。

    リカは全てを放置して事務所を後にした。

    だけど『最悪の事態』なんて、何もなかった場合。
    自分が続きをする羽目になるのよね・・・

    『どっちが幸せなんだろう?』

    正直、リカは分からなくなっていた。

        ・
        ・
        ・

    「賢者様、モリノ戻りました」

    調査をお願いしてから、きっちり3日目。
    モリノはきっちり調査の書類を整えて、
    報告に戻って来ていた。

    「お疲れ様。
     ・・・で、どうだった?」

    モリノは少し考えるような顔をしてから、
    気を取り直して報告を続けた。

    画像

    「賢者様の想像、大体当たってると思います。
     調べた場所は、どこもひどい有様でしたし。
     ですが・・・」

    「ですが、どうしたの?
     珍しく歯切れが悪いじゃない」

    調査の結果は、事前にクリスから聞いていた予想。
    ほとんど、その通りだった。
    ならば『ここからの予想』も、
    当たってるのかもしれない。
    だがモリノは、どうしてもそれが信じられない。

    「・・・確かに『コレ』は、
     世の中にはびこる『悪』だとは思いますが。
     『魔王』が絡んでいるとは、私には思えません。
     スケールが小さいっていうか」

    クリスは天井を見上げて考え込んだ。
    確かに自分達が抱く、
    『魔王』のイメージとは随分違う。
    だけどそれは自分達だけのイメージだ。
    『経理』がやりたい『勇者』だって、
    世間一般のイメージとは、随分違うだろう。

    「まぁ、どっちにしても見過ごせないし。
     明日はっきりさせるしかないね。
     パーティーで予定通り、決着をつけよう。
     だけど・・・」

    クリスはちょっと困ったような顔をして、

    「全部、俺の見当違いだったとしたら、
     ハルカさん、怒るだろーなぁ」

    運命の『お好み焼きパーティー』は、明日の夜。

    『リカ』は『ハルカ』が来ることを知らない。
    『ハルカ』もまた、『リカ』が来ることを知らない。


    【事務方クエスト・第1部】
     次回・最終話!

    【第1部最終話・予告】

    画像

    クリス・アイラ・モリノ・ハルカ・リカ・・・
    関係者が集った運命の「お好み焼きパーティー」
    そこでついに【魔王】の素性が全員に知れわたる。
    はたして、クリス達【事務方】は、
    この場をおさめられるのか・・・?

    【第1部・最終話に続く】

     
     
     
    子供の頃は小説家になるのが夢だったおじさん。 日常をエッセイにしたり、小説にしてみたり。 面白おかしく書いてけたらと思います。 社歴25年の事務員なので、事務職にまつわることも。

    あなたへのおすすめ