
魔王の母(闇落ち回避して世界を救います!)3話
創作大賞2026 エンタメ原作部門 応募作 (3/4)
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3話
カイルと魔法塾へ向かうルート。
(ルートはミシャの息子)
ルート「カイルと一緒に塾に通えるなんて、楽しみだなあ」
カイル「…うん」
不安そうな表情のカイル。今日もフードを深々とかぶっている。
ルートのモノローグM(カイルは魔族の血を引いているから、みんなにいじめられている。頭のツノは何度いじってネタにされたか、数える気にもならない。カイルは何度か、本気で怒ったことがある。)
怒って、獣の姿になり暴れるカイル。怪我をする同級生、周りのものが壊れる様子。
ルート(あの時は大変だったなあ…)
改めて横を歩くカイルを見るルート。
ルート(でもカイルはいい奴だ。人の悪口は絶対に言わないし、虫や動物、そして魔物にも優しい。頭も良いし、魔力もすごく強い。僕はそんなカイルをカッコいいと思う。)
塾へ到着し、事務室へ入り入学申込書を提出するルートとカイル。
事務員「ルート君はとても優秀との噂を聞いてますよ、大歓迎です!でも、魔族の子は…」
カイルを見て顔を曇らせる事務員を、ルートは睨みつける。
ルート「魔族の子は入学できないという決まりがあるんですか?」
事務員「規則があるわけではないですが…他の生徒たちが怖がってしまうかもしれませんし…」
呆れ顔のルート。
※こういうことはよくあった。納得できるような理由がなくカイルだけ除け者にされるという現場を、ルートは何度も見てきた。嫌気が刺してきたルート。
ルート「カイルが入れないんなら、僕も入るのやめます。」
困って焦る顔の事務員。カイルの入学は許可された。
カイルはルートの後ろに隠れながら二人で教室に入る。
ルート「大丈夫だよ、ちゃんと申し込みしたんだから。堂々としてればいいんだよ」
こくんとうなずくカイル。
塾講師が教室に入ってくる。
講師「今日初めて来た子もいるんだね~デュフッ じゃ、おさらいしながらやってこっか」
メガネをかけて小太りの講師。独特な笑い方をしている。地元の人間ではないらしく、カイルのことは知らないらしい。
講師「魔力というものは~、精神と深く関わっています。だから精神力を鍛えると~魔力も上がっていきます。頑張っていこうね~」
黒板に魔力と精神の図を書く講師。
その図を熱心に見つめるカイル。
場所を移し、屋外の演習場に集まる講師と生徒たち。
講師「それじゃあみんなで炎の魔法をやってみようね~」
生徒たちが教わったばかりの魔法で小さな弱々しい赤い炎をろうそくに灯していく。
そんな中、安定した大きな炎を灯すルート。
生徒たちから歓声が上がる。
その隣で、ゴオオッ とものすごい熱気が立ち上る。
カイルの魔法で大きな青白い炎が巻き起こる。
一瞬で蝋燭を燃やし尽くす。
呆気に取られる生徒たち。
講師が興奮気味に駆け寄ってくる。「これは…闇の力じゃないですか…!」
講師「すごいな~!カイル君だっけ?魔族の血を引いてるの?デュフッ やば!」
そんな講師を見て少し驚きつつ感心するルート。
※どうやらこの講師は魔族に対する偏見はなく、純粋な魔法オタクらしい。
講師「強い力はそれだけコントロールも難しいから、練習していこうねデュフッ」
カイル「はい」
照れくさそうにはにかむカイル。
カイルの横でニヤけるルート。
M(こんなカイルはなかなか見れたもんじゃない。この塾にカイルを入れることができて良かった…!)
モブ生徒が呟く声が聞こえる。「ルート君もすごかったのにね」
ルートはそれを聞き、自分の見せ場が完全にカイルの影に隠れてしまったことに対して、複雑な気持ちが芽生えていることに気付く。
カイルを褒め称える講師。注目の的のカイル。
それを面白く思わない顔の生徒が数人。
夜。カイルの家。
アイナ「塾、楽しかった?」
カイル「うん。魔力をコントロールする勉強をしていこうって、先生に言われた。」
アイナ(コントロールか…!プランB、いい感じで進んでるんじゃない!?やっぱり塾に入れて良かった…!)
心の中でミシャとルートに大いに感謝するアイナ。
後日。
険しい表情で走って塾へ向かうアイナ。ミシャも同行。
扉を開けて教室に入るアイナとミシャ。
教室には生徒たちと保護者も数人集まっている。
生徒A「僕のカバンを、カイル君が燃やしちゃったんだ!」
丸焦げのカバンを指差す生徒A。
アイナを睨みつける保護者たち。
カイル「僕、燃やしてない。」
小さく呟くカイル。
ルートは少し離れた場所で困惑した表情で黙っている。
カイルの顔をじっと見るアイナ。
アイナ「カイルは、やってないのね」
うなずくカイル。
アイナ(カイルは嘘を言っていないみたいだし…どうすればいいの?)
M(こういう悲しい思いをさせたくなくて、”前の世界”ではカイルがたくさんの人と関わる場をなるべく避けてきたんだよね…やっぱり塾に入れたのは間違いだったのかな…)
唇を噛み、拳をギュッと握りしめるアイナ。
M(もう後戻りはできないんだ。ウジウジ考えててもしょうがない、できることを考えるんだ、できることを…!)
アイナは深呼吸し、保護者に目を向けた。
アイナ「カイルは、やってないって言ってます。カイルは嘘をついていないと思います」
困った様子でアイナと保護者を順番に眺める講師。
保護者「じゃあ何?うちの子が嘘をついてるとでも言うの!?」
アイナ「それは…わからないです。でもそれは、お互い同じですよね…?」
保護者「同じ?みんな知ってるんだからね?魔族がどんなに気性が荒いか…」
カイルから闇のオーラが漂い始める。
怯える保護者たち。
そんなカイルの肩を優しく抱き寄せ、小さくささやくアイナ。
アイナ「カイル、覚えてる?この前言ったこと。喧嘩をしないで解決できる人が、一番強いって。」
カイル「でもこのままじゃ…」
アイナ「大丈夫だから。力を納めて。ね?」
ぐっとこらえる表情のカイル。
アイナ、再び保護者の方を向く。
アイナ「カイルは半分人間です。とても優しい子です。カイルが悪いって、決めつけないでください!そうやって決めつけてると、どんどん世界が悪い方へ向かって…そのうち大変なことに…」
【アイナの回想】
魔王になったカイルが、勇者ルートたちと死闘を繰り広げている。
苦悶の表情で闘う20歳のルート。
※親友だったカイルとこんな闘いをしなくてはいけないなんて、ルートは思ってもいなかった。できることなら元のカイルに戻って欲しい。しかしカイルは魔王になってから、たくさんの人間を殺しすぎた。もう元には戻れない。それならばいっそ自分の手で、カイルの不幸を終わらせてやろう、そんな気持ちでルートは剣を振るっていた。
アイナは勇者ルートのパーティーに同行してその闘いを見ていた。
カイルを何とかして正気に戻そうと、叫ぶアイナ。
アイナ「お願いカイル、元に戻って!私の声を聞いて!シンシアのことを…お母さんのことを思い出して…!!」
※アイナもカイルが元に戻っても、もう人間として暮らすことはできないのはわかっていた。それでもせめて、最後に一言でも言葉を交わせたら…そんな気持ちで叫んでいた。
しかしその声は届かず…
闇魔法で巨大隕石を呼ぶカイル。
それを見て絶望するルートと仲間たち、そしてアイナ。
【回想終わり】
アイナ「そうなってしまってからじゃ、遅いんです…!」
静まり返る塾の教室で、必死の表情のアイナを見て、何かを思うミシャ。
保護者たちは、何言ってるの、という顔でアイナを見つめる。
ミシャ「あの、先生、ちょっとそのカバンを見てみてもいいですか?」
おっとりと講師に歩み寄るミシャ。
講師「え?はあ、どうぞ」
丸焦げのカバンに手をかざし、何かを調べるミシャ。
保護者「そんなことして、何かがわかるとでも言うの?」
ミシャ「ええ。修復魔法を応用して、使われた魔力も持ち主に帰すことができます。そうすれば誰が使った魔法かわかります。」
驚く一同。「そんなことが…?」
講師「デュフッ理論的には可能かもしれませんが、使った魔力を元に戻すなんて、聞いたこともありませんが…」
ミシャ「光の魔法には時空魔法というものがあります。それを使えば可能ですよ」
その言葉を聞き興奮する講師。
講師「時空魔法!天空人しか使えない貴重な光魔法が見られるなんて…!デュフッ是非お願いします!!」
ミシャの手と丸焦げのカバンが光り、辺りは聖なる空気に包まれる。
虹色の光の粒がカバンにまとわりつき、煙と炎が現れた後カバンに吸い込まれ、カバンが修復されていく。
炎は魔力の光に変わり、その光は生徒B(Aの友達)の手へ吸い込まれて行った。
生徒Bに一同の視線が集まる。バツが悪そうなBとA。
ミシャの魔法に見惚れていた講師だったが、はっと我に帰り、生徒Bに目をやる。
講師「B君がやったんですか…A君B君、カイル君に謝りなさい」
A B「ごめんなさい…」
冤罪が晴れ安心した表情のカイル。
それを見てほっと胸を撫で下ろすルート。
ミシャ、Aの保護者に「あなたもアイナに謝るべきじゃないかしら?」と問いかけるが、アイナが制止する。
アイナ「いえ、いいんです。間違いは誰にでもあることなんで…」と笑顔で保護者を気遣う。
屈辱の表情のAの保護者と、戸惑う他の保護者たち。
帰り道、一緒に帰るアイナとカイルとミシャとルート。
前の方を歩いているカイルとルート。
ルート「ごめん」
突然カイルに頭を下げるルート。
ルート「僕、最初少しだけ、カイルを疑ってた。もしかしたら、魔力をコントロールできなくて燃やしちゃったのかって…」
カイル「いや、普通はみんな疑うよ。謝ることじゃないよ」
ルート「普通じゃない!」
真面目な顔で叫ぶルート、驚くカイル。
ルート「僕は、カイルの友達なんだ…!友達を信じられないなんて…最低だ」
照れ臭くて戸惑うカイル。
カイル「わかったよ。それじゃあ…今度ジュース奢って」
笑うカイルとルート。
少し離れてそれを見守るアイナとミシャ。
アイナ「ありがとうミシャ。何とお礼を言ったらいいか…」
ミシャ「正しいと思ったことをしただけよ。でもアイナ、私気になったのだけど…」
アイナの顔を覗き込むミシャ。
ミシャ「あなた、神のお告げか何か聞いた?あの発言、まるで未来のことを知っているみたいだった…」
どきりとするアイナ。
アイナ「いや、ただ想像力を働かせただけよ」
アイナを探るようにじっと見つめるミシャ。
ミシャ「想像力…ね。それにしては妙に説得力があった気がするけど…まあいいわ。もし何か話せることがあったら、いつでも言ってね」
微笑むミシャ。
アイナ「ありがとう。でも本当にさっきの魔法すごかったよ。何が起こってるのか私にはよくわからなかったけど…時空魔法とか言ってたっけ?」
ミシャ「そう。時空魔法は時の流れを操作することができるの。壊れたものを、壊れる前の状態に戻したり、使われた魔法を使われる前の魔力に戻すこともできるのよ。」
アイナ「時の流れを操作…」
アイナ、塾でミシャが魔法をかけた鞄の周りにきらめいていた虹色の光を思い出す。アイナはあの光をどこかで見たことがある。
はっとするアイナ。(そういえば、あの虹色の光…)
時間が戻る前、世界が滅びる兆しなのかと思って見ていた、虹色の光を思い出すアイナ。
アイナ「それって、時間を戻すことができるってことだよね!?」
ミシャに問うアイナ。
ミシャ「うん…そうだけど?」
アイナ「その魔法を使えば、その…地球全体を何年も前に戻すこともできたりする?」
ミシャ「地球全体を!?それはすごい魔力が必要ね~。そうねえ…天空の神様と呼ばれる人がいるけど、その人ならできるかも…?」
アイナの頭にある仮説が浮かび上がる。
アイナ(もしかして、滅びそうだった地球を、天空の神様が時空魔法で時間を戻した…!?)
真剣な顔で立ち止まるアイナ。
きょとんとするミシャ。
4話に続く