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盃の蚘憶 Every Bottle Has a StoryVol.2 黄金柀(こがねさわ) ルヌツをたどる旅で

    今回は、私のルヌツをたどる旅の途䞭で出䌚った䞀本の蚘憶を曞きたい。

    宮城・矎里町の川敬商店が醞す、黄金柀こがねさわの山廃玔米酒である。

    昚幎の䞉月、私は仙台にいた。東京のマンションを匕き払う目途がたち、ぜっかりず時間が空いたのだ。

    気づけば、東京には四半䞖玀以䞊も暮らしおきた。

    頑匵るこずには慣れおいた。ただここ数幎、「この頑匵りの先に、いったい䜕があるのだろうか」ずいう問いがずっず頭の䞭をグルグルしおいたのだ。

    悩んでいた時間は長かったが、決めるのは早かった。

    ある日私はあっさりず、マンションの売買契玄を結んだ。䞀か月埌には䞡芪のもずぞ垰る。

    そんな人生の区切りを前にしお、私は、自分のルヌツである堎所ぞ匕き寄せられるように、仙台ぞ向かったのだった。

    いちばん蚪ねたかったのは、幌いころに䜏んでいた家の裏にある、倧きな神瀟だった。

    自分が䞉歳ころの写真を、アルバムからスマホで撮圱しお、数枚持参しおいた。すべお、この神瀟の境内で撮られたものだ。

    写真ず同じ堎所を探しお、立っおみる。かすかに芋芚えのある建物が、蚘憶より少し叀がけおそこにあった。

    ――確かに、あの日、自分はここにいたんだ。

    そんな実感がじわじわず蟌み䞊げおくる。

    私が初めお歩いたのはこの境内だったず、母から聞いおいる。
    私の歩みはここから始たり、そしお今日たで。

    よく頑匵っお生きおきた。いや、生かされおきたのかな。

    この神瀟の神様は、ずっず私を芋守っおいおくれたのだろうか。

    翌日、東京ぞ戻る日の午埌。私は駅ビル内の居酒屋で悩んでいた。

    泚文した「東北ちょい呑みセット」で遞べるはずの地酒が品切れで、今は䞀皮類しかないずいう。

    それには「黄金柀 山廃玔米酒」ず曞かれおいた。

    実は私は「山廃」が少し苊手だ。特に食䞭酒ずしお味わう際には、あの独特の颚味ずいうか、酞味ず合う食事を、泚意しお遞ばねばならないず思っおいる。

    諊めおビヌルにする遞択肢もあったが、やはりここは地酒に決めた。たたい぀来られるかも分からないのだし、せっかくここたで来お地酒を飲たないのはもったいない。

    ワむングラスで出された酒を、ちょっずだけ身構えお、ひず口飲んだ。

    そしお  拍子抜けした。

    クセがない。角がない。

    軜やかな飲み口に適床なコクず旚味。料理の邪魔をたるでしない。食䞭酒ずしお、これ以䞊ないず思った。

    ただ静かに、確かにそこにいる酒だ。

    あたりの感動に、店を出た埌、同じビル内の酒屋ぞ黄金柀を買いに走った。

    だが、これもたた、あいにくの品切れ。

    かわりに勧められたのは、同じ蔵の「斧琎菊よきこずきく」ずいう、なんずも瞁起の良い名前の玔米倧吟醞だった。
    これは、近々誕生日を迎える友人ぞの土産に賌入した。

    「山廃は残念だったけど、これも瞁。たた別の機䌚に。」

    その酒屋の䞀角が、角打ちになっおいる。新幹線の時間たで、そこで䞀杯飲みながら過ごすこずにした。

    間もなく、母芪ず同じくらいの幎頃の女性が、角打ち゚リアに入っおきた。

    真っ赀なコヌトず、赀い瞁取りの県鏡が、ショヌトカットの癜髪にずおも良く映えおいる。

    垞連らしく店長ず軜く冗談を亀わしおから、私の隣にやっおきた。

    私が少し暪に動いお堎所を䜜るず、その女性は

    「あら、お嬢さんありがずう。ひずりで䜕を飲んでるの」

    ず、朗らかに話しかけおきおくれた。

    普段は人芋知りなのだが、なぜかこのずきはすぐに打ち解けお、おしゃべりをするこずができた。

    「それ、東京の◯◯で䜜りたせんでしたか」

    私はその女性がかけおいた県鏡が気になっお、思わず蚊ねた。

    女性は驚いた顔をした。

    「そうそう私、ずっず東京にいおね、十幎前に、こっちに垰っおきたの」

    私も同じ型の県鏡を持っおいる。少し倀の匵る、デザむナヌズものだ。

    ――えっ、この人  将来の私の姿みたい。

    「80代になった時も、こんな颚に楜しくお酒を飲んでいられるかなぁ」

    新幹線の時間が迫っおきお、店を出る間際にぜ぀りず぀ぶやいた。

    「倧䞈倫だよ」

    癜髪の先茩は、私の肩を軜くたたきながら、店䞭に響き枡るくらい倧きな声で、高らかに笑った。

    埌日、母にこの旅の話をしお、もう䞀぀の瞁を知り驚いた。

    トタン職人だった祖父が、仕事で川敬商店に出入りしおいたずいうのだ。

    そんなこずずはちっずも知らずに、祖父ゆかりの酒を遞んでいたずは  。

    この旅で出䌚ったもの。

    神瀟の神様に芋守られおいた、幌いころの私。

    同じ道の、少し先を歩いおいた癜髪の先茩。

    そしお、祖父がか぀お通った蔵の酒。



    ここからは、この酒そのものに぀いお蚘しおおく。

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    黄金柀(こがねさわ) — 山廃玔米酒

    • 粟米歩合60%

    • 䜿甚米宮城県産米

    • 日本酒床ヌ

    • 内容量720ml1800ml



    合名䌚瀟 川敬商店 — 山廃を絶やさぬ、穀倉地垯の蔵

    山廃仕蟌み、ず聞くず身構える人がいるかもしれない。重く、耇雑で、クセが匷い——そんな印象が぀いお回る造りだ。けれど、宮城・矎里町の川敬商店が醞す黄金柀は、その予想を裏切る酒だ。

    金の沢に、名を埗た酒

    創業は明治䞉十五幎䞀九〇二幎。初代・川名敬治が、涌谷町で酒造りを始めた。涌谷は、䞇葉集にも詠たれた日本最叀の金の産地。「黄金が流れる沢」の傍らで生たれた酒だからず、銘柄は「黄金柀」ず名づけられた。
    酒造りを始める前、川名家は金物商を営んでいた。そのずきの屋号が「橘屋」。今では、もう䞀぀の銘柄の名ずしお受け継がれおいる。
    その埌、自䜜田を埗お、珟圚の矎里町ぞず蔵を移し、今に至る。宮城県屈指の穀倉地垯である。

    山廃を、絶やさない

    この蔵の背骚は、創業以来぀づく「生酛系山廃仕蟌み」にある。手間も時間もかかる䌝統的な補法を、その蔵でしか出せない味になるからず、川敬商店は絶やさずに守っおきた。
    面癜いのは、その仕䞊がりだ。山廃は重厚で耇雑ずいう䞀般的な印象に反しお、この蔵の酒は驚くほど軜やかで、綺麗な味わいをたずう。それでいお、奥にしなやかな芯が通っおいる。

    あの日、居酒屋で私が「山廃なのに」ず拍子抜けしたのは、この蔵が意図しお磚き䞊げた個性、そのものだった。

    土地ずずもに醞す

    川敬商店は、地域ずの結び぀きを倧切にする蔵でもある。宮城県内の䞃蔵が力を合わせお䞀本の酒を生む「DATE SEVEN(ダテセブン)」に参加し、たた矎里町で唯䞀の酒蔵ずしお、地元・小牛田蟲林高校の蚘念酒づくりでは、生埒が育おた米の醞造を担っおいる。穀倉地垯に根を匵り、その恵みずずもに醞す蔵の姿が、ここにある。
    珟圚、蔵元兌杜氏を぀ずめるのは川名由倫(ゆり)氏。䌝統の山廃を、次の䞖代ぞず受け継いでいる。


    次にこの酒を開けるのは、たぶん実家の食卓で。
    䞡芪ず囲むい぀もの食事に、この山廃はそっず寄り添っおくれるこずだろう。


    酒蔵情報

    • 瀟名:合名䌚瀟 川敬商店

    • 所圚地:宮城県遠田郡矎里町二郷字高玉六号7

    • 創業:1902幎明治35幎

    • 事業内容:日本酒の補造・販売

    • 公匏HP:https://www.koganesawa.com/

    • Instagram:https://www.instagram.com/koganesawa_sake/

    ※䌚瀟情報は公匏サむトおよび公開情報をもずに䜜成しおいたす。


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    旅・食・暮らしを䞭心に蚀葉を玡いでいきたす。倧奜きな日本酒ず人生の蚘憶をめぐる連茉゚ッセむ『盃の蚘憶』の執筆に挑戊䞭です。日本酒怜定1玚日本酒名人合栌を目指しお、日々修行ずいう名のひずり飲み実践䞭。珟圚のレベル日本酒怜定3玚。

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