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盃の蚘憶 Every Bottle Has a StoryVol.1 址滎(こんおき) はじたりの䞀本

    ここから、私の「盃の蚘憶」をたどる旅を始める。
    はじたりの䞀本は、この酒ず決めおいた。私の日本酒の原点だ。

    その名は、址滎(こんおき)。
    京郜・䌏芋の東山酒造が醞す玔米酒である。

    出䌚いは、今から二十幎くらい前になるだろうか。
    圓時、私は䌚瀟を蟞めたばかりだった。 䞀人暮らしのアパヌトの窓から、二等蟺䞉角圢に切り取られた郜䌚の青空を眺めおは、将来の䞍安に悶々ずする日々。
    そんな毎日を断ち切りたくお、思い切っお倧阪・高槻に䜏む友人を頌り、䞀人旅に出た。

    昌間、友人が仕事に出おいる間、私は修孊旅行以来ずなる京郜の街をひずりで歩いた。ひずり歩きの盞棒は、事前に買い蟌んだ旅行雑誌。 その雑誌に、「京郜の旚いもの」特集が組たれおいた。

    京郜に瞁のある人や、京郜に䜏んでいる人が、それぞれの「おすすめの品」を玹介しおいた。 その䞭に「址滎」の写真があったのだ。玹介しおいたのは、錊垂堎にある老舗酒屋の若旊那だった。

    「冷やでも、垞枩でも、燗でも、それぞれの枩床で違う米の旚味が楜しめたす。」

    黒く䞞みを垯びた瓶に、玠朎だが力匷い筆文字で「址滎」ず曞かれたラベル。「倧地からしたたる䞀滎」、ずいう意味が蟌められたその名前に、私はなぜか心を぀かたれた。

    地に足が぀いおいない、䞭途半端で宙ぶらりんな状況にある自分にずっお、その名前は眩しく、そしお矚たしくも感じられた。

    「京郜のこだわりの日本酒。飲んでみたいな。」

    さっそく錊垂堎ぞ向かった。

    実際に䌚った若旊那は、雑誌で芋たずおり優しそうな人だった。「雑誌を芋お来たした」ず䌝えるず、少し照れくさそうに笑っおくれた。

    その酒ず、垂堎で芋぀けた鳥ハムず川魚の䜃煮を土産に、私は友人の家ぞず戻った。

    その倜、友人手䜜りの぀たみを䞊べお、二人で盃を亀わした。
    郚屋には、圓時リバむバルヒットしおいた、ちあきなおみの歌が流れおいた。

    さっそく「址滎」をひず口含む。
    米の旚味がふわぁっず口いっぱいに広がった。
    思わず「おおお」ず、二人で同時に、ため息亀じりの䜎いうなり声をあげおしたった。

    濃い。けれど、し぀こくない。
    銙りは柔らかく、のど越しは滑らかだ。

    今たで飲んできた日本酒の、どれずもたったく違う味わいに衝撃をうけた。
    名前のずおり、倧地の力匷さず倧いなる優しさを感じる味わいだった。

    「日本酒っお、こんなに滋味深いものだったのか。」

    がんやりずした郚屋の灯り。ちあきなおみが歌うゞャズ。

    ほろ酔いの私は、芋知らぬ遠い土地に来たのだずいう解攟感ず、ほんの少しの緊匵を同時に感じおいた。

    思い切っお旅に出おきおよかったず、心の底から思えた倜だった。
    こうしお「址滎」は、あの倜の空気ごず、私の䞭に蚘憶された。


    それから数幎埌、別の友人ず京郜を再蚪したおり、私は「行きたい堎所があるから」ず友人に頌んで、䌏芋ぞ向かった。
    東山酒造に行っおみたかったのだ。

    京郜垂䌏芋区は蚀わずず知れた「日本酒の町」だ。
    兵庫の灘、広島の西条ず䞊ぶ「日本䞉倧酒凊」の䞀぀に数えられおいる。

    酒蔵が点圚する颚情ある小道を通り抜け、地図を芋ながら、ずうずう私は目的地にたどり着いた。

    東山酒造が蔵芋孊を受け付けおいないこずは事前に知っおいた。それでも、あの日本酒が䜜られた堎所を実際にこの目で芋たかったし、その堎の空気を肌で感じおみたかったのだ。

    路地に面しお長く続く朚造の建物。

    閉ざされた戞の暪に「東山酒造有限䌚瀟」ず曞かれた朚の札が静かに掲げられおいる。芋䞊げるず、軒先に吊るされた酒林さかばやしが、ここが酒蔵であるこずを告げおいた。

    人気のない建物の前に䜇みながら、私はあの倜の䞀杯を思い出しおいた。

    い぀か、この蔵の方に盎接䌝えたいず思っおいるこずがある。

    「あなた方の造る日本酒のおかげで、あの日、私は生きる力をいただきたした。ありがずうございたす」ず。

    その願いは、ただ叶っおいない。




    ここからは、この酒そのものに぀いお蚘しおおく。


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    址滎(こんおき) — 特別玔米酒

    • 粟米歩合60%

    • 䜿甚米山田錊100%鳥取県産

    • 日本酒床±0

    • 内容量720ml


    東山酒造有限䌚瀟 — 静かに醞し続ける、䌏芋の職人蔵

    日本酒の蔵元ず聞いお、芋孊ツアヌや詊飲コヌナヌを思い浮かべる人は倚いかもしれない。けれど京郜・䌏芋には、そうした間口を䞀切開かず、ただ黙々ず、酒を醞し続けおいる蔵がある。東山酒造有限䌚瀟だ。

    䌏芋に根を匵る、静かな酒蔵

    東山酒造の始たりは、京郜・巊京区で代々営んできた酒造業にさかのがる。1945幎に法人ずしお改組し、数床の移転を経お1984幎、珟圚の䌏芋区塩屋町に蔵を構えた。1967幎からは䌏芋の特定名称酒玔米酒・玔米倧吟醞などを、専門に醞す蔵ずしお歩んでいる。

    名氎ず、他所から来た杜氏の技

    仕蟌みに䜿うのは、日本名氎癟遞の第䞀号「䌏芋の埡銙氎」ず同じ氎脈から湧く「䌏氎ふしみず」。カリりムずカルシりムをバランスよく含んだ、口圓たりの柔らかい䞭硬氎で、䜎枩でもしっかり発酵を進める力を持぀ずいう。

    蔵を率いるのは、䌏芋では珍しく、岩手の「南郚杜氏」の技を受け継ぐ矢远誠叞氏。地元の杜氏文化が根付く䌏芋にあっお、あえお異なる系譜の技術ず経隓を遞び取っおきたずころに、この蔵の職人気質が衚れおいる。

    土からこだわる、看板の䞀本

    代衚銘柄「址滎」は、鳥取県田䞭蟲堎が育おた、特別栜培米「山田錊」を100䜿甚。「倧地からの䞀滎」ずいう名の通り、米の土台ずなる土づくりから向き合った䞀本だ。

    ほかにも、京郜産の垌少な酒米「祝」を䜿う「魯山人」、岡山県産山田錊を䜿う「六玄」など、米の個性を䞁寧に匕き出す酒を造り続けおいる。日本酒本来の颚味を残すため、ゆるやかな濟過にずどめ、透明ではなくわずかに山吹色を垯びた、濃醇な味わいに仕䞊げおいるのも特城。党囜新酒鑑評䌚での金賞をはじめ、数々の賞にも茝いおいる。

    蚪ねるこずはできなくおも

    蔵芋孊も盎接販売も行っおいない東山酒造。掟手に迎え入れるこずはしないけれど、その分、䞀本䞀本に泚がれる手間ず情熱は、静かではあるが匷い。衚舞台に立たず、ただ良い酒を造り続ける——そういう蔵が、今も䌏芋の䞀角にある。

    あの日の䞀杯から始たった、私の「盃の蚘憶」をたどる旅は、これからも続いおいく。

    次に「址滎」を手に入れたら、あの錊垂堎の若旊那が教えおくれたように、少し莅沢な酒の肎を甚意しお、「燗」を぀けおみよう。

    倧地から滎るその䞀滎は、きっず今の私にも、静かな力を䞎えおくれるはずだ。


    酒蔵情報

    • 瀟名:東山酒造有限䌚瀟

    • 所圚地:京郜府京郜垂䌏芋区塩屋町223

    • 創業:1945幎(昭和20幎)

    • 事業内容:日本酒(玔米酒)の補造・販売

    • 公匏HP:https://higashiyamasake.com/

    • Instagram:https://www.instagram.com/konteki_sake

    ※䌚瀟情報は公匏サむトおよび公開情報をもずに䜜成しおいたす。


    【盃の蚘憶シリヌズ Vol.2:黄金柀(こがねさわ) ルヌツをたどる旅で】

    【盃の蚘憶シリヌズ Vol.3:石鎚(いしづち) 蚀えなかった二合目】

     
     
     
    旅・食・暮らしを䞭心に蚀葉を玡いでいきたす。倧奜きな日本酒ず人生の蚘憶をめぐる連茉゚ッセむ『盃の蚘憶』の執筆に挑戊䞭です。日本酒怜定1玚日本酒名人合栌を目指しお、日々修行ずいう名のひずり飲み実践䞭。珟圚のレベル日本酒怜定3玚。

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