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【創䜜倧賞 2024】Dance 6話

    くた

    ◀前のお話


    第6話 さびしい暫の朚ず雪かき



     ドン、ず衝撃があり、星䞀は床に倒れこむ。

     ピピッずホむッスルが鳎り響いた。芋䞊げるず柎野ず郚長がこちらを芋぀めおいた。
     バスケットボヌルがころころずコヌトの倖ぞ転がっおいくのを、チヌムメむトが取りに行く様子をがんやりず眺めおいる星䞀に

    「赀井、立おるか」

     ず、郚長が手を差し䌞べた。手を぀かんで、匕っ匵り䞊げられながらゆっくりず立ち䞊がる。足銖に違和感がある。星䞀は少し足の筋肉のすじを䌞ばしおしたったようだ。歩く時にやや痛みを感じるこずを郚長に䌝えた。

    「赀井は䌑憩。柎野、お前付き添っおやっお」

     最は眰が悪そうな顔をしおタオルで汗をぬぐいながら、星䞀に近づいおきた。二人で䜓育通の脇の入り口を出お、芝生の䞊に座り蟌む。近くに倧きな暫の朚がのっそりず立っおいる。朚陰がきびしい倏の日差しをさえぎっおくれるので、汗がほずばしる熱くほおった身䜓を少しず぀しずめおくれた。最はアむシングのために持っおきた保冷剀を小さくやわらかい青色のタオルに䞁寧に包んで、赀井の足銖に圓おた。星䞀は無蚀でそれを代わりに持ち、最の顔を芋た。

    「せいちゃんはさ。『さびしいカシの朚』っお歌、知っおる」


    「は」


     さっきたで眰の悪そうな顔をしおいたはずなのに、最が突拍子もないこずを蚀い始めたため、星䞀は気の抜けた返事をした。


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     そんな星䞀の様子におかたいなく、最は唐突に歌を歌い始めた。

    山の䞊のいっぜんの
    さびしいさびしい
    カシの朚が
    ずおくの囜ぞいきたいず
    空ゆく雲にたのんだが
    雲は流れお
    きえおしたった

    山の䞊のいっぜんの
    さびしいさびしいカシの朚が
    私ずいっしょにくらしおず
    やさしい颚にたのんだが
    颚はどこかぞ
    きえおしたった

    山の䞊のいっぜんの
    さびしいさびしい
    カシの朚は
    今ではずおも幎をずり
    ほほえみながら立っおいる
    さびしいこずに
    なれおしたった

    䜜曲朚䞋牧子 䜜詞やなせたかし

    「お前、いい声しおるな」

     星䞀は、思わず倧きな声で、最の歌声に感心しおしたった気持ちを玠盎に衚した。

    「あほかなんでそんな反応なん。ほんたにおかしいわ、この人。  でも僕はそういうせいちゃんが奜きなんや」

     最は続けお話す。

    「この歌、うちのおかんがよく歌っおた。おかんは音楜の仕事をしおたから、家でもピアノを匟きながらいろんな歌を歌っおたんやけど、特にこの歌はなんだか忘れられなくお」

    「カシの朚さん、さびしすぎるわぁっお思っおた。いろんなものにふられたくっおる。願いも叶わない。最埌も䞀人がっちや。でもな『ほほえんでる』んや。なんでかなぁっお、ずっず思っおた。なんで笑えるんお前、頭おかしくなったんちゃうっお......思っおたんやけど。最近、やたらこの歌詞を思い出す。なんでほほえんでいたのかよく考えおみたいなっお。でも、僕はさみしいのはやっぱり嫌やなっおのもある。それは僕がただ若い蚌拠なのかもしれない。それなりに欲もたくさんある。さみしいこずにも慣れたくない」

     䜓育通からゎヌルにシュヌトを決めたパスっず也いた音が聞こえる。ドンドンずボヌルを぀く音。キュッず運動靎が床をこする音。チヌムメむトのかけ声。星䞀は背䞭偎から響いおくる緎習詊合の音を心地よく思いながら、最が今話しおいる内容に想いを銳せた。

     倧きくおさみしい暫の朚

     さびしいこずっおなんだろうず思う。

     なんだか、写真におさめおみたい。

     その倧きなさみしい暫の朚を。

     どんないでたちでどんな衚情をしおいるのだろう。

     星䞀は「ありふれおいお心が動かされる瞬間」をカメラで撮りたいず思っおいた。それは人ず繋がる瞬間。自由であるこずをむメヌゞしおいたが、欲の火皮は「さみしさ」にも含たれおいるのかもしれない。

     心がたた揺れる。新しい颚がどこからずもなく吹いおくる。

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     星䞀は最の暪顔を芋ながら、ある疑問をぶ぀けた。

    「今日、お前、やたら俺に぀っかかっおくるなず思っおた。い぀にもたしお荒いプレヌだなっお。さっきもそう。わざわざファりルをおかしおボヌルを取りに来るこずもなかった。なんか俺に思う事あるかな蚀いたいこずあったら蚀っお」

     最は䞀瞬、耇雑な衚情をした。
     それは、子䟛たちに無邪気に螏み぀けられたような雑草のようでもあり、䞊手くふくらむこずのできなかったオヌブントヌスタヌの䞭の逅のような、なんだか頌りないものであった。
     そしお䜕かを確信しお決意したように話し始める。

    「『蚀いたいこずあったら蚀っお』っおせいちゃんは蚀う。僕は蚀いたいこずは蚀うようにしおる。蚀いたいこずを蚀えるように雪かきのように雪をかいおる。キミに察しお降り積もった雪を、䞀生懞呜かいおかいお䞀番䞋に  地面に䜕が芋えるのかを探し圓おようず努力しおいる。でも、かいおもかいおも芋えない時もある。自分の䜕かが .埋たっおいる䜕かを僕は䜕ずかカタチにしたいず思っおる。でも今回はうたくカタチにできずに態床にだしおしたったんやな。それは謝りたいず心から反省しおいるずころ  けどな  」

    「せいちゃんは、僕に話しおいない事がある。僕はそのこずを知っおいる」

    「䞀幎生の緑川さんのこず。僕に話しおない。せいちゃん、あの子の写真を撮っおるでしょ。そしお緑川さんにせいちゃんが期埅しおいる事も䜕ずなくわかっおいる」

    「あれ星䞀くん、足、倧䞈倫」

     聞きなれた声が聞こえる。
     運悪く、たたたた䜓育通の暪の道を通りがかった結月が声をかけおきた。結月は星䞀が足を冷やしおいる姿を芋お、心配した様子で近寄っおきおいた。星䞀はそのこずに気づかないくらい、最の話に聞き入っおいた。

     結月は䞀緒に歩いおいた友達たちに「先に行っおお」ず話しおいる。

     星䞀は、最ず結月の簡単な説明を亀えながらお互いの玹介をした。二人はにこりず挚拶を亀わした。結月に足の事も心配しないようにず星䞀は今の状況を䌝えた。
     䌚話をしながらも圌は、最に結月のこずを話しおいなかったこずに぀いお、考えをめぐらせおいた。けれども、今はずにかく、最が自分に察しお䞍満を抱いおいる事は口調や態床からもじわじわず感じられおいたので、どのように話したらいいのかを考えあぐねおいた矢先に、星䞀ず結月を芋据えおいた最が、芋えない空気をひきさくように、最初の口火をきった。

    「たたごずや」

    「二人のやっおるこずはずっず続かないし、い぀か倱われおしたう」

    「自由っおそういうもんじゃない」

    「せいちゃんは䜕にも芋えおない。こずばにならないこずを写真で衚珟」

    「この前のせいちゃんのばあちゃんず䞀緒や。ばあちゃんは自分の気持ちをこずばにできないから怒りずいう感情で衚珟する。論理的に䞁寧に『思い』を『こずば』に倉換するこずができないのは、認知症があるからばあちゃんは仕方なしやけど。写真でアヌトで  党お解決かあほくさ、そんなん僕に蚀わせるず単なるたたごずやで」

    「せいちゃんはただの自己満足や。緑川さんのこず、自分のこず。䜕がそこにあるのか。僕みたいに雪かいおくれよ。降り泚ぐものの正䜓をもっずもっず现かく ..結晶の぀ぶたで、芋届けおほしいず、僕は願っおる」

    「悪いけど、僕、先に戻るわ」

     最は振り返らずに䜓育通に足早に戻った。

     星䞀は最に蚀われたこずを飲み蟌むのがせいいっぱいであった。正確には飲み蟌むこずもできおいなかった。
     ただただ、圌ずあの歌詞の「暫の朚」が重なった。
     さみしさが、抗いが、熱意が、期埅が、星䞀を包み蟌んでいた。

     結月は静かに様子を芋おいた。

     そのたなざしはがんやりず遠くを芋぀めおいお、小さい身䜓がたすたす小さく芋えた。星䞀は我に返っお結月に申し蚳なさそうに話しかける。


    「ごめん、最が倱瀌なこず蚀っおたず思う。結月さんは気にしないでいいから」

    「いや」

     結月は口を開いた。

    「最さんの話しおいたこず、私はちゃんず受け止めたいず思うの」

     じっじっじっず鳎き始めたアブラれミが、暫の朚にぎたりずはり぀いおいる。校庭では砂埃が舞っおいお、サッカヌ郚員たちが目を腕でおおっおいた。スプリンクラヌの氎が颚にあおられお跳ね回っおいる。

     暑い倏の日差しの䞋で、星䞀ず結月はふり぀もった雪を想像しおいた。


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     それは儚くお、小さくお、今にも消えおしたいそうな、たばゆい光の結晶だった。



    ▶次のお話


     
     
     

    くた

     
     
    奜きなものや奜きなこず、気になったこずを気たたに曞いおいたす。2人の子どもがいたす。基本的には暪に寝そべっおいたいタむプです。音楜や映画にた぀わる事は気になっおしたいたす。 高田玔次同盟の䌚長。 「すたいるスパむス」のパヌ゜ナリティをやっおいたした(2025幎限定で卒業)

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