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Photo bylithe_dog480

白い紫陽花(掌編小説)

    夜明けの雨音で目が覚めた。

    布団から出ると、梅雨時の湿気がまとわりついてくる。

    「今日も雨か」

    気怠い体をおして外に出た。

    少し歩くと、思い出の小径に出た。

    優子と歩いた小径だ。

    小雨降る中、ピンクの紫陽花が両側で揺れている。

    「この紫陽花の花言葉って知ってる?」

    小径を通るたびに、優子は言った。

    「さあ」と言う僕に、「強い愛情なんだって」と言って、恥ずかしそうに笑った。

    「紫陽花って、移り気とか浮気とかの花言葉じゃないの?」と聞くと、

    「和気あいあいっていうのもあるよ。それにピンクだから特別なの」と言って口を尖らせた。

    そっぽを向く頭を軽くポンポンして、「怒るな、怒るな」と笑いあった。

    優子がいなくなったのは去年の今頃のことだ。

    交通事故だった。

    1年経っても、優子の抜けた穴は埋まらない。

    体を湿らす五月雨が、穴から滑り落ちて小径へ逃げていく。

    できた水たまりは、いつまでも僕を映している。

    僕の心は乾いたままだ。

    ふと、気配を感じた。

    隣に優子がいる。笑いながら僕を見ている。

    「優子」

    僕は手を伸ばしたがさわれない、すぐ近くにいるのに。

    僕はまた歩き始めた。優子も並んでついてきた。

    優子が何か話しかけているが、声が聞こえない。

    聞き取ろうと顔を近づけると、紫陽花を指さした。

    去年と同じピンクの紫陽花。

    後ろには、色の抜けた白の紫陽花が続いていた。

    「あれ?」確か、ここはピンク色が続いていたはずだった。

    見ると、僕たちが通り過ぎた端から、色が抜けていた。

    優子を見ると、相変わらず僕に何か話しかけている。

    「頑張って」

    優子の口は、笑いながらそう動いていた。

    そして気配が消えた。

    いつのまにか、雨はやんでいた。

    雲の間に青空が見え、覗いた太陽が水たまりに映る。

    小径の紫陽花は、全て色が抜け白く変わっていた。

    白い紫陽花の花言葉は「一途な愛情」。

    優子の思いは受け取った。

    僕は、空を見上げた。

    雲はほぼなくなり、青空が広がっていた。

    僕は、空に向かって背伸びをした。


     
     
    主に小説やエッセイを載せていきます。 クスっと笑える話やじんわり沁みる物語を紡いでいきます。 今年は作家を目指します。公募への挑戦もしていきます。 自分も直面するシニアの暮らしについて、AIを使って書いていきます。

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