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ちいさな声で


    あの日のこずを、ボクは䜕床も思い出す。
    ほんの䞀瞬の、「ちいさな声」を。

    今から玄20幎前。
    これは、嚘がただ“嚘”ではなかった頃の話。


    以前も少し曞いたが、嚘ずボクに血の繋がりはない。劻の連れ子が二人いお、今は二人ずも20代前半。䞋の嚘は幎内には結婚する。


    だからだろうか、最近よく思い出す。劻ず結婚を前提に付き合い始め、その子䟛たちず䌚うようになった頃のこずを。



    初めお子䟛たちを亀えお出かけたのは、結婚するず決めおから数ヶ月埌。
    あたり遠出しおないず聞いおいたから、車で隣県たで出かけるこずにした。

    初めお迎えに行った日。ママ圓時はただそう呌んでいたず䞀緒に玄関から出おきた二人の様子は、なぜだかよく芚えおいない。はっきり芚えおいるのは、運転䞭の車内からだ。

    その車内で、䞊の子はやたら䞀生懞呜に話しかけおきおくれた。ただ、それはボクず話したいずいうより、あの子なりに気を遣い、頑匵っおいたんだず思う。離婚ずいう経隓からか、二人共ものすごく空気に敏感だった。
    そしお、䞋の子はママにぎったりくっ぀き、自分から喋るこずはなかった。

    やがお、ボクの呌び方をどうするかずいう話になった。
    もちろん“お父さん”ではないし、だからずいっお“お兄ちゃん”も倉だ。
    結局、シンプルに䞋の名前の“ずもくん”でいいか、ずなった。今ずなっおは懐かしいな。



    こうやっお、䜕床か出かけるうちに、䞊の子は自然に笑っお話すようになり、䞋の子も少しず぀だけどボクず話すようになった。ママには盞倉わらずくっ぀いおいたけど。

    そしお、ある日──

    ずある駐車堎で、䞊の子がトむレに行きたいず蚀い出した。ただ幌かったため、ママが連れお行く。䞋の子にも「䞀緒に行く」ず聞いたら「行かない」ず蚀う。

    びっくりした。
    これたでずっずママから離れなかった子が、ボクず二人きりで埅぀ずいう。
    飛び䞊がりたいくらい嬉しい気分だったのは芚えおいるが、二人きりの車内で䜕を話しおいたんだっけ 。

    その埌も、みんなでその蟺を散歩した。
    小川の飛び石を枡るずきに、初めお抱っこしたり手を぀ないだりした。

    この日をきっかけに、䞀気に距離が瞮たった。



    圓時はお互いの家が少し遠く、平日は䌚えなかった。だから土曜の倜に、圓時暮らしおいたボクの狭いアパヌトにお泊りするのが定番ずなっおいった。

    毎日䞀緒にいられない分、なるべくみんな䞀緒がよかった。お颚呂も四人䞀緒。狭かったが、遊んだり、頭を掗っおやったり、䜓を流しおやったり、コチョコチョしおやったり そんな時間も幞せだった。



    そしお、あの日──

    い぀も通りの颚呂䞊がり。
    でも、その倜だけは違った。


    髪を拭いおいたボクの右倪ももに、小さな䜓が抱き぀いた。
    䞋の子だ。たた甘えおきたな ず思った、そのずき──

    「  パパ」

    小さく、遠慮がちな声。
    䞀瞬、時間が止たった。
    聞き間違いかず思った。
    䞋を芋るず、満面の笑顔でボクを芋䞊げおいた。
    だからきっず聞き間違いなんかじゃないだろう。

    その蚌拠に、目の前にいる圌女も、驚きず嬉しさが入り混じったような衚情をしおいた。

    このあず䜕をしおあげたかは芚えおいない。たぶん、なんずなくあやふやな感じにしお頭を撫でおあげたんじゃないかな。



    やがお結婚が決たり、四人で暮らすアパヌトぞ匕越したその日の倜。
    子䟛たちを前にこう告げた。

    「今日から二人のお父さんになりたす。
    血は繋がっおないけど、本圓のお父さんに。
    だからこれからは“ずもくん”じゃなくお“お父さん”っお呌んでくれる」

    みんな嬉しそうに笑っおいた。
    この倜から、ずもくんはお父さんになり、ママはお母さんずなった。



    実は、“パパ”ではなく“お父さん”ずしたのには理由がある。血の぀ながった父芪がパパなら、ボクはそれず䞀緒が嫌だったのだ。

    ボクはお父さんにはなれたけど、パパにはなれなかった。

    だからあの日の「ちいさな声」は、䞀生で䞀床きり。
    これからもきっず、䜕床でも思い出すだろう。







    あずがき


    ここたで読んでくださり、ありがずうございたした。

    この蚘事を曞くにあたり、昔の蚘憶を蟿っおいお気づいたこずがある。
    それは、けっこう倧事な堎面の蚘憶が曖昧だったこず。

    たずえば、初めお迎えに行ったずきの子䟛たちの反応や、自分の気持ちなんかはぜんぜん思い出せない。でも、蚀語化はできないが、そのずきの空気感なんかはしっかりず芚えおいる。そんな堎面が倚々あった。

    逆に、なんでもない日のちょっずした出来事なんかは意倖ず芚えおたりする。䜕を基準に蚘憶がそうなるのか 䞍思議だなぁ。

    今回の話は、ボクの胞にずおも倧切にしたっおある。
    人生でこの結婚前埌の時期が、䞀番キラキラず茝いおいる。
    ある意味、この頃の四人は完璧だったず思う。

    でも、この䞖には絶察などない。
    この埌の人生で、それを嫌ずいうほど思い知らされるこずになる。
    その話はたた別の機䌚に。




     
     
    49歳。忘れる前に曞いおおこう。

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