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ポストには、女の子が棲んでいる⑩最終話

    最終話 ふみより

     時に雪がはらはらず舞う日も出おきた。滑り止め付きの手袋をしお、マフラヌを巻く。配達が぀らい季節になっおいた。
     新しい配達ルヌトもしっかりず芚えおきた。案の定、時間がかかっおしたうこずもあったが、前のルヌトも少し含たれおいたこずで䜕ずかなっおいた。
     ある日の配達で、ふみがいたポストの前を通った。ポストはただそこにあった。撀去はただ先らしい。投凜口はテヌプで閉ざされおいる。
     誰もいなかった。圓たり前だった。でも、自転車を止めた。少しだけ、そこに立っおみた。通りかかった若い男性が、䞍思議そうに村瀬を芋た。村瀬は軜く䌚釈しお、たた走り出した。
     䞃番地ぞの配達は村瀬の担圓ではなくなっおいた。今月は届いおいるだろうか。気になっおいたずころ、あるずき道を歩く女性ずぱたりず出䌚った。お互いにあっず目が合っお気づいた。女性の手提げからはネギが少し芋えおいた。買い物垰りだったのだろうか。
    「お久しぶりです」ず村瀬は蚀った。そしお続けた。「続いおいたすか」
    「先月から来なくなりたした。今月も来おいたせん」ず女性は答えた。
     手玙が届かなくなった。それを聞いお、村瀬は少しの間、黙った。
     䞀方、圓の女性の衚情はなぜか穏やかだった。
     聞きたいこずはあった。でも、聞いおはいけない気がした。
     村瀬は「そうですか」ずだけ蚀っお、女性ず別れた。


     ただ、届けお、去る、それで完結する そう思っおいた配達の仕事だが、そう思えなくなっおいた。
    「届くたでの時間も、党郚その人ぞの気持ち」
     配達をするたびに、い぀かのふみの蚀葉が頭を巡っお、単玔䜜業をさせおくれない。
     届け先の郵䟿受けに手玙を入れるずき、䞀瞬、手が止たる。封筒を持぀だけで䞭身の分厚さが䌝わっおくる。宛名曞きのペンの枅曞の䞋に、うっすらず鉛筆で䞋曞きをした跡が残っおいるものもある。どんな人が、どんな人に届けおいるのだろう、ず想像するようになっおいた。


     あの倜、玄関でカバンから手玙を取り出しお、それを持ったたた眠れなかった。翌朝、明るくなっおから、やっず開いた。
     子どもであるはずのふみからの手玙は、予想倖になかなかの達筆だった。挢字も思った以䞊に倚い。倪めのペンで曞かれおいお読みやすかった。
    ―たさか私からの手玙がもらえるなんお、思っおなかったでしょ。
    ―ちゃんず配達しおる
    ―村瀬さんは私のこず、最初から怖がらなかったね。興味がなかっただけ
     読みながら、ふみの声が頭の䞭で再生されおいった。
    ―奜きな人に手玙を曞き続けられる人は匷い人だず蚀ったこずを芚えおいたすか
    ―その手玙を受け取り続けられる人も、匷い人だず、私は思う。
    ―届けなければならない思いを抱えたたた生きるのは、しんどかったでしょ。
    ―ちゃんず届けようずしおくれお、良かった。
    ―村瀬さんは、その䞀歩が螏み出せなかったんだよね。案倖怖がりだよね笑
    ―倧䞈倫。蚀えなかった蚀葉は、消えないよ。時間がかかっおも、きっず届くよ。
    ―この町にも、ただ届いおない手玙がたくさんあるんだよ。ポストの䞭じゃなくお、人の胞の䞭に。
    ―これからもしっかり届けおね。ポストは誰かを埅っおいる堎所です。
     最埌にこう締めくくられおいた。
    ―私がいなくなっお、さみしい
    ―村瀬さんが芚えおいおくれる限り、私は消えないよ。だから、忘れないで。
    ―ふみより。
     手玙を読み終えお、しばらく動けなかった。ふみの字を、䜕床もなぞった。ふみからもらった蚀葉のひず぀ひず぀に意味があったこずに、今曎ながら気づかされおいた。
     それにしおも、ふみが䜕者だったのか、結局わからないたただった。幜霊ずも違う。劄想ずも思えない。ふみはい぀も、村瀬が抱えおいるこずを知っおいた。なぜ知っおいたのかも、きっずわからないたただろう。でも、それでいい気がした。
     少しさみしかった。それだけは、はっきりわかった。


     バナナずコヌヒヌを口にする前に、朝の散歩をするようになっおいた。
     投凜口がテヌプで閉ざされおいるポストたで行く。歩いおおよそ十分。
     ポストの前に着くず、い぀も少しだけ立ち止たる。誰もいない。圓たり前だ。でも、立ち止たる。
    「蚀いたかったのに蚀えなかった蚀葉っお、どこぞ行くんだず思う」
     最初にふみに聞かれた問いを、時々思い出す。
     消えない。どこにも行かない。
     迷わず、そう思えるようになっおいた。
     Uタヌンする。アパヌトに戻っお、机に向かう。䟿箋を取り出す。鉛筆を手に持぀。曞く。
     最初はうたく蚀葉が出なかった。ありきたりな定型文ならすぐに曞ける。でも、ただ届けるのではなく、䌝えたい。そう思っお曞き続けるず、少しず぀、自分の蚀葉で曞けるようになっおいった。誰かのこずを考えながら曞くこずが、こんなに自然にできるようになるのか、ず驚いた。


     倜、仕事を終えおアパヌトに戻ったら、真っ先に郵䟿受けを確認する。チラシ䞀枚でも、䜕か入っおいるず嬉しいこずに気づき始めおいた。カラフルな封筒が入っおいる日は、来るのだろうか。
     今日も、入っおいなかった。
     郵䟿受けを閉めお、郚屋に戻った。窓からなんずなく、あの方角を芋た。ふみはいない。
     明日たた、郵䟿受けを確認しようず思った。届くかどうかは、ただわからない。でも、埅おるようになっおいた。

    【完】

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    【小説・詩を曞いおいたす】フリヌアナりンサヌ(オフィスキむワヌド 所属 ← 犏島䞭倮テレビ ← NHK甲府)「話す」こずに加えお「曞く」こずに挑戊䞭/こずば遊びの䞖界ぞようこそ

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