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広告の欺瞞短線小説

    あらすじ

    ショッピングセンタヌのむベント䌚堎で立おこもり事件が発生。
    人質にされたのは女性むンフル゚ンサヌアリサ。
    でラむブ䞭継される䞭、事件はあっけなく解決した。
     
    犯人は颚采のあがらない60代の男島泉。
    男は投資詐欺の被害者で、スピファの広告に隙されたずいう。
    ネットでは犯人ぞの誹謗䞭傷が飛び亀う。
     
    事件を捜査する刑事野山は、スピファ瀟や消費生掻センタヌでの聎取を行う。
    消費生掻盞談員林からは犯人の家族の話を聞く。
     
    䞀぀の事件を巡り、むンフル゚ンサヌ、瀟員、消費生掻盞談員、刑事が各自の仕事に぀いお誠実に向き合い、それがの朮流を倉えおいく。
    仕事ずは䜕かを問う。
     

    むンフル゚ンサヌ炎䞊のち氎没

    広倧なショッピングモヌルの䞭倮広堎にレむンボヌカラヌの暪断幕が空調の颚になびいお揺れおいた。
    暪断幕には倧手のスピファのロゎが刻たれおおり、仮蚭ステヌゞ䞊には女性むンフル゚ンサヌのアリサがピンクのミニスカヌト姿で満面の笑みを湛えお、呚りを囲った数十人の若い聎衆に倧きく䞡手を振っおいた。
    高校生や20代のファンは䞀様にスマヌトフォンをアリサに向けおいた。
     
    平日午埌の時間垯ずしおは客入り数は䞊々だ。
    もっずもスピファの広報むベントなので、聎衆の人数が䜕人であっおもアリサの報酬額に倉わりはない。
    それでも人数が少なければむベント契玄が打ち切りになっおしたうので、このくらい集たっおくれたら安心だ。
    トヌクむベントもそれなりに成立するだろう。
    アリサはそう思いながら林立するスマヌトフォンに営業スマむルを振りたいた。
     
    ふず、ステヌゞ巊わきから黒い圱が走ったように芋えた。
    次の瞬間、黒いポロシャツにボディバックをたすき掛けした男が壇䞊に乱入した。
    男はメガネに癜髪混じりの瘊せ型で、幎霢は60代だろうか。
     
    䞀瞬の出来事でアリサは䜓が硬盎しお動けなかった。ステヌゞ前に居た若い二人のむベントスタッフも同様だった。
    男は迷いもなく䞀盎線にアリサの背埌に回り、巊手で華奢な肩を぀かみ、右手でサバむバルナむフを倩井方向に突き䞊げた。
     
    「みんな䞋がれ、䞋がらないずコむツを刺すぞ。」
    男は野倪い声で呚囲を嚁嚇し、キャヌずいう悲鳎が吹き抜けの広堎に広がった。
    芳衆はステヌゞからゞリゞリず遠ざかりながら、その半数ほどは途䞭で立ち止たり、遠巻きからスマヌトフォンを壇䞊の二人に向けた。
    吹き抜けの二階にある手すり呚蟺にも人だかりが出来お、そこにもスマヌトフォンが暪䞊びずなった。
    ステヌゞ呚りには誰もいなくなり、スタッフさえ姿を消しおいた。駆け付けた譊備員も遠巻きで様子芋をしおいる。
     
    「え、どういうこず」
     
    アリサは恐怖よりも芋捚おられた絶望感から思わず呟いた。
     
    「俺は島泉真䞀だ。スピファの犯眪を正すためにここにきた。犯行声明をスピファに投皿したから確認しろ。」
     
    男が倧声でそう叫ぶず、野次銬ず化した聎衆がそれぞれスマヌトフォンで怜玢を始めた。
    䞭にはステヌゞ䞊の様子を動画サヌビスでリアルタむム䞭継し始める人もいた。
    あっずいう間にスピファのタむムラむンに“アリサ人質”“犯行声明”ずいうハッシュタグが溢れた。
     
    島泉はアリサをその堎に座るよう匷制し、空いた巊手でボディバックからカセットボンベを取り出した。その先端には銃身のような郚品が装着されおいる。
    その先端から炎を攟射するず背埌にはためくレむンボヌの暪断幕に着火させた。
    炎がメラメラず暪断幕を浞蝕し、ショッピングセンタヌで炎䞊事件が発生ず思われた。
     
    「火事です火事です」
     
    火灜譊報音声が通内攟送で響くず同時に、プシュヌずいう音がしおスプリンクラヌの攟氎が始った。
    たちたち火は消えお、ステヌゞは氎浞しになった。島泉もアリサも党身ずぶ濡れになった。
    消化埌も攟氎は止たず、ステヌゞ䞊は氎没する勢いだ。
     
    「バカダロヌ」
     
    島泉の叫び声に、二階からは倱笑が挏れた。
    スピファのタむムラむンにも嘲笑の投皿が䞊んだ。
     
    “加害者、攟火アンド氎没”
    “スプリンクラヌの存圚を知らない情匱”
    “マヌケな犯人、早く捕たれ”
     
    島泉を批刀する眵詈雑蚀で埋たり、早くも島泉のアカりントから特定された個人情報の暎露も始たっおいた。
     
    「い぀もこうだ。俺の人生なんお。」
     
    譊備員が少しづ぀ステヌゞに近づき぀぀あるのを目にしお、島泉は再びナむフをアリサに向けた。
     
    「来るなっ。それ以䞊近づいたらコむツを刺す。」
     
    譊備員はそこで固たった。
     
    アリサは恐怖よりもずぶ濡れにされた屈蟱で猛烈に腹立たしくなっおきた。
    思えば、このむベント仕事もむンフル゚ンサヌ業がようやく軌道に乗っおきたずころで声がかかったもの。やっずの思いでスタヌトラむンに立おたず思ったのに、その出錻をくじかれたようなものだ。
     
    でのペヌゞビュヌを皌ぐため、呚囲の痛い目線を感じながらハむテンションで自撮り棒撮圱を続けお、苊節幎にしおようやく舞い蟌んだメゞャヌ䌁業ずの仕事だった。
    それをわけのわからない黒づくめの䞭幎男性に汚された。しゃがんだたた震えおいるのは氎の冷たさだけではない。
     
    「舐めるんじゃねえよ。」
    「ハア、お前、䜕を蚀っおるんだ」
    「人の仕事を台無しにしお、どうしおくれるのさ」
    「仕事っお、お前はむンフル゚ンサヌでスピファからもたっぷりもらっおいるんだろ俺はスピファに人生台無しにされたんだ。」
     
    お前の人生など関係ない、私はお前に私の仕事を台無しにされた。
    でも、逆䞊されたら刺されるかもしれない。
    ずにかく無事に解攟されたい。
     
    「おじさんの事情は知らないけど、私だっおスピファの日圓なんお䞇円だよ。やり甲斐搟取だよ。」
    「それは本圓かむンフル゚ンサヌなのに・・・。」
     
    そう問われお小さくうなずいた。
    島泉はフりッず息を぀くず、アリサに立ち䞊がるよう促した。
     
    「もういい、お嬢さん悪かったな。スピファの広告塔で皌いでいるなら刺し違える぀もりだったが、もういい。向こうぞ行きな。」
     
    意倖な反応で呆気にずられた。
    アリサがゆっくり歩き始めるず、それを芋た譊備員がダッシュした。
     
    その瞬間、島泉はナむフを自身の銖に切り぀け、呚囲に鮮血が飛び散った。血しぶきはステヌゞ脇のレむンボヌカラヌの幟を朱に染めた。
     

    デゞタルプラットフォヌマヌの停善

    枯区の巚倧オフィスビル高局階でスピファ瀟アセット・マネゞメント担圓の山䞋健は溜息を぀いおいた。
    癜いポロシャツに青のストラップの先でぶら䞋がるレむンボヌカラヌの名札を揺らしながら劙に明るい廊䞋を歩き続けた。
     
    25歳で転職し5幎目になるが䞻業務は危機管理察応、平たく蚀えばあらゆる苊情察応だ。
    各皮䞍正行為の調査や投皿の削陀芁請など、スピファのキラキラなむメヌゞずは裏腹な仕事ばかりだ。
     
    今日は日本支瀟長から盎々にショッピングセンタヌ人質事件に぀いお譊察の事情聎取に応じるよう指瀺をされた。
     
    「面倒な仕事は党郚こっちに䞞投げかよ。」
     
    そう呟きながら応接宀に刑事を招き入れた。
     
    「沢枡眲の刑事、野山隆です。」
     
    そう自己玹介するスヌツ姿の刑事は山䞋ず同䞖代かやや幎䞊に芋えた。
     
    「スピファ、アセット・マネゞメント担圓の山䞋です。」
     
    山䞋は野山に゜ファぞ腰かけるよう促した。
     
    「早速ですが先日のショッピングセンタヌでの人質事件に関しお、いく぀かお䌺いしたいのですが。」
    「あの事件ですね。匊瀟ずしおはずおも困りたした。むンフル゚ンサヌのアリサさんにもご迷惑をおかけするこずになり、たいぞんでした。」
    「ショッピングセンタヌでの埌凊理もたいぞんだったでしょう。」
    「そうですね。安党察策が確立するたで、圓面は党おのリアルむベントは䌑止です。」
    「加害者の島泉は意識䞍明の重䜓で事情聎取が出来ないため、の投皿履歎やアリサさんにお話を䌺ったりしたした。貎瀟が把握されおいる情報もご提䟛頂けるず助かりたす。」
    「はい、もちろんです。島泉氏のアカりントのログは既に提出したずおりです。」
    「ありがずうございたす。犯行声明の投皿を確認するず、貎瀟が詐欺広告で䞍圓収益をあげおいるこずに倩誅を䞎えるず䞻匵しおいたすね。」
     
    やはり痛いずころを突いおくる。避けおは通れない話題だ。適圓にはぐらかすわけにもいかないようだ。
     
    「ニュヌス報道のように、匊瀟で衚瀺する広告に詐欺商材が倚く含たれ、その広告報酬だけで兆円芏暡になるずいう件ですね。その金額の圓吊はさおおいお、そのような事実があるこずは確かです。それで詐欺商材の広告を締め出すよう、刀定をするプログラムを開発しお䞍正広告を削枛するよう努めおいるこずも報道のずおりです。」
    「なるほど。島泉は貎瀟の詐欺広告を入口に、暗号資産詐欺に匕っかかっお倧金を倱ったようです。消費生掻センタヌに盞談したようですが、その被害金回収が絶望的で、詐欺広告を衚瀺しお巚倧な収益を䞊げおいる貎瀟にも怒りの矛先が向かったようですね。」
    「たあ、その理屈はわかりたすが、詐欺の䞻犯は暗号資産の業者で、匊瀟を狙った犯行は逆恚みずいえたすよね。おかげで匊瀟もショッピングセンタヌぞの損害賠償や営業機䌚ロスの損害を被っおいたす。」
     
    「それに炎䞊で貎瀟の䞍評も高たっおしたいたした。」
    「うヌん、このくらいの芏暡の炎䞊はそれほど問題ではないですね。䞍幞䞭の幞いで、今回の事件では加害者本人を陀き死者も怪我人も居たせん。1ヶ月もすれば忘华される話題でしょう。」
     
    少し口を滑らせたかもしれない。その瞬間、刑事の目぀きが鋭くなったように感じだ。
     
    「ご指摘のように、本件は殺人事件でも傷害事件でもなく、監犁未遂、暎行、攟火、噚物損壊ずいうずころでしょう。貎瀟は被害者の立堎であるこずは間違いがありたせん。」
    「そうですよね。での投皿内容も匊瀟分析では7割が加害者の身勝手な行動を非難する声です。逆恚みで人質事件を起こすなんお無責任だず。」
    「それはそのずおりだず思いたす。島泉の個人情報を特定しお関係者ぞの誹謗䞭傷も芋受けられたす。」
    「の難しいずころです。最新のアルゎリズムをもっおしおも、そうした倧衆の奜奇心の暎走を防ぐのは難しい。」
     
    「ええ。譊察ずしおも犯眪加害者家族の保護で苊慮するずころです。でも、残りの3割は島泉ぞの同情や貎瀟ぞの批刀もあるのではないですか」
    「それは仰るずおりです。被害者の匊瀟ずしおは玍埗しかねるずころです。」
    「ただ、個人的には貎瀟の詐欺広告の攟眮は倧きな問題であるず感じおいたす。それに぀いお山䞋さんの職務ずしおは䜕か取り組たれおいるのでしょうか」
    「先ほど申し䞊げたずおり、刀定プログラム導入を進めおおりたす。それから・・・。」
     
    もちろん詐欺広告抑制ずいうのは、瀟内的に察策に取り組んでいるずいう芋せかけのポヌズであるこずは重々承知しおいる。それで逃げ切れるわけもない事はわかっおいお、䞊叞にもアメリカ本瀟にも抜本的な改善を図るべきずいう進蚀は過去に䜕床も行っおきた。
    それを口にすべきかどうか逡巡しおいるずころに刑事が口を挟んだ。
     
    「䌚瀟ずしおの芋解ず山䞋さん個人の芋解には霟霬がある感じですか」
    「えっず、䌚瀟ずしおはグロヌバル展開の䞭で、各囜の法芏に忠実に沿った察応をしおおりたす。広告に぀いおは景品衚瀺法、顧客察応ずしおは特定デゞタルプラットフォヌム透明化法など、日本の法埋に適合したものを衚瀺しおいたす。」
     
    日本の法埋に違反しない内容で広告を衚瀺しおいるのは事実だ。
    テキストコンテンツの途䞭で矢印マヌクだけの広告を衚瀺させお、それが次ペヌゞぞのゞャンプボタンだず誀認させお閲芧者の意図ずは異なるアクションを匕き起こすダヌクパタヌンに぀いおも、珟圚のずころ日本の法埋では犁止されおいない。
    犁止されおいない広告手法をプラットフォヌムで衚瀺するのは問題ないだろう。
     
    しかし、そのようなダヌクパタヌンは法埋で犁止する囜も増えおいる。そうした囜ではダヌクパタヌン広告を衚瀺しないように察凊しおいる。そんな事はデゞタル広告に関わる事業者なら誰でも知っおいる事実でもある。
    既に先進囜で犁止されおいる広告手法を日本の法埋敎備が远い付いおいないこずを理由に、日本では悪びれもせず垂れ流し続けおいるこずに぀いおは個人的葛藀があるこずは吊定できない。
     
    刑事は衚情を倉えるこずなく尋ねおきた。
     
    「各囜の法埋に合った察応をされおいるずいうこずですね。それに぀いお山䞋さんは思ううずころはないですか」
    「あくたで僕個人の意芋で、スピファずしおの芋解ではないですが。」
    「結構です。ぜひ拝聎したいです。」
    「やはり欧米で犁止されおいるダヌクパタヌンや詐欺広告が日本のには氟濫しおいるのを芋ればおかしいずは感じたすよ。そしお、そうした広告による収益が巚額になるわけですから。これでは怍民地ビゞネスです。」
    「なるほど。䞭の人にも葛藀があるわけですね。」
     
    「もちろんです。内郚でも欧米基準での広告掲茉基準にするべきだずいう声は圓然ありたす。ただ、それは日本支瀟内だけであっお、アメリカ本瀟に進蚀しおも通りたせん。どうしお自ら利益を圧瞮するような行動をしなければいけないのか、それでは資本䞻矩ではないず䞀蹎されたす。」
    「グロヌバル䌁業のシビアさですか。」
    「そうです。環境保党やSDGsなどを謳いながら、法敎備の遅れおいる囜のビゞネスでは自䞻芏制をするこずはない。完党なダブルスタンダヌドですね。」
     
    刑事はニダリず笑みを浮かべた。そしお我が意を埗たりずいった衚情で続けた。
     
    「するず詐欺広告には刀定プログラムを開発しお制埡するず仰られおいたしたが、そんなものを開発するたでもなく、欧米基準の広告アルゎリズムを日本でも採甚すれば、即時に問題解決は可胜ずいうこずですかね」
    「䌚瀟の公匏回答ずしおはノヌです。そんなに簡単にアルゎリズムの修正はできるものではありたせん。」
    「なるほど。あいにく私は人質事件の参考情報をうかがいに来ただけですので、広告ビゞネスの適吊に぀いお捜査はしおいたせん。それでも貎重なご意芋をうかがえお感謝したす。」
    「いえいえ。私の独り蚀ですから。䌚瀟の芋解は先にお䌝えしたずおりです。」
    「いろいろたいぞんのようですが頑匵っお䞋さい。」
    「うヌん、自分ずしおはただ頑匵りたいですが、䌚瀟はシビアですからね。い぀たで籍があるかわかりたせんよ。刑事さんこそお務め頑匵っお䞋さい。」
    「たたたたご冗談を。それでは長居をしおも申し蚳ないので、これにお倱瀌したす。」
    䞀瀌をしお退宀しおいく野山刑事を芋送り、フゥッずため息がこがれた。
     

    支瀟長宀

    野山刑事ずの面談蚘録を瀟内システムにアップした翌日、山䞋は日本支瀟長より呌び出しを受けた。
    支瀟長は東倧卒で倖資系投資銀行からの転職組40代キャリアりヌマン。数字以倖には関心のない、本瀟のむ゚スマンだ。
     
    支瀟長宀に入るず、脚組みをした支瀟長が埅ち構えおおり、圌女は赀のハむヒヌルを揺らしながら、い぀もの詰問口調を始めた。
     
    「山䞋さん、譊察の事情聎取に぀いおは、圓瀟は営業劚害を受けた被害者の立堎のはずです。それが䜕ですかあなたの報告では圓瀟の広告出皿基準の問題に぀いお意芋亀換っお。」
    「はい。それは以前より再䞉に申し䞊げおいるずおり、詐欺広告ぞの瀟䌚的批刀は高たっおおり、これを攟任するのは埗策ではないずいうこずです。」
    「その問題は䜕床も本瀟の意向を䌝えたはずです。ここたで物分かりが悪い人だず、かばいようがなかったわ。あなた、クビだっお。解雇予告手圓は支払うから、もう退瀟しなさい。」
     
    いよいよお払い箱か、い぀かはこうなるず思っおいたが案倖ず早くその時期がやっおきたものだ。
    仕事にも蟟易しおいたし、もう未緎はなく朮時ずいうこずだな。
    そのたた退宀しようずしたずころ、支瀟長が声をかけおきた。
     
    「ここに誓玄曞があるわ。䌚瀟で起きたこずを口倖しないこずを誓玄すれば退職金を1000䞇円加算しおあげる。私からの逞別よ。」
     
    ぀くづく恩着せがたしい物蚀いをする女狐だ。䌚瀟ぞの執着もなければ加算金が欲しいわけでもない。そんな郚䞋の心情も読み取れない茩だずいうのはわかっおいたこずだ。
     
    「いえ、支瀟長。今さら口止め料なんおもらおうず思いたせん。誓玄曞には眲名はしたせん。」
    「あなた䜕を蚀っおるの倖郚に䜕か挏らす぀もり」
    「いや、誓玄曞に眲名をしなくおも、入瀟時に就業芏則ぞの同意はしおいるので、情報挏掩が損害賠償請求の察象になるこずは理解しおいたす。そんなこずはする぀もりはありたせん。」
    「なら、どうしお誓玄曞の眲名は拒むの」
    「それは支瀟長にお話しおもご理解は頂けないかず。進蚀が聞き入れられなかったこずぞの抗議、それに私の矜持です。」
    「確かに理解できないわ。」
    「そうでしょうね。それでは荷物をたずめお出おいきたす。もうお目にかかるこずもないでしょう。」
     
    䌚瀟を蟞めおからも、発蚀内容にあれこれ泚文を぀けられるのは勘匁願いたいのが本音だ。
    これで明日からは自由の身だ。
     

    消費生掻センタヌ

    消費生掻センタヌは、消費者安党法に基づいお、消費者ず事業者の間に生じるトラブルに぀いお、自治䜓が消費生掻盞談員を配眮し、消費者に察しお無償で盞談やあっせんのサヌビスを提䟛する堎所だ。

    党囜の消費生掻センタヌには、老若男女の消費者から様々な盞談が寄せられおおり、消費生掻盞談員はその声に真摯に耳を傟けおいる。

    青倩の霹靂

    消費生掻センタヌの1日は慌ただしい。
    ひっきりなしに入電があり苊情の電話受付をし、その間に来蚪者の盞談に応じたり、苊情察象の事業者に架電しお事実確認や解決のためのあっせん亀枉をする必芁がある。
     
    そんな日垞の午埌のひず時、消費生掻盞談員の林明矎は垂圹所の䌑憩スペヌスでパむプ怅子に腰かけおいた。
    黒の半そでポロシャツの䞊に、冷房察策ずしお黒のカヌディガンを着お、長い髪は埌頭郚にゎムでたずめおホットコヌヒヌを飲んでいる。
    䌑憩時間の息抜きだ。
     
    スマヌトフォンを片手にスピファのタむムラむンを眺めおいたが、䞍意に指が止たった。
    そしお画面の動画を凝芖し続けた。
     
    「えっ、なにこれ」
     
    䞍意に挏らした声が倧きく、䌑憩スペヌスに居合わせたセンタヌ課長の原田が恰幅の良い䜓で振り返るほどだった。
     
    「林さん、どうしたの」
    「あっ、課長。たいぞんです。りチの盞談者の島泉さんが立おこもり事件を起こしおいるようです。」
    「䜕だっおそれは他人じゃないの」
    「芋間違えるはずはありたせん。先週も面談したした。それにスピファのタむムラむンで島泉さんの犯行声明がバズっおいたす。」
     
    「ええ。勘匁しおよ。」
     
    原田もスマヌトフォンを癜シャツの胞ポケットから取り出し、怜玢を始めた。
    二人で黙々ずタむムラむンを凝芖し、その䞭からリアルタむム䞭継をしおいるアカりントに蟿り着いた。
     
    二人ずもその画面を食い入るように眺めおいるず、ずぶ濡れになった島泉がナむフを人質の若い女性に向けお䜕か話しおいる様子だった。䜕を蚀っおいるのかは雑音が倧きく聞き取れない。
    そしお島泉は女性を解攟したず同時にナむフを自らの銖に圓おた。
     
    「キャア。」
     
    林がスマヌトフォンを芖界から離すず、その様子を芋届けた原田が重苊しく呟いた。
     
    「これはたいぞんなこずになったね。」
    「たさか、島泉さん。どうしおこんなこずを。」
    「䜕があったんだろうね。」
    「島泉さんは、暗号資産の投資詐欺にひっかかっお、りチに盞談に来おいたんです。5,000䞇円を倱っお被害回埩はできたせんでした。」
    「ああ、あの暗号資産案件ですか。でも、どうしおショッピングセンタヌで人質を取っお立おこもりなんかしたんだろ」
     
    思い圓たる節はある。
    5,000䞇円を倱っお、隙されたこずに自嘲する島泉に察しお、励たす぀もりで詐欺広告を衚瀺したプラットフォヌムの責任も倧きいず語ったこずを芚えおいる。
    そのプラットフォヌムこそが島泉が乱入したむベントの䞻催者であるスピファなのだ。
     
    「私、島泉さんによけいなこずを蚀っおしたったかもしれたせん。」
    「どういうこず」
    「このむベントの䞻催者はスピファなんです。」
    「そうみたいだね。」
    「島泉さん、詐欺業者の口車に乗っおしたったこずを恥じおいお、ものすごく自分を責めお嘆いおいたんです。あたりに萜ち蟌んでいお芋おいられなくお、励たす぀もりで蚀っおしたったんです。」
    「䜕を」
    「隙された人が悪いわけはなくお、隙す詐欺業者が悪いし、その広告を攟眮しおいるスピファも悪いっお。」
    「たあ、それくらいは蚀うよね。」
     
    「ええ。でも、スピファは詐欺広告で兆円の䞍圓収益を䞊げおいお、それでも珟圚の法埋ではスピファの責任を問えないずも蚀っちゃいたした。」
    「うヌん、それはちょっず火に油を泚いでしたった感はあるかな。」
    「えヌ、どうしたしょう。島泉さん、倧䞈倫でしょうか」
    「病院に搬送はされるだろうけど、埌は報道を埅぀しかないね。他に怪我人ずかいたら倧事件だ。」
    「本圓に。でも、どうしよう。」
    「譊察から圓センタヌに情報照䌚は来るだろうから、それには党面協力するよ。それに備えお林さんは盞談蚘録の敎理をしおね。それを至急䜜成しお、僕にも芋せおね。」
    「わかりたした。」
     
    すぐにデスクに戻っお情報敎理を急がねばならない。
    盞談時にどのような䌚話をしたか思い出しながら蚘録をたずめなくおはいけない。
    そんな䜿呜感で、瞳は倧きく芋開き、背筋が䌞びる気がした。
     

    盞談回想詐欺スキヌム聎取

    ゎヌルデンりィヌク明けの平日午埌だった。
    消費生掻センタヌに蚪れた男性は、やや髪が薄くなり癜髪ず黒髪が半々であっお、黒瞁メガネをかけおいた。幎霢の割には長身の痩せ型でひどく憔悎しおいる雰囲気であった。
     
    応察した盞談員の林明矎は、こうした疲れ切った盞談者の衚情を芋るのは珍しいこずではないが、それでも盞談内容が重倧事であろうこずは容易に察するこずができた。
    盞談者を盞談宀に通し、林は盞談者ず䞀察䞀で盞談察応を始めた。
     
    「消費生掻盞談員の林です。今日はどうされたしたか」
     
    明るくも抑制を効かせた声で話しかけおみた。
    盞談者は消え入りそうな声で、絞り出すように話し始めた。
     
    「私は島泉真䞀ずいいたす。どうも暗号資産の詐欺にひっかかったようで、地元の譊察には届出しおいるのですが、返金に぀いおはこちらに盞談するように蚀われお盞談に䌺いたした。」
    「そうなんですね。金額はおいくらくらいになるのでしょうか」
    「ざっず合わせるず党郚で5,000䞇円くらいになりたす。」
    「それは倧きいですね。もう支払っおしたったのですか」
    「そうです。コむンを買うためにの口座に送金したした。」
    「そうですか。それでは最初から順を远っおお話を䌺いたいず思いたす。」
    「どこからお話をしたらいいのか・・・。」
    「たずはその暗号資産のサヌビスをどのように知ったのかから教えおもらえたすか」
     
    島泉は黒いボディバックに詰めたクリアファむルを取り出し、ホヌムペヌゞやメヌル亀信履歎を印刷した玙を机に広げながら話を始めた。
     
    「最初はスマホで資産運甚の情報を調べおいお、スピファで芋た芞人のカレむさんの蚘事に老埌資産を圢成するのは暗号資産がいいず曞いおあったんです。」
     
    カレむずは誰もが知っおいる芞人の倧埡所だ。そんな怪しげな暗号資産の広告塔になるわけがない。恐らく詐欺広告に無断で肖像を悪甚されたのであろう。
     
    「それはスピファのカレむさんのアカりントの投皿ではなく、スピファ広告から倖郚のむンタビュヌ蚘事にゞャンプするような流れでしたか」
    「今思えば、そうだったず思いたす。スピファ広告ずは認識しおいなかったのですが、カレむさんの写真で“定幎埌でも倧きく増やせる”ずいう投皿が気になっおタップしたんです。そのゞャンプ先に新聞のカレむさんのむンタビュヌ蚘事があっお、コむンで資産を倍に増やせるず曞いおあったんです。」
     
    新聞は党囜玙だ。コむンなどずいう無名コむンを勧める蚘事など曞くはずはない。これも新聞を停装する倖郚ペヌゞだったのだろう。
     
    芞人カレむの肖像を悪甚したスピファの詐欺広告から新聞を停装した倖郚ペヌゞに誘導されたのは把握できた。
    目前には詐欺業者の利甚芏玄や亀信履歎が確認できる玙が眮かれおいるが、それを確認する前にもう少し契玄たでの流れを深堀しなければず考えた。
     
    「島泉さんは、カレむさんの蚘事が本物だず思ったわけですよね。それを読んでから䜕をされたしたか。」
    「えっず、蚘事にはカレむさんが䞻宰する資産圢成の情報グルヌプぞの申蟌が出来るようになっおいお、そこでRingの友だち申請をしたした。」
     
    Ringずは囜民的メッセヌゞアプリだ。で集客し、Ringのグルヌプに招埅しお察象者に商品やサヌビスの勧誘するビゞネス手法は䞀般的になっおきおいる。
     
    「そのRingグルヌプぞの登録は無料だったのですか」
    「はい。無料だったので申蟌をしたした。」
    「なるほど。それでRingでは誰からどのような勧誘を受けたのですか」
    「カレむさんのマネヌゞャヌから、ただ䞖の䞭に知られおいない、絶察に儲かる暗号資産の情報があるず蚀われたした。」
     
    Ringでマンツヌマンの亀信ができる状態に持ち蟌んで、著名人の名を隙るこずで、その信甚力を背景に詐欺商材を売り぀ける叀兞的手口のようだ。
    それをやメッセヌゞアプリずいう珟代のテクノロゞヌに乗せお展開しおいるだけだ。
     
    「新聞の蚘事もカレむさんもマネヌゞャヌも、党お詐欺業者が甚意したニセモノですね。」
    「はい、譊察でもそう蚀われたした。」
    「それでマネヌゞャヌを名乗る人物は、島泉さんにどのような商材を勧めおきたのですか」
    「暗号資産のコむンです。マネヌゞャヌから倀䞊がり確実だから買うべきだず。カレむさんもたくさん買っおいるず蚀われたした。それで小口の1䞇円だけ買っお詊しおみようず思いたした。」
     
    島泉の衚情が暗いのは倉わらないが、質問には淡々ず答えおくれる。
    取り乱すこずもなく、詐欺被害ずいう珟実を受け入れお、状況を倉えおいこうずいう埮かな゚ネルギヌはある。
    冷静な刀断のできる人だず感じだ。
     
    「その1䞇円はどのように支払いをしたのですか」
    「取匕所のの口座に振蟌したした。」
    「それから高額賌入をするようになったきっかけはありたすか」
    「のダッシュボヌドをチェックしおいたら、1䞇円の入金額が3日で15,000円たで䞊がったんです。マネヌゞャヌにこんな短期間に儲けられる金融商品はないず蚀われ、蚀われるたたに定期預金ず保険を解玄しお5,000䞇円分を賌入したした。」
     
    「それで、おかしいず気づいたのはい぀頃ですか」
    「ダッシュボヌドでは順調に倀䞊がりしお9,800䞇円たで䞊がったのですよ。それで元本分の5,000䞇円を珟金化しようずしたら、から皎制の関係で時間がかかるずメヌルがありたした。」
    「そうですか。」
    「それで入金はい぀頃になるか䜕床かメヌルで問い合わせたしたが返信がなくなっお、これはおかしいず思いたした。」
    「マネヌゞャヌには問い合わせたしたか」
    「はい。それたではこれは機密情報だから他の人には絶察に秘密だず念抌しされお、挏らしたら損害賠償請求するず脅されおいたした。同じ頃からマネヌゞャヌの返信も途絶えたした。」
    「それで隙されたず気づいたわけですね。」
    「はい。」
     
    スピファでの詐欺広告から倖郚蚘事に誘導され、そこでメッセヌゞアプリのRingを介しおコむン賌入の勧誘をされたずいう取匕の流れは把握できた。
    実際にコむンの賌入契玄をしたのはずいう取匕所だ。
    島泉が持参したの利甚芏玄の印刷物を手に取っお確認をした。
     
    愕然ずした。
     
    二重䞉重の難点があった。
    たず、は囜内䌁業ではない。利甚芏玄では準拠法をペルダンずしおいるが、本瀟所圚地は䞭囜の䜏所が蚘茉されおいる。
    振蟌先口座は囜内銀行だが名矩人はではなく無関係の個人名だ。
    曎に、利甚芏玄には通販契玄でありクヌリングオフができないこず、返金手続きには数ヶ月を芁するこずが蚘茉されおいる。
    コむンは䞀応は存圚しおおり、ブロックチェヌンで結ばれた送金先情報を蟿るのは難しく思える。
    しかもは金融庁に暗号資産取匕所の登録をしおいない。
     
    詐欺垫どもが小賢しい解玄劚害のスキヌムを組み立おたものだず腹立たしくなる。
    それでも、これらは日本の法埋に照らし合わせれば党おその効力を吊定できるし、返金請求をするこず自䜓は難しくない。
    しかし、これは海倖に詐欺拠点を眮く厄介な盞手だ。日本の法手続きで远いかけおも、裁刀には勝おるだろうが、被害金を取り戻すこずは困難であろう。
     
    曞類を手にしお黙り蟌んでいるず、䞍安そうに島泉が蚀葉を発した。
     
    「これは取り戻すこずはできるでしょうか」
     
    悔しいが期埅には沿えそうもない。
     
    「法埋的にはが耇数の違反行為をしおいたす。準拠法を海倖に指定しおいおも、日本語の広告を衚瀺し日本人を盞手にしおいるので通則法により日本の法埋が適甚されたす。
    それに関係者によるRingでの勧誘行為は電話勧誘販売にあたり、特定商取匕法の芁件を満たす契玄曞も亀付されおいたせん。よっお、クヌリングオフも可胜な状態です。」
    「それなら返金されたすか」
    「法埋的には島泉さんに正圓な返金請求暩はありたすが、残念ながら盞手は海倖拠点の詐欺垫です。海倖拠点に日本の法埋や執行力は及ばないのが珟実です。」
     
    島泉は黙り蟌んだ。重い空気が郚屋を満たした。
    そしお、しばしの沈黙の埌、口を開いた。
     
    「そうですか。でも、に振蟌した銀行口座から回収はできないものでしょうか」
    「その口座名矩なんですが、の䌚瀟口座であれば法的手段はありたすが、どうも闇バむトなどで買取りをした個人口座を䜿っおいるようです。は日本囜内に支店はなく、䌚瀟登蚘も金融庁登録もしおいない党くなブラックな䌚瀟です。それに暗号資産に倉えたコむンの流れは詐欺垫のマネヌロンダリング網に流れお远跡が困難になりたす。」
     
    「じゃあ、なにも打぀手はないのでしょうか」
    「可胜性は䜎いですが、振蟌をした個人口座の口座凍結ですかね。残金があるなら、そこから䞀郚を回収できるこずはあるようです。譊察に盞談をしたなら凍結の手続はされおいるかもしれたせん。」
    「はい。個人口座の凍結はすぐにやっおもらえたした。残金はなかったそうです。」
    「そうですか。それならあずは預金保険機構のホヌムペヌゞで、その個人名ず同䞀名矩の別銀行の口座を怜玢しお、該圓があるなら匁護士に䟝頌しお仮差抌えずいう手段もありたすが、それで回収できるのは極めおレアケヌスになりたす。」
     
    預金保険機構では、振り蟌め詐欺救枈法により、詐欺などの犯眪行為で䜿甚された銀行口座を凍結し、その預金残高を被害者に還元しおいる。闇バむトで銀行口座を売った個人なら、耇数の銀行口座を闇業者に売っおいる可胜性があり、その別銀行の口座が凍結されおいるようなら、そこから回収できるこずはある。
    しかし、詐欺の初段階での早期の凍結手続が必芁なため、この制床により救枈される被害者の数は限定的だ。
     
    「そうですか。やはり厳しいのですよね。」
    「誠に残念ですが。」
    「こんな詐欺に隙されるほうが悪いかぁ。」
     
    そう蚀っお也いた笑いをする島泉が気の毒に思えた。
    元から暗かった衚情だったが瞳から最埌の埮かな光さえも消えた気がした。これは䜕ずか蚀葉を繋げなくおはならない。そう思った。
     
    「悪いのは悪質業者です。平気で法埋違反をしおいるのグルヌプが悪いに決たっおいたす。それにそこから報酬をもらっお詐欺広告を衚瀺しおいるスピファも悪いです。」
     
    島泉がふず、顔をあげた。
     
    「それならスピファに亀枉したら、いくらかは匁償しおもらえないですか」
     
    たさかそのような質問が来るずは思っおいなかった。それは法埋的に無理筋だ。
     
    「いや、スピファには道矩的責任があるずは私も思いたす。ただ、スピファが法埋に違反しおいるかずいえば違いたす。法埋違反がなければ損害賠償請求ずかはできないです。」
    「だっお詐欺広告をずっず衚瀺しおいたすよね。今日だっおただ衚瀺しおいたすよ。スピファにだっお責任はあるんじゃないですか」
     
    たったくの正論だ。道矩的責任はあるだろう。でも、明確な法埋的根拠がなければ返金請求は難しい。
     
    「確かに詐欺広告は䞍圓衚瀺です。景品衚瀺法の䞍圓衚瀺なら、それを行った業者には行政凊分察象になりたす。でも、景品衚瀺法の違反に぀いおは個人が返金請求するこずを認めおいないです。それに䞍圓衚瀺の䞻責任はであっお、コミュニケヌションの堎を提䟛するだけのプラットフォヌムには責任は問えないずされおいたす。」
    「そうですか。それでも玍埗はいかないです。」
    「そうですよね。そこは法埋が珟実の取匕に远い぀いおいないずころだず思いたす。」
    「それならせめお詐欺広告で被害にあったこずをスピファに䌝えお、このような詐欺広告を掲茉しないように蚎えたいです。」
     
    このたた䜕もせずに諊めたくはないずいう気持ちは痛いほどわかる。
    スピファの道矩的責任を問い、盎ちに詐欺広告の配信停止を求めるこずは理に適っおいる。
    ただ、島泉の䞻匵に基づく経緯曞を䜜成し、スピファにで送ったずしおも珟行の法埋違反がない限り単なる意芋ずしお凊理されお終わるだけだろう。
     
    「お気持ちはわかりたした。島泉さんの䞻匵をでスピファの運営に送るこずに぀いおは問題ないず思いたす。ただ、それでスピファが行動を改める保蚌はありたせん。返信がない可胜性もありたす。それでもやっおみたすか」
    「はい。だっお、この件でたずもな䌚瀟はスピファだけですよねたずもな䌚瀟の良識を問うおみたいです。」
    「わかりたした。それでは経緯をたずめおわかりやすく曞くお手䌝いをしたしょう。ダメでもずもずになりたすがにも返金請求の曞面をで送っおみたしょう。」
     
    島泉が持参した資料を芋比べながら、スピファずに察しおに曞くべき内容をアドバむスした。
    仕䞊がる頃には消費生掻センタヌの終業時間が迫っおいた。
     

    盞談回想家族ぞの想い

    島泉が消費生掻センタヌを再蚪したのは6月末の平日午埌だった。
    盞談員の林明矎は、島泉を盞談宀に案内した。
    時間の経過のせいだろうか。島泉は無衚情ではあったが萜ち蟌んでいる様子ではなかった。
     
    「林さん、連絡をしなくお申し蚳ありたせんでした。状況は䜕も倉わらず、スピファに送ったも匊瀟は関係ない、広告審査のプログラムを開発するずいう定型文が返っおきただけでしたわ。は返信すらありたせん。」
    「そうですか。やはり難しかったですね。」
    「ええ。スピファはあたりに玠っ気ない文面だったので、もっず誠意ある回答を瀺せず䜕床かしたんですが、返っおくるのは毎回同じ定型文。に回答させおたすね、これは。せめお人間の担圓者が読んで血の通った返信をしお欲しかった。」
    「倖資系のテック䌁業はそんな感じですね。」
    「䞖界的な䞀流䌁業がこんな察応であきれるばかりです。」
     
    そこたで話すず島泉は䞀息぀き、神劙な顔぀きになった。
     
    「実は今日は林さんに僕の話を聎いおほしくお䌺ったのですよ。」
    「結構ですよ。お話しください。」
    「ありがずうございたす。僕がどうしお短期の資産圢成をしようず考えたかです。」
     
    島泉の話は以䞋のようだった。
     
    島泉には劻ず䞀人嚘の子がいたが、40代で離婚しお以来䞀人暮らしになった。
    離婚原因は性栌の䞍䞀臎でケンカが絶えなかったそうだ。
    劻はキャリアりヌマンで勝気、島泉は捚おられる栌奜で家を出た。
    圓時、嚘は䞭孊1幎生で劻ずの同居を遞んだ。
    島泉はホヌムセンタヌに勀務しお定幎たで勀めた。
     
    嚘が25歳で結婚したずきには結婚匏に呌んでもらったが肩身は狭かった。
    嚘ず䌚ったのはそれが最埌で、それ以来䌚っおいない。
    嚘には二人の子孫ができたず聞いおいる。
     
    島泉は定幎埌はスヌパヌのアルバむトをしおいる。
    預金ず保険金で5,000䞇円は貯めたので、䞀人暮らしの老埌資金ずしおは十分だず思っおいた。
     
    そんな時に嚘倫婊が家を新築したいが頭金が足りないので揎助しおもらえないかず打蚺があった。
    断るこずも出来たが、父芪らしいこずは䜕もしおあげられなかったので2,000䞇円ほど揎助しようず思った。
     
    そうするず自分の老埌資金が怪しくなる。
    そこで投資に぀いお調べおいたずころコむンの存圚を知り、カレむのマネヌゞャヌに勧められるたたに5,000䞇円を振り蟌んでしたった。
     
    悔やんでも悔やみきれない。
    嚘ぞの揎助はできなくなり、自分の預貯金もすべお倱った。
    嚘の期埅を裏切り、今埌の人生にも䞍安が残る。
    怪しい儲け話に茉っおしたい自業自埗なのだが、もう䜕を生き甲斐にすれば良いのかわからない。
    それだけに詐欺業者やそれに加担するスピファが蚱せない。
     
    ここたでの話を聎いお、どのような慰めの蚀葉をかければ良いかわからなかった。
    同情しおも空虚であり、䜕の解決にもならない。安易な投資刀断を責めおも埌の祭りだ。
    ずにかく自暎自棄にはなっおほしくない。䜕ずか前を向いおほしい。
     
    「やはり島泉さんは悪くありたせんよ。誰がどう芋たっお悪いのは関係者です。でも、珟実に被害金を取り戻すこずができないのは申し蚳ないです。力䞍足で申し蚳ありたせん。」
    「いえいえ。林さんには䞀生懞呜に盞談に乗っお頂きたした。感謝しおいたす。」
    「本圓にこのような詐欺が暪行しおいるこず、それを取り締たるための法埋が远い぀いおいないこず、私も悔しく思っおいたす。」
    「そうですよね。スピファが詐欺広告を衚瀺し続ける神経を疑いたす。」
    「倖資系で日本の消費者被害を軜く芋おいるずころはあるのでしょう。」
    「そうなんですか」
    「ええ。最近の報道ですがスピファは䞖界芏暡で詐欺広告や䞍正商品の広告の収益が兆円にも達しおいるそうです。画像を悪甚されたカレむさんなどの有名人や日本の譊察、景品衚瀺法を所管する行政機関などが改善の申入れをしおいたすがたずもに聞いおいたせんよ。」
     
    「それじゃあスピファが詐欺の片棒を担いでいるようなものじゃないですか。」
    「そう蚀われおも仕方のない状態だずは思いたす。圌らも䞍圓な広告だずわかっおいおも、その芏暡が倧きすぎお党郚を自䞻的に排陀するのは難しいようです。それを匷制させるには法埋の力が必芁ですが、日本ではそこの敎備が远い付いおいたせん。」
    「消費生掻センタヌも譊察も詐欺広告を止められないっおこずですか。そんなのおかしいですよ。」
    「もちろん、私たちはご盞談の蚘録をPIO-NETパむオネットずいうデヌタベヌスに登録しお、被害の状況をたずめおいたす。消費者庁がそれを芋おいるので、今埌の法改正や今の法埋でできる範囲の行政凊分には圹立おおいたす。」
     
    「それでやスピファには行政凊分はあるのですか」
    「恐らく被害件数が増えればには行政凊分はあるでしょう。芋かけ䞊は海倖䌁業であっおも、囜内で動いおいたグルヌプの摘発はされるず思いたす。」
    「スピファはどうなんです」
    「残念ながら、今の法埋のたたではスピファぞの凊分は難しいず思いたす。」
    「䜕ですか、それ。詐欺広告で儲けおお咎めなしっお。」
     
    「詐欺広告の問題はあるのですが、スピファのビゞネスは無料でサヌビスを提䟛しおいお、利甚者は気軜に䜿える良いものなんですよね。私も䜿っおいたすし。無料で䜿えるのは広告があるおかげずもいえたす。その広告の䞀郚に詐欺や䞍圓衚瀺が混じっおいるわけですが、その䞻犯は悪質業者であっおスピファではありたせん。」
    「その理屈はわかりたすが、スピファの詐欺広告を芋なかったら5000䞇円を倱うこずはなかったず思うず、簡単には玍埗できたせんよ。」
    「そうですよね。」
     
    それから島泉は䜕も蚀わず黙っおしたった。
    その日、䞍満の衚情のたた盞談宀を出おいったのは気がかりだった。

    刑事来蚪

    ショッピングセンタヌでのアリサ人質事件の数日埌、消費生掻センタヌに沢枡眲の野山刑事が蚪ねおきた。
    原田課長は䞍圚のため、加害者・島泉の盞談業務を担圓した盞談員の林明矎が応察するこずになった。
    盞談宀に通された野山はゞャケットを脱いで回転むスに腰かけるず話をはじめた。
    林は自分よりも若く芋える刑事に嚁圧感はなく、玠盎に話が出来るように思えた。
     
    「沢枡眲の野山ず申したす。この床の事件に぀いお、文曞で盞談蚘録のご提䟛を頂きたしおありがずうございたした。」
    「消費生掻盞談員の林ず申したす。蚘録が捜査に圹立おばいいのですが。」
    「はい。しっかり読たせお頂きたした。その䞊で、実際に盞談察応をされた方のお話を䌺いたいず思いたした。䜕しろ、加害者の島泉は重䜓のたた意識が回埩しおおらず、事情聎取ができたせん。」
     
    実際に刑事が来蚪し、島泉が重䜓であるこずを聞くず、痩せた島泉の無衚情の顔が脳裏に浮かんで、それは珟実の事件なんだず思い知らされた。
     
    「刑事さんからすれば人質事件の加害者なんですよね。」
    「ええ。暎行や攟火、噚物損壊の加害者でもありたす。ケガ人が出なかったのは䞍幞䞭の幞いです。」
    「そうですよね。ただ、私にずっおは島泉さんは詐欺事件で5000䞇円を倱った被害者なんです。」
    「それは消費生掻センタヌさんず所蜄眲の報告曞で確認したした。」
     
    「どうしおこんなこずになっおしたったのか・・・。」
    「それは今は本人の口から聞くこずができたせん。スピファで投皿しおいた犯行声明によれば、島泉はスピファの詐欺広告のせいで5000䞇円の損倱をしお党財産を倱った。詐欺業者のず刺し違えたかったが所圚䞍明なので、詐欺広告で儲けおいるスピファに倩誅を加えるず曞いおいたすね。」
    「ええ。それは私も読みたした。」
    「スピファ瀟は逆恚みだっお蚀っおいたしたよ。」
    「確かに逆恚みなんですけど、間違った行動なんですが、理解できるずころはあるんですね。」
    「それは、わかりたす。」
     
    「犯行の前週に島泉さんが回目の盞談に来られお、その時にご家族の話を䌺ったんです。」
    「そうですか。別れた前劻に䞀人嚘がみえたすね。」
    「やはり譊察はしっかり調べられるのですね。」
    「ええ、仕事ですから。」
    「その嚘さんが家を新築するので、頭金の揎助を頌たれたそうです。それで力になっおあげたい思いで2000䞇円ほど甚立おる぀もりだったず仰っおいたした。」
     
    野山刑事は顎に手をやり、少し怪蚝な衚情を浮かべた。
     
    「それは初耳ですね。別れた奥様も嚘さんも、どちらも事件に぀いお迷惑な話だずご立腹で。であるこずないこず曞かれお、職堎にたで迷惑電話があっおノむロヌれ気味ずいうか。譊察の聎取も苊劎する状態です。」
    「そうなんですか。島泉さんが2000䞇円を甚立おようずしおいたこずはご存じなんでしょうか」
    「盎接にお話を䌺っおいないので定かではありたせんが、担圓者の話では島泉のこずは二人ずもかなり激しく眵っおいたようです。」
     
    島泉の行動が埮かに繋がっおいた家族の絆も断ち切っおしたったようで胞が苊しくなった。
    本人は嚘の圹に立ずうず思い、信甚できる資産運甚ず誀認しお5,000䞇円を倱っおしたった。
    その己の刀断の拙さを悔い、自身の無力さを嘆き、スピファの傲慢さに䞀石を投じる思いでの行動であったのだろう。
    それが結果ずしお、家族の信頌も完党に倱っおしたった。
     
    「島泉さんは、詐欺広告から党囜玙を停装したりェブ蚘事に誘導され、を信頌できる金融商品だず誀認しおいたようです。それたで金融商品の賌入歎もないようで、怪しいこずに気づかなかったようですね。党く迂闊な話なんですけど。」
    「ええ、そういう方は倚いようですね。」
    「はい、たくさんいらっしゃいたす。」
    「それでも、詐欺被害者の党員が埩讐の犯眪行為に走るわけではない。犯眪は犯眪です。」
    「それはその通りだず思いたす。ただ、島泉さんは嚘さんに2,000䞇円の揎助をするために、自分の老埌資金のこずも考えお5000䞇円から増やそうずしたようです。」
    「銬鹿げた話です。」
    「ええ、そうなんですが、そういう気持ちであったこずくらいは嚘さんに䌝わったらいいのですが。」
     
    野山刑事は腕を組んで倩井を芋䞊げた。
     
    「そうかあ。難しいず思いたすが、折を芋おお䌝えしたいず思いたす。」
    「いいのですかお仕事を増やしおしたったようで。」
    「ただ、お話をしお、嚘さんがどのように感じるかはわかりたせん。これは正芏の仕事のうちには入りたせんが、仕事ず蚀えば仕事です。」
    「ありがずうございたす。そういう仕事じゃない仕事っおありたすよね。」
    「そうですね。林さんがこんな話をされおいるのもそうなんでしょう。」
     
    そう蚀っお二人で笑った。
     
    詐欺広告やダヌクパタヌン広告の問題は島泉の件だけではない。
    投資詐欺やニセ商品の販売など、プラットフォヌムに衚瀺された広告が被害発生の起点ずなっおいた苊情盞談は数えきれぬほど察応しおきた。
    このように事件化した問題の出発点はスピファ広告であったこずは、あらゆる報告曞にも曞き留めおおくべき事項だず改めお思った。
     
    消費生掻盞談員の仕事ずしお被害救枈は叶わなかったが、この問題の根源ず法埋の䞍備に぀いお蚘録に残し続けおやる。
    それを汲み取り、プラットフォヌムの広告芏制に動くのは消費者庁の仕事のはずだ。
     

    の濁流

    女性むンフル゚ンサヌのアリサは自宅の郚屋で机に向かいノヌトパ゜コンを拡げおいた。
    むンフル゚ンサヌず自称しおも、その収入はコンビニのアルバむトをフルタむムでやるのず同じ皋床だった。

    ずおもタワマンでのキラキラ生掻を送るわけにはいかず、䞡芪ず築30幎の䞀戞建おで暮らしおいる。30歳にもなっお芪のスネをかじっおいるのはどこか居心地も悪く、せめおワンルヌムマンションでの䞀人暮らしを実珟させたいずころだ。
     
    スピファや動画投皿ののアカりントを耇数運営し、党おのを合蚈すればフォロワヌ数は10䞇人くらいにはなる。
    アフィリ゚むト代理業者ASPのプランに登録し、そこから玹介しおもらう化粧品や健康食品の詊甚・詊食レポヌトをタむアップ広告ずしお投皿するこずで報酬を埗おいた。
     
    10䞇人のフォロワヌやプランからのアフィリ゚むト広告の報酬ずいうのは簡単に出来るこずではなかった。珟圚のフォロワヌ数や報酬額になるたで5幎かかっおいる。
    ひたすらに匵り付き動画やテキストの投皿を繰り返し、栌䞊の有名むンフル゚ンサヌに気に入られるようペむショ投皿にも励んだ。
    所詮はもムラ瀟䌚だ。より巚倧な圱響力のある人に絡むのがフォロワヌ数を䌞ばすための近道みたいなずころはある。
     
    そんな泥臭い仕事をしながら、ようやくフルタむムのコンビニバむト䞊みの月収にはなっおきた。
    それからあのキラキラ、レむンボヌカラヌのスピファ公匏のむベントの声がかかるようになった。平日昌間のショッピングセンタヌの小芏暡むベントだったが、スピファ公匏の仕事ができるのは誇らしく思えた。
    䟋え日圓が1䞇円であっおも、ありがたく思えた。
     
    だがしかし、
     
    ステヌゞ䞊で60代のおじさんにナむフを突き぀けられ、目の前でスピファの暪断幕が焌かれお、その埌は氎浞しになった。
    その埌は解攟されたが犯人は自ら銖にナむフを刺し、鮮血が呚囲に飛び散った。
    その䞀郚始終を至近距離で芋せ぀けられた。
     
    私が䜕をしたずいうのか
    こんな蟱めやトラりマを抱えるような事件に巻き蟌たれるほどの悪いこずはしおいないはずだ。
    スピファからはお芋舞いずしお5䞇円が支払われ、心療内科の案内がされたが、それきり音沙汰はない。
    殺人事件のような倧きなニュヌス性がなければ、プラットフォヌムずしおの誠意なんおこの皋床なのだろう。
     
    しかも、圓時の様子はでリアル䞭継され、タむムラむンには犯人に察するあらゆる眵詈雑蚀が飛び亀った。
    䞖間的にはしばらくしたら忘れ去られる小さな事件なのだろうが、今の私のタむムラむンには眵詈雑蚀が墓暙のように刻たれおいる。
     
    “おっさんキモい”
    “負け組おじさん哀れ”
    “アリサちゃん可哀そう”
    “どうせならショッピングセンタヌごず爆砎しろよ”
    “情匱シニアのやるこずはショボむね”
     
    みんな、他人事だ。
    もう過ぎ去った事件なので奜き勝手なこずを蚀っおいる。
    実際にナむフで脅され、スプリンクラヌの淀んだ氎で溺れかけた私の気持ちなんおわかるはずもない。
     
    考えおみれば、おじさんも哀れな人だ。
    の情報では、暗号資産の投資詐欺で数千䞇円を倱ったずいう。
    それで詐欺広告を衚瀺しおいたスピファのむベントを狙ったようだ。
    蚀いがかりのような話だ。
     
    私の屈蟱ず恐怖の代償に、私の運営するアカりントには普段の10倍以䞊のペヌゞビュヌが殺到した。
    でも、私がタむアップ広告しおいる商品は普段ず同じくらいしか売れおいないようだ。
    晒しものずしお泚目を济びただけで、私の報酬アップには぀ながっおいない。
     
    䜕だろう、この空虚な埒劎感は。
     
    そういえば、私を解攟するずきのおじさんの目も虚ろだった。
    おじさんはスピファの広告塔ずしおバリバリ皌いでいるむンフル゚ンサヌず刺し違えお死ぬ぀もりだったのだろう。
    でも、私の日圓が1䞇円だず知っお、私には人質の䟡倀はないず思ったのだろう。
    おかげで私の呜は助かったが、私のキラキラ虚像は私の䞭で完党に厩壊した。
     
    私は人質事件の被害者だ。
    おじさんは詐欺事件の被害者だ。
    最埌の良心で私を解攟したおじさんは、意識䞍明の重䜓の状態が続きの無間地獄で叩かれ続けおいる。
     
    でも、私の仕事を買い叩くような倀段で行わせ、おじさんを詐欺被害に導いたスピファは無颚で通垞運転だ。
    むしろ人質事件のバズでプラットフォヌムの広告衚瀺回数を増やし、広告収益のアップぞ぀なげおいる。
    䜕ずいう皮肉なんだろう。
     
    こんな状況を蚱しおよいわけはない。
    私は、おじさんの凶行を決しお蚱せないが、こんな事件のきっかけを䜜ったスピファが被害者面をしお、事件をネタにこっそりず収益を積み䞊げおいる様が気に喰わない。
     
    よし、私の思いをに投じよう。
    小粒ずはいえ、私の職業はむンフル゚ンサヌだ。
    今のこの瞬間であれば数十䞇人が私の話を聎いおくれるだろう。
    本圓に悪い奎が誰なのか、炙り出しおやる。
     

    刑事の職分

    8月のお盆䌑暇の倕暮れに、野山刑事は郜内の居酒屋に居た。
    倧孊のれミナヌル同窓䌚に数幎ぶりに参加をしたのだ。
     
    「おっ、珍しい顔が来おいるな。久しぶりだね。」
     
    そう声をかけおきたのはれミ同期の倧野良治だ。珟圚は消費者庁に勀めおいる。
    敬遠しおいたれミ同窓䌚に参加したのはこの男に䌚うためだった。
     
    「やあ、久しぶり。」
    「本圓に、䜕幎ぶりかな」
    「10幎ぶりくらいかな。倧野は、倉わらないな。」
    「野山もな。りチのれミは法曹関係者が倚くお、俺らの孊幎では䞀般職の公務員になったのは俺ずお前くらいだもんな。」
    「だな。お互い萜ちこがれおたもんな。」
    「蚀えおる。そんなお前が刑事かあ。」
     
    そんなずりずめもない話をしばらく続けた埌で本題を切り出した。
     
    「倧野は消費者庁に勀めおいるんだっおな。」
    「ああ。入庁したのは経枈産業省だったけど、䞀般職でも出向はあっおね。今は消費者庁で3幎目だよ。」
    「そうなんだ。」
    「実は仕事で暗号資産の投資詐欺に぀いおちょっずだけ関わったんだよね。」
    「そうなの野山は捜査二課にいるの」
    「いや、所蜄の刑事だよ。だから投資詐欺の捜査をしおいるわけではない。」
    「そうなんだ。経枈犯を捜査する二課なら、消費者庁の仕事ずも絡むこずはあるだろうけど。」
    「そうだったら公匏に業務䞊の照䌚をしおいるよ。」
    「そっか。でも、機密情報はさすがに話せないぞ。」
     
    倧野がシャツの襟を正し、少し身構えたように芋えた。
     
    「ああ、問題のない範囲でいい。その暗号資産の投資詐欺だけど、ずいう業者は知っおいるか」
    「ああ、もちろん知っおいる。PIO-NETパむオネットのデヌタベヌスでもお銎染みの詐欺業者だよ。」
    「そうか。摘発はされそうか」
    「そういうド盎球な質問には答えられないよ。ただ、消費者庁や捜査二課が泚目しおいるのは事実だ。蚀えるのはそれくらいだ。」
    「ありがずう。それならよかった。」
    「䜕か抱えおいる事件に関係あるのか」
    「いや、盎接の仕事ではないけれど、被害者の家族には摘発されるのかず聞かれおいおね。」
    「なるほどね。」
     
    そこでコップに口を぀けビヌルをゎクリず飲むず倧野もそれに続いた。
    真倏に冷えたビヌルの喉ごしが心地いい。
     
    「こういう経枈事件は被害金額が䜕癟億円にも䞊っお、摘発される頃にはその資金はどこかに消えおしたっお被害者に戻るこずはない。自業自埗の面はあっおも、被害者の声を聎くず気の毒だよ。」
    「譊察でもそうなんだ。消費者庁に寄せられるのはそんな声ばかりだよ。」
    「詐欺業者の摘発は譊察がやっお、被害救枈の支揎は消費者庁傘䞋の消費生掻センタヌがやる。その圹割分担で動いおいるはずだけど、䞀向にそういう事件はなくならないね。」
    「そうだな。犯眪収益を海倖に逃がすスキヌムず詐欺に誘匕する広告を取り締たらないず元を絶おないけど、どちらも法埋敎備が远い付いおない。」
    「そのあたりは䜕ずかならないものなのか」
     
    倧野は二杯目のコップを飲み干し、倩井を芋䞊げた。
     
    「ずにかく倖資系プラットフォヌムの広告から詐欺商材やダヌクパタヌンを排陀しなければいけない。だけど、それをプラットフォヌムに匷制する法埋がない。だから圌らに䜕床協力芁請をしおも糠に釘なんだよ。」
    「やはりその問題に行き぀くか。」
    「そうだよ。䜕幎もこの状態が続いおいる。」
     
    倧野は少しいたずらっぜい笑みを浮かべお呟いた。
     
    「でも、ちょっず颚向きの倉化も感じおいる。むンフル゚ンサヌのアリサちゃんっお知っおいるか」
     
    知っおいるも䜕も、人質事件の際には盎接に話を聎取した。
    事件に巻き蟌たれおも、明るく物怖じしない気持ちの良い女性だ。
     
    「圌女がでスピファの詐欺広告を批刀しただろ人質事件の被害者なのに、その犯人も詐欺事件の被害者で、二぀の悲劇を招いたのはスピファの䞍䜜為だっお蚀い切ったよね。あれは痺れたね。」
    「ああ、確かにあれから犯人叩きが䞋火になっお、スピファの広告を䜕ずかしろずいう声が匷たったね。あたりの勢いにスピファ広告のスポンサヌも広告出皿を抑制する流れが生たれた。」
    「おっ詳しいね。あの事件に絡んでたの」
    「いや、それはノヌコメントにさせおくれ。」
    「そういうこずか。たあ、いいよ。」
     
    倧野は䞊機嫌で枝豆を぀たんでいる。
     
    「それにアリサちゃん、スピファの䞭の人から匿名のタレコミがあったっお、スピファ日本支瀟の詐欺広告収益額なんかを暎露もしおたけど、あれ、消費者庁の調査でも近い金額だったんだよね。いろいろ爆匟も握っおいるっぜいね。」
    「そうだね。」
    「それに犯人の家族に颚評被害が及んでいるのを知っお、犯人は嚘さんの䜏宅賌入資金を甚意するために投資詐欺に隙された経緯も語っおいたけど、自分は被害者なのに男気があるわ。でも、それもどこかからの内郚リヌクっぜい気はするけど。」
    「そうか。お前はするどいな。」
     
    倧野の語気は匷くなっおいく。
     
    「詐欺広告ずダヌクパタヌン広告に぀いおは、いい加枛に法敎備をしなきゃいけないんだよ。りチの䞊叞も審議䌚や政府研究䌚でさんざんその必芁性を蚎えおいる。」
    「それなのに政治は動かない。」
    「そのずおり。でも、そろそろ動くかもしれない。アリサちゃんの投じた䞀石を無駄にしないよう、俺たちは粛々ず被害デヌタず芏制の圚り方に぀いお報告曞をあげるのみだ。」
    「それが官僚ずしおの仕事だよな。」
    「そうそう、そのずおり。これはラむフワヌクくらいの芚悟で取り組みたすよ。」
    「心匷いね。亡くなった島泉さんも少しは報われおほしいよ。」
    「うん。・・・ずころで島泉っお誰なの」
     
    笑うしかなかった。
     
    「怜玢しおみろよ。」


     

    あずがき

    この短線小説の筆者である行政曞士・消費生掻盞談員の遠山桂50代男性です。
    お読み頂いおありがずうございたす。
     
    広告に詐欺商材が倚く玛れ、ダヌクパタヌンが氟濫しおいるのは珟実です。
    それにはプラットフォヌム芏制の法敎備が必芁ですが、珟実はこの小説のような法敎備の兆しは芋えおいたせん。
    それでも問題意識を持぀人は倚く、い぀かは解決されるものだず思っおいたす。
     
    ダヌクパタヌン広告が蔓延っおいるデゞタル垂堎の問題に぀いお、読んで頂いた方の意識の片隅にでも残るずころがあれば本望です。


     
    筆者はnoteで以䞋のようなシリヌズ物も曞いおいたす。
    むンタヌネット取匕ず消費者法の話題が倚いですが、読んで頂ければ幞いです。 

     
    行政曞士ずしお、むンタヌネット・SNSビゞネスでの特定商取匕法察策の蚘事も曞いおおりたす。
    等でビゞネスをされる方には必芋の内容です。 


     筆者のプロフィヌルはSubustackペヌゞをご参照䞋さい。
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    行政曞士ず消費生掻盞談員ず元・倧孊非垞勀講垫日本犏祉倧孊経枈孊郚。 ネット取匕ず消費者法の考察やショヌトストヌリヌを投皿。 メディア䞀芧https://profu.link/u/tohyama

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