
簿記天秤【9】天秤で表していたら歴史に思いを馳せていた
※こちらの続きです ↓
複式簿記の原型は、13世紀~14世紀のイタリアの商人たちが実務の中で自発的に作り上げていった技術だ。(ヴェネツィア式簿記法と呼ばれる)
ということは、その商人たちは日常的に天秤を使っていて、その仕組みを簿記に組み込んだのではないか?
簿記の世界を天秤で表していたら、そんなことが気になったので調べてみた。
やはりその時代の商人たちは天秤を使っていた。
取引の場で常に懐には天秤を携帯していたという。
貨幣が金属としての価値があるものだったため、重さに不正が無いかどうかを確認するためのものだったらしい。
まさにお金を天秤の皿に乗せていたのだ。
公正に客観的な基準で量を計る天秤は、彼らの商売には欠かせない道具だった。
そんな天秤の存在があって、複式簿記の仕組みが生まれたと言ってもいいかもしれない。

そして、数学者のルカ・パチョーリが、複式簿記(ヴェネツィア式簿記法)を体系化し、『スンマ(スムマ)』という著書の中の一篇で発表した。
この著書が発行されてから、530年以上も経っている。
「取引を分解して、借方と貸方に分けて記録する」
「借方と貸方の合計を算出して、一致することを確認する」
「決算を行って帳簿を締め切り、次期へ繰り越す」
今では当たり前になっているこれらのルールは、スンマにも書かれている内容だ。
ルカ・パチョーリは、複式簿記のシステムを単なる技術としてまとめただけではない。
商人たちが実務の中で編み出した技術を、数学者の立場でその素晴らしさを受け止めて「美しい数学の理論」として書き記した。
私は数学者でも数学の教員でもない。
数学がとても得意だったわけでもない。
それでも、私は複式簿記のシステムに魅了されたひとりである。
簿記の世界では、ある勘定口座の天秤が左に傾く時、同じ分だけ別の勘定口座の天秤が右に傾く。
これはまるで、世の理。
「苦あれば楽あり」「一喜一憂」のような感情の変化にも感じられるし、「表裏一体」「光ある所に影あり」のような二面性も感じられる。
簿記を、技術習得や資格取得で終わらせたくない。
天秤に重りを乗せて、その傾く様子を楽しんだり、釣り合う瞬間の心地よい美しさを愛でたりするような、味わい深い仕組みが複式簿記だ。
私は、これからもこの簿記の世界を天秤で伝えていきたい。
パズルを解く時のひらめきや、ピースがきれいにはまった時の爽快感や達成感を、簿記を学びながら受け取ってほしい。
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