メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bymado_no_kotoba

水たまり

    眠りを妨げていた雨。
    知らないうちに寝入ると、窓から薄日が差していた。
    スマホで時間を確認して、ひとつ大きく息を吐き、身体を起こす。

    外へ出ると、陽射しは強いものの、涼し気な風が顔に当たる。
    道に水たまりができていた。
    自動販売機にコーヒーを買いに行く。
    アスファルトが重ねられた道。
    朝日に時折光ってキレイに見える水たまりは、近づくと単なる泥の塊だ。
    ただ、水たまりがあるから、濡れずに進んでいける。

    道の凸凹に躓いて、転んで泣いて、母を探した。
    父とキャッチボールでワンバウンドした球が、道の角にぶつかり、顔に当たって涙がこぼれた。
    頑張ったからといって結果が出るとは限らないことを知り、悔しさに涙がにじんだ。

    どれだけこれまで落としてきたのだろう。
    全部集めれば、足元の水たまりより多いかもしれない。

    自販機からコトンと音がして、小さな缶コーヒーが落ちた。
    手に取ると、缶の汗が手をヒヤリと濡らす。
    プルトップを上げて、一口飲むと、苦みが口に広がった。
    少しずつ飲みながら、また水たまりを避けながら、家へ向かう。

    シャワーを浴びて、出かける用意をする。
    飲み終えた缶コーヒーを、水道で洗いながして、同じデザインで埋められた袋に入れる。

    朝の陽射しは思ったより強く、ドアを開けると、目が痛むほどだ。
    初夏の陽に、どんどん水たまりは乾いていく。

    ただ知っている。

    革靴を濡らさず駅へと向かえるのは、朝早くに見た水たまりの記憶があるからだ。

     
     
     
    観察型コラムニスト/エッセイスト| 試合と日常の「流れ」を書く 「スワローズ観察日記R」 「紘野涼のフリーハンド」

    あなたへのおすすめ