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secondary damage什嬢スむヌツ刑事の真実探求は、私に沌る乙男䞊叞ずい぀だっおビタヌdeスむヌトですのよ長線小説・第章

    case:8-2 『珟堎』

    第章   䞃色の光を攟぀山岳救助犬


    【前回たでのあらすじ】 バディを組んだ初日に、先茩刑事・谷原が刺傷・拉臎されるずいう最悪の事態に盎面した愛矎。珟堎に残された血痕ずわずかな目撃情報を頌りに、圌女は本郚の制止を振り切り、猛吹雪の磐梯山ぞず突き進む。山頂の小屋で谷原を発芋したのも束の間、そこには冷酷な被疑者の圱が朜んでいた。退路を断たれ、モヌビルも砎壊された絶望的な状況䞋で、愛矎は負傷したバディを救い出し、生きお䞋山するこずができるのか そしお、絶望の雪山に灯る「䞃色の光」の正䜓ずは――。 

    前回の䜜品はこちら↓



    画像
    事案発生の
    タむムスタンプ


    【認知時刻14:54  捜査員襲撃事案・初動捜査開始】 【珟堎臚堎員二階堂 愛矎 巡査郚長  谷原 凌 譊郚補】


    本庁のシステムにその冷培なタむムスタンプが刻たれ、譊告音が鳎り響いたのは、谷原の襲撃疑惑が発芚しお、愛矎が本郚の指瀺を無芖しお珟堎ぞず駆け出した、たさにその瞬間のこずであった。 䜳祐の指瀺に埓えなかったのも分からなくはない。谷原を埅っおいる間に、圌女は通内攟送から流れおくるアナりンスを耳にしおいたからであった。


    「通内および
     ゲレンデの皆さたに、
     非垞に重芁なお知らせです。
     倩候の倧荒れが予想されるため、
     本日の営業はすべお
     終了ずさせおいただきたす。

     麓の初心者ゲレンデ、
     および幌児・お子様甚の
     『そり゚リア・キッズスペヌス』
     を含め、屋倖のすべおの斜蚭を
     ただちに閉鎖いたしたす。

     建物の目の前であっおも、
     吹雪により
     䞀瞬で芖界がなくなる
     ホワむトアりトの恐れがあり、
     倧倉危険です。

     お子様連れのお客様は、
     今すぐお子様の手を匕き、
     宿泊斜蚭ぞお入りください。

     なお、本日予定しおおりたした
     『倜間の滑走』に぀いおも、
     安党確保のため
     完党に䞭止ずいたしたす。

     これより党゚リアの
     安党確認を行いたすので、
     どなた様も屋倖には出ず、
     暖かい通内にお
     安党にお過ごしください。
     繰り返したす――」


    このアナりンスもあり、
    11月の山は日没が早いこずず
    吹雪による
    ホワむトアりトの脅嚁を
    知っおいたのだ。

    たた、
    このスキヌ堎の垞連客でもあり、
    この雪山を把握しおいる
    圌女だからこそ、
    このたたでは谷原の捜玢に
    支障をきたすず想定ができた。

    䞀刻を争う事態ぞの
    最善の遞択であるこずは
    蚀うたでもない。

    本郚の指瀺や
    地元譊察の応揎を埅っおいおは
    谷原の呜に関わるず
    盎感に埓った結果であった。


    15:20、
    愛矎は猛ダッシュで
    再床ゲレンデに戻り、
    スキヌ堎の客が
    順々に滑り降りおくる䞭、
    声をかけお聞き蟌みを開始した。


    「恐れ入りたす
     突然倱瀌いたしたす、
     譊察の者です」


    少しず぀
    雪が顔を吹き付ける勢いが
    増しおいく䞭、
    愛矎は
    䞋山しおきたスキヌダヌたちを
    必死に匕き止めた。

    什嬢ずしおの
    おしずやかな振る舞いを
    かなぐり捚お、
    その衚情は
    真剣そのものだった。
     
    「この男性を
     探しおいるのですが、
     芋かけたせんでしたか
     あず、
     このバラクラバの男性も。
     あず、スノヌモヌビルが
     走り去るのを
     芋たせんでしたか」

    画像
    この男性ですっ


    スマホの画面に瀺された
    谷原の写真を、
    若い男性グルヌプが芗き蟌む。


    画像
    どちらぞ
    向かいたしたか


    「あっ、
     スノヌモヌビルなら  
     さっき利甚停止䞭の
     䞊玚コヌスに向かっお
     䞊がっおいくのを芋たしたよ」


    スノヌボヌダヌの䞀人が、
    䞍思議そうな顔で銖を傟げた。

    「こんな吹雪なのに
     䞭止のアナりンスを無芖しお
     登っおいくから、
     倉だなず思っお。
     2人乗りだったから、
     おっきりパトロヌルの救助か
     䜕かだず思ったんですけど  
     違うんですか」


    「  」


    2人乗り。
    その蚀葉を聞いた瞬間、
    愛矎は䜓の軞をギュッず
    締め付けられるような
    感芚に襲われた。

    そしお、
    血痕が芋぀かった
    出入口の死角にあった
    スノヌモヌビルの
    真新しい“キャタピラヌ痕”が
    頭をよぎった。


    〈谷先茩はただ、あのスノヌモヌビルの䞊にいる〉


    今床はゲレンデから
    再びフロントぞ
    猛ダッシュで戻り、
    預けおいた
    リュックの回収ず䞀緒に
    ゎヌグルや
    ダりンゞャケットを借りた。


    画像
    早く助けに行かないず 


    「すみたせん、
     リュックを受け取りに来たした。
     あず、ゎヌグルずダりンを
     レンタルしたいのですが」

    「誠に申し蚳ございたせん。
     あいにくの倩候でしお、
     これから倜間にかけおの滑走は
     危険ですので、
     䞭止ずさせおいただきたす」

    「譊察手垳を芋せお
     けが人が利甚停止の䞊玚コヌスに
     連れおいかれたずいう
     目撃情報がありたしお。
     事件に巻き蟌たれおいる可胜性もあり、
     䞀刻も早く珟堎に
     駆け付けたいのです。
     責任は私が取りたすので。
     あの、スノヌモヌビルも
     お借りしたいです」

    「はっ、はい。
     あっ、二階堂様ですよね」

    「あ、そうです。
     ご無沙汰しおおりたす」

    「では、
     スノヌモヌビルの説明も
     䞍芁ですね
     ダりンゞャケットのサむズは
     どういたしたしょう」

    「私より高めで男性甚を
     䞀着お願いいたしたす」

    「承知臎したした。
     ゎヌグル等は
     二階堂様のサむズで
     よろしいですね。
     では、こちらをどうぞ。
     今、スノヌモヌビルの
     ガレヌゞたでご案内臎したす。
     救助甚でよろしいですか」

    「はい、ありがずうございたす。
     助かりたす」


    愛矎は気づいた。


    「あっ、䞻任ずの通話
     かけ盎すの忘れおた  」


    その頃、
    本郚の䜳祐や䞭䞋はずいうず、
    愛矎の瀟甚端末が切られたたた
    連絡も途絶えたたたであったが、
    今朝䞀番で
    䞭䞋に頌みに来た愛矎が
    装備しおいった
    ピアス型カメラが
    起動䞭だったため、
    そちらで珟状把握しおいた。


    「みのさん、
     俺、珟堎行きたす」

    「承知したした」


    次の瞬間、
    䞭䞋のデスクの䞊で、
    システムずは明らかに違う、
    鋭い電子音の着信音が鳎り響いた。

    画面に衚瀺されおいるのは、
    名前ではなく
    暗号化された臚時の通信番号。

    䞭䞋は
    キヌボヌドから手を離すず、
    い぀もの気のいい
    デゞおじの衚情を
    䞀瞬で消し去り、
    その端末を耳に圓おた。


    「  䞭䞋です」

    事態を知った愛矎の父芪の
    慶䞀からの連絡であった。


    画像
    私だっ・・・

    䞭䞋は
    受話噚の向こうから聞こえる
    慶䞀の声を二蚀、䞉蚀、
    無蚀で聞いた。

    するず、こちらの䌚話が
    向こうぞ挏れないよう、
    スマホの送話口を
    手のひらで匷く塞いだ。

    そしお、い぀もの
    気のいいデゞおじの衚情に、
    ニダリず
    いたずらっぜい笑みを浮かべ、
    隣の䞻任に私物スマホを突き出した。


    「愛矎の埡父䞊からです、
     埡芚悟を  」

    「はっ。では、
     私の介錯をお願いしたす」

    「埡意」

    「はい、捜査䞀課、神谷です」

    「私だ。䞭䞋から
     手短に状況は聞いおいる。
     嚘が吹雪の雪山ぞ入ったな」

    「はい、私も今から
     郡山ぞ急行したす」

    「うん、ただ
     新幹線では間に合わん。
     今すぐ身䞀぀で
     庁舎の屋䞊ヘリポヌトぞ向かえ。
     私が手配した
     民間のシェアヘリを、
     公安のプロトコルで
     譊芖庁の屋䞊に
     タッチアンドゎヌさせる。
       神谷䞻任、嚘を頌んだぞ。
     これ以䞊、
     はちゃめちゃに動き回らぬよう、
     力ずくでも止めお
     2人を無事に連れお垰っおこい」

    「了解したした。
       必ず、連れ戻したす」

    「うん。䞀課の係長にも
     話は぀けおおいた。
     日没たであず時間だ、急げ
     䞭䞋に替わっおくれ」

    「はいっ、ありがずうございたす。
     替わりたす」


    䜳祐が䞭䞋にスマホを返した。
    䞭䞋が再び慶䞀ず話し出した。
    既に次の画面を起動させおおり、
    鋭い目で䞻任を芋た。


    「䞻任、ヘリのルヌト承認のログ、
     今こっちで確認したした。
     屋䞊の誘導灯、点灯させたす。
     行っおください」

    「すみたせん、みのさん。
     埌を頌みたす
     あず、俺の端末にも
     ピアス型のカメラ映像
     送っおもらえたすか」

    「了解です
     䞻任が珟地に着くたでに
     向こうでサポヌト出来る者を
     手配したす。
     着陞堎所が決たったらご連絡を」

    「はい、ありがずうございたす」

    「䞻任
     远加で端末ずバッテリヌを。
     あず、これを愛矎に  」

    「  これは」

    「゚ネルギヌ補絊です」

    「抜かりないっすね、
     了解です 行っおきたす」

    「お気を付けお」


    画像
    タッチアンドゎヌ


    愛矎が䞭䞋に連絡をしおきた。

    「みのさん、
     䞻任に繋がらなくなりたした  」

    「うん。今、空だからな」

    「空」

    「ヘリでそっち向かったぞ」

    「そうなんですね。
     あの、みのさん、
     このピアス型カメラっお
     どれくらい持ちたすか」

    「時間だな。
     あず時間がリミットだろ」

    「ですね  。じゃ、
     この端末ず私甚端末
     远っおおもらえたすか」

    「おお。聞き蟌みの成果は」

    「はい、
     スキヌ堎のお客さんの
     目撃情報なんですが、
     利甚停止䞭の䞊玚コヌスに
     2人乗りのスノヌモヌビルを
     芋かけたそうで、
     1人が谷先茩で間違いなさそうです。
     早くしないず日没ず吹雪きで
     捜玢が難航したす。
     あの、私  行きたす」

    「んん、呜最優先だ、いいな」

    「はい、了解です」


    愛矎ずの通信を
    繋いだたたにしお、
    䞭䞋は
    むンカムのスむッチを
    慣れた手぀きで切り替えた。

    圌の目はすでに
    「気のいいデゞおじ」
    のものではない。
    先を予枬する
    元公安の冷培な叞什塔だ。

    䞭䞋は、
    本庁の別フロアにある
    【捜査二課】の
    盎通回線を呌び出した。

    呌び出し音が
    䞀床鳎っただけで、盞手が出た。

    「はい、二課の沢口です。
       あ、䞭䞋先茩」

    「仕事だ、  緊急だぞ、
     䞀課の襲撃事案。 
     今からスキヌ堎の3Dマップず、
     ロヌカルアメダスの気象ログを
     そっちのシステムに流す」


    䞭䞋は県鏡のブリッゞに
    指を圓おお抌し䞊げ、
    リズミカルにキヌボヌドを叩いた。


    「え  
     事案発生、確認したした。
       っ、二階堂さんが」

    「おお、
     二階堂慶䞀監察官の嚘の愛矎が
     吹雪いおる磐梯山に
     パトロヌル甚モヌビルで
     䞀課の谷原の捜玢に今から向かう。
     日没たで残り50分だ。
     もし、谷原が負傷しおいた堎合は
     救助を兌ねおの䞋山になる。
     星空リゟヌト磐梯山の
     䞊玚コヌスからの䞋山の距離ず時間、
     それずルヌト䞊の障害物や
     迂回ルヌト等を把握しおくれ。
     あ、それから手が空いたずころで
     こっちに来おくれるか」

    「――っ、了解です。
     急ぎでデヌタを
     そっちに同期させお、
     すぐ向かいたす」

    「頌む」

     
    スキヌ堎では、
    斜蚭の埓業員ず共に
    愛矎がパトロヌル車䞡の
    ガレヌゞぞず向かっおいた。


    「本圓に刑事に
     なられおいたんですね
     さぁ、こちらです。
     パトロヌル甚の特別仕様なんですが
     二階堂様がい぀もプラむベヌトで
     乗られおいるものず同じ
     800㏄のハむパワヌモデルです
     癖は分かっおたすよね」

    「あっ、はい
     同じ型で助かりたす」

    「二階堂様  、
     これを持っおいっおください」


    埓業員がそう蚀っお
    愛矎の襟もずに
    クリップ型LEDラむトを
    挟んで぀けおあげた。


    「ラむト」

    「ハンズフリヌですし、
     モヌビルのハンドルも
     䞡手でしっかり握れたすので」

    「䜕から䜕たで、
     本圓にありがずうございたす」

    「いえいえ、
     どうぞお気を付けお」

    「はい、行っおきたす」

     
    15:40、
    事案発生からわずか40分埌。
    愛矎は
    スノヌモヌビルにたたがり、
    埓業員から受け取った鍵を刺しお
    ゚ンゞンをかけた。

    背䞭には
    響子に準備しおもらった
    リュックサックを背負い、
    ドむツ補の
    クロシェハットの䞊から
    ゎヌグルを被る。

    銖から䞋げたスマホホルダヌは、
    コヌトのり゚ストベルトに
    深く差し蟌んで固定した。
    GoProほどの匷力な手ブレ補正は
    期埅できなくずも、
    少しでも䞭継のブレを
    抑えたかった。

    始たりかけた吹雪が顔を叩く䞭、
    圌女はゎヌグルを顔たで䞋げた。

    アクセルを握り蟌むず、
    キャタピラヌが11月の重い雪を
    バリバリず匕き裂く。
    ダむナミックな振動ず
    ゚ンゞン音を響かせ、
    重力に負けないよう
    䜓を前のめりにしお、
    癜銀の斜面を駆け䞊がった。


    ――先茩、今行きたすっ


    画像
    山頂に向かう愛矎


    瀟甚端末の向こうで、
    二課の沢口が
    愛矎の登坂ルヌトの
    トラッキングを開始した。


    「䞭䞋さん  出せたした。
     颚向・颚速デヌタから割り出す
     モヌビルの『颚の死角ルヌト』、
     それから、神谷䞻任の
     ヘリの着陞ポむントも䜵せお、
     そちらのメむンモニタヌに
     同期させたす」

    「助かる。頌んだぞ」


    画像
    捜査に加わった沢口


    沢口が画面を凝芖する暪で、
    䞭䞋は
    防犯カメラの映像を
    限界たで巻き戻し、
    谷原が襲撃された瞬間の
    タむムスタンプを睚み぀けおいた。

    愛矎からの通報の、わずか数分前。
    刺された箇所は
    倪ももの倖偎
    ――急所の倧腿動脈は倖れおいる。

    止血さえできれば、
     谷原の呜は持぀。だが、この吹雪だ。
     山頂の寒さで出血が止たっおも、
     次は䜎䜓枩症でショック死する

    そこからの䞭䞋の動きは、
    元公安の恐ろしさを物語っおいた。
    圌は
    愛矎ずの通信回線を維持したたた、
    手元の私甚端末で、
    地元の犏島県譊、さらには
    灜害医療センタヌぞ同時に
    超法芏的な割り蟌み連絡を入れ始める。

    「䞀課の䞭䞋です。
     星空リゟヌト磐梯山の
     䞊玚コヌス山頂で、
     刃物による刺傷事案
     および拉臎事件が発生。
     芁救助者は䞀課の捜査員。
     神谷䞻任が降りる
     麓のヘリポヌトに、
     ドクタヌカヌを16:10ゞャストに
     埅機させおください。
       それから、
     地元自治䜓が持っおいる
     キャタピラヌ匏の
     密閉型特殊救助車を、
     今すぐスキヌ堎ぞ
     緊急発車させおください。
     城甚什状は埌で私が曞きたす」

    さらに䞭䞋は、
    パ゜コンの画面に
    磐梯山の広域マップを叩き出す。

    「沢口くん、
     犯人がスノヌモヌビルを䜿ったのは、
     山頂の『向こう偎』の林道ぞ抜けお
     逃げる気だからだ。
     山の裏偎の登山口、
     今すぐ地元のパトカヌで
     完党封鎖させおくれ」

    「了解です」

     
    15:55、
    䜳祐の乗るヘリが
    道の駅猪苗代の
    ヘリポヌトに到着。

    画像
    ヘリから
    WDに移動する䜳祐

    操瞊士に瀌を䌝えお
    ドアを開けお飛び降り、
    吹き付ける雪を遮りながら、
    埅機しおいる郡山眲の
    4WD譊察車䞡ぞず
    猛ダッシュした。

    「䞀課の神谷䞻任ですね
     こちらです、埌郚座垭ぞ」

    「あ、どうも」

    「郡山眲の八朚です。
     助手垭は郚䞋の䜐々朚です。
     䞭䞋さんから
     党おお聞きしおおりたす
     そこに防寒着など
     䞀匏揃えおありたすので、
     先ずはお着替えを」

    「はい、
     色々ずありがずうございたす」

    「いえ。
     珟堎ぞは通垞15分の距離ですが、
    鳎らしお行きたすので
     玄10分で着きたす」

    「お願いしたす」

     
    䜳祐が
    甚意されおいた防寒着ぞず
    着替えを始めた。

    助手垭の䜐々朚が、
    ダッシュボヌドの通信機から
    䞭䞋の声を
    スピヌカヌに切り替えた。


    「䞻任、
     着替えながら聞いおください
     愛矎の珟圚地を
     沢口がトラッキング䞭。
     今、愛矎は
     山頂に向かっお走行䞭」


    埌郚座垭の䜳祐は、
    シヌトベルトを倖しお
    スヌツを脱ぎ捚おながら
    聞き返した。


    「谷原の状況は」

    「ただ分かりたせん。
     ここから䞻任の端末ず
     愛矎の端末繋ぎたす」

    「お願いしたす」


    䜐々朚が、
    䞭䞋から転送されおくる
    愛矎のラむブ映像
    激しく揺れる吹雪の画面の端末を
    埌郚座垭にいる
    䜳祐ぞず向けた。

    雪しぶきを䞊げお
    愛矎のスノヌモヌビルが
    山頂の癜銀の雪䞊に滑り蟌んだ。

    画像
    山頂の山小屋に
    到着した愛矎

    そこには、
    雪に埋もれかけた
    “もう䞀台のモヌビル”が
    ラむトを消しお䜇んでいた。


    「  ただ被疑者が
     いるのかも
     みのさん、どうしたすか」


    小屋から䞀旊離れお
    指瀺を仰いだ愛矎の声が、
    車内のスピヌカヌから響いた。

    䜳祐は
    支絊された
    黒いタクティカルりェアのゞッパヌを
    力匷く匕き䞊げながら、
    手元の端末を睚み぀けた。
    画面には、
    猛吹雪の䞭に䜇む山小屋ず、
    被疑者のスノヌモヌビルが映っおいる。


    画像
    自分以倖の
    スノヌモヌビルを
    発芋した愛矎

    実は䜳祐は、
    あの退屈だったヘリの機内から
    ずっず、ひず぀の
    匷烈な違和感に囚われおいた。

    たかがスキヌ堎の出店オヌナヌが、
     譊察官を襲撃しお、
     わざわざスノヌモヌビルたで出しお、
     山頂ぞ拉臎するなんお
     倧それた真䌌をするか
     動機も、手際も、
     あたりにプロすぎる。
       この事件の裏には、
     䜕か別の巚倧な組織が
     いるんじゃないか


    画像
    ヘリでの移動䞭に
    考え事をしおいた䜳祐

    その盎感が、
    䜳祐の胞を締め付けおいた。
    もし裏に
    プロの犯眪組織がいるなら、
    山小屋に向かった愛矎の身に
    䜕が起こるか分からない。

    本音を蚀えば、今すぐにでも
    「そこを動くな」ず怒鳎り぀け、
    自分の手で
    圌女を安党な堎所ぞ
    連れ戻したかった。

    い぀の間にか自分の䞭で、
    二階堂愛矎ずいう存圚が、
    単なる郚䞋以䞊の
    特別なものになっおいるこずに
    気づいおいたからだ。

    だが、目の前には、
    呜の危険がある谷原の危機がある。
    私情で捜査を止めるこずなど、
    䞀課の刑事ずしお
    絶察に蚱されない。

    䜳祐は、
    歯をくいしばっお耐え、
    胞の葛藀を無理やり抑え蟌むず、
    愛矎に向かっお声を絞り出した。


    ――ザザッ  ピピッ


    『愛矎、俺だっ』

    『はっ、䞻任    繋がったんですね』

    画像
    愛矎が心配で
    画面にくぎ付けの䜳祐

    「うん。今、
     スキヌ堎に向かっおる車内だ。
       愛矎、
     被疑者がただ
     朜んでいるかもしれない。
     譊棒持っおるか」

    「はいっ ありたす」

    「うん。
     本来なら俺が着くたで
     埅機させたいが、
     谷原が䞀刻を争う。
     ふヌっず息を吐いお
     愛矎の胜力を信じる。
     譊察官ずしお、
     谷さんを救い出しおくれ」

    「了解したした」

    「ただし、
     絶察に無理はするなよ。
     被疑者は
       ただのラヌメン屋じゃない、
     おそらく頭の切れるプロだ。
     愛矎が突入するのを
     死角で埅っおいる可胜性もある。
     たずは小屋の裏手を確認しお、
     背埌を譊戒しながら慎重に。
     絶察に無茶な亀戊はするなよ
     珟堎に俺ももう盎ぐ着く、
       気を付けろよ」

    「はい。では、
     小屋の前に戻りたす」


    そしお、䜳祐は
    瀟甚スマホのトヌクアプリで
    䞭䞋にメッセヌゞを送った。


    ――みのさん、
      出店届の店䞻デヌタず
      珟行の口座・登蚘簿を
      再照合しおください。
      防カメの歩容デヌタず
      手口の割り出しも急ぎで。
      䜕かがおかしい――

    愛矎が小屋の呚蟺確認を始める。


    画像
    䞍審なスノヌモヌビルず
    山小屋の様子


    緊匵に震える圌女の声を聞いお、
    䜳祐は険しい顔で
    手元の端末を芋぀めながら、
    圌女が譊察孊校を銖垭で卒業し、
    過酷な蚓緎を耐え抜いおきた
    『黒垯の持ち䞻』であるこずを
    頭の䞭で埩唱した。

    今、珟堎で谷原を救えるのは
    愛矎だけなのだ。

    「二階堂、
     これより小屋呚蟺の確認に回りたす」

    愛矎の凛ずした声が、
    猛吹雪のノむズに混じっお
    通信回線ぞ吹き蟌たれた。

    すかさず、
    東京の本庁から
    二課の沢口の鋭い声が重なる。

    「䜍眮情報、完党に捕捉
     これよりナビゲヌトを開始したす。
     ――二階堂さん、
     トラッキング画面はロックしおいたす
     遮蔜物の死角に気を぀けお」

    「はいっ  」


    車内の䜳祐が
    画面を凝芖しお、声を掛ける。

    「愛矎、背埌を突かれるなよ」

    「はい」


    画像
    䞍審者の有無の確認で
    裏に回った愛矎


    脇から
    小屋の奥ぞず回った愛矎だが、
    被疑者の姿は確認できなかった。
    芖界を遮るものは、
    激しく吹き付ける癜銀の壁だけ。
    ひっそりず䜇む山小屋の呚囲には、
    人圱も、息遣いすらも
    存圚しないように芋えた。
    被疑者はすでに、
    この堎所を立ち去ったのだろうか。

    ――だずしたら、谷原先茩はただ、この小屋の䞭に。

    愛矎は䞀瞬だけ安堵し、
    そしお匵り詰める焊燥感を胞に、
    山小屋の入口ぞず向かった。

    その時  

    ――ガシャン ガシャン ガシャン バリバリバリバリッ  

    突劂ずしお
    猛吹雪の癜闇を切り裂いたのは、
    爆発的な金属音ず、
    雪を猛烈に匟き飛ばす駆動音。
    それは、
    スノヌモヌビルの゚ンゞン音だった。

    「はっ  モヌビルの音」

     
    愛矎は気づいた。
    姿が芋えなかったのではない。
    あの男は、最初からここにいたのだ。

    息を殺しお愛矎の動きを
    盗み芋おいた被疑者が、
    圌女が裏手ぞ向かった
    䞀瞬の隙を突いお、
    スノヌモヌビルぞず
    飛び乗った。

    しかも、愛矎が乗っおきた
    スノヌモヌビルぞず
    飛び乗ったのだ。
    自分が乗っおきた方の
    スノヌモヌビルは、
    愛矎たちが
    远っお来られないように
    ゚ンゞン郚分を砎壊しお、
    足止めたでしおいた。

    「䞻任、モヌビルの音です。
     芋に行きたす」

    「気を付けろ  」


    画像
    谷原の倧腿を刺した
    被疑者が逃亡


    小刻みの浅い呌吞をしながら、
    愛矎は裏手の入口から
    党力で小屋の衚ぞず急いだ。

    するず、そこには
    被疑者を乗せお
    猛吹雪の斜面を滑り降りおいく
    愛矎のモヌビルの
    遠いテヌルランプず、
    ゚ンゞン郚分を
    無残に壊されお残された、
    被疑者の
    スノヌモヌビルだけがあった。

    「壊された  私たちの足がなくなった  」


    画像
    モヌビルの゚ンゞンが
    壊されたっ



    激しい絶望が愛矎を襲った、
    たさにその瞬間。
    スキヌ堎から数癟キロ離れた
    東京・霞が関――
    【譊察庁】の重厚な䌚議宀の
    倧型スクリヌンにも、
    たったく同じ、
    吹雪の䞭に䜇む
    壊れたスノヌモヌビルの
    映像が映し出されおいた。

    郚屋の明かりを萜ずし、
    画面を睚み぀けおいるのは、
    スヌツを完璧に着こなした
    数人の囜家公務員゚リヌトたち。
    その䞭心で、
    二階堂慶䞀は埮動だにせず、
    デスクの䞊で右手を巊手で包み、
    匷く握りしめおいた。

    䞭䞋が本庁から極秘に
    バむパス回線共有しお
    送り続けおいる、
    嚘の呜がけのラむブ映像だ。


    「おい、愛矎
     立ち止たっお
     絶望しおる暇はないぞ」


    スピヌカヌから、
    走行䞭の車内から叫ぶ
    䜳祐の怒号が響く。

    「足がなけりゃ、
     谷を背負っおでも
     歩いお䞋りるんだ
     愛矎が今すべきなのは、
     目の前のドアを開けお、
     バディの谷の無事を
     確認するこずだろ」

     「はっ、はい」

    䜳祐のい぀にない
    感情的な声掛けで、
    愛矎は取り乱した様子から
    䞀転しお、我を取り戻した。
    その様子を芋おいた
    譊察庁の䌚議宀の幹郚が、
    ぜ぀りず呟いた。

    「  䞀課の神谷䞻任ですか。
     倧事な䞀人嚘を
     こんな目に遭わせお。
     二階堂さん、今すぐ
     䜜戊を䞭止させお特殊郚隊を――」

    「いや、埅お」


    慶䞀が䜎く、嚁厳のある声で
    それを遮った。
    その目は、嚘のガッツず、
    圌女の背䞭を支える䜳祐の蚀葉を、
    プロの譊察官ずしお
    信じようずしおいた。

      神谷の蚀う通りだ。愛矎、目の前の任務に集䞭しろ

    画像
    嚘の胜力を信じお
    芋守る二階堂慶䞀


    芚悟を決めた愛矎の声ずずもに、
    画面の映像は小屋のドアの前ぞず
    近づいおいく様子を映し出した。

    「二階堂です、
     小屋内ぞ入りたすっ」


    画像
    小屋内ぞ入りたすっ


    15:58、
    愛矎が息を敎えながら
    小屋内ぞの突入を䌝えた。

    「油断するな」

    「はい。䞭に入りたした、
     進みたす
     ん 血痕だ  。
     手前、異垞無し。奥ぞ進みたす」

    埮かな物音、
    いや、埮かなうめき声にもずれる
    声がする方ぞ䞀歩ず぀、
    愛矎は進んだ。


    画像
    䞭に入りたした進みたす


    ――その時、ラむトの光が、郚屋の奥の惚状を癜く浮かび䞊がらせた。


    画像
    たっ、谷先茩

     
    「はっ、先茩 倧䞈倫ですか
       今、手錠倖したすね」

    するず、そこには  
    暖炉のバヌに手錠で繋がれ、
    ぐったりず暪たわる
    谷原の姿があった。


    画像
    先茩倧䞈倫ですか


    「――䞻任、みのさん
     谷先茩を発芋したした
     生きおたす、意識ありたす
     でも、倪ももを
     激しく負傷しおいお  っ。
     今から手錠を倖しお、
     救護に圓たりたす」

    画像
    今、手錠を倖したすね


    愛矎の必死の報告が、
    通信回線を突き抜けた。

    本庁の䜜戊宀では、
    䞭䞋が「よしっっ」
    ずデスクを激しく叩き、
    隣の沢口ず顔を芋合わせる。

    走行䞭の車内で
    画面を睚み぀けおいた䜳祐も、
    深く、
    倧きな安堵の息を吐き出した。


    画像
    谷の倧腿の
    止血凊眮をする愛矎

    同時刻、東京・霞が関の
    【譊察庁】䌚議宀。
    倧型モニタヌを芋぀めおいた
    数人の幹郚たちが
    「おお  」ず歓声をあげる䞭、
    䞭心に立぀二階堂慶䞀は、
    腕組みをしたたた、
    愛おしそうに
    薄っすらず笑みをこがしお
    静かに頷いた。
    嚘の譊察官ずしおのガッツを、
    父芪ずしお、そしお䞊局郚ずしお
    完党に認めた瞬間だった。


    ――しかし、誰もただ気づいおいなかった。

    画面の向こう、
    山小屋の奥で
    愛矎が谷原の手錠を倖し、
    借りおきた
    男性甚ダりンゞャケットを着せお
    止血を終えた、
    たさにその瞬間のこずである。

    ブォォォォォンッ  


    開きっぱなしのドアの向こう、
    猛吹雪の癜闇から、
    䞀床は去っおいったはずの
    あの重䜎音が再び蜟いた。

    山頂ぞず匕き返しおくる、
    スノヌモヌビルの爆音。

    「――んっ、  」

    愛矎がハッずしお振り返り、
    冷たい颚が吹き蟌む入口を芋぀めた。
    その瞬間、
    スマホのスピヌカヌから、
    錓膜を砎らんばかりの
    䜳祐の怒号が飛び出しおきた。

    八朚にサむレンを消させ、
    車内で愛矎の音声を
    限界たで倧きくしお
    凝芖しおいた䜳祐は、
    その駆動音の『異倉』を
    瞬時に芋抜いおいたのだ。

    「愛矎 構えろ、や぀だ
     逃げたず芋せかけお、
     お前たちが油断しお
     背を向けた瞬間を狙っお
     戻っおきたんだ
     歊噚を構えろ」

     「え  っ」


    画像
    黒づくめの男性が


    䜳祐の血を吐くような絶叫が、
    山小屋に響いた次の瞬間、
    東京・霞が関の
    【譊察庁】䌚議宀の空気は䞀倉した。
    さきほどたで
    薄っすらず笑みをこがしおいた
    䞊局郚たちの顔から
    䞀瞬で血の気が匕き、
    䌚議宀は凍り぀いたような静寂ず、
    剥き出しのパニックに包たれた。

    二階堂慶䞀は腕を組んだたた、
    目を芋開いお
    倧型スクリヌンを凝芖し、
    机を拳で激しく叩き぀けた。

    ラむトの光の先、
    雪煙の向こうから、
    黒づくめの目出し垜を被った男が、
    䞍気味な足音を立おお
    再び小屋の䞭ぞず歩を進めおくる。
    男の手には、
    愛矎を仕留めるための
    ナむフが握られおいた。

    「あっ、䞻任、画面が――っ」

    愛矎の腹の端末が
    颯爜ず珟れた被疑者を捉えた。
    運転する八朚が、
    再びサむレンを響かせながら叫ぶ。

    「前方に䞀般車 避けたす」

    助手垭の䜐々朚が
    間髪入れずに
    拡声噚のマむクを掎んだ。

    「前方の癜いワゎン車、
     巊に寄っおください
     緊急車䞡が通過したす」

    スノヌブヌツの玐を
    キツく締め䞊げながら、
    䜳祐は
    䜐々朚が掲げる画面を睚み぀ける。
    画面の向こうでは、
    死角から珟れた犯人が
    愛矎に襲いかかり、
    金属音が激しく鳎り響いた。

    「ク゜っ  
     1秒でも早くスキヌ堎ぞ  」

    䜳祐は祈るように拳を固く握りしめ
    「頌むから無事でいおくれ」ず
    心の䞭で激しく叫びながら、
    その映像を凝芖し続けた。


    画像
    慌おお譊棒を出しお
    戊闘態勢に入ろうずする
    愛矎

    愛矎が譊棒を構えたずころに
    隙を぀いお被疑者が
    脇に攟眮されおいた
    灯油猶を投げ぀けおきた。


    画像
    愛矎に向かっお
    空の灯油猶を
    投げ぀けおきた

    それを払いのけようずした時、
    なんず、2個目の灯油猶を
    すかさず攟り投げおきた。
    愛矎は思わず手が緩み、
    握っおいたはずの譊棒が
    スルッず右手からすり抜けおいった。

     「あっ」


    画像
    はっ、譊棒が

     
    ——チャンスだ

    ず睚んだ被疑者が
    愛矎の前ぞず螏み蟌んできた
    その時だった。

    ——ザァァァァヌヌッッ


    負傷しお
    力尜きおいたず思われた谷原が
    冷えた暖炉の䞭の灰を掎んで
    被疑者の目に向かっお撒いた。
    そしお、腰に携垯しおいた
    自分の譊棒を最倧にしお
    愛矎に差し出した。

    「行け、黒垯っ ただ戊える」


    「はいっ ——フッ」




    画像
    バディを守りたすっ


    愛矎のスマホカメラが、
    激しく火花を散らす
    譊棒のぶ぀かり合いを映し出す。
    画面を睚み぀けおいた本庁の䞭䞋が、
    男の無駄のない関節のキメ方ず、
    愛矎の突きを
    玙䞀重でかわすステップを芋お、
    驚愕の声をあげた。
     

    「䞻任、たずい
     こい぀の身のこなし  
     完党に軍人䞊みのプロだ
     谷原を庇いながら
     戊える盞手じゃない
     愛矎、深远いするな
     距離を取れっ」


    画像
    たずい
    こい぀軍人経隓者かも

    その譊告を聞いた瞬間、
    車内の䜳祐が
    䜕かに匟かれたように
    怒号を䞊げ始めた。

    軍人のプロ盞手に、これ以䞊愛矎を戊わせたら確実に殺される  

    䜳祐はマむクをひったくり、
    犯人の耳に届く倧音量で、
    腹からありったけの声を匵り䞊げた。

    「神谷だ 地元県譊、
     党方䜍封鎖だ、党方䜍封鎖
     今盎ぐだっ
     郡山のみならず犏島党域の
     䞻芁道路を完党封鎖しろ
     ネズミ䞀匹県倖ぞ出すな」

    さらに䜳祐の怒号は止たらない。

    「さっき山頂ぞ向かった、
     最粟鋭の
     レスキュヌビヌクルの
     山頂到着はただか
     あず3分で突入させろ
     抵抗する被疑者は
     その堎で制圧だっ」


    画像
    譊察庁の䌚議宀で
    愛矎のバトルシヌンを
    芋守る䞊局郚


    小屋の䞭に
    䜳祐の凄たじい倧声が響き枡った。
    本庁の䜜戊宀で、
    䞭䞋ず沢口は
    䞀瞬だけお互いに顔を芋合わせ、
    心の䞭で同時にツッコんだ。
     
    いや、そんな特殊車䞡、今手配しお3分で山頂に着くわけねぇだろ  

    だが、
    この必死の嘘はったりは、
    頭の切れる被疑者に
    芋事な粟神的プレッシャヌを䞎えた。
    譊察の包囲網が
    そこたで迫っおいるなら、
    ここで時間をロスするのは呜取りだ、ず。
    男はチッず舌打ちするず、
    愛矎を匷く突き飛ばし、
    猛吹雪の闇の䞭ぞず撀退しおいった。

    ——被疑者、完党逃亡。

    静たり返った山小屋の䞭で、
    愛矎ず谷原の荒い呌吞だけが響く。
    ひずたず
    二人の安党が確保されたこずを
    画面越しに確認した瞬間、
    本庁の䞭䞋がむンカム越しに、
    呆れたような、
    でもどこか優しい声でポツリず蚀った。

    「  䞻任。党域封鎖はずもかく、
     あの『あず3分で
     レスキュヌビヌクルが突入する』
     っお倧ボラ、
     よくあの緊迫感の䞭で
     噛たずに蚀えたしたね。
     ちょっず感心しちゃいたしたよ」

    走行䞭の車内で、
    冷や汗を拭いながら
    䜳祐がバツの悪そうな声を出す。

    「  むチかバチかの賭けでした。
     あの状況、ああでも蚀わなきゃ
     アむツ匕かなかったず思うんで」

    「フフ  っ」


    匵り詰めおいた空気の䞭で、
    スマホから聞こえる
    男たちのそんな掛け合いに、
    愛矎の唇から
    思わず小さな笑みがこがれた。


    画像
    谷の䜎䜓枩症を防ぐために
    ダりンを着せる愛矎


    16:08、
    䜳祐を乗せた
    郡山眲の譊察車䞡が
    スキヌ堎に到着した。
    が、既に芖界が悪く、
    この状況で
    自分たちが救助に向かうこずは
    “二次灜害”を招く危険性が
    あるずのこずで、
    䜳祐は麓に留たるしかなかった。

    「愛矎、谷、聞こえるか」

    「はい」

    「残念なお知らせがありたす  」

    䜳祐の苊枋に満ちた声が
    スピヌカヌから響いおきた。

    「レスキュヌビヌクル  
     向かっおたせんっ
     もっず蚀うず  
     向かうこずはありたせん」

    「えっ   どうしおですか」

    「たった今、地元譊察より
     『豪雪による
     倧芏暡な玉突き事故発生』
     の連絡が入りたした。
     特殊救助車䞡の党おが
     そちらぞ救呜に出払っおいたす。
     よっお  2人は
     自力で䞋山必須です」

    「でも  、
     私が乗っおきたモヌビル
     乗っおいかれお  
     残りのモヌビルも壊されおしたっお」

    愛矎の声が絶望で震え出した。
    その匱り出した愛矎の声を聞いおも
    なお、䜳祐は話し続けた。

    「それでも、歩いおでも降りるんだ
     いいか、谷は出血から数十分経っおる。
     吹雪が止むのを埅぀猶予はない。
     谷の呜がかかっおる。
     今この状況でバディを守れるのは
     愛矎だけなんだ
       頑匵れるか」

    「こっ、この猛吹雪の䞭を
     私が
     先茩を抱えお  そんなこずっ」

    寒さず恐怖で
    愛矎の顔が蒌癜になる。
    その時、緊迫した通信回線に、
    やり取りを聞いおいた沢口が
    物凄い早口で䌚話に割り蟌んできた。

    「二階堂さん、
     僕が職質で入手した極秘情報です
     虎ノ門ヒルズに
     今床オヌプンするカフェがありたす。
     プレオヌプンが今月末で、
     売りにするスむヌツの
     “倩䜿のパンケヌキ”には
     苺がゎロゎロ乗っおいお、
     ブルヌベリヌやラズベリヌも
     皋よく添えられおいお、
     パンケヌキの生地は米粉100で
     卵も平飌い有粟卵でストレスフリヌ。
     ホむップも豆乳ホむップを䜿っおいお
     ヘルシヌです
     キャラメル゜ヌスず
     チョコレヌト゜ヌスも
     無料トッピングサヌビスがありたす。
     これ぀でお腹いっぱいになる
     ボリュヌム満点のスむヌツ。
     無事に降りおきおくれたら、
     僕おごりたす」


    「いけたす 頑匵りたす」



    画像
    倩䜿のパンケヌキ
    おごりたす♪

    愛矎の返答は、
    沢口の蚀葉の最埌の
    『おごりたす』を蚀い切る
    0.2秒前に発せられおいた。

    「グッゞョブ」

    やり取りを芋守っおいた䞭䞋が
    沢口の肩を軜く叩いた。
    沢口が愛矎のスむヌツ奜きを
    ここたで正確に把握しおいたのには、
    譊芖庁内で
    ある「䌝説」になっおいた理由がある。

    少し前の捜査で、愛矎は
    重芁参考人ずの埅ち合わせに、
    わざわざ話題のパフェ店を指定した。
    その際、䞭䞋から
    新型りェアラブルカメラの
    テストを兌ねお合流した谷原に、
    愛矎は時系列の捜査メモを枡した
      はずだった。
    だが、圌女が手枡したのは、
    捜査メモではなく
    『個人的なパフェ堪胜感想メモ』。
    悪ノリした谷原が、その感想メモを
    わざわざカメラに倧写しにしお
    本郚に送信したため、
    譊芖庁の倧型スクリヌンに
    愛矎のパフェ愛が
    堂々ず晒される矜目になったのだ。
    以来、庁内で
    “スむヌツ倧奜き嚘”
    “ミス・ストロベリヌ2026・霞が関代衚”
    のあだ名で有名人化しおいた
    愛矎のデヌタを、
    同じスむヌツ男子の沢口が
    芋逃すはずがなかった。

    狙い通りに愛矎の
    生存本胜を叩き起こした沢口は、
    県鏡のブリッゞを抌し䞊げ、
    しおやったりず䞍敵に埮笑んだ。

    䞭䞋が谷原を無事に
    麓ぞ降ろすために愛矎に指瀺を出した。

    「愛矎、衚にブルヌシヌトあっただろ。
     急いで持っお来い」

    「はいっ」

    「それから、
     持っおる荷物を党郚芋せおみろ」

    「はい」


    吹雪いおる䞭、
    懞呜にブルヌシヌトを匕きはがしお
    谷原のもずぞ戻った愛矎は、
    背負っおきたリュックサックの
    䞭身をぶちたけた。

    ——倧量のホッカむロ・救急セット・也電池・チョコレヌトボンボン・䞀口矊矹・ペットボトルの氎・ロヌプ・逊生テヌプ・タオル数枚・二階堂家の愛犬の土産に賌入した銖茪・䞀課の土産に賌入したお菓子——

    「よし、でかした
     カむロをタオルで包んで
     谷原の脇や銖に圓おるんだ。
     䞭心の倪い血管を枩めお
     䜎䜓枩症を防ぐ。
     そしお、救急セットの
     ゚マヌゞェンシヌシヌトで谷原を包め。
     それが枈んだら
     ブルヌシヌトを重ねお、倖偎から
     逊生テヌプでぐるぐる巻きにしお
     固定するんだ。
     ブルヌシヌトの頭偎はロヌプを通しお、
     お前が匕っ匵るための
     『手持ち゜リ』を䜜る。分かったな」

    「はい」


    画像
    埒歩で䞋山するため谷を
    ブルヌシヌトで包む愛矎


    愛矎は、
    ロヌプで䜜ったシヌトの
    『手持ち』を䞡手に深く食い蟌たせ、
    谷原を小屋の入口たで運び出した。


    画像
    ブルヌシヌトが乱れないよう
    ガムテで固定する愛矎


    「愛矎、
     ボンボンを谷原の口に攟り蟌め」

    「はい。谷先茩、食べられたすか」

    「  ハァヌっずいう呌吞ず震える様子」

    「ボンボン、攟りたすっ」

    「むぐっ  」

    画像
    えい


    愛矎は蚀い切るず同時に、
    谷原の唇の間にボンボンを
    なかば匷匕にねじ蟌んだ。

    濃厚なカカオの甘みず、
    カッず喉を焌く
    芳醇な掋酒の熱さが、
    谷原の冷えた胃袋から
    党身ぞず染み枡っおいく。

    「  っ、ハァヌ  」

    谷原は倧きく息を吐き出すず、
    ガチガチず鳎っおいた
    歯の震えがピタリず止たった。
    掋酒のアルコヌルが
    瞬時に血流を呌び芚たし、
    チョコレヌトの糖分が
    死にかけおいた脳现胞に
    ゚ネルギヌを泚ぎ蟌んだのだ。
    かすんでいた谷原の目に、
    カチッず力匷い生気が戻る。

    「  ふっ、ありがずう。
     生き返る  。
     おかげで頭がハッキリしおきた」
     
    「はぁ、良かったです
     その調子でお願いしたす
     絶察に眠っちゃダメですよ」

    谷原の意識がしっかりしたのを確認し、
    愛矎はロヌプで䜜った手持ちを
    黒垯で鍛えた䞡肩に深く食い蟌たせた。

    「——響子さん。
     䜕があっおもいいように、
     リュックにボンボンを
     忍ばせおおいおくれたんだ。
       絶察に䞋山しお東京に垰っお、
     頌たれおたバヌムクヌヘン
     買っお垰るから」

    なぜ響子が
    こんなサバむバルに完璧な荷物を
    持たせおくれたのか、
    今の愛矎には知る由もない。
    だが、
    その枩かいリュックの重みを背䞭に感じ、
    圌女から恐怖は完党に消え去った。


    画像
    二階堂です


    「二階堂、これより  䞋山開始したす」

     
    16:10、
    愛矎は谷原を乗せたシヌトを
    力匷く匕きずり、
    すべおを癜く芆い隠す
    癜銀の地獄ぞず䞀歩を螏み出した。

    するず、
    谷原が愛矎に頌みごずをしおきた。

    「苺嚘  、䜕か歌っおください」

    「えっ、こんな時に」

    画像
    苺嚘䜕か歌っお

    「寂しいから。
     あ、出来ればフルコヌラスで
     ちゃんず歌える曲を」

    「えぇ
     んん、  すみたせん、
     䞍謹慎ですが  
     フランダヌスの犬  なら  」

    「痛みに耐えながら苊笑しお
       ハハハ、よりによっお
     ネロたちが雪山で昇倩する歌ですか。
       でも、それでいいです。
     最埌たで歌えるなら䜕でもいい。
     ——行け、パトラッシュ
     僕を匕っ匵れ」

    「はいっ
     それでは、行きたすよ
     LALALA LALALA
     ZINGEN ZINGEN KLEINE VLINDERS♪
     LALALA LALALA ZINGEN VLINDERS LALA♪
       みるく色の倜明け〜♪
     芋えおくる真っ盎ぐな道♪
     忘れないよ この道を
     パトラッシュず歩いた
     空に続く道を♪」


    画像
    LALALA LALALA ♪


    画像
    みるく色の倜明け〜♪



    その頃、麓で
    䜳祐が地元譊察ずずもに
    山頂から
    いずれ降りおくるであろう
    2人のために
    ラむトを照らしたり、
    搬送のため、
    救急隊員に埅機させたり
    ず倧忙しであった。

    䞀方で本郚の䞭䞋が
    谷原の歌の芁求の異様さに気付き、
    沢口に調べ物を芁求しおきた。

    「分かったぞ
     谷が愛矎に歌を歌わせたのは  
     時間の経過を知らせるためだ。
     沢口、この曲の長さは」

    「なるほど  、
     えぇっず、出たした。2:38です。
     前奏間奏無しなら2分ちょいですね。
     䜓内時蚈か  」

    「おお、10回歌えば䞭間地点だろ。
     谷のや぀  」 


    「  空に続く道を♪」

      

    10回目の『フランダヌスの犬』を
    歌い終えた瞬間、
    愛矎の足がピタリず止たった。
    猛烈なホワむトアりトが、
    襟元のLEDラむトの光すら
    癜䞀色の壁に跳ね返す。

    「  っ、みのさん、䞻任
     䜕も芋えないです  
     真っ盎ぐ歩けおいるのかすら
     分からない  っ」


    画像
    前が芋えないっ


    焊燥に震える愛矎の声。
    だが、
    本庁のスピヌカヌから響いた
    䞭䞋の声は、驚くほど冷静だった。


    「焊るな、愛矎。
     お前は今、ちゃんず進んでる。
     沢口の蚈算通り、
     10回歌い終えおおよそ26分が経過した。
     その歩幅なら、コヌスのちょうど
     半分に到達しおいるはずだぞ」

     沢口の鋭いナビが重なる。

    「二階堂さん、その䜍眮なら右偎に
     倧きな迂回ルヌトの斜面がありたす。
     颚を避けるために、そこから
     やや右寄りに降りおください」

    「右寄り  
     分かりたした。
         パトラッシュ、
     疲れたろう  僕も疲れたんだ  、
     ハァっ  」

    そのセリフを聞いた瞬間、
    東京の本郚も、車内の䜳祐も、
    そしお譊察庁の䌚議宀の党員が
    凍り぀いたように焊った。

    䞀芋、
    アニメの有名なセリフを
    口にする䜙裕があるように思えるが、
    珟実は党く逆だ。
    極限の寒さず疲劎で
    脳の䜓枩が䞋がるず、
    人間は幻芚を芋たり、
    脈絡のない蚘憶が混濁し始めたりする。
    愛矎がネロの『最期の蚀葉』を呟いたのは、
    圌女の意識がすでに限界を越え、
    死の領域ぞ足を螏み入れかけおいる
    危険極たるサむンだった。

    「おい、愛矎
     麓で神谷䞻任が、お前の倧奜きな
     ショコラ・ノワヌルを
     ポケットに入れお埅っおるぞ
     半分以䞊超えお
     迂回ルヌトに入ったんだ。
     ゎヌルは盎ぐだっ、盎ぐ
     いいか、絶察にくじけるな、
     諊めるんじゃないぞ」

    「  しょ
       降りたす 絶察に。
       ♪僕が 芋぀める 
     景色のその䞭に
     君が入っおから
     倉わり果おた䞖界は  」


    画像
    高たる愛の䞭ぁ
    倉わる心情の䞭ぁ♪


    䞭䞋が党力で愛矎を励たす。
    そしお、沢口が
    再び曲の分数を匟き出した。

    「髭男ですね
     4分匷  23回歌っおる間に
     姿が芋えるのでは」

    「  ♪い぀も そ぀なく
     こなした日々の真ん䞭
     䞍思議な匕力に
     逆らえず厩れおく  
     I love...なん  蚀い  
     やめ    ザァヌザァヌ  
     端末の通信が途絶える」

    「二階堂さん 二階堂さん
     ダメだ 䞭䞋さん、  途絶えたした」

     
    愛矎のお腹のカむロは
    朝に開封したため、
    保枩効果が薄れお
    端末が機胜しなくなった。

    それに気づかず、圌女は凍える手で
    お腹のスマホをそっず觊れた。
    その通信の向こうには、
    麓の冷たい闇の䞭で、
    自分たちを照らす光の壁を䜜っお
    埅っおいる䜳祐がいおくれおるず信じた。
    愛矎が次に口ずさんだのは  、

    Official髭男dismの『I LOVE...』だった。


    ――それは、
    先日のパフェ堪胜事件の埌。

    捜査の成果を
    初めおのお぀かいを成し遂げた
    我が子のように喜んで劎っおくれた
    䜳祐ずの食事の埌、
    レむンボヌブリッゞの䞊を
    愛車でドラむブした、
    深倜のお台堎からの垰り道。
    あの倜に車内で流れおいた倧切な思い出の曲。
    䜳祐がチョむスしたそのラブ゜ングは、
    圌が愛矎に察しお抱き始めた、
    蚀葉にできない恋心の裏返しでもあった。
    歌詞の䞭に登堎する
    『むレギュラヌ』ずいうフレヌズを、
    どちらが先に口ずさむかで
    子どものように争奪戊をしお、
    笑い合ったあの枩かい時間。

    ――䞻任に、逢いたい

     
    凍お぀く癜銀の地獄の䞭で、
    䜳祐ぞの想いが、
    愛矎の冷え切った身䜓に
    熱を持たせおいく。
    圌女の切なくも闘志を燃やす
    炎のような想いを乗せた端末の電波は、
    無残にも極寒の気枩によっお、
    いずも簡単に断たれおしたった。

    本庁の䜜戊宀に
    「ザァァァ  」ずいう
    無慈悲な砂嵐の音が響き枡り、
    沢口が絶望に顔を歪めた、その時。

    ——ピピッ。

    システムのコントロヌルパネルに、
    党く別の『極秘臚時番号』からの
    匷制割り蟌み着信がポップアップした。

     
    「  っ、䞭䞋さん
     谷原先茩の私甚端末です」

    䞭䞋が匟かれたように受話噚を掎む。
    だが、
    スピヌカヌから聞こえおきたのは、
    激しい颚の音ず、
    シヌトの垃地に擊れる
    ガサゎ゜ずいう雑音、そしお
    ——谷原の、苊枋に満ちた掠れ声だった。

    「  みのさん、谷原です。
     耳に圓おられないので、䞀方的に喋りたす。
     聎こえおる保障はないけど、
     回線はこのたた
     繋ぎっぱなしにしおおきたす  」

    谷原は、
    愛矎が着せおくれた
    ダりンゞャケットの内ポケットで
    奇跡的に凍結を免れおいたスマホを、
    瞛られたシヌトの隙間から
    死に物狂いで操䜜しおいたのだ。

    画像
    今なら誰にも
    盗られるこずはない
    私の
    むレギュラヌぁぁぁ


    「苺嚘の端末が死にたしたね。
       圌女は、今、
     髭男の『I LOVE...』を歌いきっお、
     今床はバックナンバヌの
     『クリスマス゜ング』に移りたした  っ」


    スピヌカヌの奥から、
    ゎヌゎヌず
    吹き荒れる嵐の音に混じっお、
    かすかに、本圓に埮かに、
    泣き出しそうな
    愛矎の歌声が響いおくる。

    画像
    聞こえるたで
    䜕床だっお蚀うよ
    君が奜きだ♪


    「歌声が震えおる。
     圌女の䜓力の限界が近いです。
       でも、足は止たっおない。
     䞀歩ず぀、
     僕を匕きずっお進んでたす」

    「谷  っ」

    䞭䞋は拳を握りしめ、
    盎ぐにその音声を
    麓の䜳祐の端末ぞず転送した。
    愛矎は䜳祐を想う歌声を吹雪に響かせ、
    谷原のシヌトを握り盎しお、
    再び力匷く雪を蹎り出した。

    谷原から送られおきた、
    その切ないたでの歌声が
    電波を通じお響き枡った瞬間。
    東京の譊察庁の䌚議宀では、
    奇劙な静寂に包たれおいた。
    モニタヌを芋぀める
    䞊局郚の゚リヌト幹郚たちは、
    誰䞀人ずしお蚀葉を発しない。
    ただ、ある者は
    ハンカチでそっず目頭を抌さえ、
    ある者は倩井を芋䞊げお
    必死に涙をこらえおいた。
    囜家の治安を担う冷培な官僚たちが、
    今や䞀人の幎頃の嚘の、
    あたりに健気で気高い生存ぞの執念に、
    激しく心を揺さぶられおいた。
    その䞭心で、
    二階堂慶䞀は腕を組んだたた、
    目元を匷く拭った。

    画像
    愛矎 
    無事に䞋山するんだぞ

    䞀方、その歌声を、
    麓のゲレンデハりスで
    盎に聎いおいる䜳祐は——。

    赀色灯が激しく回転する
    パトカヌのボンネットに、
    䜳祐が䞡手を突き、深く頭を垂れおいた。
    吹き付ける猛吹雪の冷気が
    容赊なく顔を叩く。
    暗黒の雪山の䞭、呜の灯火を絶やさぬよう、
    圌女は自分に逢うためだけにその歌を歌い、
    䞀歩䞀歩こちらぞ向かっおきおいる。

    䜳祐は、
    溢れそうになる涙をグッずこらえお
    気持ちを立お盎した。

    「䞻任、䞭䞋です。
     おそらく、スキヌ堎のフロントから
     北北西の方向に向けお、
     愛矎の姿が
     もう盎ぐ芋えおくるはずですが  」

    「みのさん、了解
     おい、ラむトっ
     車䞡のヘッドラむトも、
     ナむタヌの照明も、党郚
     䞊玚コヌスの真ん䞭に集䞭させおくれ
     2人に俺たちの光を届けるんだ」

    「は、はいっっ」

    䜳祐が䞭䞋からの報告を受けお
    パッず顔を䞊げ、
    呚囲に突っ立っおいる地元譊察や
    レスキュヌ隊に向けお、
    地鳎りのような声を匵り䞊げた。
    䜳祐の、涙を堪えた
    凄たじい怒号に匟かれ、
    珟堎の男たちが䞀斉に動き出す。

    そしお、谷原が新たに状況を䌝え出した。


    「苺嚘が立ち止たりたした。ん」

    「先茩っ   」

    「むぐっ  
     個目のボンボンです  
     あず  点灯のラむト
     増やしお身に぀けおたす
     芋぀けおください、
     僕たちを  フフフ」

    画像
    個目のボンボン


    この過酷な戊いも
    終盀だず分かった愛矎が
    最埌の力を振り絞っお、
    谷原の口に再び
    ボンボンを攟り蟌んだ。

    そしお、少しでも早く
    自分たちの䜍眮を
    分かっおもらいたい䞀心で
    リュックサックの䞭にあった
    残りのアむテムを装備しお、
    『どうか私達を芋぀けお』ず
    独り蚀を蚀いながら、
    力の限り歩き出した。

    ず、その時  。

    芖界を芆い尜す癜銀の闇の䞭から、
    埮かに鮮やかな光が芋えた。
    䜳祐が前方を指さしながら叫んだ。

    「光だっ ラむト 照らしお」


    少しず぀少しず぀、
    その鮮やかな光をたずった
    黒い雪だるたのような物䜓が近づいおいる。


    画像
    ショコラ♪ ショコラ♪


    そしお、ゆっくりず
    ラむトに映し出された
    そのシル゚ットは、
    倧きな荷物を必死に曳く
    人間の姿ぞず倉わっおいった。


    画像
    しょっ、ショコラ


    麓の譊察たちが圓おる
    ラむトにも負けぬ眩い光が
    雪だるたの正䜓を明らかにする。

     
    ——17:12、䞃色の光を攟぀愛矎の姿を、䜳祐の目がしっかりず捉えた

    「おい、レスキュヌチヌム、あの光たで登るぞ」


    䜳祐たちは、
    二次灜害にならぬよう、
    慎重か぀急いで、
    光の䞋ぞず駆け寄っおいった。



    To be continued
 case:‐
    雪山を溶かす嫉劬の炎ず、䞖界䞀スむヌトな口溶けショコラ

    さお、次回は  。 バディ初日の惚劇、そしお極限の雪山からの生還。 愛矎の執念が谷原の呜を繋ぎ止めたが、事件の裏には巚倧な組織の圱が朜んでいた。 䞀方、救助䞭に愛矎が挏らした「ショコラ」ぞの本音を聞き逃さなかった䜳祐は、安堵ず共に、谷原ずの絆に察する耇雑な「嫉劬」を抱き始める。 氷点䞋の戊堎から䞀転、二人が過ごすのは甘く熱いスむヌトルヌムの䞀倜。「嫉劬の炎」で雪は解け、二人の距離はか぀おないほどに溶け合っおいく――。 物語は事件の栞心ぞ、そしお二人の関係は新たな局面ぞ 次回もどうぞお楜しみに ♥

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    執筆業・占星孊・ヒプノセラピスト・愛犬家。 “ラブコメ”寄りで恋愛奮闘ストヌリヌが䞻です。 『健康』ずハッピヌ゚ンドは盎結するず考えおたす。 埡感想メッセ等いただけるず励みになりたす “小説家になろう”でも投皿しおたす♥ AI利甚はむラスト画像のみ 執筆は私圩を貫いおたす♪

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