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多くの部屋には 番号が割り振られていました。
いくつか部屋を覗いてみますと、テーブルにイス、そして本棚(本はあまり置かれていなかった)など、アリの生活には おおよそ必要のない家具の置かれているものや、ガララたちが日頃 使っているウツボカズラトイレまで設置されているのがみえました。


“ますますおかしいな。アリが家具やトイレを使うなんて聞いたことがない。もしかすれば山に捨て置かれたゴミを巣作りに利用しているだけかもしれないな・・・?”
ガララは腕を組み顎に手を当てて、ジャンボアントの生態について考えを巡らせました。
行き交うアリは突然のサルの来訪者に見向きもせず、それぞれの仕事を懸命にこなしています。
例えば 土を運び出しているもの、虫のナキガラを数匹で運び込んでいるもの、自分たちの卵や幼虫を優しく舐めてお世話しているもの、体格のいいアリは隊列を組んで ぞろぞろと玄関から外へ出ていったりもしています。
ひとくちにジャンボアントといっても、大きい個体もいれば小ぶりのものもいて、どうやら体長によって担う役割が違うようでした。
ガララはあれこれ考えながら、横切るアリたちを目で追いました。
そのため、3匹のアリがとある一室の前で立ち止まったことに気が付くことができませんでした。
“おっとっと!”
前方不注意により、前にいたアリのお尻とぶつかってしまいました。
アリたちは力いっぱい ドスドス!ドスドス!
ガララの背中に 何度も何度も頭突きをして 乱暴に室内へ入らせました。
よろけて入った その部屋は・・・・。
机の上に 磁器の皿やコーヒーカップ、カトラリー、ガラス製の水差しといった食器類が雑然と置かれ、そのどれもに人気ブランド “バードドロップ” のロゴが刻み込まれています。
棚には砂糖や香辛料の入った瓶がズラリと並べられており、調理台と思わしき台にはフライパン、鍋、ボウル、泡だて器などの器具が せせこましく置かれていました。
“はたして僕は 食料庫の番として呼ばれたのだろうか・・・?”
部屋の隅では 大きくて丸い透き通った腹部を持つ変わったアリ「シロップタンクアント」たちが、一ヵ所に群れています。
“・・・あ、あの石は!”
彼女らの近くに見覚えのあるものを発見しました。
外で拾いそこなった、あの「星粒の石」がいくつも置かれているのです。
シロップタンクアントたちは甘い蜜を出すその石を夢中で舐めて、丸々と腹を満たしているのでした。

加えて、さらに不思議なアリを発見しました。
頭も体もジャンボアントに違いないのですが、目は白濁しています。
通常六本あるはずの脚はたったの四本しかなく 毛虫のようにひどく剛毛。
おまけに 手にはきっちりと指が五本揃っていて、肉球のようなものまでついています。
なにより一番驚いたのは、ガララと同じように二足歩行し器用に道具を使いこなす、ということです。


様子を見る分にここは 食料貯蔵庫とキッチンを兼ね備えた部屋。
つまるところ「アリたちの厨房」のようでした。
どうやら ここで食事作りの切り盛りをしているのが、この毛むくじゃらアリ二匹らしいのです。
あらかじめ解体係のアリが バラバラにしてからここへ置いていったさまざまな食材・・・例えばそれはアゲハ蝶の翅だったり クッキーの欠片だったり 植物の種だったりするのですが、そういったものが室内へ運び込まれるたびに、この毛むくじゃらアリたちはせっせと分別しています。

一方が食べ物を 種類別にボウルへ仕分けし、もう一方は食材を鍋に投入して、時にはシェフのようにスパイスなんかをふりかけて 味見しながら火を通しているのです。
そして こなれた手つきで 皿に盛り付けたりもする・・・といった具合に、うまく二匹で連携して料理を作っているのです。
ガララを連れ歩いてきた三匹のアリは、彼をこの厨房の隅に設置されている角ばった鉄の檻、まるで捕獲機のような その狭い空間へ無理やり押し込めました。
それから二匹の毛むくじゃらアリの元へ歩み寄り、触覚を突き合わせ挨拶らしいことをして 部屋からさっさと出て行ってしまいました。
ガチャリ ⌒☆
すぐさま 片方の毛むくじゃらアリが、ガララの元へ小走りにやってきて 檻の小扉に鍵をかけました。
そして 外側から あの生気の感じられない白い眼でじっと、意味深にこちらを睨みつけてくるのです。
ガララは内心おびえながらも、ドラミングーー深く息を吸い込み大きく胸を張ってーー 手の平で胸を叩き鳴らしてみせました。
ポコポコポコ!
ポコポコポコ!
これはマシラ族では「戦いたくないから去りなさい」という意味を含んだ、争いを避けるための優しい警告です。
といっても、アリがこのメッセージを読み取れるかどうかは定かではありません。
ですが しばらくガララを睨みつけていたこのアリは やがてクルリと背を向けると、自身に課せられた仕事をこなしに調理台へと戻っていくのでした。
ホッとしたのもつかの間、よく考えれば こうして外から施錠されてしまっては物理的に逃げ出すことは不可能です。
ガララは頭をかかえました。
またしても絶体絶命!苦境に陥ったガララでした。
ガララの冒険は まだ続きます。
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