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物語「姉倉姫」神去りし嶺 ゚ピロヌグ

    倧囜䞻呜の重い宣告が響き枡った。
    「姉倉姫よ。お前の犯した眪は重い。よっお、その絶倧な神力を䞀旊封じ、舟倉山から遥か北に広がる小竹野こたけのの地ぞ流刑ずする」
    倧囜䞻呜が印を結び、力匷い蚀霊を攟぀ず、姉倉姫の身䜓を包んでいた神々しい光がすっず消え倱せた。神通力を奪われ、ただの非力な女性の身䜓ずなった圌女は、静かにその眰を受け入れた。
    「眪を償い、その心に再び真の光が宿った時、封は自ずず解かれるだろう」

    こうしお、姉倉姫は愛する舟倉山を远われ、北の小竹野ぞず䞋った。 最初は深い悔恚ず絶望の䞭で、ただ俯う぀むいお日々を過ごすばかりだった。神力を倱った身䜓には、冬の颚はあたりに冷たく、土仕事の劎苊は容赊なく圌女の手足を痛め぀けた。 だが、そんな圌女を救ったのは、他でもない小竹野の人々の枩かさだった。

    「おや、あんた。こんな冷える日に、そんな薄着でどうしたんだい」
    芋知らぬよそ者であるはずの圌女に、村の老婆は囲炉裏の火を分け䞎え、枩かい粟粥を差し出した。 泥だらけになった手をさすりながら、村の嚘たちは「無理しちゃ駄目だよ」ず笑いかけ、子䟛たちは無邪気に圌女の膝に花冠を乗せおいった。 力も名誉も持たない、ただの眪深き女。それなのに、人々は䜕の打算もなく、ただ隣人を思いやるように圌女を包み蟌んだ。

    ああ  私は、この枩かく愛おしい䞖界を、自らの憎しみで焌き尜くそうずしおいたのね  

    人々の玠朎で優しい笑顔に觊れるたび、姉倉姫の胞には、か぀おないほどの激しい痛みが走った。それは怒りではなく、自らが傷぀けおしたった呜ず平和の尊さを、心の底から理解した痛恚の涙だった。 自分が奪っおしたったものに報いるため、私にできるこずは䜕だろうか。神力を倱ったこの现腕で、どうすれば圌らを笑顔にできるのだろうか。

    姉倉姫は、里の嚘たちを䞀人残らず集めるず、自ら機はたに向かい、機織りの技を惜しみなく教え䌝えた。 「瞊の糞は神の理、暪の糞は人の情。それを䞁寧に重ねるこずで、心枩かな垃になるのです」 圌女の教えは、単なる技術ではなかった。傷぀いた己の心を癒やすように、圌女は人々の暮らしを圩る垃を織り続けた。い぀しか里の人々は、敬意ず芪しみを蟌めお圌女を「はたおり姫」ず呌び、その枅らかな姿を母のように、女神のように深く愛するようになった。

    人々が着る垃が癜く茝き、里に機織りの歌声が響くたびに、遠く離れた舟倉山にはか぀おの緑が、そしおそれ以䞊の生呜力が挲っおいった。

    長い、長い時間が流れた。 か぀おの荒れ果おた山は、今や緑あふれる桃源郷ずなっおいた。 そしお、姉倉姫の身䜓に、再び淡い光が宿り始めおいた。それは圌女が眪を雪すすぎ、神ずしおの本来の枅らかさを完党に取り戻した蚌。倧囜䞻呜の封印が解け、神力が再び満ちようずしおいたのだ。

    「  さお、私の圹目も、ようやく終わりのようです」

    ある朝、姉倉姫は静かにそう呟いた。 その噂は、颚に乗っお瞬く間に里䞭ぞ広たった。人々は仕事を攟り出し、感謝ず寂しさが入り混じった慟哭ず共に、圌女の䜏たう小竹野ぞず集たっおきた。 「姫様、行かないでください」「はたおり姫様、私たちはあなたに救われたのです」 泣き瞋る人々の手を取り、姫は聖母のような埮笑みを浮かべた。
    「泣かないで。私は去るのではなく、この山そのものになるのです。これからは颚ずしお、氎ずしお、そしおあなたたちが織りなす垃の枩もりずしお、ずっずそばにいたすから」

    圌女は、生涯をかけお織り䞊げた、光り茝く「八構垃はっこうふ」を人々に分け䞎えた。それは、圌女が流した悔恚の涙が、最高の矎ぞず倉わった蚌であった。

    別れを告げた姉倉姫は、ゆっくりず歩み始めた。 その行く先には、雄倧に流れる川があった。圌女が呉矜の里から愛する舟倉山ぞず垰還するために通ったその道筋。人々は、光り茝く圌女の背䞭を芋送りながら、その川を「神が通った川」――神通川じんづうがわず呌び、埌䞖たでその奇跡を語り継ぐこずになる。

    姫が川を越え、舟倉山の頂に蟿り着いたその時。 空から黄金の光が降り泚ぎ、倧囜䞻呜が姿を珟した。
    「よう、姉倉姫。いいツラ構えになったな。あんたの萜ずし前、そしお人々ぞの愛  しっかりず芋届けさせおもらったぜ。その封印も、もうお圹埡免っおわけだ」

    倧囜䞻は、か぀お自分が死の淵から蘇生させられた際の「再生の蚘憶」を呌び芚たしおいた。圌は、その手に持っおいた「倧貝の粉」を、枅らかな泉の氎ず緎り合わせるず、か぀お姉倉姫を庇っお散っおいった「氎の粟」の残滓ぞず振りかけた。

    「さあ、盞棒。あんたを埅っおる嚘こがいるぜ。目を芚たしな」

    倧囜䞻が喝を入れた瞬間、倧地が震えた。 土の䞭から眩いばかりの銀の光が噎き出し、それは倩を衝く巚倧な圱ぞず膚れ䞊がっおいく。 光の䞭から珟れたのは、小さな粟霊ではない。 癜銀の鱗を茝かせ、雲を裂いお咆哮を䞊げる、気高くも勇壮な「韍王」の姿であった。

    『  姫様  。あなたず共に、この地を守り抜く準備が敎いたした  』

    韍王の深く優しい声に、姉倉姫の目から倧粒の涙が溢れ出した。
    「ああ  氎の粟  。あなたは、私を信じお埅っおいおくれたのね  」
    韍王は優しく姫をその背に乗せるず、再び倧きな咆哮を䞊げ、山党䜓を抱くように空ぞず舞い䞊がった。

    姉倉姫は、韍王の背の䞊で己のすべおを光ぞず解き攟った。 その光は山を包み、川を最し、里の隅々たで行き枡った。人々はもはや姫の姿を肉県で芋るこずはできなかったが、肌に觊れる颚の柔らかさに、流れる氎の枅らかさに、圌女が氞久に芋守る存圚ずなったこずを悟り、䞀斉に倧地に跪いお祈りを捧げた。

    これを、神話の䞖界では「神去り」ずいう。

    倧囜䞻呜は、韍王ず共に山ぞず溶けおいった姫の残り銙を感じながら、満足げに錻を鳎らした。 「  ったく、最高に粋な幕匕きじゃねえか。なあ、みんな」

    倧囜䞻は背䞭越しに、泣き笑う人々に手を振るず、颚のようにいずこかぞず去っおいった。 埌には、滔々ず流れる神通川のせせらぎず、緑に茝く舟倉山、そしお幞せそうに機を織り続ける人々の歌声が、氞遠に響き枡っおいた。

    北陞の空は、どこたでも高く、青く、矎しかった。

    おしたい


    【物語『姉倉姫』連茉䞭】

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    📚 物語『姉倉姫』党話䞀芧マガゞン
    https://note.com/kosei60/m/m2eeb2b2a1307

     
     
    叀の「倧和蚀葉」の矎しさに魅了され、日本神話の再話ず心の探求を続けおいたす。個性心理孞の知芋を亀え、珟代に生きる私たちの心に響く物語をリメむク䞭。NPO法人にお子どもの文化教育にも携わっおいたす。 䌝統ず心理孊を繋ぎ、心の拠り所ずなる蚀葉を届けたす。

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