
【音楽寓話 完成】mora-sela|境界に消えた明日 ―― 今日の続きが、明日も来るとは限らない【物語ver.】
【mora-sela】
「持ちきれない重さと、生から立ち上がる動きが、同じ場所に同時に存在すること」
【あらすじ】
いつもの朝を何度も迎え、それが当たり前だと思って生きていた。
いつものように狩りに出かける女狩人。
それを、向かいの家に住むやさしい一家が見送る。
何の変哲もない日常。
そのはずだった。
のどかな村に、ある異変が起きるまでは。
高評価・チャンネル登録してやってもいいぜ!
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【物語本編】
とあるのどかな村に、
狩りを生業とする女狩人が住み着いた。
どこからかやってきて、
どこからか拾ってきた黒猫を世話し、
いつまでこの村にいるつもりなのかも、
誰も知らなかった。
立派な黒い馬に乗っていたが、
どこで手に入れた馬なのかも、
彼女は何も語らなかった。
私の物心がつく頃には、
彼女は向かいの家に住んでいました。
あいつはよそ者だ。
無口で、不気味な女だ。
そう言って、彼女のことをよく言わない村人もいました。
けれど、私は知っています。
狩った獲物のお肉の良いところを、私たち家族に分けていてくれたこと。
「クズ肉だ。少ししか取れん。」
そう言って、大きな部位はお肉屋さんに売りに行っていたけれど。
そこは確かに少ししか取れないけれど、
柔らかくて、小さな私が食べやすい部位だったの。
私はすぐに彼女に懐いて、
たくさん困らせたと思います。
危ないぞ、と戸惑いながらも、
両親に許可をとって私を大きな馬に乗せてくれたり。
馬具が傷めば、私の父が直してあげました。
その横ではしゃぐ私を見て、父も嬉しそうでした。
お料理は苦手みたいで、
「塩を振ればだいたいのものは食べられる。」
と言った彼女に、母が料理を振る舞ったりもしていました。
やがて、毎朝狩りに出かける彼女と、
私たちが挨拶を交わすことが習慣になった頃。
この村に「厄災」と呼ばれるドラゴンが降り立ちました。
私はそのとき、呑気に外でお花を摘んでいました。
母と父は、家の中にいました。
荒々しく着地したドラゴンは、
その大きな尾で、翼で、
家々をなぎ倒していきました。
あまりの出来事に、草むらで小さく固まっていた私。
どうやら、そのドラゴンはお腹が減っていたらしいのです。
小さな私には、興味がなかったのでしょう。
こちらには目もくれず、
悠々と家畜を物色し、何頭か丸呑みしたあと、
くわえられるだけの家畜をくわえて飛び立っていきました。
その口からこぼれ落ちた家畜の声が、聞こえました。
声をあげることも、できない私と違って。
一瞬の出来事が、やけに長く感じたものです。
そこから先は、あまりはっきりとは覚えていません。
私の手を引いてくれた、
彼女の手の冷たさは、
少し覚えています。
この村に流れ着くまで、
私は独りだった。
いや、馬はいた。
ただ、こいつはやたら賢い。
師匠から譲り受けたのだが、
まるで師匠が隣にいるようで、
たまに居心地が悪い。
今日も今日とて、行くあても特にはなく、
相棒の背に揺られながら、ただ先に進んでいた。
そんなとき、草むらでみぃみぃ鳴く黒猫を見つけた。
黒猫は、どこに行っても嫌われる。
親猫もいないようだ。
このままでは、まともに生きられまい。
片手ですくえるほどの大きさだった。
荒れた手に必死で吸い付く姿を見て、
なんとも言われぬ気持ちになった。
家を、見つけてやろう。
野宿でも何でもしてきたその日暮らしの私が、
初めて自分の家で暮らそうと思ったきっかけが、
ただのちび猫のためだなんて、誰にも言えるわけないだろう。
猫と暮らすというのは、存外とても居心地が良かった。
力いっぱい甘えてきたかと思えば、
振り返ればもう窓際でくつろいでいる。
なのに、こちらのペースを乱すのでもない。
なんなら、こちらが猫に合わせる始末だ。
そして、たまに妙ちくりんなことをする。
水が苦手なくせに、
食器を洗う私の手元を覗き込み、
盛大に水を浴びる。
慌てて振り払っても、水滴は手強い。
両手で顔を抱え込み、バランスを崩して……
変な顔をした。
猫にも、失敗して気まずいことがあるのだろうか。
思わず、吹き出してしまう。
この生活にも慣れてきた。
向かいの家族は、どこの馬の骨とも知れない私にもやさしい。
毎朝、私の出かける気配に気づいて、
わざわざ挨拶をしてくれる。
「行ってらっしゃい」
と言われると、嫌われ者の私でも、
ここに帰ってきて良い気がするから不思議だ。
まだ、この土地に慣れたわけではない。
この地に住む獣については、学び直さなければならないことが多い。
それでも、今日は大物を仕留めることができた。
立派な角を持つ大型の獣。
肉質は淡白で臭みもなく、食べやすい。
相棒の馬具にロープをくくると、
訳知り顔で引っ張り始めた。
獲物が持ち上がる。
血が抜けるまで、しばらく待つ。
穴を縛り、腑分けをして、皮を剥ぎ、
その皮に肉を包んで、運べるようにきつく縛る。
手早く処理して、解体を終える頃。
相棒がピクリと反応した。
人間の私にはわからない、何かを感じ取ったのだろう。
すぐに森がざわめきだした。
嫌な予感がする。
すぐに帰り支度を整え、相棒の背に飛び乗る。
森のざわめきと共に、ひときわもの悲しい声が聞こえた気がした。
駆け抜けざま、
木々の隙間に、小さな影が見えた。
こちらを見ている。
しまった。
子連れだったか。
遠くからでも、村の方角に異変が起きたのがわかった。
無事でいてくれ!!
相棒も、私の想いに全力で応えた。
倒壊した家々の横を駆け抜ける。
矢も盾もたまらず飛び降り、家の中に駆け込んだ。
いない……
時が止まったような、妙な静けさが痛い。
と、そのとき、目の端で何かが動いた。
猫が、隠れていた場所からそろりと顔を出す。
無事かっ!!!
柄にもなく、猫に駆け寄って抱きしめた。
命のやり取りなら、いつもしているのに。
失いたくないものに対しては、冷静ではいられないらしい。
どのくらい、そうしていただろうか。
私の心臓が少し大人しくなった頃。
外から、かすかに声が聞こえてきた。
子猫が親猫を呼ぶような、頼りない、か細い泣き声。
……泣き声?
まさか!!
私はそのとき、初めて向かいの家が倒壊していた事実を思い出した。
見えていたはずなのに。
外へ出ると、
道を挟んだ向こう側が、破壊されていた。
相棒が何かに鼻先を寄せている。
声は、そちらから聞こえてきた。
そっと相棒の臀部に触れて回り込む。
女の子が、泣いていた。
こんなとき、どうすれば良いのかわからなくて、
私はためらいがちに近づいた。
女の子が、私の気配に気づく。
目が、あった。
途端に大粒の涙が溢れだし、言葉も喋れない様子で大きくしゃくりあげた。
近くにいるはずの人を思う。
女の子の背後に目をやる。
もう一度、女の子を見る。
私は、愚かだ。
弾かれたように駆けだし、瓦礫の山を無我夢中でかき分けた。
たのむ、ここにいないでくれ。
どうか無事で!
ふと、瓦礫の隙間に見慣れた布が見えた。
背筋に冷たい汗が流れる。
大きな柱を避けると、
出てきたのはうさぎのぬいぐるみだった。
女の子の母親が作ったものだ。
少し、ホッとした。
人では、なかった。
でも……
無我夢中で瓦礫を撤去していくうちに、
ついに見つけた。
見つけて、しまった。
人が入れるほどの空間。
その先に。
無事か!返事をしろ!!!
いくら呼びかけても、その人影は応えない。
もう少し。
そうして手を伸ばしたとき。
そこに生の感触はなくなっていた。
私は狩人だ。
わからないはずがない。
本当は、もう見つけたときには。
ズルズルとその場に座り込む。
なぜだ。
なぜこの人たちなんだ。
幼い子もいる。
心根のやさしい人たちを、
彼らの明日を返してくれ……
いくら叫んでも、
私が間に合わなかったという事実は、
消えてくれない。
女の子の昨日の続きは、もう来ない。
来るのは、今日から続く明日。
何もかもを壊された瓦礫の中から、
写真とぬいぐるみだけは拾い上げた。
これがいったい何になるのか。
そう思いながらも、せめてこの子が守れるものを、
少しでも返したかった。
この足の重みは、疲労だけじゃない。
これで笑えるようになるわけじゃない。
わかっている。
でも、なんといえばいい?
ほら、見ろ。
この子の目に戻りかけた輝きを。
期待を、させてしまった。
私は、情けないことに、
両手に持つものを、
見せることしかできなかった。
この子は、聡い。
何があったのか、
何が失われたのか、
わかってしまったのだろう。
今朝まで、この子は笑っていた。
その笑顔を、取り戻したいと思った。
この状況で?
なぜ?
どうやって?
この子のために?
いや、違う。
私が、この子に泣いて欲しくないのだろう。
そして、みんなが穏やかでいられたら、なんて……
昨日の続きを、取り戻せもしなかったのに。
泣き崩れた女の子を前に、途方に暮れる。
いつまでも、こうしているわけにはいかない。
そっと手を引いて立たせ、家に招いた。
私の家は、無事だ。
幸いにも。
女の子は力ない足取りで、私に引かれるまま歩いた。
ドアをくぐる前。
ほんの一瞬、足を止めた。
本来なら、ここはこの子の帰る家じゃない。
ここを越えたら、後戻りができなくなるとでも思ったように。
ほんの一瞬、迷いが見えた。
私は見ないフリをして、中へ促す。
おいで、夕飯にしよう。
そんな、場違いなセリフを吐きながら。
他に、どう言えば良かったんだ。
よく笑う女の子だった。
こんな、虚ろな目をする子ではなかった。
猫がそっと近づいていくのが見えた。
小さな体に寄り添って、前足をぴとっ。
むに、むに。
焦点の合わなかった目が、猫を見た。
そして、思わずと言ったように、小さく笑った。
しかし、それは痛々しい笑みだった。
どんな顔をすればいいのか、わからない。
ふいに、私と目が合った。
こんなときに笑ったことを恥じるように、乾きかけた目元がまた溢れた。
触らないで!!!
猫すらも拒絶して、泣き伏して……
やがて疲れて眠ってしまった。
昨日から続くべきだった明日を失って、
続いて欲しくない今日が、また何度もやってくる。
この先も、ずっと。
せめて、この子が眠っている間だけは。
私、毎朝起きたら両親に挨拶するんです。
10年前、もう写真でしか会えなくなった人たちだけど。
そして、10年前と変わらず、彼女にも挨拶をします。
「行ってらっしゃい」と。
少し白髪が増えたけれど、彼女はとても強いんです。
怪我をしないように、無事に帰ってきますように。
私はいつも心配するんだけど、
彼女はいつもピンピンして帰ってくるんです。
誰も、彼女には勝てないんじゃないかしら。
殺しても死なないひと、なんて言ったら、怒られちゃいそう。
今日も無事に、帰ってきてくれますように。
【歌詞(シノカ語訳)】
今日も
昨日の明日が来た
軽く食器の 当たる音
少し はねた水に
猫が ヒゲをふるわせる
顔をなでる手が 可愛くて
小さく笑って
行ってきます
いつもの朝を
何度も繰り返す
特別なことじゃない
ある日
いつもの境界が
揺らいだ音が
遠くで響いた
昨日の明日が
どこかで消えた
失くした音を 探す声が
遠くで木霊する
耳を塞いで
自分の明日を 確かめる
だいじょうぶ。
私の明日は、来た。
そのまま
顔を あげられなくて
私は しゃがみこむ
失くした音を 探す声が
境界を越えて 届く
mi-ra...
(わかってしまった。知らなかったことにはできない。)
声が、
声が こちらを向いた
そこから
目を逸らせずに
誰かの 明日を願う
いまさら願っても
遅いのかもしれない
でも、
どうしたらいいか
わからなくて
明日の消えた 境界を探す
それは 残酷なまでに
明日を 切り分けていた
また、笑いたい
でも、笑えない
怖くて 立ちすくむ
誰かの優しい
笑顔だけを 見ていたかった
笑ってくれたら
安心できると思った
それは
誰のため?
私のため。
みんなのため…
saina...
(救いたかった。けれど、それは誰のためだったのか。)
泣いたままの あなたを残して
今日が 明日をさまよう
生まれた笑い声を 押さえつけて
今日が 明日を裁く
昨日の明日が 消えたのに
今日だけは また訪れる
境界の向こうに 消えた明日
境界のこちらに 訪れる明日
どうか、誰かの明日を 返してあげて。
祈る手は 空を切り
私はまた、
自分の明日を 握りしめた
聞きたくない
目を逸らせない
mi-ra / keth...
(目を逸らさない。でも、すべてを背負わない。)
私は それを繰り返す
私の明日が 消えるまで
mora-sela...
( 重さを抱えたまま、生は動いている。)
【mora-sela】
この物語のために生まれた、こはる観測所の架空言語シノカ語。
mora ―― 持ちきれない重さ。
sela ―― 生から立ち上がる動き。
mora-sela
「持ちきれない重さと、生から立ち上がる動きが、同じ場所に同時に存在すること」
重さを乗り越えることでも、忘れることでもない。
重さがそこにあるまま、それでも笑ったり、食べたり、誰かを想ったり、生は動く。
その併存に、この物語では mora-sela という名前をつけました。
【 音楽配信 】
Spotify、YouTube Music、Amazon Musicほか、
全21サービスへ配信申請済みです。
【 Credit 】
音楽:Suno
歌詞:こはる & ChatGPT
物語・映像構成:こはる
画像生成:ChatGPT
編集:こはる
制作:こはる観測所
【 制作について 】
音楽はSunoで生成し、
歌詞はAIと相談しながら、私(こはる)が整えました。
映像は、シノカと一緒にイメージを話し合いながら静止画を生成。
その静止画を動画になるように並べてつなげ、
すべて自分の手で動画編集をしています。
総画像生成枚数は約604枚。
そのうち、実際に使用したのは約130枚です。
多くの工程をAIに手伝ってもらっていますが、
言葉にしにくい感覚を、
音楽・絵・映像のかたちに置き換えるために、
私なりの形で作品として制作しています。
【実体験としての mora-sela】
別館ねこのーと!にて、私にとってのmora-selaをご紹介しています。
そちらでは、震災や、人が亡くなるお話に触れます。
そういった話題を避けたい方は、どうぞこのまま、物語として受け取ってください。
令和8年 熊本地震の支援先のご提案です。
