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今月読んだ児童文学を語る【2026年8月】


続きです。





濱野京子『夏休みに、ぼくが図書館で見つけたもの』

森川泉 絵、2019年、あかね書房

大人だって自分で好きなときに夏休み(概念)を始められるんだぞ、という姿勢で読みました。小3くらいから読めそうな、文字大きめの小説です。

図書館がこの地球上でもっとも居心地のいい空間だと思っている人間として、「図書館好き」特効をもっているこの物語には泣かされました。

そうなんだよ、図書館ってべつに本を読まなくてもいいんだよな……
「読んでも読まなくてもいい本」が読みつくせないほどたくさんある空間そのものが、わたしを安心させてくれるのだと思います。

作中にはいろんな実在する児童書が出てきます。
また、図書館の基本的なルールや知識も織り込まれているため、"図書館入門" として、とっても素敵な小説だと思いました。

夏は涼みに図書館へいこう!!!



『シリーズ 詩はきみのそばにいる③ きみの心が駆けめぐるとき、詩は……』

日本児童文学者協会+ポプラ社編集部 編、2025年、ポプラ社

わたしはこれまで、小説はいろいろ読んできて、「文学好き」を名乗ってもギリセーフかな、とは思っています。

しかし、一つだけ後ろめたいことがあります。

それは、詩をぜんぜん読んでいないことです。

ふだんマイナーな海外小説をよんで「私ていどには完璧に理解できない、訳の分からないぶっとんだ小説が好き!!!」とか「ストーリーが存在しない、ほとんど散文詩のような小説が好き!!」などとほざいているくせに、いざ実際の詩を読もうとしても、意味が分からず、どう楽しんでいいのか途方に暮れて、すぐに飽きてしまいます。

だから、詩に疎いこと、詩が苦手なことが私のコンプレックスのひとつです。

そんな私の詩のコンプレックスを解消するために、小難しい、文学好きに人気のある大人向け(?)の詩を読むのではなく、まずは子ども向けの詩から入門してはどうだろうか?とは常々思っていました。
ちょうど、今年は児童文学をいっぱい読むぞと意気込んでもいることだし……

それに、思い返してみれば、小学生のころは、教科書に載っていた詩を素直に味わって感動していたような気もします。

わたしが小学校1年か2年生のときに、教科書とは別の教材(資料集的なやつ?)に載っている詩を1つ先生の前で暗唱するごとにスタンプがもらえるシステムがありました。

今でも覚えているのは、山村暮鳥「風景 純銀もざいく」を暗唱したことです。

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな

山村暮鳥「風景 純銀もざいく」 青空文庫より

これ、当時からめっっっちゃ印象に残ってます。
同じ言葉がページ上にずらっと並ぶインパクト。
この詩の文字列そのものが「いちめんのなのはな」を表している、すなわちシニフィアンがシニフィエそのものの暗喩となっている。詩には、言語にはこうした表現も可能なのか……!といたく感動した覚えがあります。(もちろんここまでの語彙はありませんでしたが、実質的には同じようなことを考えて感銘を受けていたことをハッキリと記憶しています)

あと「純銀もざいく」って何?? カッコよすぎるだろ……

……ということで、小学生のわたしが詩を楽しめていたのだから、今のわたしだって児童向けの詩からなら、詩を楽しめるのでは???と思っています。

そんな折に、休日にロイホで5時間お話ししたフォロワーに薦めてもらった辻征夫を図書館HPで検索していたら、ちょうど児童向けの詩のアンソロジーシリーズを見つけました。

ドンピシャすぎる……! しかも発刊は2025年と最近! わたしのためにあるようなシリーズです。

このアンソロジーの特徴として、YOASOBIやユーミンの歌詞も収録しているようです。いいですね~~ まずは手に取ってもらわないと始まらないですからね! どんな手を使ってでも!

ということで、さっそく読んでみました。辻征夫の作品が収録されている3巻から。(そうしたら、偶然その巻に上述の山村暮鳥「風景 純銀もざいく」も収録されており、何十年ぶりかの再読もできました)

以下、特に気に入った作品の感想メモです。

辻征夫「まつおかさんの家」 なかなか良かった。まつおかさんの家の前で泣き出したくなるのはなぜなのか、理解しきれないのがいい。

山村暮鳥「風景 純銀もざいく」(いちめんのなのはな)はすごく印象深い詩だな…… 小学校低学年のときに暗唱してスタンプをもらった、原体験のひとつ。
孟浩然「春暁」も、今でも暗唱できるくらいには覚えている。

のろさかん「ゆうひのてがみ」 ゆうひをちぎって、という表現すき

檜きみこ「しっぽ いっぽん」 "いきばのない いらだち"を、しっぽ伝いに地面へにがしてやる、という発想がすてき

入沢康夫「未確認飛行物体」 この人こういう詩も書くんだ
木坂涼「夏休み」 シンプルにすき
日野生三「森のこども」 わかるようなわからないような感覚
新川和江「わたしを束ねないで」 流石に名作。これは詩集ごと読みたい

季節や身の回りをうたった詩、抒情詩のほかに、児童向けらしく、戦争や歴史や環境問題などを主題にした詩もわりと収録されていました。

ひとつネックだったのは、各作品の初出年を併記しておいてほしかった……ということです。
いつの作品なのか、まずは自分の中の歴史の物差しに位置付けたいのに、それがすぐにできなくてもどかしい。巻末の出典一覧にも、出典文献の刊行年が載っているだけで、厳密な初出年はわからないんですよね~
(子どもは「何年に書かれた詩か」なんて気にしないから載せてないのでしょうけれど・・・)


『シリーズ 詩はきみのそばにいる① きみの心が歌いだすとき、詩は……』

日本児童文学者協会+ポプラ社編集部 編、2025年、ポプラ社

1巻も読みました。
以下、とくに印象に残った詩の感想メモです。

初っ端見開きの2作品から簡潔なインパクトがある。
ルナール『博物誌』「へび」と草野心平「春殖」。

はたちよしこ「霧」
ロングフェロー「矢と唄」
宮沢賢治「報告」 こういう詩も書くんだ

谷川俊太郎「未来」 見覚えある詩だが、いま読むと『みすずの国』の神通力学の課題(立てた竹を目指して跳ぶ)を連想しちゃう。ちょうど未来というテーマも合ってるし……

福田若之

春はすぐそこだけどパスワードが違う

おもろい 前半から後半で一気に雰囲気が人工的・現代的になる
やっぱ最近の俳人なんだ 1991年生まれ!

あー完全にそういう作風なのね
自然のものにデジタルな感性をぶつけて可笑しみを生む 一発ネタとしてはおもろいけど、それっきりかなぁ……
自然を慈しむ俳句の伝統そのものへのアンチテーゼ的なところあるのかな。物騒なものが紛れ込んでいるなど。茶化し皮肉っているようだ。

鶴見正夫「雨のうた」 たしかに雨の音って正確には「雨と地上の何かがぶつかった音」のことだな

高村光太郎「ぼろぼろな駝鳥」

あの小さな素朴な頭が無限大の夢で逆まいているじゃないか。
これはもう駝鳥じゃないじゃないか。

アンチ人間

吉野弘「冷蔵庫に」 メタ擬人法 SFっぽい詩だ
高良留美子「木」 発想がいい

一枚の青空のなかに
まだない一枚の青空があって
その地平をいま
一羽の鳥が突っ切っていく。

ゲーテ「魔王」 こわ
大瀧詠一「夢で逢えたら」、中島みゆき「糸」が連続している。
おもろそうしや琉歌、アメリカ先住民族の歌もある!

第4章は愛・恋のうた。だいぶわかりやすい。
YOASOBI「もう少しだけ」 知らない曲だ。めざましテレビ主題歌なんだ

YOASOBIが入ってて良かったと思う。
気に入ったからではなく、特にピンとこない具合が一緒に並べられている島崎藤村や室生犀星らの古典的な詩と同じようなものだから。文学的な権威とか「名作」「古典」ってなんだろう、と相対化するいい機会になる。

谷川俊太郎「ぴあの」 ヤンデレ詩?
阪田寛夫「練習問題」 これすき


シリーズの残りの2冊も読みたいです!
あと、谷川俊太郎とか新川和江とかの個人詩集もよみたい。

今は岩波文庫の辻征夫詩集を読んでいる最中です。



~ここから絵本~


ジョアン・シュウォーツ『うみべのまちで』

シドニー・スミス 絵、いわじょうよしひと 訳、原書・邦訳ともに2017年、BL出版

カナダのケープブレトン島
海の下の炭鉱で働く父と、いずれ同じ道に進むことを受け入れながら海辺の町で少年時代を過ごす息子

海と炭鉱の見開きの対比が印象的
炭っぽい、荒い線のタッチがいい


デイヴィッド・アレキサンダー・ロバートソン『わたしたちだけのときは』

ジュリー・フレット 絵、横山和江 訳、2016年(2018年邦訳)、岩波書店

カナダの先住民族のひとつ、クリー族の「おばあさん」の語りを孫娘が聞く。民族同化政策への子どもの反抗を静かに描いていて、かなりよかったです。

散文詩のような美しく研ぎ澄まされた、繰り返し構造の文章と、主線のないグラフィック的な絵も好みでした。


S・シルヴァスタイン『ぼくを探しに』

倉橋由美子 訳、1976年、アメリカ(邦訳1977)、講談社

図書館の開架になぜか原書の英語版しか無かったのでそちらで読みました。
絵本って文がわからなくても絵でなんとなく楽しめるので語学学習にもいいですよね(受験生のとき英語の絵本を大量に取り寄せて多読していたのを思い出しました)。

シンプルな絵柄での自分探しの旅。
さすがに名作の風格があります。
素朴すぎる線だから醸し出せるとぼけたユーモアのトーンがすきです。



~お盆で帰省した際に実家のリビングに置いてあったシリーズ~

ノエミ・ヴォーラ『ふんすいみたいに いっぱいないたら』

2023年 イタリア、2026年 森敦子訳、アチェロ

数か月前に日本語版が出たばかりの、新進気鋭のイタリアの絵本作家の作品。
これおもろかったです!

泣き出してしまったミミズに、どうせなら涙を有効に活用しようと提案するおはなし。
水彩で独特なタッチの絵柄もいいし、「涙の活用法」大喜利のセンスもいい。
やっぱり絵本は "とぼけた語り" が豊かに許されているジャンルだなぁとかんじます。




まつながもえ『きんぎょだいさくせん』

2025年、白泉社 MOEのえほん

縁日の金魚すくいに出されるきんぎょが主人公。
きんぎょ自らが人間にすくって貰われたがっているのが、冷静に考えるとちょっとどうなの?と笑ってしまいます。
が、かわいらしいポップな絵柄にハートフルなおはなしでした。

セルフプロデュースの金魚ショー

きんぎょたちの掛け声がたのしい。




8月ですが、主に詩を読んでいて、夏休みっぽい児童小説はけっきょく1冊しか読めませんでした。
まだまだオレの夏は終わらねぇ~~~~~~!!





そういえばなんか結構バズってました。
児童文学を入れられなくてごめんよ…… べつに「児童文学にちゃんとした〈文学〉の資格はない!」みたいな嫌な思想を持ってはいません。手違いです。
いつか「好きな児童文学ベスト100」も作りたいものです。



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