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【小説】雪ず氷の王子・1【アスリヌト再生】

    䞭孊生・黒文字埋は、将来を期埅されたフィギュアスケヌタヌだった。
      はずなのに、今は小さな寒村で山村留孊䞭。ヒマだ。
    䜕をやらかしたんだ、埋。
    むケメン解説者の元オリンピック遞手が远っおきたぞ。
    ラヌメンに぀られるな、逃げろ。たぶん怒られる。
    でも、この町には――
    矊の匂いず、青い氷ず、たっすぐな瞳の少女がいる。
    そしお、もう䞀床スケヌトを奜きになれる冬がある。

    挫折した少幎スケヌタヌ・埋。
    小さな寒村でもう䞀床“光”を掎みにいく

    今日から短線小説を公開したす。
    前向きなアスリヌトの物語なので軜く読めるず思いたす。
    毎日曎新で党4話。
    しばらくお぀きあいください。

    ***


     移りゆく、䞀瞬の䞭に。
     ――氞遠を、閉じこめろ。

    「――あっ。黒文字くろもじ埋り぀」
     
     先行する蚘者が、声をあげた。
    「ほらな。やはり、いただろう」
     埌ろからきた升根たすね航わたるが、胞をそらす。
     フィギュアスケヌトの元オリンピック遞手で、今はむケメン解説者ずしお顔が売れおいる。
     蚘者ががやく、カメラマンが笑う。
    「こんな寒村にいるなんお、フツり思いたせんよ」
    「はは、賭けは俺の勝ちだな。ニンニクマシマシ味噌ラヌメンで手を打ずう」
    「マゞすかヌ、もう」
     
     じゃれる倧人たちを珍しそうに眺めながら、䞭孊生の矀れがゆく。
     じろじろ芋ないようにし぀぀も、やはり芖線は倖せない。小声で囁きあっおいる。
    「誰だヌ、あれ」
    「知らなヌい」
    「埋り぀、おたえの知りあい」

     ひず塊りになっお登校する少幎少女の䞭に、现身の少幎がいた。
     手足は長い。胎䜓は现い。
     優矎な銖の䞊に、なめらかな額を持぀现面が乗っおいた。
     目は特段小さくはない。しかし、おだやかそうに匧を描いた眉が、圌を仏像めいお芋せおいた。
     埋ず り぀呌ばれた少幎は、迷惑そうに隣を芋た。
     山村やたむら匠たくみの䞀家は、「マりントビレッゞ」ずいう名の牧堎ずペンションを経営しおいる。
     なんのこずはない。民宿やたむらだったのを、英語に倉えただけである。

     
     
     星芳町ほしみたちは村ずいいたいぐらいの集萜で、宿泊私蚭はほかにない。
     したがっお、村の倖からやっおきた者は䟋倖なくマりントビレッゞの䞖話になる。
     山村留孊で半幎前にやっおきた黒文字埋は、匠の祖父母や叔父叔母を含む倧家族の䞀員ずしお暮らしおいる。

     匠は、悪びれずに埋をど぀く。
    「この町で知らない人を芋たら、だいたいおたえの知りあいだろ」
     
     黒文字埋は、無愛想にそっぜを向いた。
     そばにいた小柄な少女 匠の効・小春は、黒目がちの瞳をさらに倧きくしお倧人たちを芋おいる。
     芋られ続けおいるこずに、気づいおいた。

    「埋ちゃん、あの人」
    「 うん」
    「なんかお話あるみたいだよ」
    「 いいんだ」
    「えヌ」

     無造䜜に通り過ぎようずする埋の頭は、掟手なニット垜に芆われおいた。
     垜子でしっかり防がなくおは凍傷になっおしたうず、匠の母が線んだものだ。
     䜙り毛糞で䜜ったもので、癜やベヌゞュに赀やピンクの圩りがにぎやかだ。

    『男の子には掟手すぎるかね。嫌だったら無理しお䜿わなくおも 』
     
     垜子を枡された埋は、無衚情だった。
     掟手な衣装は慣れっこだ。い぀も黒い服ばかり着おいるのは、単に遞ぶのが面倒だからだ。
     埋はニット垜を無造䜜にかぶり、ぜ぀りず蚀った。

    『 うん。あったかい』
    『そうかい』
    『おばさん、ありがずう。これ、気に入った』
     
     山村家で飌われた矊たちが倉身した毛糞には、適床な脂気が残っおいる。ちょっずした氎も匟く。
     ぀たり、極床の防寒仕様だった。
     匠の母はその日から埋のファンになり、祖母ず二人しおせっせず奜物を䜜った。

     埋は䜕でもよく食べる。
     山村家の食事はうたいから、単調な献立でも飜きるこずがない。
     祖父が薪ストヌブの䞊で焌いた、蒞かしたカボチャにチヌズを乗せたものが埋のナンバヌワンである。
     チヌズは近所の工房から分けおもらう。
     牛や矊の乳を玍めるかわりの、物々亀換に近いものだ。
     この星芳村に来お、黒文字埋は心底驚いた。
     金などなくおも、生きおゆける。

     埋が来た日は、焌肉だった。
     この町に焌肉屋はない。
     倉庫の前がパヌティ䌚堎だ。ドラム猶を半分に切ったものに炭をおこし、網を乗せる。
     山村䞀家フルメンバヌに、近所の人々が自分の家で採れた野菜を持っお集たっおくる。
     匠の祖父が煙に目を现めながら蚀った。
    『うちの矊だ。腹いっぱい食え』
     
     郜䌚で売れば䞀皿䜕千円もするずいう赀肉は、噛み締めるずミルクの味がした。
     リンゎや王ねぎの入った甘蟛いタレに浞かっおいお、臭みはほずんどない。

    『 うめヌ。いや、おいしいです』
    『そうかそうか。よかったな』

     ぶっきらがうでも口数が少なくおも、埋は気に入られおいる。
     その理由を、小春が評した。
    『動物だっおしゃべれないもん。でも、そばにいたら気持ちがわかるよ』
     
     埋ちゃん、ここ気に入っおるでしょ。
     柄んだ瞳に射抜かれた。
     この子にり゜は぀けない。
     埋はひず぀、うなずいた。

    『ここに、ずっずいたいず思う』
     
     埋の喉が、答える前にぎくりず動いた。息を呑みこんでからようやく、䞀蚀絞り出す。

    『 うん。 たぶん』
    『ずっずいおね。奜きなだけ。嫌いになるたで』
    『 嫌いになんお、ならない』
     
     さらさらした前髪ず、頭のおっぺんに光の茪が乗っおいる。
     この目を裏切るこずは、眪に思えた。
     なんで、そんなこずを蚀うんだ。
     ずっず䜏んでいるわけじゃない。
     コヌチの䌝手で来たばかりの俺に、なんで。
     小春がぜ぀んず、ひずりごずを吐いた。

    『 さびしい、から』
     
     あたたかくお人が奜きで、なのに若者や子どもが少なくお。
     誰もが深く぀ながっおいお、新しい物事に飢えおいる。
     来たばかりのずき、車で案内された高台から芋䞋ろした町の灯が、柄んだ空気に揺れおいた。
      嫌えない。
     埋は垜子の折り返しを぀たんで、目にかぶさるほど深く頭を入れた。
     こうしお、芋えなくしおおけばいいだろう。
     俺だっお 。
     芋えないもののこずなんか、気にしない。
     ないこずにしおおけばいいんだ。
      そうだろう

     
     
     その、おっぺんに瞫い぀けられたポンポンが぀たたれ、䞊空ぞ抜きずられた。
     だんだら瞞の、虎刈りの頭があらわれた。
     升根たすね航わたるがそばに立ち、にこにこず埋を芋おいる。
     埋は唞った。
     
    「なに、するんだっ」
    「あヌ、本圓に䞞刈りにしちゃったんだ 自分でやったな、これは」
    「うるさいな、負けたらこうする玄束だったんだ」
    「圓分、詊合に出られないねえ」
    「もう、やらないからいい。スケヌトなんお」
     
     二床ずごめんだ ずいう呪いを、升根たすねはにこやかに油断のならぬ笑みで遮った。

    「埅っおいるから」
    「はっ」
    「銖藀しゅどうコヌチは倉わらず、きみを埅っおいるよ」

     埋の肩が、ぎくりずした。圌はそっぜを向き、動揺を隠そうず守りに入る。
     升根たすねは、気にも留めないそぶりで笑った。

    「この町で講挔䌚に呌ばれたんだ。聞きにおいで。明日にはもう垰るから」
    「 っ、行くもんか」

     山村兄効は、心配そうに䌚話を聞いおいた。
     升根たすね航わたるは二人にチケットを枡すず、にこやかに蚀った。
    「町民料金千円のずころだが、埋を連れおきおくれたら無料にしよう。オマケも぀けようか」

     小春は無邪気に問いかけた。

    「 オマケっお」
    「䜕がいい」

     埋は焊った。玔朎な小春は、すぐに匕っかかっお乗せられおしたうだろう。

    「そい぀のペヌスに乗せられたらダメだ。そい぀は 」
    「悪い人なの」

     升根たすね航わたるはにこやかに告げた。

    「講挔埌のラヌメンで手を打ずう。食べたかったらおいで」

     ひらひらず手を振っお、郜䌚の悪人が去っおゆく。
     こちらを気にしながら、メガネをかけた蚘者も行く。カメラマンが埌ろに続く。

     借りおきた猫のようにおずなしかった子どもたちは、ずたんに元気になった。

    「本物、芋ちゃった」
    「芞胜人っおスゲヌ」
    「芞胜人じゃねえ、アスリヌトだろ」
    「テレビに出おたら、同じよヌなもんだ」
     
     黒文字埋は、ため息を぀いた。
     䌚うず思わなかった、あの人に。

    「 ねえ、行くの」
     
     小春の黒い瞳が問いかける。

    「 いや 」  

     蚀い淀む埋に、匠が指摘した。

    「埋 おたえ、行くしかないよな」
    「なんでっ 」
    「垜子、取られたたんただもん」
    「あっ」

     小春がふわりず埋に蚀った。

    「わたしもラヌメン食べたいな」
    「おたえらなあ」

     町で䞀軒しかないラヌメン屋に行くこず自䜓が、玠敵な嚯楜ず化しおしたう小さな町で。
     目立぀こずは、実に危うい。
     目立たないように心がけるこず自䜓が、より目立っお逆効果になる。
     山村留孊でこの村に来お半幎ばかり――ただ日の浅い黒文字埋には、孊習できおいないのだった。


    続き



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    呌んでいる確かに君はいたんだず知り埗るこの身抱きしめ眠る 文䜓は短歌・散文詩・小説のあいだ。 根幹は存圚論。 衚出はSF幻想文孊児童文孊ノワヌル構造神話など。 https://kakuyomu.jp/users/yellow_snap_dragon

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