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正しさはAIに。ズレは、あなたに。⑤ 人間は出力装置をやめていい【後編】

    AIとの共創4ステップ、そしてnoteを作った背景

    本記事は第3話・後編です。 前編(人間の6つの力)から読むのがおすすめです。


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    前編では、AI時代に人間が担う「6つの力(役割)」

    問いを選ぶ
    現実を背負う
    意味を与える
    人と共に在る
    責任を取る
    迷い、生み出す
    を見てきました。
    研ぎ澄ませば、出題・証言・審美眼・共在・署名・賭け。どれも、コピーした瞬間に意味を失うものでした。

    ただ、こう並べると、少し抽象的に聞こえるかもしれません。
    「言いたいことは分かる。で、結局どう使うの?」と。

    大事なのは、この6つが、心構えで終わらないことです。
    後半で話す「AIとの共創4ステップ」は、
    この6つの力を具体的な手順に落として行きたいと思います。

    照準を定めるのは、「問いを選ぶ」力。
    ズレをつくるのは、「意味を与える」と「迷い、生み出す」力。
    そのズレを腹落ちさせるのは、「人と共に在る」と「責任を取る」力。
    そして、AIに渡す現実を拾ってくるのが、「現実を背負う」力です。

    つまり後編は、前編で見た「人間は何者か」を、「では、どう活かすか」に変換する話です。

    その前に、ズレをつくったあとに必ずぶつかる、ひとつの壁の話をさせてください。

    ズレは作れた。でも、大きなズレほど、人は身構える

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    第2話で、ズレの作り方をやりました。
    3つのBを外す。
    常識から、意図的に逸脱する。

    でも、ここに落とし穴があります。
    ズレが大きいほど、人は身構えるんです。
    「そんなうまい話があるか」「うさんくさい」。
    せっかくのジャンプも、着地に失敗すれば、ただの転倒。
    「は?」で終わってしまう。

    どれだけ正しくても、相手に伝わって、受け取ってもらえなければ、
    「やってない」のと同じです。
    だから、ズレには着地の設計——腹落ちが要ります。

    いま、ちょうどいい実例があります。イーロン・マスク氏が
    「宇宙にデータセンターを作る」と、本気で動き始めています。

    もし普通の人が、居酒屋で
    「データセンターなんか、宇宙に作ったらええやん」
    と言ったら

    「は?」ですよね。

    でも、こう説明されたらどうでしょう。

    「データセンターで効くのは、結局、エネルギーと冷却。地上は、もう電力がいよいよ足りない。でも宇宙なら、太陽光がほぼ24時間当たり続ける。しかもSpaceXは、Starlinkで巨大な衛星群を安全に運用する技術を、すでに持っている」

    ......ちょっと「確かに」ってなりませんか。

    さっきまで「は?」だったのに、論理(エネルギーと冷却)と、ストーリー(すでにある技術の延長線)で橋がかかった瞬間、
    「意外だけど、納得」に変わる。
    これが、腹落ちの設計です。

    ちなみに、冷却。
    「宇宙は寒いから楽勝やろ」と思いきや、宇宙は真空で熱が逃げにくくて、実はいちばんの難所です。そこを巨大なラジエーターで解きにいく

    ここまで知ると、もっと「確かに」が深まりませんか。

    こういう「つい人に話したくなる一ネタ」を、僕は"お土産"と呼んでいます。

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    技術の説明をするとき、正確なだけじゃなくて、こういう一ネタを必ず一つ混ぜる。
    すると、お客さん自身が、社内で「この前聞いたんですけど......」と広めてくれる。
    腹落ちは、正しい説明だけじゃなく、記憶に残る一ネタからも生まれます。

    もう一つ、腹落ちの武器があります。
    あえて、ノイズを入れることです。

    「現場の声が大事です」と100回言うより、

    完璧な提案書を作ったつもりだった。データも論理も揃えた。
    でも現場に持っていったら、ベテランの職人さんに、一言こう言われた。
    「これ、作った人、現場来たことないでしょ」

    というストーリーの方が、「現場の声が重要」ということを腹落ちします。

    ノイズとは、失敗の前振り、回り道、迷い、人間くさい一言。
    論理的には、不要な要素です。
    でも、このノイズこそが
    「ああ、この人は本当に経験したんやな」という実感を生む。
    きれいすぎる成功談は、信用されません。
    不完全さや回り道は、人間が本当にコストを払った証拠として機能するんです。

    AIの文章は、なめらかで、隙がなくて、ノイズがない。
    だからこそ、人間が意図的に迷いや失敗を残すと、それが本物の証になる。

    そして、腹落ちのいちばん深い土台は、テクニックの外にあります。
    「誰が、どんな関係で、何を背負って言うか」。
    同じ「宇宙でやる」でも、実績ゼロの人が言うのと、何百回もロケットを飛ばした人が言うのとでは、まるで違う。

    さっき見た、共在と署名の話、そして賭けてきたものの蓄積は、
    ここに効いてきます。

    では、AIとどう共創するのか

    ここまでの話を、明日から使える手順の1つに落とします。

    生成AIをうまく活用する方法は数々ありますので、
    1例として考えてください。

    AIの平均に、人間を掛け算するプロセスです。
    僕は、4ステップで考えています。

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    STEP1:照準を定める

    いきなりAIに「いい感じに書いて」と投げない。
    先に、誰の、何を、どう動かしたいのかを決めます。

    属性ではなく、リアルな葛藤でペルソナを描く。

    たとえば、

    「部下にAI活用を推進しろと言いながら、
    自分はAIをあまり使えていないことに後ろめたさがある事業部長」

    この人を、どう動かしたいのか。

    「AIは平均を作るだけだ」という諦めから、
    「自分の現場の言葉を入れれば変えられるかもしれない」へ動かしたい。

    ここであなただけが持っている現場の情報や一次情報、現実世界で勝ち取ってきたインプットができると強いです。

    それが、人間として「現実で情報をとれる価値」と「問いを具体化できる価値」につながってきます

    AIに渡す課題や状況を集めてきて仮説を作り、問いを選ぶのは、人間の仕事です。

    STEP2:AIに平均を出させる

    AIには、まず優等生の答えを出してもらいます。

    「このテーマで、アイデアを10個出してください」
    「このテーマで、誰もが思いつく平均的な提案を10個出してください」

    すると、AIはかなりうまく平均を出してくれます。
    これは悪いことではありません。

    平均とは、「みんなの予測の地図」です。
    大多数の人達が考えつく答えです。

    アイデアや回答のどこが想定内かを知ることができます。

    STEP3:平均を禁じ手にする

    次に、こう頼みます。

    「今の10個を禁じ手にして、それ以外の角度でアイデアを出してください。
    ただし、奇抜なだけではなく、意外だけど納得できる必然性を添えてください」

    僕はこれを、逆リセマラと呼んでいます。

    SSRを引くためにガチャを回すのではなく、
    先にN〜SRを全部見せてもらい、そこにないものを狙う。
    AIの出す「平均に寄る力」を、逆に地図として使う。

    人間は、その中から
    「これは必然性の橋がかけられる(腹落ち、納得を得られる)」
    と思うものを選んでブラッシュアップします。

    ここで、良いアイデアを見極める審美眼が必要になります。

    STEP4:人間の現実を入れて、署名する

    最後に、あなたの持つ現実や偏愛、こだわり、オリジナリティ、意志を入れます。

    ここがとても大事です。

    なぜなら、あなたが誘導してAIにアウトプットを出させても、
    それでもまだAIのアウトプットに過ぎないからです。
    同じ方法でだれでも出すことができます。

    現場で拾った一言。
    自分だけが感じた違和感。
    相手の表情が変わった瞬間。
    自分の失敗。
    自分の迷い。
    自分のやりたいこと。
    自分の伝えたいこと。
    変だけどどうしても入れたい自分のアイデア。
    ・・・
    自分の責任。

    これを入れる。
    そして、最後に自分の言葉で背負う。

    AIが書いた文章でも、
    最後の確認と仕上げは自分でやり切り自分のアウトプットにする。
    「これは私が責任を持って言います」

    そう言えるところまで、削ったり、ブラッシュアップする。

    ここをAIに任せきると、アウトプットはなめらかだけど、薄くなります。

    一周して、戻ってくる

    ここまで来て、前編と後編が、きれいに一周します。

    この4ステップを、もう一度よく見てください。

    照準を定められるのは、あなたが「何を問いたいか」を持っているから(問いを選ぶ)。
    ズレをつくれるのは、あなたが「何に偏愛を持つ(こだわりを持つか)か」を持っているから(意味を与える・迷い、生み出す)。
    腹落ちさせられるのは、あなたが「何を背負っているか」を持っているから(責任を取る・人と共に在る)。
    そして、AIに渡す一次情報を拾えるのは、あなたが現場に立っているから(現実を背負う)。

    どう作るか(行為)の質は、結局、あなたが何者か(存在)で決まる。

    前編の「6つの力」は、後編の「4ステップ」と、別の話ではありません。
    存在があるから、行為が回る。
    手順をなぞるだけでは、この4ステップは機能しません。
    自分という存在が回すからこそ、AIの平均に、人間が掛け算されます。

    カーナビではなく、親友のように


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    最後にたとえ話を1つ。

    あなたは親友と一緒にサッカーの試合を終えて敗北しました。
    とても悔しく早く帰りたい気持ちでした。

    カーナビの提案と、親友の提案。
    どちらが人を動かすか。

    カーナビは、最短ルートを教えてくれます。
    正確です。
    合理的です。
    とても早く帰れます。
    文句のつけようがありません。

    一方、親友はこう言います。

    「今日は頑張ったんやけどなー。せっかくなら海沿いを回って帰ろうぜ。
    前の試合の時に見つけたパン屋もあったし、一緒に海見てうまいパン食って帰ろうぜ。」

    遠回りです。
    非効率です。
    でも、心が動くのは、こっちです。

    親友の提案には、寄り道の理由があります。
    物語があります。
    そして何より、「あなたのことを考えた」という体温があります。

    ビジネスの提案も似てるんじゃないかと思います。

    「データに基づく最適解です」
    正しい。でも、カーナビです。

    「御社のあの現場を見て、どうしてもこれを提案したくなりました」
    体温があります。

    AIが出すのは、構造的にはカーナビの答えです。
    最短。最適。正確。

    そこに、寄り道とストーリーと体温を足すのが、人間の掛け算です。

    正しさは、カーナビに任せていい。
    人間は、親友をやればいい。

    今回のまとめ

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    人間は、出力装置であることを、やめていい。

    引き受けるのは、6つの力です。
    問いを選ぶ。現実を背負う。意味を与える。人と共に在る。責任を取る。迷い、生み出す。

    研ぎ澄ませば——出題、証言、審美眼、共在、署名、賭け。どれも、コピーした瞬間に意味を失うものです。

    AIとの共創は、4ステップ。
    先に、誰の何をどう動かすかの照準を定める。
    AIに平均を出させる。
    その平均を禁じ手にして、意外だけど必然性のある角度を出させる。
    最後に、人間の現実を入れて、自分の名前で署名する。

    ズレを届けるときは、腹落ちの橋を架ける。お土産の一ネタと、あえてのノイズ。

    そして、正しさはカーナビに任せて、人間は親友をやる。

    最後に、僕自身の話を少しだけ

    なぜ、僕がここまでこのテーマをnoteに書こうと思ったのか。
    最後に、少しだけ話をさせてください。

    私はこれまで色々な技術や色々なビジネスに関わってきました。
    まだまだ、キャリアとしては中堅くらいかもなので、
    「まだまだでしょ」と言われるかもしれません。

    ただ、
    大企業。
    外資系コンサル。
    AIベンチャー。
    大学発スタートアップ。
    あと自治体支援や複数のベンチャーでの事業開発を副業でも実施してきました。

    バラバラに見えるかもしれません。
    でも、自分の中では、ずっと同じ軸でやっていました。

    「なんか面白そう」、「この人たちが成功したら僕もうれしい」
    そして、そんな愛すべき技術やビジネスを、どう社会に出すか。

    その中で、過去には悔しかったこともありました。
    第1話に書いた、あの光景です。

    「いいですね、検討します」と言われて、フェードアウトしていくこと。
    うまく行ったと思った結果、結局何も動かなかったこと。

    人を動かすのは本当に難しい、けど動いたときには何より嬉しい。

    大学発ベンチャーで生成AIを活用しながら若手と仕事をしているとき、
    人が動く瞬間の感覚をぜひ知って欲しいし、病みつきになって欲しいと思い、たくさん伝えてきました。

    そういって伝えていく中で、ロジカルとかMECEとかコンサル的なノウハウより、結局
    「どんな問題設定が面白いか」、「なぜこのアウトプットは心に刺さらないのか」
    みたいな人間臭いフィードバックやレビューも自分に多いことに気づきました。そして、そういったレビューをしている時ほど若手や相手が楽しそうにしていることも気づきました。

    生成AIで程よいアウトプットが量産できるからこそ、
    感動を起こすとか人を動かすみたいな人間臭い考え方も重要なのかなと感じ、一度自分の頭を整理してみようと思ってnoteを書きました。

    感じて、動く

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    最後に、いちばん好きな言葉に戻ります。

    感動は、感じて動くと書く。
    心が震えるだけでは、まだ半分です。
    その震えが、人を動かしたとき、感動は完成します。
    資料が通る。事業が動く。誰かが一歩を踏み出す。
    自分の仕事の見方が少し変わる。
    AIは、正しさを無限に作れます。

    でも、人を動かす最後のひと押しは、まだ人間の仕事です。
    あなたの現場で拾った一言が、
    あなたの違和感が、
    あなたの偏愛が、
    あなたの責任が、
    あなたの迷いが、
    あなたの「どうしても伝えたいこと」が、
    AIの平均に掛け算されたとき、世界はほんの少しだけ、想定外に面白くなるんじゃないかと思います。

    正しさはAIに。
    ズレは、あなたに。

    人間は、出力装置であることをやめていい。
    そして、問いを選び、現実を背負い、意味を与え、人と共に在り、責任を取り、迷いながら生み出す側に回ればいい。

    このシリーズが、皆さんの明日のアウトプットに、
    小さなズレを生むきっかけになれば嬉しいです。

    荒削りですでまとまりのない文章でしたが、
    最後まで読んでいただけたなら嬉しいです。

    ではでは!

    #創作大賞2026 #ビジネス部門

     
     
    「技術をどうビジネスに変えるか」をテーマに、大学発ベンチャーCOOとして楽しく奮闘中 前職はAIベンチャー執行役員として0→1で事業部を立ち上げ、売上10億規模へ成長、IPOを経験。 綺麗な成功談だけでなく、泥臭い事業開発の裏側や気付き、学びなどをまったり書いていきたいです。

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