
🌿 苦味を抜かないチャンプルーと、ひとりのビール
1. ゴーヤを手に取った瞬間のこと
夕方のスーパーで、深い緑のゴーヤが目に入った。 表面の凹凸に触れたとき、 「今日はこの苦味をそのまま食べたい」と思った。 理由はわからない。 ただ、そういう日がある。
2. 苦味を抜かないという選択
ゴーヤを縦に割り、ワタを取って、ただ切るだけ。 塩もみも、水にさらすこともしない。 苦味をやわらげる方法はいくつもあるけれど、 今日はそのどれも必要なかった。 むしろ、苦味が欲しかった。 厚揚げの油を軽く押さえながら、 「この苦味が、きっと今日の自分には合う」と思った。
3. フライパンの中で、今日の音がする
豚肉を炒める音、 ゴーヤが加わったときの軽いはね、 厚揚げが温まっていく静かな気配。 卵を流し入れ、醤油をひと回し。 鰹節粉末をふると、 香りがふわっと立ち上がって、 台所が少しだけ明るくなる。
4. ビールを開ける
皿に盛りつけて、冷蔵庫からビールを一本。 プシュッという音が、 今日の区切りをそっと告げる。 ゴーヤの苦味とビールの苦味が、 まるで同じ方向を向いているように馴染んでいく。 厚揚げのやわらかいコクが、 ビールの泡でふっと軽くなる。 ひとりで飲んでいるのに、 どこかで誰かと乾杯したような気分になる。
5. 苦味が教えてくれること
苦味を抜かないゴーヤは、 まっすぐで、嘘がない。 そのままの味を受け止めると、 自分の気分までまっすぐになる気がする。 豚肉、厚揚げ、ゴーヤ、卵、醤油、鰹節。 たったこれだけで、 “今日の夜ごはん”がきちんと成立する。
6. また作りたくなる理由
同じ材料でも、 ゴーヤの苦味は毎回すこし違う。 今日の苦味と今日のビールは、 今日の自分にしか合わなかった組み合わせだった。 そんなことを思いながら、 ゆっくり皿を洗った。
