
【詩】 断片群〜Civita di Bagnoregio〜
刑務所の運動場から
口の周りに
無精ひげを生やした
短髪の囚人が
立って
雲沸く空を見上げている
柔らかで暖かい
光が射し込む
アトリエ
白髪が混じった
細身の男性画家が
キャンパスに向かう
一匹の
老いたシェパードを
看取った青年
泣きながら
幼少期より共にいた
犬の頬と頭を撫でる
産業が廃れた
小さな町
建造物は
錆びて
朽ち
緑とゴミに
覆われ出している
幼い女の子が
通りに面した庭で
遊んでいる
崩れやすい
凝灰石の
切り立った台地
その上に築かれた
天空の
死にゆく町
渡る道は
一本の
架け橋だけ
石造りの
家々の間は
狭く
重厚な門を持つ
ロマネスクと
ルネサンスが相まった
中心部の教会
絵が霞んで
消えかかった
中世のフレスコ画
ダウンタウンの一角
老朽化したアパート
頼りないフレームと
伸び切ったスプリングの
ベッドの上で
痩せ細った若い女が
息を引き取った
痩せて顔色の悪い
若い女は
ぐっすりと
眠るように
死んでいた
売人であった
無精ひげの男は
その光景を
発見した
街中で
一匹のシェパードが
前方の通りを曲がった
青年は
亡くなったはずの
犬の後を追った
画家は
筆を走らせ
身を屈めた
壮年の修道女を
丹念に
描いている
廃れた小さな町の
廃れた民家
木板が剥がれかかった
クローゼット
その中にいる
くすみきった
テディベア
画家の絵が
完成する
手入れのされていない箱庭
青のペンダントをした
修道女が屈んで
微笑んでいる
その視線の先に
テディベアを抱えて遊ぶ
小さな女の子
囚人は
覚えている
痩け果て
息をしなくなった女が
首にしていた
クリスタルブルーの
ペンダントの色
青年は
犬を見失い
立ち止まる
古くなったアパートの
解体工事
道端の雑草群
その中に隠れていた
澄んだ空色の
ペンダントを
拾い上げた
天空の教会
その祭壇の端
写真の中
テディベアを抱えた
小さい女の子が
笑っている
痩せた女が
ベッドの上で
動きを止めたとき
陽光が
わずかにあたって
彼女は涙を一筋
流していた
胸に
青く澄み渡る
ペンダントを
乗せたまま
犬は
覚えていた
女の
薬物の匂い
ぬいぐるみか何かを
愛しむ眼差しで
自分を
撫でたこと
画家は
絵の前に座り
懐かしさと
気にかけながら
少女に
手を差し伸べなかった
後悔を
顔に浮かべる
囚人は
慕いながらも
女を死に追いやった
自分を呪い
表情のないまま
空に
背を向ける
青年は
ペンダントを
手のひらに
取り壊される
古びたアパートを
見上げた
誰かが去りゆく
気配を感じて
滅びゆく
天空の町
一匹のシェパードと
一人の少女が
石の
狭い路地に
消えていった
*以前書いたものを加筆、修正しました
↓こちらも創作大賞応募の詩です
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