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途中の人生|第38回|やりきる

    前回:第37回

    営業は、
    しんどいだけではなかった。

    飛び込み先で、
    渡した名刺を
    目の前で破られたことがある。

    普通に考えれば、
    かなり失礼な話だと思う。

    でもその時の私は、
    なぜか怯まなかった。

    「あ! 破れちゃったんで
     新しい名刺どうぞ!」

    とっさに、
    そんなふうに返していた。

    相手は少し拍子抜けしたような顔をして、
    その場はそれで終わった。

    でも数日後、
    その相手から
    発注をもらった。

    正直、
    驚いた。

    でも同時に、
    少しだけ分かった気もした。

    営業は、
    ただ断られて終わるもの
    ではないのかもしれない。

    しんどくても、
    感じが悪くても、
    やりきっていれば
    返ってくることもある。

    もちろん、
    毎回うまくいくわけではなかった。

    でもあの出来事は、
    削られるばかりだった毎日の中で、
    初めて少しだけ
    手応えを感じた瞬間だった。

    やりきると、
    返ってくることがある。

    たぶん私は、
    あの頃から少しずつ
    そういう感覚を
    覚えはじめていたのだと思う。

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