
途中の人生|第37回|数字を作れ
前回:第36回
仮配属と本配属は、
結局同じ支店だった。
その支店は、
全国でも一、二を争うくらい
成績の良い支店だった。
そこに入った以上、
求められるものも
分かりやすかった。
数字を作れ。
それだけだった。
新規開拓営業として、
毎日飛び込みに出た。
大きなオフィスビルでは、
まず最上階まで上がる。
そこから端から端まで飛び込んで、
非常階段で一つ下の階に降りる。
また端から端まで飛び込んで、
また非常階段で降りる。
それを一階までやる。
そんなことを、
毎日繰り返していた。
勤務時間は
朝九時から夜九時まで。
通勤時間は
片道二時間くらいあった。
いまなら
それだけでしんどい。
でもその頃の私は、
土日祝が休みなだけで
飲食の時よりはまだましだと
思っていた。
基準がもう、
だいぶおかしくなっていたのだと思う。
楽しかったわけではない。
余裕もなかった。
ただ、
やるしかなかった。
成績の良い支店の空気は、
そのまま圧でもあった。
数字を作れ。
結果を出せ。
そういう言葉の中で、
私は営業の毎日に
入っていった。
営業の土台みたいなものは、
たぶんあの頃に
いちばん乱暴な形で
作られたのだと思う。