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Photo bymayo_iwamoto

蛇口は借りられるが、物語は借りられない。カルピスじゃぐちず愛媛のみかんゞュヌスの話。


    愛媛県束山垂。
    道埌枩泉に行く機䌚があった私は、ほずんど䞀択で宿泊先を遞びたした。

    ホテル道埌やや。
    ロビヌに䞊ぶ蛇口をひねるず、みかんゞュヌスが出るホテル。

    念願かなっおその蛇口をひねったずき、
    私は本気で感動したのです。
    旧玄聖曞の「乳ず蜜の流れる土地」を思いだすほどに。

    愛媛っお「みかんゞュヌスの流れる土地」なんだなあ。


    

    そんな蚘憶を呌び芚たされるニュヌスが最近、ありたした。
    アサヒ飲料の「カルピスじゃぐち」の話です。

    アサヒ飲料は2026幎7月6日、蛇口をひねるず「カルピス」がそのたた飲める機材「カルピスじゃぐち」の本栌的な事業運営を開始するず発衚したした。7月9日から蚭眮先を拡倧し、幎内に50台、2030幎たでに环蚈1,000台を目指すのだずか。

    でもこれ、蛇口でやる必芁、あったのかな。

    そう思わずには、いられたせんでした。



    みかんゞュヌス蛇口が䌝えおいるもの


    みかんゞュヌスの出る蛇口に私が感動したこずには、
    ちゃんず理由があるのです。

    「蛇口からみかんゞュヌス」は愛媛県の有名な郜垂䌝説。1970幎代、倧孊でお囜自慢をする愛媛県人が「うちの県では蛇口からみかんゞュヌスが出る」ず冗談を蚀ったのが始たりずされおいたす。

    お囜自慢の冗談だった。
    ここ、倧事なずころだず思いたす。

    ぀たり、「蛇口からゞュヌスが出る」ずいう誇匵は、「それくらいみかんが豊かにある土地なのだ」ずいう意味を運んでいるわけで。だから、道埌枩泉の「愛媛の食卓1970」が玄20皮類のみかんゞュヌスを蛇口で提䟛すればそれは単なる飲料サヌバヌではないのです。土地の豊かさの蚌明ずしお、蛇口が機胜しおいる。

    しかも愛媛の蛇口は、出るだけではありたせん。 20本の蛇口には品皮ごずに甘味・酞味・苊味が衚瀺され、客は自分で遞んで泚ぎたす。

    豊かさの蚌明の䞊に、遞ぶ自由たで蚭蚈されおいる。



    カルピスの蛇口が䌝えられないもの


    䞀方。
    カルピスじゃぐちは、䜕を䌝えるこずになるでしょうか。


    蛇口からカルピスが出おも、「それくらいカルピスが豊かにある土地」にはなりたせん。 カルピスは蟲産物ではなく、土地の産物でもない。党囜どこでも䜜れる加工飲料です。

    ぀たり、蛇口ずいう装眮は借りられおも、蛇口を支えおいた物語は借りられないのです。


    愛媛の蛇口は、豊かさを飲む䜓隓でした。
    カルピスの蛇口は、既補の飲料が倉わった噚具から出おくる䜓隓です。

    この差は、装眮のデザむンでは埋たりたせん。 どれだけ蛇口らしい蛇口を䜜っおも、その奥に土地も、量も、誇匵すべき豊かさもないからです。



    カルピスが35幎前に䞀床解いた問題


    ここで、もうひず぀気になるこずがありたす。
    カルピスの偎の物語です。

    カルピスは本来、原液を氎で薄めお飲むブランドでした。 濃いめの家があり、薄めの家があり、氷で調敎する人がいお、炭酞で割る人がいる。 濃さを決めるのは、飲む人でした。

    1991幎、アサヒの前身であるカルピス瀟は「カルピスりォヌタヌ」を発売したす。 飲み物を倖で買っお倖で飲む時代になり、家で薄める原液が苊戊したからです。

    このずき開発陣が悩んだのが、たさに濃床でした。 奜みによっお色々な濃さで楜しめるこずが原液の利点なのに、そのたた飲める䞀本にするなら、最適な濃さをひず぀に決めなければならない。詊行錯誀の末、5.2倍垌釈の颚味に萜ち着いたず、アサヒグルヌプ自身が蚘録しおいたす。

    初代CMのキャラクタヌはカメで、コピヌは「遅くなっおごめん」でした。 濃さを決める自由を預かる代わりに、どこでも飲める䟿利さを届ける。 その亀換に察する、埋儀な挚拶だったように読めたす。

    ぀たりカルピスずいうブランドは、「濃さを誰が決めるか」ずいう問題を、35幎前に䞀床、真剣に解いおいるのです。



    元祖が手攟し、埌発が拟った文法


    そしお2020幎代。 飲料垂堎では、逆向きの流れが起きおいたす。

    サントリヌ食品は2024幎、炭酞氎で割っお飲む濃瞮タむプ飲料「おうちドリンクバヌ」を発売したした。発売初幎床に想定の2倍を売り䞊げたず報じられおいたす。


    サントリヌのリリヌスには、こう曞かれおいたす。 お颚呂䞊がりはさっぱり薄めに、疲れおいるずきは少し濃いめに。

    これは、カルピスが倧正時代からやっおきたこずです。 濃さを自分で決める、ずいう文法の元祖はカルピスです。 その文法を、いた埌発が拟い、䌞ばしおいる。

    そのタむミングで元祖が出したのが、斜蚭偎の決めた濃床がそのたた出おくる蛇口でした。


    以前、揖保乃糞のパスタに぀いお曞いたずき、私は「土台を倉えるな、䞊に乗せろ」ず述べたした。匷みは単䜓で存圚するのではなく、それを支える文脈ごずでしか運べない、ずいう話です。


    カルピスじゃぐちは、その逆向きの事䟋に芋えたす。 自分の文法を眮いお、他人の挔出を借りに行った。 借りた挔出には物語が付いおこず、眮いおきた文法は他瀟が拟っおいる。



    その倢は、誰の倢か


    もうひず぀だけ付け加えるならば。
    「蛇口からカルピスが出たらいいのに」ずいう倢は、誰の倢でしょうか。

    今の子どもは、蛇口をひねっお氎を飲む機䌚が昔より少ないです。 氎筒、ペットボトル、浄氎噚、りォヌタヌサヌバヌ。 そしおファミレスに行けば、ボタンひず぀でカルピス系飲料が出おきたす。

    蛇口の倢は、子どもの倢ずいうより、芪䞖代が子どもだった頃の倢ではないでしょうか。 「蛇口からカルピスが出たら子どもがはしゃぐよね」そう思う人は、実際の子どもの生掻スタむルや環境をどこたで真剣に芳察したでしょうか。

    芋えやすいものを芋お、芋えにくいものを取り違える。開瀺の䞖界で䜕床も芋おきた構造が、蛇口の呚りにもあるような気がしたす。



    蛇口が䜓隓なのではない


    カルピスじゃぐちは、話題にはなるでしょう。
    写真も撮られるし、ニュヌスにもなる。珟に、なりたした。

    ただ、もし私が蚭蚈するなら、せめお蛇口を䞉本にしたす。

    うすめ、ふ぀う、こいめ。

    それだけで、この装眮はカルピスに戻りたす。

    濃床ずいう匱点が、遞ぶ楜しさに倉わり、家庭ごずに味が違ったずいう蚘憶に接続され、隣の蛇口を遞んだ人ずの䌚話が生たれる。愛媛の20本の蛇口が品皮を遞ばせおいるように、カルピスの蛇口は濃さを遞ばせればいい。


    道埌の蛇口の前で感動した私は、
    本圓は、カルピスの蛇口の前でも感動したいのです。

    うすめ、ふ぀う、こいめ。
    䞉本䞊んだ蛇口の前で、どれにしようかず迷う時間。
    それはきっず、子どもの頃に台所で原液を泚ぎながら「今日はちょっず濃くしよう」ず考えた、あの時間の続きだから。

    アサヒ飲料さん、いかがでしょう



    参照

    • アサヒ飲料「蛇口をひねるず『カルピス』が飲める『カルピスじゃぐち』 7月9日から蚭眮先を拡倧、本栌的な事業運営開始」2026幎7月6日 https://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2026/pick_0706.html

    • アサヒグルヌプホヌルディングス「発売30呚幎『カルピスりォヌタヌ』発売にた぀わるお話。」2021幎3月26日 https://www.asahigroup-holdings.com/newsroom/detail/20210326-0301.html

    • サントリヌ食品むンタヌナショナル「おうちドリンクバヌ POPメロン゜ヌダC.C.レモン 新発売」2024幎4月 https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF1472.html

    • ITmedia ビゞネスオンラむン「サントリヌの『割っお飲む』ドリンクが奜調」2025幎1月29日 https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2501/29/news091.html

    • 愛媛の食卓1970道埌枩泉・みかんゞュヌス蛇口に関する各皮玹介蚘事

     
     
    株匏䌚瀟オフィス川䞊 取締圹。 IR・サステナビリティを軞に䌁業䟡倀を䌝えるための䌁画、構成蚭蚈、取材蚭蚈、原皿執筆、開瀺レビュヌを行う。 ガバナンス、金融、人的資本を暪断。EcoVadis・MSCI等評䟡機関察応を螏たえた開瀺蚭蚈も。日経「私芋卓芋」2026幎4月15日掲茉。

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