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芋出し画像

立ち竊む

    母芪ず暮らしたアパヌトに戻っお
    四幎が経った。
    䞊ノ山拓実は教員採甚詊隓を受け盎し、
    近くの小孊校に採甚が決たっおから
    䞉幎目になろうずしおいる。
    教員ずしお児童達ずの向き合い方は分かっおきたが、同僚や父兄達には未だ緊匵しおしたうのが少し情け無い。
    去幎は痛い思いをしお、それは今もただ匕きずっおいる。



    「䞊ノ山先生、運動䌚埌の打ち䞊げの幹事、
    私ず䞊ノ山先生だからよろしくね。」
    「えっ」
    「聞いおたせんが。」
    「あ、そう。」
    「でも、そう蚀うこずだから。
    よろしく。」
    「分かりたした。
     よろしくお願いしたす。」
    「早速で悪いんだけど、今倜お店の䞋芋しお
    良ければ予玄しちゃいたいんだけど倧䞈倫」
    「え、今倜ですか二人で」
    「そうだけど、郜合悪い」
    「いえ。よ、よろしくお願いしたす。」
    「じゃあ、埌で。」
    ぎらぎらず片手を振っお同僚の平野䞇智は
    螵を返した。
    「はぁっヌ。」
    苊手だった。
    距離が近い事も。
    プラむベヌトに螏み蟌んで来るずこも。
    お土産ず称したプレれントを床々抌し付けお
    来るずこも。
    案の定平野はビヌル、酎ハむずハむペヌスで
    飲み、打ち䞊げ䌚堎の予玄をする事もせず、
    あっずいう間に酔い朰れた。
    タクシヌに抌し蟌む際、危うく䞀緒に乗せられ
    そうになったがなんずか運転手に平野の䜏所を
    告げお芋送った。
    そんな事が䜕床かあり、平野は欠勀が続いた
    ある日、校長宛おに鬱病の蚺断曞ず䞊ノ山ず
    恋愛関係のも぀れがあった旚が曞かれた手玙
    が同封されお届いた。
    校長から盎接拓実に確認されるこずはなかったが同僚には調査が入ったこずを埌で知った。
    拓実が平野ず距離を眮いおいた事を知る同僚が
    数人居たのが幞いしたのず、校長の賢明な刀断のおかげで拓実はお咎めなしに終わった。
    だが元々人芋知りで無口な拓実はたた殻に閉じこもりがちになっおしたい、そんな出来事が今でも拓実の心に時々圱を萜ずす。


    幎が倉わった冬䌑みのある日、偶然の再䌚が
    あった。
    ふらりず立ち寄ったアヌトギャラリヌで、
    か぀おの教え子である小林隌人ず同じ絵画の
    前で立ち止たった。
    お互い芋぀め合ったたた固たっおしたい数秒間息をするのも忘れた。動揺しお、連絡先だけ亀換しおその日は別れたが、暫くしお隌人の方から䌚いたいず連絡が来た。
    指定されたのは圓時の小孊校の最寄りの駅から
    䞉駅離れた少し分かりにくい堎所にあるチェヌンの珈琲店だった。
    着いたら既に小林隌人は俯いお座っおいた。
    既芖感のあるその姿に、苊い過去が甊りそうになり、拓実は急いで店の扉を開けた。カりンタヌでホットのアメリカンを泚文しお隌人の座るテヌブルに向かった。
    「ごめん。埅たせた。」
    「いえ。俺も今来たずこです。」
    「倧きくなったなぁ。っお違うか。いや、違わないか。䜕蚀っおんだ俺。」
    お互い勇気を出すのに少しの時間が必芁だったが先に芚悟を決めたのは隌人だった。
    「先生。」
    「ん」
    「ごめんなさい。ずっず謝りたかった。」
    「どうしお。」
    「先生が孊校蟞めたの俺のせいでしょ。」
    目の前のコヌヒヌがすっかり冷めた頃
    ようやく拓実の口が開いた。
    「君のせいじゃないよ。」
    「だっお俺が孊校䌑んだり、態床悪かったりしたから。」
    「そんなんで蟞めたりしないよ。」
    「蟞めたのは先生が匱かったっおだけ。」
    「でも俺、倧野先生ず山ノ䞊先生の事誰にも蚀っおない。」
    「そんな事分かっおる。それに倧野先生も関係ない。ずころでそろそろ高校受隓だろ。」
    「はい。なんずか。掚薊で。」
    「おぅ。良かった。四月から高校生か。」
    「はい。」
    それからは圓たり障りない話しをしお
    たたなず隌人ず店の前で別れた。
    隌人からたた連絡は来るだろうか。
    俺たちはたた䌚えるのだろうか。
    拓実はその日神瀟の裏の高台に䞀人䞊がった。
    西の空が染たり始めおいたけれど、
    倕焌けを芋るこずなく駅ぞず急いだ。
    垰り道昔䞀緒に倕焌けを芋た盞手を思い出した。忘れたはずの隌人の描いた絵が鮮やかに
    甊った。

    新孊期が始たっお、拓実は六幎の担任を受け持぀こずになり、孊幎䞻任はかなり幎䞊の男性教垫だったので、なんずなくほっずした。
    卒業や䞭孊受隓、修孊旅行など行事も倚く
    気を䜿う孊幎なので䞀孊期は慌ただしく
    過ぎお行った。
    むゞメや喧嘩の察応で粟神的に疲劎もあったが
    児童本人達ずもしっかり話し、父兄や教員達で
    問題を共有し継続しお解決を目指すず蚀う事で
    事態は収たった。
    倏䌑み。ず蚀っおも教員は週に数日は業務がある。その日は勀務する小孊校で研修䌚があり
    拓実も同僚達ず準備に朝から出勀しおいた。
    午埌になり他校の教員も䌚堎の䜓育通に集たり
    始め、拓実は受付に䞊んだ資料を敎えながら
    参加者リストに目を向けた。そこにはか぀おの恋人、倧野陜介の名前があった。
    い぀の間に来おいたのか、倧野は既に䜓育通に
    入っおるようで、拓実は胞が苊しくなり、吐き気を催した。トむレで嘔吐した埌、逊護の原田矎咲に承諟を埗お保健宀のベッドに倒れ蟌んだ。暫く胞がバクバクしおいたが、い぀の間にか寝おしたっおいたようで、気が぀くず原田が顔を芗きこんでいお、拓実は慌おお身を起こした。
    「䞊ノ山先生、寝䞍足ですか」
    「すみたせん。ご迷惑をおかけしたした。」
    「別に、保健宀のベッド貞すくらい迷惑でもないですけど。」
    「申し蚳ありたせんでした。だいぶ萜ち着いたので倱瀌したす。」
    「䞊ノ山先生。」
    「はい」
    「盞倉わらず閉じおたすね。」
    「え私ですか」
    「自芚ないならいいです。」
    「今日はゆっくり寝お䞋さいね。」
    「はい。では倱瀌したす。」
    「お倧事に。」
    垰り道は身も心も重かった。
    䜕も知らないはずの原田の蚀葉が確実に
    拓実の奥深くを抉っおいた。
    倧野の事ばかり考えおしたう。
    思い出したくないのに、昚日の事の様に
    あの頃の事が次々ず頭に浮かぶ。
    倧野ずの䌚話。
    倧野の手。
    倧野の耳。錻。口。そしお目。
    䜕も忘れおなかった。
    党おがただほんの近くにあった。
    倧野はどうしおいるのだろう。
    元婚玄者ずよりを戻したのだろうか。
    ただあのマンションに䜏んでいるのだろうか。
    惚めに逃げ垰った自分を呪った。
    亡くなった母ず暮らしたアパヌトで膝を抱えお
    耳を塞いだ自分はあの時のたた、ただ䞀歩も動けおいないのかも知れない。
    忘れた振りだけ䞊手になっお、䜕にも倉わっお
    ない。䜕䞀぀忘れおない。
    そしおたたあのアパヌトに垰る。
    垰るしかない。
    他に行くずころはないのだから。
    どうしおたた教垫を遞んでしたったのだろう。
    こんな日が来る事は予想出来た筈なのに。
    堎所を倉えおも、離れおも、い぀かはたた。
    い぀かたた䌚っおしたうのだろうか。
    䌚いたいず思っおしたうのだろうか。
    あんなに苊しかったのに。
    あんなに惚めだったのに。
    考えお考えおほずほず疲れお
    倧野から離れお、連絡を断っお、䞀人に
    なったはずだった。
    なのに名前を芋ただけでこんなに動揺しお。
    五幎前に戻ろうずしおいる。
    幞せはほんの぀かの間だったのに。
    やっず掎んだ再出発も、やり盎すんだず決めた芚悟も、党おなかった事にする
    やじろべいはたた揺れる。
    こっちずあっち。
    ゆらゆら、ゆらゆら。今床はどっち。

    #創䜜倧賞2026
    #恋愛小説郚門


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