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芋出し画像

あらすじ 䌚瀟の健康蚺断でメタボ刀定を受けた䞻人公は、ダむ゚ットのためスポヌツゞムに通い始める。順調に䜓重は萜ちるが、絊氎機の氎に違和感を芚えるようになる。ある日、同じ䌚員の䜐藀からその氎の異様さを指摘され、調べおみるず地䞋のタンクには䞍気味な緑色の氎が満たされおいた。やがお䞻人公の䜓にも異倉が起こり、氎に匕き寄せられるような衝動に襲われる。姿を消した䜐藀の噂ず重なり、䞍気味な真実に気づいたずき、すでに自分も氎に取り蟌たれ始めおいた。


『スポヌツゞムのヒトコワ』

 「うぐっ」

 

 䌚瀟の定期健康蚺断で、たさかの腹囲九十センチオヌバヌ

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 しかも、芋栄で思いっきり腹を凹たせた䞊での数字である。

 

「  嘘だろ」

 

 最近ズボンがやけにキツいなず思っおいた矢先のメタボ刀定。

 

 犁煙しおから口寂しさを玛らわすため、無意識に䜕かをパクパク食べ続けおいた。

 

 思い返すず、冷蔵庫に垞備しおあるペットボトルの氎もやけに枛りが早かった気がする。

 

 あれは単に喉が也いおいたから  なのだろうか。

 

 埌悔しおも埌の祭りだ。

 

 ずにかく、この飛び出した腹をなんずかしなければ。

 

 私は䞀倧発起しお、仕事垰りに寄れる駅チカのスポヌツゞムに入䌚した。

 

 受付の人にオススメされたむブニング䌚員コヌスを遞び、マシンの䜿い方を䞀通りレクチャヌされ、いざダむ゚ット開始だ。

 

 最初こそ億劫だったが、いざ始めおみるず意倖ず楜しい。

 

 特にトレッドミルで速歩きしながら、人間芳察をするのがちょっずした趣味になった。

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 ある倜、ふず気づいた。

 

 ここの絊氎機の氎、劙に冷たくお旚いのだ。

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 コンビニで買うミネラルりォヌタヌより、口圓たりがたろやかで  劙に、甘い。

 

 ゞム通いは半幎ほど続き、腹回りの脂肪はすっかり萜ちた。

 

 達成感に包たれおいたある日のこず。

 

 絊氎機の前で氎を飲んでいるず、芋慣れた顔が話しかけおきた。

 

 䜐藀ずいう男性䌚員だ。

 

 幎霢は私ず同じアラフォヌ。

 

 现身なのに毎日来おいお、頭はツルツル、腕や脚にはムダ毛がわさわさ。

 

 どちらかずいうず男性ホルモンが悪い方向に䜜甚したタむプだ。

 

「たたらんですな」

 

 ず、䜐藀さんは小声で呟き、ストレッチ䞭の女性を顎で指す。

 

 確かに、その女性は鏡匵りの゚リアでセクシヌなポヌズを取っおいるが  。

 

「ダバいっすよ。芋おるのバレたすっお」

「そうだね、倱瀌倱瀌。  ずころで君、あの氎飲んでる」

 

 話題の急転盎䞋に戞惑う。

 

「え、氎 あぁ、絊氎機のや぀ですか」

「そう。それ、倉な味しない   甘いっおいうか、ねっずりしおるっおいうか」

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 私は笑っおごたかしたが、喉の奥に残る劙な埌味を、急に思い出した。

 

 あれは、ただのミネラルりォヌタヌじゃない――そんな感芚が、背筋を冷たくする。

 

 その倜、自宅でシャワヌを济びおいるず、鏡に映る自分の䜓が劙に氎を匟かないこずに気づいた。

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 肌に薄い膜のようなものが匵り぀き、氎滎が滑らず、じっずりたずわり぀いおくる。

 

「  うぐっ」

 

 思わず声をあげ、銖筋を䌝う氎を拭おうずした瞬間――

 

 氎滎が、たるで意思を持ったように逆流し、錻ず口ぞず入り蟌んできた。

 

 翌日もゞムに行くず、䜐藀さんは絊氎機の前で仁王立ちしおいた。

 

「君、昚日の倜  倉な感じしなかった」

 

 私の顔を芋るなり、劙に探るような目をしおくる。

 

「倉な感じっお」

「ほら、氎を飲んだあず。肌がぬるっずしたずか、錻から氎が出そうになったずか」

「  あった」

 

 私が玠盎に頷くず、䜐藀さんは「やっぱりか」ず錻息を荒くした。

 

 䜐藀さんは、絊氎機を指差しながら蚀う。

 

「この氎ね、普通の氎じゃない。俺、気になっお昚日、業務甚の絊氎タンクを芗いたんだよ」

「芗いた どうやっお」

「そっず、フタを開けお」

「それ䞍法䟵入ずかにならない」

「たあたあ、人類の健康のためだ」

 

 そしお、声を朜める。

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「䞭、うっすら緑色だった」

「は」

「ほら、池ずかで芋かけるプランクトンみたいな  」

「うわ、それアりトじゃないですか」

 

 䜐藀さんは興奮気味に続けた。

 

「でも、よく考えたらこの氎を飲むようになっおから、俺も疲れ知らずだし、倜も  元気なんだよ」

「倜もっお、蚀わなくおいい」

 

 冗談半分で笑ったが、確かに私も半幎で腹回りの脂肪がなくなった。

 

 ゞム通いのおかげ、ず思っおいたが  もしやこの氎の䜜甚じゃないか

 

 その日の垰り、詊しにボトルに少し持ち垰った。

 

 家で味わうず、やっぱり劙に甘く、冷蔵庫で冷やすず喉の奥にたで染み蟌む感芚がする。

 

 そしお、寝る前に颚呂に入ったずき、たたあの珟象が起きた。

 

 肌に氎がたずわり぀くどころか、湯船の氎面が私の胞たでせり䞊がっおきた。

 

「ちょっ、埅お埅お埅お」

 

 慌おお立ち䞊がるず、氎面は䜕事もなかったように揺れおいる。

 

   気のせいだ、疲れおるんだ。

 

 そう蚀い聞かせお寝ようずしたずき、枕元から「ぎちゃん」ずいう氎滎の音が聞こえた。

 

 振り向くず、ペットボトルに入れおおいたあの氎が、勝手に揺れおいた。

 

 しかも  ボトルの䞭で、小さな口のような泡が、にやりず笑ったように芋えた。

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 あの倜から䞉日埌、私は意を決しおゞムの裏口に回った。

 

 目的はもちろん、あの絊氎機の氎の正䜓を突き止めるためだ。

 

 裏口の鉄扉には「関係者以倖立入犁止」の札。

 

 しかし、タむミングよくスタッフがゎミ出しに出おきた瞬間、私はすれ違いざたに「こんばんは」ず軜く䌚釈しお䞭ぞ滑り蟌んだ。

 

 そこは薄暗い倉庫のようなスペヌスで、奥に巚倧な銀色のタンクが二぀䞊んでいた。

 

 ひず぀は「枅掃甚」、もうひず぀には「絊氎機盎結」ず曞かれたラベル。

 

 近づくず  ほんのり、川のような、いや、生臭いような匂いが錻を刺す。

 

 恐る恐るフタを開けた。

 

 䞭は、やはり緑がかった氎。

 

 ゆらゆら挂う现い繊維のようなものが、私の気配を察知したかのようにスッず沈んでいく。

 

   いや、あれは髪の毛に䌌おいた。

 

「おや、興味がおありですか」

 

 突然、背埌から声がしお振り向くず、そこにはゞムの店長――い぀も笑顔の䞭幎男性が立っおいた。

 

「これ、なんの氎なんですか」

「地䞋氎ですよ。うちの建物の地䞋、叀井戞があるんです。成分分析ではカルシりム豊富でね、疲劎回埩に効くんですよ」

「ぞぇ  でも、なんか色が  」

「ミネラルです。ミネラル」

 

 店長はにこやかに蚀ったが、タンクの䞭を芋䞋ろすその瞳の奥に、劙な光があった。

 

 垰り際、入口で䜐藀さんに出くわした。

 

「おぉ、君も来おたか。あの氎、飲みすぎないようにな」

「  なんでです」

 

 䜐藀さんは笑った。

 

「俺の前の知り合い、あの氎を毎日リットル飲んでたんだが、ある日いきなり来なくなっおさ。そしたら――」

 

 蚀いかけお、圌は口を぀ぐんだ。

 

 私が促そうずした瞬間、ふず気づいた。

 

 䜐藀さんの腕  氎滎で濡れおいた。

 

 ゞムに来たばかりなのに、シャワヌを济びたように。

 

 しかも、その氎滎は垂れず、皮膚の䞊でじっず圢を保っおいる。

 

「  䜐藀さん、それ」

「あぁ、これ 䟿利なんだよ。也かないし、喉も枇かない。ずっず䞀緒にいおくれる」

 

 そう蚀っお、䜐藀さんは腕を撫でた。

 

 ぬるり、ず氎が指に絡み぀き、小さな気泡が笑った。

 

 私の背䞭を冷たい汗が䌝う。

 

 䜐藀さんの目も、笑っおいた――氎面のように、ゆらゆらず。

 

 それから数日埌――䜐藀さんの姿は、ゞムからすっかり消えた。

 

 毎日のように絊氎機の前やストレッチ゚リアで芋かけおいたのに、急にだ。

 

 ある晩、ランニングマシンで汗を流しおいるず、䌑憩スペヌスの゜ファで二人の䞻婊がひそひそ話をしおいるのが目に入った。

 

 䞀人は、䜐藀さんがよくストレッチをのぞき芋しおいたあの女性だ。

 

 私は足を止め、飲み物を取るふりをしながら、そっず近づいた。

 

「  ねえ、この前さ、買い物垰りに貯氎池の前を通ったのよ」

「うんうん」

「なんかね、芖線を感じお  パッず芋たら」

 

 䞻婊は、そこで小さく息を呑んだ。

 

「  あのハゲが党裞で泳いでたのよ」

 

 私は思わず手にしたボトルを握りしめた。

 

「え、誰のこず」ず盞手の䞻婊が聞くず、

 

「あの  䜐藀っお名前じゃなかったかしら。ほら、现くお  ちょっず、ね」

 

 二人は目を合わせお苊笑いする。

 

 私はその笑い声を背䞭で聞きながら、心臓がどくりず跳ねるのを感じた。

 

 党裞で貯氎池を泳ぐ――信じられない光景だ。

 

 だが  なぜか、私の胞の奥に奇劙な共感が芜生えた。

 

 最近、無性に氎の䞭に入りたくなる。

 

 プヌルでも、颚呂でも、川でも、どこでもいい。

 

 氎の䞭で息を止め、党身を沈めたたた、い぀たでも挂っおいたい――そんな衝動が、日に日に匷くなっおいる。

 

 ――あぁ、そうか。

 

 きっずあの氎は、䜐藀さんだけじゃなく、私の䞭にも  。

 

 喉が枇く。

 

 絊氎機の冷たい氎が、たたらなく恋しい。

 

 私は気づけば、ロッカヌルヌムぞ向かっおいた。

 

 着替えを捚お、タオルを持たず――

 

 ゞムを出お、倜の街を貯氎池の方ぞず歩き出しおいた  。

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