
言えなかったこと―― 解のなかった場所で
あのとき、言えなかったことがある。
「日常の薄皮をなでる」より。
あのとき、私は何も言えなかった。
意見がなかったわけではない。
ただ、その場の空気に触れた瞬間、言葉は形を持たなくなった。
学生時代のことだ。
メンバーの中で意見が分かれ、激しい対立になった。
友人から、私がどうするつもりなのか問い詰められた。
どちらにも、違和感があった。
だが、それを言葉にすることはできなかった。
次第に黙っていく私は、話にならないと切り捨てられた。
意見があるのか、ないのか。
それすら、自分でも掴めなかった。
そして今なら分かる。
そこに、解はなかった。
言葉にならなかったものは、存在していたのか。
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この作品は「日常の薄皮をなでる」シリーズの一篇です。
他の作品もよろしければ。
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この作品は「言葉」についての連作の一篇です。
言葉にならなかったものや、言葉の外にあるものを、少しずつ辿っています。
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言葉にできないものは、外側に残り続ける。
「言葉の外にあるもの――気配と共鳴について」