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言えなかったこと―― 解のなかった場所で

    あのとき、言えなかったことがある。

    「日常の薄皮をなでる」より。


    あのとき、私は何も言えなかった。
    意見がなかったわけではない。
    ただ、その場の空気に触れた瞬間、言葉は形を持たなくなった。

    学生時代のことだ。
    メンバーの中で意見が分かれ、激しい対立になった。
    友人から、私がどうするつもりなのか問い詰められた。

    どちらにも、違和感があった。
    だが、それを言葉にすることはできなかった。

    次第に黙っていく私は、話にならないと切り捨てられた。

    意見があるのか、ないのか。
    それすら、自分でも掴めなかった。

    そして今なら分かる。

    そこに、解はなかった。

    言葉にならなかったものは、存在していたのか。


     *

    この作品は「日常の薄皮をなでる」シリーズの一篇です。
    他の作品もよろしければ。

    *

    この作品は「言葉」についての連作の一篇です。
    言葉にならなかったものや、言葉の外にあるものを、少しずつ辿っています。

    *

    言葉にできないものは、外側に残り続ける。
    「言葉の外にあるもの――気配と共鳴について」


     
     
    日常の薄皮をなでるように。 どう生きれば、自分の人生を生きたと言えるのか。 そんなことを考えています。

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