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風と共に去りぬ④スカーレット――遅れてきた理解

    愛し方が違う人間同士は、
    すれ違うしかない。

     
    人は、失うことでしか、その存在の輪郭を正しく認識できない。

     
    人はいつでも、正しく見ることができるわけではない。
     
    スカーレットは、目の前のものしか見ていない。
     
    しかし、その視野の狭さが、他の誰にもない推進力を生んでいる。
     
    周囲を振り回し、傷つけながらも、それでも彼女は前に進む。
     
    迷惑な存在でありながら、切り捨てることができない。
     
    ーー何かを動かすのは、こういう人間だ。

     
    スカーレットは、必要なものだけを選び取る。
     
    そして、そこへ真っ直ぐ突き進む。
     
    欲しいものは、手に入る。
     
    そう信じている。
     
    その信念の前では、それ以外のものは背景へ退いていく。
     
    スカーレットは、アシュレに恋をした。
     
    なぜ、あれほどまでに追いかけ続けたのか。
     
    手が届きそうで届かない。
     
    決着がつかなかったからでもある。
     
    アシュレもまた、彼女に惹かれていた。
     
    拒みきらない、その曖昧さが執着を深めていく。
     
    スカーレットは、可能性がある限り諦めない。
     
    欲しいものを、ただ欲しがる。
     
    けれど、もし二人が本当に結ばれていたなら。
     
    その熱は、案外すぐに冷めていたのかもしれない。
     
    二人は、違う世界の人間だからだ。

     
    現実は、別の形で続いていく。
     
    戦火の中でメラニーを救い、その後の時間を共にする。
     
    メラニーは、スカーレットの中にある揺るがぬ強さを見抜き、信じる。
     
    その信頼の中で、スカーレットは生きていた。
     
    しかし――
     
    スカーレットは、メラニーを見ない。

     
    レットは、いつもスカーレットを見ていた。
     
    その愛の中で、彼女は安心していた。
     
    しかし――
     
    スカーレットは、レットを見ない。


     
    愛は、関係の中で育つ。
     
    恋は、抗えない引力のように人を引きずり込む。
     
    スカーレットには、その違いが分からない。
     
    ーーそういうふうに、きみは子供なんだ。
     
    レットのその言葉は、正しかったのだと思う。
     
    恋に引きずられるあいだに、傍らにあった愛は、静かに失われていく。
     
    メラニーに守られ、
     
    レットに愛されながら、
     
    それでも彼女に見えていたのは、アシュレへの執着だけだった。
     
    そして、メラニーを失う。
     
    守られていた世界から、
    放り出される。
     
    そのとき初めて、スカーレットはメラニーを見る。
     
    自分の人生の中で、どれほど大きな存在だったのかを知る。
     
    対抗心が消えたとき、
     
    アシュレへの執着もまた消えていた。
     
    そして、レットを見る。
     
    そこには、もう愛はなかった。
     
    見えていなかったのではない。
     
    見ることができなかったのだ。

     
    手を尽くしても、手に入らないものがある。
     
    それを、スカーレットは理解したのだろうか。
     
    メラニーを失い、
     
    レットを失い、
     
    アシュレへの執着も消える。
     
    それでもなお、彼女が本当にそれを知るのは、もう少し先のことなのかもしれない。

     
    大切なものは、
     
    いつも遅れてやってくる。

    *人は、自分を保つために、何かを信じ、
     何かに縋りながら生きている。

     そのことを考えているうちに、少し、
     自分自身のことへ戻ってきた。

     「整えないと立てない私」へ。

     
     
    日常の薄皮をなでるように。 どう生きれば、自分の人生を生きたと言えるのか。 そんなことを考えています。

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