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連茉小説『小説を曞いおる友達』 第3話(å…š9回) 【創䜜倧賞2026】

    韓子


    3.倢远い虫は糞を孕むために䜕を血ず肉ぞ倉えたのか


    「俺はな、今の䞖の䞭が気に入らねえんだ。」

    出䌚った初日の深倜、䜐々朚が公園で吐き捚おた蚀葉だ。深酒しおいた時の話だったためすっかり忘れおいたのだが、「小説家になる」ずいう宣蚀を聞いた時にふず思い出した。
    そういえばあの時、こんなこずも蚀っおいた。

    「お前がラヌメン屋で蚀っおた村田沙耶銙の話を聞いおよ、俺も認識が甘かったなずは思ったぜ。それは玠盎に認める。だから今床もう䞀回じっくり読んでみる぀もりだ。けどな、それを螏たえおもやっぱり珟代日本文孊っおのは退屈なんだ。俺が求めおんのはさ、読んだや぀の脳倩ブチ抜いおそのたた昇倩させちたうような匷烈な文孊䜜品なんだよ。鋌鉄すら䞀瞬で溶かしおドロドロにしちたう、そんな凄たじい熱量を持った本俺はそういうもんしか認めらんねえ。」

    この先も䜕か蚀っおいたず思うが、芚えおいない。どうも圌の熱い蚀葉を境ずしお以埌の蚘憶は深淵の圌方ぞ葬り去られおしたったらしい。公園ぞ来るたでに䜐々朚曰く「颚呂桶䞀杯分のビヌル」を飲んでいたのだから、それも仕方がないこずだった。だから、この際だからずもう䞀床あの時のこずに぀いお尋ねおみた。

    「なんだ、やっぱ芚えおなかったのかよ。」

    䜐々朚は笑いながら蚀った。

    「圓然でしょ。だっお僕はあの日初めお酒を飲んだんだから。」

    「そりゃそうだよな、カッカッカ。」

    圌はくだけた調子で笑った埌、䞀転しお真剣な衚情になった。目頭には、先の宣蚀をした時ず同じ力匷さが感じられた。

    「お前、歎史を貫くような名䜜を読んだこずあるかホメロスの『むヌリアス』は日本の『叀事蚘』はダンテの『新曲』はギュンタヌグラスの『ブリキの倪錓』はガルシアマルケスの『癟幎の孀独』はドスト゚フスキヌの『眪ず眰』はそしおアメリカ文孊はフォヌクナヌの『響きず怒り』はスタむンベックの『怒りの葡萄』はトマスピンチョンの『V』はドンデリヌロの『ホワむトノむズ』はスティヌブ゚リク゜ンの『Xのアヌチ』は䞭囜珟代文孊の名手、莫蚀の『豊乳肥臀』はそしお、ああ、ああ、ク゜ッタレ、いくらあげおもキリがねぇ措氎みたいに湧いおきやがる最高だ今蚀ったのは単玔に俺が奜きな䜜品で、その党おに明確な共通点があるわけじゃねぇ。でもな、どの本にも匷烈な熱があるんだ倫理や芏範、芞術䜜品ぞりゞ虫のようにずり぀きやがるくだらねぇ感性、そんなありずあらゆる束瞛を焌き尜くしおなおも燊々ず茝き続けるような、䟋え人の䞖が終わるずしおもバカ笑いしながらその最埌を煌々ず照らしおみせるような、そんな、そんな、バチク゜にむカれたパワヌを持っおやがんだ。俺はな、そんな先人達が奜きで奜きで仕方がねぇ。だからこそ、い぀か、圌らず同じように歎史を塗り替えお䞖界䞭の奎らの床肝を抜くようなずんでもねぇ小説を曞いおやるんだ、絶察にな」

    僕は䜐々朚の、囁くような調子から始たり喋り続けるうちに熱を垯びおどんどん倪く倧きくなっおいく声に戞惑ったが、匷く胞を打たれもした。

    しかし同時に、「いやならなんでこい぀日文に来たんだ」ずも思っおしたった。
    話を聞いおる限りどう考えおも英文の方が趣向にあっおいる。日本芁玠なんお『叀事蚘』しかない。けれどその『叀事蚘』ですら、僕が履修した党講矩の芁項によれば、取り䞊げられるこずなどほが皆無に等しいらしい。

    だからなのか、䜐々朚はほずんど孊校に来なかった。
    圓たり前っちゃ圓たり前だ。ずいうか、そんなこず調べるたでもなく入孊前にわかったはずだ。それなのになぜこい぀はわざわざ日文に入ったのだろうか。さっぱりわからなかった。

    色々知っおお熱意も充分にあるけど、やっぱりどこかおかしくお、やっぱりどこかずれおいる、それが僕にずっおの䜐々朚ずいう男だった。


    䜐々朚の倉人ぶりを蚌明する事䟋ずしおは、䟋えばこんな逞話がある。ある日の昌䞋がり、僕は䞉限たでの日皋を終えおそそくさず校門に向かっおいのだが、珍しく孊校にきおいた圌に喫煙所の前で呌び止められ、こんなこずを蚀われた。

    「おい、晩飯は二郎にしようぜ。」

    なんのこずかわからなかった。

    「え二郎っお䜕」

    「二郎だよラヌメン二郎食ったこずねぇのか」

    「ないよ。聞いたこずすらない。」

    「たヌじかよオメヌ。したら今日で二郎童貞卒業だな。よかったじゃん。」

    「ど、童貞っお 。」

    「よし、そんじゃあいくぞ。」

    「おいなんだよ、䜐々朚お前、もう垰っちゃうのかよ。」

    喫煙所にいた誰かが圌に話しかけた。僕の知らない人物だった。

    「おうわりいな、たたい぀か䌚おうぜ。」

    「お前のい぀かっおい぀だよ。ハンタヌハンタヌの連茉再開日か」

    「その頃にはおめぇ卒業しちたっおるだろ、どうせ。そんじゃあ、たたな」

    䜐々朚はい぀ものように軜く右手を䞊げながらそう蚀い、僕ず䞀緒に校門の倖ぞ出た。

    「ねぇ、さっきの誰」

    「あよくしらねぇ。喫煙所でたたに䌚うから仲良くなっただけだ。」

    「ふヌん。」

    「たああい぀のこずなんかどうだっおいいんだよ。もうあんたし時間ねぇから、急がにゃならん。」

    「どこたで行くの」

    「神保町だ。」

    「え、なんだよ、そこたで遠くないじゃん。だったらそんなに急がなくおも 。」

    「お前なぁ、二郎舐めおっず死刑宣告喰らうぞ。䞊んでおも売り切れで食えずに終わるこずなんかザラにあっからな。それによ、そもそも閉店時間が早ぇんだわ。」

    「はっ死刑宣告」

    「あヌ、説明は埌だいちいち説明しおる暇なんかねぇ。さぁおず、ずりあえずこの蟺からやっおいくか 。」

    そう蚀うやいなや、䜐々朚は近くにあった自動販売機の前でしゃがみ、その䞋の隙間をぐっず芗き蟌んだ。

    「えっ、いやお前䜕しおっ 。」

    「おっ、こい぀はどうだろう 。んん、ん、ん、んんこい぀ぁ ええっず 。もっず近くでよく芋おみれば お、あっああっ来た来たぜいよっしゃあこりゃあマゞで幞先いいじゃねぇか」

    県前で繰り広げられる奇行に僕が面食らっおいるうちに、䜐々朚は嬉々ずしお自販機䞋の隙間に手を突っ蟌み、䜕かを぀かみ取った。

    「えっはっマゞで、䜕しおんの」

    突然の事態に困惑しおいるこちらのこずなど気にもせず、䜐々朚は握っおいた手を僕の目の前に突き出し、おもむろに開いお䞭を芋せおくれた。手のひらの䞊には、汚れた100円玉が2枚䞊んでいた。

    「初っ端から200円ずは぀いおるぜ。この調子ならすぐに900円貯たりそうだな」

    その埌も䜐々朚は自販機を芋぀けるたびに機敏な動きで䞋の隙間や釣り銭の返华口を確認しおいった。僕は呆れお物も蚀えなくなっおいたが、黙っお垰るのもしゃくだったので無蚀で぀いおいった。そうしお1時間半埌、ずうずう圌は小銭を集め終わった。金額は900円を超えお1300円にたで達しおいた。我々はその時点で既に神保町の叀曞店街たで蟿り着いおいたため、すぐに二郎たで歩いお行き、倧行列の最埌尟に䞊んだ。そしお僕は、ずっず閉じおいた口をようやく開いた。

    「ねぇ、䜐々朚っおそんなに貧乏なの」

    「あそんなわけねぇだろ。なんでそんなこず聞きやがんだよ。」

    いや、聞くにきたっおんだろ。

    「だっおさ、ラヌメンが食べたいからっおわざわざあんな乞食みたいな真䌌しお 。䞀緒にいる僕はめちゃくちゃ恥ずかしかったんだぜお金がないなら蚀っおくれれば貞しおあげたのに。やめおよね、本気でさ。」

    「あヌ、そい぀はすたんかったな。わりぃわりぃ。俺、二郎のこずになるず呚りが芋えなくなっちたうんだよ。そんでよ、金は普通に持っおっから気にすんな。心配しおくれおありがずな。」

    「えっ、そうなのじゃあ、なんであんなこずしたの」

    たすたす蚳がわからなくなった。

    「あヌ、俺にはさ、二郎に関する倧切な思い出があっおだな。」

    ここたで蚀っお䜐々朚は口を閉じ、前方を窺っお自分達が今列のどの蟺りにいるかを確認した。そしおポケットからスマホを取り出しお時間を確認し、突然顔を䞊げお僕の顔をじっず芋぀めた。䞍意を぀かれた僕は䞀瞬怯んでしたったが、䜐々朚は構わず話を再開した。

    「俺が初めお神保町に来た時の話なんだけどな、自販機の近くをうろうろしおる、うす汚ねぇ栌奜のおっさんがいたんだ。」

    お前が人のこずを汚いなんおいうこずあるのか。

    「最初は、あ、このおっさんホヌムレスなんだろなヌずか思っお通り過ぎる぀もりだったんだが、どういうわけか気になっおきちたっおな。思い切っお远跡しおみるこずにしたんだ。そんで埌ろから぀いお行っおたんだけど、そのおっさん、今日俺がやっおたみたいに自販機の釣り銭忘れをずっず探しおやがんの。うわヌ、こい぀ありえねヌずか思ったんだけど、おっさん物凄く真剣な顔しおやがっおさ、なんか銬鹿にできなくなっちたったんだよ。䞭身が飛び出ちたうんじゃないかっおくらい目ん玉ひん剥いお、肌が擊り切れるんじゃないかっおくらいがちゃがちゃず匷く返华口に手ぇ突っ蟌んでおさ。こい぀ぁ只事じゃねぇなず思っお、そのたた2時間くらい芋おたんだ。そしたらおっさん、ずうずう目暙額を集め切ったのか、急に歯ぁ剥き出しにしおニコニコ笑い出したんだ。」

    どこからどう芋おも明らかにダバそうな人に平気で぀いお行くずか、こい぀は本圓に、どういう神経をしおるんだ

    「そんでおっさん急に真顔になったず思ったら急いでどっかに向かい始めたから、俺も必死こいお぀いおいったんだ。数分くらい歩き続けお、ここの二郎に着いた。おっさんの埌ろに䞊んで順番を埅っお、店の䞭に入っお、同じタむミングで食刞を買っお、おっさんの隣の垭に座った。しばらく埅っおたら店䞻が『ニンニク入れたすか』っお聞いおきお、おっさんは『野菜マシマシニンニクカラメ』っお答えた。俺も、自分の順番がきた時同じように答えおやった。そんで぀いにラヌメンが運ばれおきたんだが、その時のおっさんの顔がさ、もう眩しくっおよ。麺啜っおる時なんか、これから倩囜ぞ行きたすっお具合のツラしおやがんのよ。ああ、もうこれで終わっおいい、これで死んじたっおも、どうでもいい、みたいなツラでさ。今たで芋た誰よりも幞せそうだったぜ。だから俺もあれを芋お以来 っず、もう店内入るから静かにしないずな。」

    その埌は食刞を買っお、䜐々朚が事前に話しおくれた通りに垭に぀き、コヌルをし、ラヌメンを食べた。物凄い量だった䞊にニンニクず獣臭がかなりき぀かったから、僕は食べ終わったあずで気持ち悪くなっおしたった。正盎このラヌメンは䜓に合わないなず思った。だからそれ以降は結局、月䞀くらいのペヌスでしか二郎には行かなかった。



    第4話↓

     
     
     

    韓子

     
     
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