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#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第20章|How To Make Natto-Champion|初代納豆王、岩手に凱旋

    2000年12月8日(金)7:30

    IBC岩手放送の本社ビルの玄関前に着いた。
    僕は番組に出演したあと、すぐ出勤できるようにスーツ姿で受付に向かった。

    すぐに録音室に案内されると、ガラスの向こうに男女のパーソナリティがマイクに向かって話をしていた。
    二人が僕に気づくとニコッと笑顔で会釈してくれた。

    番組放送中にディレクターからA4の紙を渡され、スケジュールについて説明してくれた。

    「8時のニュースのあと一旦CMが入るので、
     その時スタジオに入って下さい。
     それまでここで待機してください」

    テレビのスタジオも初めてだったが、ラジオのスタジオも今回初めてで、いろんな機材をキョロキョロしたり、生放送番組の様子を見学した。

    8時のニュースが終わったところで、スタジオに入った。
    スタジオに入る直前に心臓のバクバク音が耳に響いた。
    その音をマイクが拾うのではないか、心配するほどだった。

    「はい。お待たせしました。
     明日IBCテレビで放送予定のTVチャンピオンの納豆王選手権で、
     初代納豆王に輝いた蒲生さんにお越しいただきました。
     蒲生さん一言、ご挨拶をお願いします」

    (てか、もう既に告知済みだったのか)

    「はじめまして。この度TVチャンピオンの全国納豆王選手権に出場し、
     優勝した蒲生です。よろしくお願いします」

    「歴代のTVチャンピオンで岩手の方が優勝することは初めてなので、
     ぜひリスナーの方にも知って頂きたく、今回特別に放送直前に
     インタビューさせて頂くことになりました。
     改めて優勝おめでとうございます」
    「ありがとうございます」
    「まずは番組出場までの簡単な経緯を教えてください」
    「番組に応募したのはちょうど1年前でした。
     当時はまだ茨城に住んでいましたが、今年4月に盛岡に転勤となり、
     その後番組から出場依頼がありました」
    「納豆の本場、茨城がご出身なんですね!
     納豆関連のお仕事されていたんですか?」
    「仕事は住宅用断熱材のメーカーでの営業です」
    「それなのに優勝するなんてスゴイですね!」
    「もともと納豆好きですが、納豆開発委員会というウェブサイトを
     運営するようになってから、納豆について深堀するようになりまして…
    」
    「実際にどんな競技だったんですか?
     ネタバレにならない範囲で教えてください」

    (事前に前振りがあれば、余計なことを言わずに済むから助かった)

    「第1ラウンドは、納豆を早食いして銘柄を当てる競技でした。
     第2ラウンドは、納豆を使った創作料理対決、
     そして決勝ラウンドは超難問カルトクイズや納豆の糸伸ばし競技なんかもありましたね」
    と、とりあえず項目だけ紹介した。
    「なるほど!興味深いですね!
     ちなみに今まで納豆の糸伸ばし競技なんてやったことがあったんですか?」
    「自分自身も初めてでしたが、あんなに伸びるなんてびっくりしました」
    「どのくらい伸びたのか明日の放送が楽しみですね。
     しかも明日は時間を延長して90分の完全版が特別に放送されますので、ぜひリスナーの皆さんもご覧ください。
     蒲生さん、本日はありがとうございました」
    「こちらこそありがとうございました」

    などと番組の概要だけ10分話して終了となりCMに切り替わった。

    「NGワードは無かったでしたか?」
    「大丈夫です。バッチリでした」
    とパーソナリティと握手を交わした。
    「転勤族で純粋な岩手県民ではない僕を
     こんなにも手厚く歓迎してくれてありがとうございます
    」
    「僕は仙台出身です。
     転勤族でも岩手県民には違いはありませんよ。
     納豆王である蒲生さんは岩手県の誇りです
    」
    とディレクターが僕の肩を叩いて、励ましてくれた。

    そしてIBCを出てすぐに会社に出勤すると、上司の佐々木所長が

    「さっき、放送聞いたぞ。
     テレビだけじゃなくラジオにも出るなんてスゴイな!」
    「所長からも岩手県内の取引先にPRして下さい」
    「そうしたいのもやまやまだけど、ジャパン建材と一緒に映っていたら、
     ほかの取引先から苦情が来るんじゃないか?」
    「ジャパン建材の社名はオンエアされません。
     撮影協力してくれた担当の山田さんも一瞬しか顔が映らないので、
     問題ないと思います。ただ…」
    「ただ?」
    「断熱材の社名や商品名も映っていません」
    「それじゃ、会社のPRにならないからダメじゃん!」
    「プロフィール撮影の時はちゃんと撮影したんですが、
     編集でカットされたようです」


    そして翌日12月9日(土)13時
    ついにTVチャンピオンが岩手でも放送された。

    僕も家族と一緒に再び視聴した。

    番組が終了すると、小5の長女と同級生のご近所さんが、子連れで我が家にやってきた。

    「蒲生さんのご主人が納豆チャンピオンだなんて知らなかった!
     おめでとうございます!」
    「ありがとうございます」

    しかしこの日は納豆開発委員会の掲示板への書き込みは5件だけだった。
    思ったほど件数は伸びなかったが、放送時間や県の人口が大きく影響を受けたと思わる。

    そして翌週の11日に会社に出勤すると取引先から、祝辞の電話が鳴りやまなかった。
    すぐにジャパン建材の山田さんにも挨拶に行くと、
    「よっ!納豆王!待ってました!」
    と事務所中に響き渡るくらいの大声で迎えてくれた。
    「折角撮影協力してくれたのに御社の名前が映らず、
     山田さんの顔も殆ど映らず、申し訳ございません」
    「そんな事気にするな!」
    と笑顔で赦してくれた。

    さらに小学校や幼稚園でも、話題が沸騰したらしく、小5の長女は『納豆王の娘』って呼ばれ、恥ずかしそうに帰って来たらしい。
    蒲生家はまさに岩手での「時の人」となった。

    ちなみに優勝賞金50万円は最新の大型冷蔵庫とWindows MeのデスクトップPCへの設備投資に消え、さらなる納豆収集に拍車がかかった。

    振り返れば「子育てチャット」の仲間からの「茨城なのに納豆に詳しくないんだね」の、あの一言から始まった僕の小さな好奇心は、いつしかたくさんの人と出会い、そしてTVチャンピオンの番組を通じて奇跡が起こり、温かい祝福に包まれた人生最高の宝物へと繋がっていったのでした。

    第19章  第21章

    第1章はこちらからどうぞ

    #創作大賞2026 #エンタメ原作部門 #ドラマ脚本 #TVチャンピオン #テレビ東京 #納豆  


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    舘徹人(タチ テツト)のち望月成人(モチヅキ ナリト)、 ところにより一時熊猫ジィジ🐼(クマネコ ジィジ)です。 2026年6月に還暦になり、5人の孫を持つシングル爺さんが いろんなジャンルで創作活動してます。

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