【青橙の余白】影を追う、その先へ ─ 48がくれた景色
照山選手の期限付き移籍が発表されてからずっと考えていた。
彼のいない長崎で、どう、応援を続けて行こうかと。
彼を追いかけて長崎の応援をやめる、と言う選択肢はない。
私は2013年、J2に昇格した時からV・ファーレン長崎を応援してきた。
あの、最大の事件、2017年の経営問題も一緒に見つめてきた。
仕事やライフイベントの関係で離れていた時期もあるが、常に気にはかけていた。
もはや、V・ファーレン長崎は私の生活なのだ。
だから彼の事は出来る最大限の範囲で応援していくと決めている。
まず最初に考えたのは、彼と同じようにその背中を追う人を長崎で見つけるべきか?という事だった。
でもなぁ…と私は思った。
彼が長崎に帰ってきたら、間違いなく私は彼を応援する。
彼が不在の間の保険みたいな形で、代わりの選手を探すのは違うと思った。
だったら、特定の選手を応援するのはやめて、チームを応援すればよいのではないか?
事実、照山選手が長崎に移籍する前は、そのような応援をしていた時期もある。
──想像してみた。
ホテルから選手たちが入場してくる。
私はV-VARENというタオルを掲げ、選手たちを鼓舞する。
練習もみんなを見守る。
試合も多分、オン・ザ・ボールのプレーを中心に見ることになるだろう。
スタグルもその日の気分で食べたい物を食べて帰る。
……なんかしっくりこない。
あの、アウェイセレッソ大阪戦。
私の中であの試合はまだ痛みとして記憶されている。
──だけど、もし、彼を応援していなかったら。
多分、マテウス選手のゴールがめっちゃすごい!と思って、波多野選手のPKストップに感激し、そして、照山選手は不運で可哀想だったね、悔しいけどまた頑張ろう!って感じになってたと思う。
そして多分、その試合の記憶は20試合の中の1つに埋没される。
……やっぱり、なんか違う。
それは私じゃない気がする。
私はもう、彼のせいで、「神」がいないと応援できないようになってしまったのだ。
没入感という魂を預ける「神」が。
──やっぱり長崎にも「神」が必要だ。
彼の時は、いつのまにか彼が「神」になっていた。
でも、今回は違う。
私が自分の手で「神」を探さなければならない。
私は今までのMATCH CAMを見た。
試合のハイライトも見た。
V-LOVERS会員限定の動画も見た。
長崎の記者さんたちの有料記事も読んだ。
新加入選手を紹介している記事も読んだ。
「神」を探し出す作業は大変だ。
最初はCBの誰かにしようと思っていた。
このブログを読み続けてくれている人は、私がCBチームを好きなことはよく知っていると思う。
新井選手の責任感あるカバー、エドゥアルド選手の強度の高い守備、江川選手の何が何でも奪いきる能力、進藤選手の気迫あふれる空中戦。
新加入の大南選手と土肥選手については的外れなことを言いそうなので、迂闊なことは言えないが、魅力がある選手がたくさんいる。
……でも、私は選べなかった。
魅力がなかった訳じゃない。
みんなが好きなのだ。
だから、誰か1人を選ぶことができなかった。
そして、もう一つ。
どうしても同じポジションだと、彼の「代わり」として見てしまうんじゃないかと思った。
例えば、進藤選手の空中戦や新井選手の配球を見るたびに、彼の姿を重ねてしまうような気がした。
ただ、誤解しないでほしいのは、CBチームはこれからも応援していくつもりだ。
いわゆる「箱推し」というやつだ。
やっぱり、背後を取られたらおしまいという、その緊張感の中でプレーをする彼らが好きなのだ。
じゃあ、一体どうするのか。
誰の背中を追うのか。
やっぱり追わないのか。
悩みに悩んだ末、私はとうとう決断した。
──とある1人の選手の背中を追う事に。
理由を先に説明させてほしい。
照山選手は元々、ボランチだった。
高校時代にCBにコンバートされた。
だから、彼のプレーを理解するために、いつかはボランチのプレーを勉強しなきゃなと思っていた。
ただ、私は戦術がよく分からないただの素人の中年女性だ。
彼のポジションのCBを何とか理解するのに精いっぱいだった。
最近になってやっと少しだけ分かるようになってきた…ような気がする。
一方、ボランチは私の中で完全にブラックボックスだ。
役割が多岐に渡り、本当によく分からないのだ。
だから、いつかは…と思っていたのだが、私の怠惰な性格も災いし、その前に彼は移籍してしまった。
もう過ぎた時間は戻らない。
でも、そしたらいっその事、彼が不在の間、自分のサッカーの視野を広げながら、彼を長崎で待つのがいいんじゃないかと思った。
もっと深く、彼のプレーを理解できる私になる為に。
──幸い長崎には最高のボランチがいる。
彼が栃木シティへの期限付き移籍が発表されたその日、この選手の契約更新が発表された。
その偶然に、少しだけ運命のようなものを感じたのかもしれない。
もう一つ理由がある。
もう、その選手は今年で35歳だ。
本人はインタビューで「40歳までJ1でプレーをしたい」と語っていた。
年齢を考えると、長崎がキャリアの最終章になる可能性も十分にある。
──私はもちろん年齢に縛られず、ずっと長崎にいて欲しいと思っているが。
だからこそ、僭越ながら、この「青橙ノ記憶」に最後の輝きを残させてもらえたら…と思ったのだ。
他の選手がどうこうという訳ではない。
ただ、この選手は特に生半可な気持ちで応援できる存在ではないことも分かっている。
もちろん、彼が帰ってきても、その選手の応援は続ける。
それが私の「何があっても長崎を応援し続ける」という覚悟だと思っている。
そして、読者の皆さんは薄々気づいているかもしれないが、この人を「神」にした理由は間違いなく照山選手の影響を受けている。
──彼が長崎からいなくなってもなお、私は彼の影を追っている。
でも、それはもう「彼の代わり」ではない。
彼が残してくれた視点をたどって、私は新しい景色を見ようと決意した。
そして、それは自分では悪いことではないと思っている。
人は何もないところから誰かを好きになるわけじゃない。
出会った人たちに少しずつ影響を受けながら、新しい景色を見ていく。
照山選手を追いかけた時間があったから、私はその選手のプレーの意味を知っていきたいと思えた。
そうやって記憶は少しずつ積み重なっていく。
だから今シーズン、長崎では新しい背中を追いかけてみようと思う。
また、新しい記憶を重ねるために。
──背番号「5」を。
初めてその選手に本気で向き合った記事です。
ぜひこちらもお読み頂けると嬉しいです。
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試合後にポータブル神棚にお供えしてから私のお腹の中へ。
今回も相変わらずの応援スタイルです。