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前編2026年【PO:H水戸戦】終わりのような、始まりのような─それでも、いつもと同じように

    楓|青橙ノ記憶

    ◆17位を目指す戦い

    百年構想リーグが終わり、今日はホームで水戸ホーリーホックとのプレーオフだ。
    最終的に長崎はWEST地区9位でこのリーグを終えた。
    かろうじて最下位は免れたものの、J1の厳しさを味わったリーグとなった。

    このプレーオフはEASTの同順位のチームと戦い、最終的なJ1の順位を決める為に行われる。

    ホーム&アウェイ方式で行われ、今日は長崎のホーム初戦だ。

    このプレーオフ、2戦で勝ち点が多い方が17位、少ない方が18位となる。
    今回は降格がないので関係ないが、通常のリーグ戦ではこの順位は大きな意味を持つ。

    ──17位はJ1残留、18位はJ2降格だ。

    私はせめて17位でこのリーグを終えて欲しいと切に願った。

    ◆少し早いピースタ

    試合は17時からだったが、私は11時に家を出た。
    今日は珍しく新しいランダムグッズは販売されていない。
    ホーム最終戦だから、さぞかし運営は気合を入れてくるだろうと身構えていたので拍子抜けした。
    だから、私が早めに行く意義は薄いのだが、今日はたまたま、夫が長崎市の別のイベントに行くため、時間を合わせて早めに家を出ることになったのだ。
    私としては、駐車場代がかからないので、その分、少しスタグルを贅沢しても良いかな、と、邪な考えを持っていた。

    13時にスタジアムに到着した。
    私は真っ先にSouth棟に赴いた。
    今日は、South棟で3000円以上の買い物をすると山口蛍選手のシールをもらえる。
    普段、山口蛍選手のグッズが当たったら、ファンの方にお声がけして譲っているのだが、このシールは欲しいなと思っていた。
    とりあえず、店に行き、私は日焼け止めを見繕った。
    ──どうせ使うからちょうど良い。
    スタペイで支払いを行い、そのまま交換所に持っていく。
    無事にキャプテンのシールを手に入れることに成功した。

    次のイベントまで少し時間がある。
    私はハピネスアリーナの横のカフェで休憩することにした。
    ここのブルーレモネードが好きなのだ。
    しかし、頼もうとしたら、無いんですと言われてしまった。
    まさか、ナフサとは関係はないだろうが、世知辛い世の中だと思った。
    仕方がないので、アップルシナモンティーとラスクを頼んだ。

    ◆サポーターたちのホーム最終戦

    店内で何となくXを流し見していたら、「楓さん!」と声をかけられた。
    振り向いたら、私と同じ照山選手を応援しているサポーターの方だった。
    「あぁ!こんにちは!」
    「こんにちは、楓さん、来られてたんですね。」
    「はい、ちょっと早めに来たんですよ!今日も応援頑張りましょうね!」
    「今日、出ますかねぇ?」
    私も正直、そこは引っかかっていた。
    「うーん、ホーム最終戦だから見たいんですけどねぇ、京都戦の感じだと分からないですよねぇ。」
    「そうですよねぇ。」
    彼女はしばらく雑談をしたのち、「今日も頑張りましょう!」と言って店を出て行った。

    私は今日のスタメンについて考えてみる。
    京都戦が軸になるとは思うが、江川選手が気になる。
    あと、私は戦術が分からないので恐縮なのだが、他のサポーターさんが櫛引選手のラインコントロールを褒めているコメントを見かけた。
    3バックとすると、右は翁長選手、左は江川選手かエドゥアルド選手、中央が櫛引選手が場合によってはエドゥアルド選手が入るかもなと私は予想していた。

    私は自分のApple Watchを見た。
    時間は13時45分を示している。

    ──もうそろそろか、と思った。
    私は店を出て、目の前の階段の溜まり場の列に並んだ。
    今日スポンサーの啓正会さんが14時から、SNSをフォローすると選手の名前が書いてあるオレンジ色のバンドがもらえるキャンペーンをしている。
    私は今回初めて知ったのだが、このオレンジはチームカラーというわけではなく、認知症の方を表す色がオレンジなんだそうだ。

    列に並んでしばらくすると、私の隣の列に見覚えのあるサポーターさんがいた。
    本当にたまたまなのだが、今日、その方から照山選手のシールを頂くことになっていた。
    お互いに「あー!」と言い合い、私はシールを手に入れることに成功した。
    「楓さんも来てたんですね。」
    「そうなんですよ!山口蛍選手のシールが欲しくて。あとはこのバンドですよね。」
    「私も翁長選手と山口選手のシールが欲しくて。」
    「翁長選手のファンですもんね、絶対欲しいですよね。ただ、2人分ってなると大変ですよね。」
    翁長選手のシールは確かSouth棟の飲食店で3000円以上の買い物をするともらえたはずだ。
    「そうなんですよ、食料品と、あと、日焼け止めを買いました。」
    「え!私も日焼け止め買ったんですよ!」
    「一緒ですね!やっぱり使うもの買いますよねぇ。」
    まさかの同じ考えで、その後も雑談が盛り上がった。
    話題を経たのちに、選手の移籍の話になった。

    「翁長選手、ちょっと分からないんですよねぇ、ふらっといなくなりそうで…」
    「うーん、でも何となく長崎にきたコメントの感じ、引退までいそうな感じはしますけどねぇ。」
    「そうだとありがたいのですが…。照山選手はいそうじゃないですか?」
    「いやーこちらも、ちょっと分からないんですよねぇ…」
    「でも、半年だけの契約って多分してないですよねぇ。」
    「確かに…そしたら余り移籍する人いませんかねぇ。」
    推しの選手の移籍を心配するのは誰でも一緒だ。
    お互いに慰め合っていたら、列が動き始めた。
    「あ、それではここで!」
    「はい、翁長選手が当たったら連絡しますね!」
    「私も照山選手が当たったらご連絡します!」
    そう言って、彼女とはここで別れた。

    列が進み、私の番になった。
    透明な箱にバンドが入っており、選べるような感じになっている。
    「え?これ選んでも大丈夫なんですか?」
    「あ、はい、3秒でお願いします!」
    私はその言葉の意図を汲んだ。
    わざと顔を背け、こい!と思いながら引いた。

    私の元に来たのは笠柳選手だった。
    今日はご縁があるのかなと思ったが、申し訳ないがどうしても照山選手のバンドが欲しい。
    私はXで照山選手と交換をお願いする投稿をした。

    ◆今日もてりたまバーガー

    とりあえず用が済んだので、スタジアムに入場する。
    自分の席に行き、彼の顔写真入りのタオルを手すりにかける。
    私はここの席をシーズンパスで購入したが、次のシーズンはリセットされることが発表されている。
    ──多分、ここにタオルを掛けられるのは今日が最後だろうな、と少し寂しくなる。
    準備をしたら、携帯を取り出し、モバイルオーダーを確認する。
    岩崎本舗のホームページをみる。
    今日もてりたまバーガーがある。

    私は2日前、目ざとく見つけていたのだ。
    ──今日の試合でも、てりたまバーガーが販売されることを。
    神戸戦だけの特別措置かなと思っていたので嬉しかった。
    私が食べずに誰が食べるんだという気持ちで注文した。
    本当は2個食べたかったのだが、今日は夫に合わせて朝食を食べてしまった。
    失敗したなと思いながら、私は岩崎本舗に向かって歩き始めた。

    無事にてりたまバーガーを手に入れた私は満足感を覚え、席につく。
    半熟の卵が危うくユニフォームに付きそうになり焦るが、何とか無事に食べ終えた。

    ◆西東祭の始まりとスタメン

    ピッチでは西東祭と称して、水戸サポーターとの対戦イベントが企画されている。
    3つ対戦して、2つ勝利したチームの勝利だ。
    最初はリレー対決。
    私の目の前を長崎サポーターと水戸サポーターが全力で走り抜ける。
    手を叩きながら「頑張れ頑張れ!」と応援した。
    その甲斐があったのかどうかは分からないが、この勝負は長崎が勝利した。

    それが終わったらいよいよスタメン発表の時間だ。
    今日はホーム最終戦。
    もしここに名前がなかったら、照山選手のピースタでのプレーが見られる可能性はもうないかもしれない。
    いつもとは違う緊張が走る。

    長崎公式のXをスクロールする。

    ──あった。サブだ。

    彼がピースタに来ることは確定した。
    とりあえず一安心する。

    スタメンのCBは江川選手、エドゥアルド選手、翁長選手だ。
    翁長選手はすっかりCBの出場が板についているが、ファンの方はもうそろそろ本来のポジションのプレーが見たいんじゃないかなと思った。

    そして、今回の試合、スタメンで特筆すべき選手が3人いる。
    笠柳選手と鍋島選手、そしてマテウス選手だ。

    笠柳選手はどちらかというとサブからのスタートが多く、攻撃のスイッチを変えるために投入される選手だ。
    スタメンは珍しい。
    確か、笠柳選手が百年構想リーグでスタメンだったのはホーム京都戦だけだったはずだ。
    全く関係ないが、啓正会のバンドが当たった縁もあり、笠柳選手にも頑張って欲しいな、と思った。

    そして鍋島選手。
    ルーキー1年目。
    まさかここでスタメンに入るとは思っていなかった。
    ただ、個人的にはこの百年構想リーグで若い選手のプレーも見たいなと思っていたので、非常に楽しみだ。
    ちなみに、私はホーム岡山戦の時、サイン会が当たったのだが、その時にいたのが鍋島選手だった。
    それ以来、何となく、保護者…というのは烏滸がましいので、遠い親戚のおばさんくらいの目線で暖かく見守っている。

    2人とも長崎では若手の選手だ。
    ──長崎サポーターに長崎の未来を見せたかったのか。
    このホーム最終戦で、スタメンに入れた高木監督の意図を何となく感じた。

    そしてマテウス選手。
    彼がスタメンにいる事自体は珍しくない。
    ただ、マテウス選手は前節の京都戦で指を怪我していた。
    その後、クラブからは特にアナウンスがなかったので、大丈夫なんだろうとは思っていたが、心配もしていた。
    ここに名前があると言う事はプレーはできるのだろう。
    ──私はひとまず安堵した。

    ◆最後になるかもしれない景色

    いよいよ選手たちがホテルから入場してくる。
    ここから先は、もしかしたら全てが最後になるかもしれない。
    彼が次のシーズンも長崎にいる保証はどこにもない。
    私は気を引き締める。

    いつものように彼の名前入りタオルを掲げる。
    目を皿のようにして彼の姿を探すと笠柳選手と話しながら歩いてくるのが見えた。
    今日は悉く笠柳選手と縁があるなと思いながら、私は「照山さーーーん」と全力で名前を呼んだ。
    ──彼は手を挙げた。
    よし、今日は届いたな、と私は嬉しくなる。
    幸先のいいスタートだ。

    彼の後にマテウス選手を見た。
    元気そうに笑顔でサポーターに手を振っている。
    指に注目したが、特にテーピングなどはしてなさそうに見える。
    下手したら折れていてもおかしくないのではと思ったので、本当に良かったと安心した。

    ◆西東祭とファンキストの昼下がり

    選手たちを見送ると今度はピッチで西東祭の続きが始まる。

    次は長崎サポーターと水戸サポーターの綱引き対決だ。
    ヴィヴィくんが審判なのだが、ヴィジョンに靴下を上げるところが映し出され微笑ましい気持ちになる。

    1戦目が始まり、あっけなく長崎のサポーターが勝利する。

    2戦目の時、長崎サポーターは交代するが水戸サポーターは同じ人がそのまま引くようだ。
    ──水戸サポーターも大変だ。
    わざわざ長崎まできてくれたばかりか、企画を成立させてくれた水戸サポーターに感謝する。
    ありがたいなぁと呑気に思っていたら、水戸サポーターに水戸の社長から喝が入れられた。
    その流れでなぜか社長も綱引きに参加することになった。
    それで気合いが入ったのか、(まぁ、単純に水戸が一人多いのが大きいが)この対戦は水戸が勝利した。

    いよいよ勝負が決まる3戦目。
    水戸には相変わらず社長がいる。
    水戸はここで負けたらリレー対決と合わせて2戦とも負けが確定する。
    ──まさに負けられない戦いがここにはある。
    ヴィヴィくんの合図でスタートした最後の戦いは、長崎が勝利した。

    もう、西東祭の勝敗は決まっているが、もちろん最後の対決も開催される。
    ピッチのセンターに向かってボールを蹴り、より中央に近いチームの勝利だ。
    長崎の先行で始まる。
    3人目の方が素晴らしいコントロールで中央に近づいた。
    正直、この記録を更新するのは難しいのではと思った。
    ただ、水戸も3人目の方がとんでもないコントロールで中央に近づいた。
    スタジアムからはどよめきが起こる。
    ヴィヴィくんの判定でこの勝負は水戸の勝利となった。
    ちなみにこのボールを蹴った人は、先ほど綱引きに出ていた人と同じ人だ。
    私は改めて、企画を盛り上げてくれた水戸サポーターに感謝の念を込めて拍手した。

    しばらくすると、今度はヴィジョンから、啓正会のおそらく利用者の方だと思うが、91才の方のインタビューが流れる。
    何と、毎試合ホームに来ているとのことだ。
    これこそが生き甲斐なんだなと思う。

    ──私もこの歳までサッカーを応援する事ができるだろうか。

    私の祖父が痴呆もなく、もうそろそろ100才になるので、遺伝子的には私にもその素質があるはずだ。
    その頃までにはACLに出ている長崎が見られるといいな、と感慨深い気持ちになる。

    ──今日はピッチでのイベントが目白押しだ。

    今度はファンキストのライブが始まった。
    1曲目の曲が始まる。
    ずっと、この曲、聞いたことあるんだけど、何だっけ?と思いながら手を叩いていた。
    大変申し訳ないのだが、私は曲と店の名前を覚えるのが苦手だ。
    「ほら、あの、ドラマの曲だよ!何だっけ?」と言っていつも夫には呆れられている。
    後から調べて、ピースボールという曲であることが判明した。
    2曲目はもちろんV-ROADだ。
    手を叩きながら合いの手を入れる。
    もはや、お手のものだ。
    多分、寝ていても合いの手を入れられる自信がある。
    スタジアムの熱量が最高潮に達したところで、ライブが終了した。

    ◆彼の姿を探しながら

    いよいよ選手たちの練習が始まる。
    GKが出てくる。
    今日のGKのスタメンは後藤選手だ。
    今日も神後藤でお願いしたいところだ。

    ……もちろん、シュートが飛んでこないのが一番いいのだが。

    後藤選手と波多野選手のチャントを歌って応援していると、高木監督の姿が見えた。
    この時間にここにいるのは珍しいなと思った。
    どうやら水戸側のスタッフと話しているようだ。
    もしかしたら水戸の樹森監督と話しているのかなとも思ったが、私の席からはそこまで判別できなかった。

    いよいよFPの選手たちが登場する。
    私はまた照山選手の名前入りタオルを掲げる。
    ──彼がピッチ練習をしている姿を見るのも最後かもしれない。
    いちいち感傷的になってしまう。

    しばらく彼の姿を見ていたが、ふと気がついた。

    ──山口蛍選手と鍋島選手が深い緑色のビブスを着ている。

    この色のビブスを着ているのは珍しい。
    おそらくボランチの2人が着ているんだろうなと思った。
    そしてさらに、マテウス選手、笠柳選手、高畑選手、江川選手がピンク色のビブスを着てるのが見えた。
    最初、何の区別だろうと思ったが、江川選手で何となく察した。
    多分、左サイドの選手が着ている。
    まぁ、試合が始まったらまた確認をすればいいやと思いながら携帯にその旨をメモした。

    相変わらず彼の姿を追っていたが、今日はサブなこともあって、私がいる席とは逆のサイドで練習している。
    彼を探すのも一苦労だ。
    遠くに目を凝らしていたら、ふと私の視界に山口蛍選手が入ってきた。
    私の近くで山口蛍選手が練習するのは珍しい。
    貴重な機会だなと思いながら、ボールを蹴るキャプテンの姿を写真に収めた。

    練習が変わったのか、山口蛍選手が緑色のビブスを脱いだ。
    鍋島選手もビブスを脱いだが、今度はピンク色のビブスを着用した。
    もしかしたら、鍋島選手が左側のボランチなのかな、と思った。

    スタメンとサブで分かれてパス回しが行われた後、いよいよ守備練習だ。
    これで今日のスタメンのCBの並びが確定する。
    ──左から江川選手、エドゥアルド選手、翁長選手だ。
    概ね私が予想した通りだ。

    満足した私はまた彼の姿を探した。
    ただ、この練習の間に場所を移動したのか、彼を見失ってしまった。
    あれ?どこ?どこにいる?と思って探したら、彼は同じサブの松本選手と中央付近でパス交換をしていた。
    良かった良かったと思い、また、彼を見ることに集中する。

    だが、それは突如として中断された。
    メインスタンドの中央付近の席が騒がしくなる。
    何だろうと思っていると、どうやら長崎ヴェルカの選手が来たらしい。
    長崎ヴェルカはこの試合の数日前、チャンピオンシップで優勝し、日本一を決めていた。
    とんでもない偉業だ。
    V・ファーレン長崎の公式からは、ハーフタイムに優勝報告会がされることがアナウンスされていた。

    もう、練習が終わる時間だ。
    彼は近くにあるボールを蹴りながらピッチから出ようとしている。
    それを見ていたら、いきなり、私の隣の席にボールが飛んできて、「ドン!」という大きい音がした。
    たまたま隣の人が不在だったので、席に当たって大きな音がしたのだ。
    彼を見ることに集中して油断していたので本当にびっくりした。
    そのボールは私がいる方向とは逆側に跳ね返ったため、そちら側の人がスタッフの人に返していた。
    その一連の出来事の間に、彼はもうピッチから去っていたのだろう。

    ──私はしばらく、不在の彼の姿を探していた。

    ◆試合前の祈り

    選手たちがでてしばらくすると、ヴィジョンにあおり映像が流れ、選手紹介が始まる。
    私はこの映像で、選手たちの目が青くなっている演出が好きなのだが、これが見られるのも今日が最後だ。
    もちろん全力で選手の名前をコールする。

    それが終わったらいよいよ選手入場だ。
    今日も、フラッグベアラーといって、ピッチのセンターサークルで旗をもつサポーターたちが待機している。
    音楽に合わせて、その旗が揺れ始める。
    私は照山選手のタオルを掲げる。
    ──今日こそは勝利を。
    そう願いながら。

    セレモニーが終わり、写真撮影も終えたところで選手たちがピッチに入っていく。
    と、思っていたら、選手たちが移動し始めた。
    エンドが変わったのだ。
    私はこれはラッキーだと思った。
    もし、彼が出場するならば確実に後半だ。
    私の席は後半の方が彼のポジションが近いのだ。

    選手たちは改めて、水戸のゴール裏側のコートに集まり円陣を組む。
    サポーターの掛け声とともにそれぞれのポジションに散っていく。
    私はCB陣のルーティンを見ていた。
    お互いに労いあっている。
    もし、今、彼がここのピッチにいたらこうするだろうと思い、私は胸の中央にあるエンブレムを叩いた。

    ──いよいよ、試合が始まる。

    ※後編はこちらからお読みください。

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    V・ファーレン長崎サポーター。記録に残らないものを、記憶に残す。たぶん万人受けはしない。それでも、あなたの「好き」になれたら。 観戦記だけど、観戦記じゃない。 90分とその余白を綴っています。 初めての方は「青橙ノ地図」からどうぞ。

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