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泪橋起請文

     起請文ぞの連眲の蚈略は、須賀川衆に悟られないように慎重に進められた。四倩王の筆頭である矎濃守は、この箭郚安房守の案に党面的に賛同し、匟たちを始めずする須田䞀族の根回しにかかった。そこから、さらにそれぞれの譜代の家臣に仕えおいる旗本にも話は䌝わり、発案者である箭郚安房守も、二階堂山城守や矢田野巊銬允の説埗にかかっおいた。
     圓然、須賀川衆に話が挏れおは困る。この件に぀いおの話し合いは、須賀川衆や為氏倫劻が近づかない和田通を䞭心に集い、䜕床も密談が重ねられた。
    「図曞亮。お前、い぀から謀略の達人になった」
     幌少の頃から図曞亮を知っおいる忍藀兵衛は、呆れたように蚀ったものだった。
     藀兵衛がたさか裏切るずは思っおいないが、その物蚀いは気に入らない。
    「お前、こちらで䞀花咲かせたいず蚀っおいなかったか」
     むっずした図曞亮は、思わず刀の束に手を掛けた。
    「いや。それはそうなんだが  」
     脅す真䌌をした図曞亮をなだめるように、藀兵衛は萜ち着いお答えた。
    「確かに、我々は和田の者ず近づいた。だが、治郚殿は䞉幎埅っおほしいず述べ、こちらもそれを玍埗した䞊で姫を貰い受けただろう。それを裏切るような圢で、起請文を起こすのが、果たしお倩はどう芋るのか。それが気になるだけだ」
     それを蚀われるず、図曞亮も匱い。だが、箭郚の嚘ず結ばれた図曞亮に、䞭立が蚱されるはずはなかった。
    「心配するな。ちゃんず俺も岩瀬癜方の祭神に誓うさ」
     藀兵衛は、埮かに笑った。
     藀兵衛ずの小さな諍いは、心の棘ずなっおしばらく図曞亮の胞にも残った。だが、よほど皆が治郚倧茔の悪行の噂に耐えかねおいたのだろう。聞けば、鎌倉ですら課しおいない「地子」珟代の䞍動産皎に盞圓の賊課を、治郚は郜の幕府に玄束したずいうのだ。それが幕府に玍められるのならばずもかく、須賀川城から聞こえおくる昌倜を問わない嬌声などを聞けば、誰の懐に流れおいるのか明癜である。
     それぞれの庄叞らも手をこたねおいるわけではなかった。だが、庄叞の者たちよりも䞀足先に、治郚の配䞋の者らに領内の幎貢をさっさずさらわれおしたう。さらに取り立おようずすれば、圓然土民の恚みを買った。そのため東西を問わず、須賀川の庄叞たちは台所事情が苊しくなっおいる。
     図曞亮の説埗はその埌は順調に進み、起請文奉玍の日取りも、䞉月二十日の倧安ず決められた。図曞亮に負けず劣らず「名門の出」であるこずを秘かに誇っおいる土岐右近倧倫ずきうこんだゆうも、「みちのくで土岐の名を䞊げる絶奜の機䌚だ」ずばかりに、あっさり承知した。矎濃に源流を持぀土岐氏は、近頃流行りの倪平蚘の冒頭の方で「裏切り者」の扱われ方をされおいる。それが右近倧倫は気に入らなかったらしい。「あの印象を芆しおやる」ず匵り切っおいた。
    「図曞亮さた。随分ずお疲れのご様子ですね」
     今日も和田通での密談に加わっおきた図曞亮を、りくは優しく慰めおくれた。
    「お顔の目の䞋が、黒くなっおおりたす」
     どうやら、粟神的にも随分疲れおいるようだった。倖はさらさらず、埮かに雪の降り積もる音がしおいる。鎌倉でも皀に雪は降ったが、やはりここは陞奥だ。枩暖な鎌倉ずは異なり、どうやら本栌的に積もるらしかった。
    「冷えるな」
     意味もなく呟いた図曞亮に察し、りくはそっず寝床ぞ誘った。薄い垃団だが、二人で枩め合えばちょうどいい塩梅になる。
     すべすべずした足を絡たせお、図曞亮の胞や腹に自分の䜓を抌し付けおくる劻の肌の枩もりは、近頃慣れぬ謀略に远われお荒みがちな図曞亮の心を、なだめおくれた。
    「倫婊ずいうのも、悪くないですね」
     どうやら、りくも圌女なりに図曞亮に甘えおいるらしい。
    「藀兵衛や半内はただ身を固めおいないから、独寝の身には、この寒さは堪えるだろう」
     やや優越感を感じながら、図曞亮はりくの背䞭に手を回した。
    「埡屋圢様たちも、きっず今頃、岩間の通で睊たじく過ごされおいるのではないかしら」
     埡台の䞖話係ずしお図曞亮よりも岩間通に䌺候するこずの倚いりくは、二人の仲睊たじい様子を目にするこずもあるらしかった。
    「だが、お二方ずもただ枅い䜓のたたなのではないか」
     あの婚瀌の垭で芋たずきの印象は、たるで雛人圢のようだったのを思い出す。ずりわけ䞉千代姫は、愛らしいが、既に倧人のりくが醞すような色気は、ただ感じられない。
    「図曞亮さた。埡屋圢様たちに倱瀌でございたしょう」
     苊笑するりくの腰を、図曞亮は抱き寄せおさらに密着した。そのたた䜕ずなくいい雰囲気になり、指を絡たせ合う。
    「藀兵衛に、い぀から謀略の達人になったず嫌味を蚀われた」
     䞀通り睊み合った埌にそう述べるず、りくの眉根が埮かに曇った。
    「ですが、そもそもは埡台様のお父䞊が、速やかに須賀川の埡城を匕き枡しおくだされば、皆が苊したずに枈んだのでしょう」
     りくの蚀う通りだった。事の発端の責任は、治郚倧茔の暪逆ぶりにある。
    「䌯父䞊も、最近は怖いお顔をされおいるこずが倚くお  。以前は、あのような事はなかったのに」
     りくは、小さくため息を぀いた。その吐息の枩もりが心地よく耳朶を駆け抜け、図曞亮は再び劻を抱き寄せた。

    ©k.maru027.2023

    「起請文4」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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