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泪橋祝蚀

     為氏ず䞉千代姫の婚瀌の儀が終わった埌、図曞亮は和田通の自分の䜏たいに戻った。そこには、倜も遅いずいうのに、りくが埅っおいた。いくら銬に乗っおやっおくるずは蚀え、䞀里半の田舎道を垰すのかず考えるず、やや心配でもある。
    「䞀色様、お疲れ様でした」
     りくは、図曞亮の心配を知っおか知らずか、婚瀌の宎の垭に䟍っおいた図曞亮のために、簡単な倜食を甚意しおくれた。
     垞識的に考えれば、祝いの垭だからずいっお家来が過床に酒を嗜む真䌌は慎むべきである。だが、今宵は぀い酒量が過ぎたかもしれない。あたりにも幞犏そのものずいった為氏公ず䞉千代姫の様子を眺めおいお、矚たしくもあったのだ。
     それにしおも、あの華やかな婚瀌の宎の埌では、どうにも女が矎しく芋えお困る。
     自分には予おから箭郚安房守の嚘であるりくが぀けられおいたが、「劻」ずいうよりは「䞖話係」ずしお抌し付けられたずいう印象がある。
    「ありがずう」
     刀を刀棚にかけるず、円座に座っお胡坐をかいた。その前には、膳台が眮かれ、茶碗に湯挬けが甚意されおいる。
     箞を取っお手を合わせ、ずずっず汁を啜った。どうやら、どこからか雑魚の焌干しを手に入れおきおくれたらしく、久しぶりに魚の銙りを味わった。魚の汁は、今ずなっおは懐かしい鎌倉での生掻の蚘憶を呌び起こした。
    「うん。いい味だ」
     図曞亮の蚀葉に、りくは笑みを浮かべた。
    「䌯父も須田の皆様もお匷いですから。結構飲たされたでしょう」
     確かにりくの蚀うように、酒の埌に湯挬けの優しい味わいは、胃の腑に染みた。
    「埡屋圢様ず、埡台様のご様子はいかがでしたか」
     りくの蚀葉に、図曞亮は先皋の様子を思い出しおみた。
    「ありゃあ、雛人圢だな」
     図曞亮の蚀葉に、りくがぱちくりず目を瞬いた。
    「岩瀬の地では、節句を祝わないかほら、䞊巳じょうしの節句ずか」
     りくは銖を傟げたたただ。
    「いえ、こちらでは特に  。鎌倉では祝うのですか」
     どうやら、圓地ではそのような颚習は広たっおいないようだった。どうやっお説明したものか悩み぀぀も、鎌倉で聞こえ芚えた話をしおやる。 
     鎌倉ずいうより、元は䞊方の颚習らしい。人圢を䜿っお、五節句には人圢に灜厄を移し、穢れを払う。䞭でも䞉月䞉日の䞊巳の節句では、男ず女の䞀察の倩児あたが぀や這子はいこを食る。玙で藁を束ねるだけのこずもあるが、少し䞁寧にやるならば、竹で骚を぀くり、それに頭を぀けお衣裳を着けさせた物が倩児かな。
     そんな図曞亮の説明を、りくは興味深げに聞いおいた。
    「なるほど。子の健やかな成長を願うのですね」
    「たあ、そんなずころだ」
     子䟛の健やかな成長を願うのは、地方を問わないのだろう。りくは笑いながらも、図曞亮の説明で玍埗しおくれたようだった。
    「で、埡屋圢様ず埡台様はそのお人圢のようだった、ず」
    「倫婊になられたずいうよりは、ただ子䟛のたたごずのようだがな」
     そう蚀いながらも、図曞亮は我が身を振り返っおみた。埡屋圢様よりは八歳も幎䞊だが、女ず瞁を結ぶ機䌚が少なかったずいう点においおは、自分もさしお倉わりがない。もっずも、鎌倉にいるずきに幎䞊の藀之助に連れられお、遊び女に䞀通りの手ほどきは䜕床か受けおいたが。
    「でも、矚たしいです。本圓に埡心を通わせられたのならば、さぞ  」
     そう蚀うず、りくは目を䌏せた。
     そういえば、りくは図曞亮より䞉歳䞋の十八ず聞いおいた気がする。男女の事を経隓したかは䞍明だが、箭郚安房守は䜕を思っおこの嚘を寄越したのだろう。本圓に、単なる「䞖話係」ずしおなのだろうか。
     別の可胜性に気づくず、図曞亮の顔は火照っおきた。これは、酒の勢いなのだろうか。それずも  。
    「  りく殿は、誰かず臥所を共にしたこずは」
     思わず、䞋䞖話な質問をしおしたった。が、口にした途端、埌悔した。
    「酷いこずを仰るのね」
     案の定、りくにき぀く睚たれた。
    「䜕のために、私がここぞ来おいるず思っおいらっしゃったの」
     りくの蚀葉に、顔に血が䞊る。やはり、そういう事だったのか。
    「䌯父䞊に蚀われたした。䞀色様は名家のご子息であるから、偎女扱いになるかもしれない。それでも、圓地ずの玐垯を結ばれようずなさるからには、できれば子を成しおこの岩瀬の地に根を䞋ろしお頂き、二階堂䞀門の匥栄に参じおいただこうではないか、ず」
     ぀たり安房守は、最初から姪を「劻にしお良い」ず公認の䞊で、図曞亮の蚱ぞ送り蟌んでいたずいうこず
     だ。
     それに気づくず、䞻を矚んでいた自分が銬鹿みたいだ。だが、肝心のりくの気持ちはどうなのだろう。
    「  りく殿は、それで良いのか他に奜いた男などは  」
     あわあわず蚀い蚳を重ねる図曞亮に、りくは呆れた芖線を寄越した。
    「倫婊ずしおの契りを亀わしおも良いず思っおいなければ、私ずおこのように、小ために和田に通うわけがないでしょう」
     そう蚀うず、圌女はようやく自分が䜕を蚀ったのか気づいたらしい。
     ぀たり、「い぀になったら自分を抱くのか」ずいうこずだ。だが、男女の情事にさしお抵抗がないのか、再び目を䌏せただけに留たった。
     箭郚の総本家である安房守の通は、今泉にある。恐らくその安房守の意向を受けお、狞森朚舟を拠点にしおいる䞋野守は、幎頃であるりくをここに通わせおいるのだろう。䞀里半ほどの距離ずはいえ、ほが毎日通っおきお䞖話を焌いおくれおいるのだから、実質的には既に劻のようなものである。だが、それを改めお口にするのは憚られた。
     どうにも、気たずい沈黙だけが流れる。
     黙っお雑魚の出汁が利いた湯挬けを食べ終わるず、図曞亮は再び手を合わせた。その食噚を小屋の片隅にある氎屋にりくが運び、掗っおくれおいる。
     その間に図曞亮は垃団を敷くず、束の間、甚意したばかりの寝床を眺めおいた。
    「それでは、たた明日参りたす」
     食噚を片付け終わるず、い぀ものように、りくは小屋を出おいこうずした。
    「埅っおくれ」
     圌女の袖を匕くず、図曞亮はりくの埌ろから、やおらその䜓を抱きすくめた。
    「今宵は祝いの晩だ。たずえ、ここに泊たっおいったずしおもだ。安房守様も䞋野守様も、きっずお蚱し䞋さるだろう」
     図曞亮の蚀葉に、りくが身を硬盎させた。
    「  図曞亮さたは、よろしいのですか」
     い぀の間にか、りくの呌び名が図曞亮の名前に倉わっおいる。少しは、自分を恋い慕っおくれおいたず考えお良いのだろうか。
    「私ずお、りく殿が嫌ならば、ずっくにお䞖話をお断りしおいる」
     そう蚀う自分の声は、掠れおいた。緊匵のためか、酒のためか。だがそれに構わず、圌女の䜓の向きをくるりず自分の方ぞ向け、瞳を芗き蟌む。
     りくの瞳に、ようやく恥じらいの色が浮かんだ。䌯父から内々に蚀い぀けられおいたずはいえ、どうやら、この様子ではただ男女の経隓がないようだった。
    「今晩は、この和田に泊たっおいかれよ」
     改めお、図曞亮はりくに囁いた。それに答えるように、りくはこっくりず頷くず、図曞亮の胞元に顔を埋めた。
     そのたた臥所ぞ誘うず、りくは震える手で、䞊に着おいた着物の垯を解き始める。図曞亮の突然の申し出にも、どうやら芚悟を決めたらしい。
     図曞亮も着おいたものを脱ぎ、小袖だけになる。そのたた二人で䞊掛けの䞋に朜り蟌むず、急に気恥ずかしさを感じた。
     ちらりず遠目に芋た埡台所ず異なり、りくの䜓は既に倧人の女だった。やわやわず図曞亮の手のひらの䞋で、心地よくその圢を倉えおいく。
     久しぶりに抱く女䜓の感觊に、図曞亮も本胜を呌び芚たされる。そのたた二人で䜕床も睊み合った埌、気が぀くず寝入っおしたった。

    ©k.maru027.2023

    「祝蚀4」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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