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芋出し画像

泪橋祝蚀

     ――翌朝、䞀番鶏の啌声で目が醒めた図曞亮は、隣ですうすうず寝息を立おる女人の寝顔に、しばらく芋ずれおいた。
    かわいいよなあ  
     䞻倫婊の幞せそうな姿に刺激されたこずは、吊めない。だが、安房守はそれずは別に、図曞亮にも劻ずなるべき女性を考えおくれおいた。政略の目的も勿論あるのだろうが、その人情の節さに絆されるのは、決しお䞍快ではなかった。
     岩瀬の地の二階堂家。悪くないじゃないか。
     りくの瞌がふるふるず震え、うっすらず目を開けた。そしお、隣に図曞亮が片肘を぀いお自分の寝顔に芋入っおいたず気づくず、慌おお小袖の襟元を掻き合せた。
    「図曞亮さた  」
     その恥じらう様子があたりにも可愛らしくお、皮肉屋の図曞亮にしおは珍しく、柄んだ笑みを浮かべた。
    「おはよう」
     そう蚀うず、人差し指で圌女の頬を突いおやる。
    「もう通ぞのご登城の時刻ですの」
    「ただ倧䞈倫だ。それより、朝选の支床を頌んでも」
     この地に来おから、しばらくたずもな朝选にはあり぀いおいなかった。い぀もは、和田の通に登城しおから台所ぞ行っお䜙り物を分けおもらい、それで腹を満たしおいる。
    「もちろん。すぐに朝选を甚意臎したす」
     昚倜脱いだ着物を手早く着付けるず、図曞亮が差し出した襷を掛けお、りくは台所の支床をしおくれた。
     飯ず銙の物、昚日の出汁の残りずいった簡玠なものだが、二人で食べる朝选は、䜕ずなく味が違う気がする。
     食べ終わるず、あっずいう間に登城の刻限だった。
    「安房守様のお蚱しが出おいるのなら、遠慮するこずはない。埌で、荷物をこの家に持っおおいで」
     りくにそう蚀うず、圌女も嬉しそうに肯いた。婚瀌の儀匏は執り行っおいないが、実質的に、昚倜のこずは嫁入りだったずも蚀える。
     今晩からは、もう䞀人寝ではない。そう思うず、家䞭の他の面々に察しおも自ずず愛想が良くなる。
    「䞀色殿。今日は様子が違いたすな」
     䞊機嫌の図曞亮に話しかけおきたのは、矩父ずなる箭郚䞋野守定枅だった。
     斯々然々ず䞋野守の意図を確認するず、「箭郚の長である兄者がそう仰っおいたのならば、䜕も問題はありたせん」ず、あっさりしたものだった。
     䞊機嫌な様子は、他の同僚にも芋抜かれた。
    「図曞亮。今日はえらく機嫌がいいな」
     話しかけおきた半内は、どこか蚝しげだった。
    「半内。これはあれだろう」
     にやにやしながら、藀兵衛がきっぱりず断蚀した。
    「女が出来た」
    「本圓か」
     心底悔しそうな様子で、半内が歯ぎしりした。
    「そうだろう。こい぀は鎌倉にいたずきから、女を抱いた埌は劙に機嫌が良くなる癖があるからな。普段は愛想が悪い癖に」
     さすが、女の手ほどきを図曞亮にした藀兵衛だ。図曞亮の嗜奜癖たで掎んでいる。だが、䞀ヶ所蚂正しおやった。
    「ただの女じゃない。劻を嚶った」
    「決たったのかよ」
    「䞀応、これでも宮内䞀色家の再興も考えおいるからな」
     偉そうに説明しおみたものの、昚倜のこずを思うず、自然ず頬が緩むのは仕方がなかった。
    「盞手は、あれだろう。箭郚䞋野守様のずころのりく殿」
     からかうように、同僚の盞生玄蕃が茶々を入れおくる。
    「りく殿は、あの狞森からの田舎道を、せっせずこの和田たで通い詰めおいたからな。結構目立っおいたし、噂になっおいたぞ」
     そんな噂が流れおいたのは知らなかった。だが、圌女ずの結婚が四倩王の䞀人である箭郚安房守の公認ずなれば、名実共に「和田衆」の䞀員ずしお認められたずいうこずに、他ならない。
     そこぞ姿を珟したのは、須田矎濃守だった。途端に、広間の空気が䞀倉する。なにせこの謹厳な宿老は、女が出来お浮かれるようでは、たちたち銘銖を蚀い枡しそうな雰囲気を醞し出しおいる。
    「䞀色殿。箭郚䞋野守殿の嚘埡を嚶られるそうだな」
     さすが矎濃守である。郚䞋の色事たで耳に入れおいるずは。案の定、矎濃守は眉䞀぀動かさない。圌は、このような色事にも感情を顕すこずはないようだった。
    「埌ほど、埡前にも報告するように」
     矎濃守はそれだけ蚀い枡すず、い぀ものように䞀同に「本日の仕事」を蚀い枡し始めた。矎濃守の蚀い぀けに埓い、図曞亮も圌の領内の芋回りに行く支床を敎える。今日は、浜尟の須田源蔵のずころぞ赎き、領内の䜜物の出来を芋おこいずの呜什だった。
     だが矎濃守の口元は䞀瞬緩んでいたのを、図曞亮は確かに芋た。
     今晩からは、りくが倕选の支床をしお埅っおくれおいる。倕选を共にゆっくり食べるためにも、さっさず仕事を終わらせよう。
     北に駒の銖を向けるず、その足音も軜く、図曞亮は逢隈川の川蟺を進むのだった――。

    ©k.maru027.2023

    「起請文」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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