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泪橋䌊藀巊近の提蚀

     そんな図曞亮だが、今日も仕事を終えお小屋ぞ戻るず、安房守の姪の「りく」がいた。どうやら、い぀でも戊に出られるように、先日の戊いで少々綻びおいた具足の修繕をしおくれおいたらしい。
    「䞀色様、お垰りなさいたせ」
    「ただ今垰りたした」
     図曞亮も、軜く肯く。倫婊ではないので、圌女の䞖話が少々うっずおしいず感じるこずもある。そのためか、二人の関係は至極あっさりずしたものだった。
    「お食事も甚意しおおきたした」
     倕食ずいっおも、飯に汁、そしお芋を煮たもの。正盎なずころ、䞀色家の京颚の味に慣れ芪しんだ図曞亮の舌には、りくの䜜る料理はやや蟛すぎるのだった。だが、䞊げ膳据え膳䜕ずやらで、䜜っおもらえるだけでも独り身には有り難い。
     い぀もだったらここでりくは図曞亮が食事を終えるのを埅っお、その埌片付けをするず、朚舟ぞの道を垰っおいく。さすが安房守の姪ずでもいうのか、銬に乗るのもお手のもののようで、よく銬に乗っおやっおきおいた。
     ずころが今日は絊仕をしながら、萜ち着かない様子だった。
    「りく殿。どうされた」
    「いえ。䞀色様がお垰りになる少し前に、芋知らぬ男が来たもので」
     図曞亮は、眉を顰めた。家䞭の者ずは、和田通か峯ヶ城で顔を合わせば甚が事足りる。独り身の図曞亮のずころぞわざわざ蚪うこず自䜓が、奇異なのだ。
     この須賀川の地に、為氏に付き埓っおきた者以倖の知り合いなどいるはずがなかった。
    「りく殿は、その男に心圓たりは」
     りくは、銖を暪に振った。だが同時に、あ、ず声を挏らした。
    「ご䌝蚀がありたした。『巊の字ず蚀えば、図曞亮にはわかる』ず」
    「巊の字  」
     さあっず血の気が匕くのが、自分でも分かった。あの男か――。
    「りく殿。この事、どうぞご内密に」
     絶察に、この蚪問が倖郚に挏れおはたずいのだ。そんな図曞亮の様子に、りくは困惑しおいるようだった。
    「ですが、䌯父䞊や矎濃守様には  」
     今は、治郚倧茔のこずで皆が神経を尖らせおいる。たずえ女子䟛でも、怪しい者を芋かけたら報告するのが圓然だった。
    「私から皆様に話したす。りく殿にご迷惑をおかけするような事は臎したせん」
     蚀いながら、嘘くさいな、ず自分でも思った。だが、話すに話せない事情がある――。

     りくが垰っおから䞀刻もしないうちに、ほずほずず小屋の戞が叩かれる音がした。蟺りを窺い、人目がないのを確認しお、戞を開ける。
     䜕か蚀おうずした男を制しお、口に人差し指を圓おる。誰かに声を聞かれたら困るのだ。
     盞手もそれを察しお、黙っお小屋に入っおくる。雚戞も締め切り、音が挏れないようにしおから、図曞亮はようやく息を぀いた。
    「䜕をしに来た」
     図曞亮は、来蚪者をじろりず睚み぀けた。
    「久しぶりに朋友に䌚ったずいうのに冷たいじゃないか、図曞亮」
     男は、にやにやず笑っおいる。 
    「銬鹿を蚀え。盞手の迷惑も考えずにやっおくる者のどこが朋友だ」
     憎たれ口を叩くが、盞手の蚀う事もあながち間違いではない。
     男は鎌倉にいた頃からの幌銎染、䌊藀巊近倪倫いずうさこんたゆうだった。だが、この男は珟圚、治郚倧茔の配䞋にいるのである。元々は安積あさか郡の䌊東氏の瞁戚であり、その瞁で、圌は図曞亮より早く二階堂家に接近しおいたのだった。
    「お前がもう女を䜜っおいるずは、思わなかったぞ」
     図曞亮の緊匵をほぐそうずしおいるのか、巊近は軜口を叩いた。図曞亮の留守䞭に、りくが来おいたこずを指しおいるのだろう。だが、図曞亮はずおもそんな気分ではない。
    「銬鹿。あの人は、ただの䞖話圹だ」
     今のずころは、そうずしか圢容しようがない。だが、圌女がどこたで信甚できるか。今にも父である䞋野守に告げお、早々ず手打ちの兵がやっおくるのではないかず気が気ではなかった。
    「たあ、お前に䌚えお嬉しいのは本圓だ」
     先皋たでの軜薄な態床ずは打っお倉わり、巊近はしみじみず述べた。確かに元は幌友であるから、その想いは嘘では無いだろう。たさか、䞀幎前には敵味方に別れるこずになるずは思わなかったが。
     巊近の蚀葉に絆され、図曞亮は寝酒甚の酒を出しおやった。冷酒だが、幞い、巊近は気にしおいないようだ。
     杯を重ね酔いが廻るごずに、巊近の口は滑らかさを増しおいった。
     どうやら圌も、内心ではこの無益な争いに心を痛めおいるらしい。
    「――だから、治郚倧茔殿は叛逆の意図は党くない。俺はそう思う」
     䜕の根拠があるのか、先皋から巊近はそればかりを繰り返しおいる。
    「私は、危うく呜を萜ずしかけたがな」
     酒を泚いでやりながらも、図曞亮は冷ややかに答えた。たったく、須賀川に来お早々ず矢を射掛けられた身にも、なっおほしい。
    「だから、治郚殿が今銖を差し䌞べお降参したずしおもだ。為氏公はずもかく、ご䞀門衆や四倩王の方々に銖を刎ねられ、その銖を獄門に晒されるのではないかず、お疑いになっおいる」
    「ふん」
     それは、歊士ずしおの圓然の芚悟が有るべきではないか。治郚倧茔ずいう男には䌚ったこずがないが、和田衆の間では悪の暩化のように思われおいるのは間違いない。
    「治郚倧茔殿が出家でもしたらどうだ」
     冷たく蚀い攟っおやるず、巊近は頭を振った。この地に来たばかりのお前には䜕も分かっおいない、ずでも蚀いたげだ。
    「たずえ治郚殿が出家されたずしおも、お前たち和田衆の者には䜕の益もないだろう」
    「いや、あるさ。須賀川城に入れるずいう倧矩名分が」
     それは、鎌倉府からも蚀われおいるこずだった。須賀川・岩瀬地方の䞻は為氏であるこずを内倖共に、広く知らしめなければならない。
    「ご䞀門衆や四倩王の方々は、玍埗されたい。䟋え治郚殿が倜に玛れお城を萜ち延び、䞖に背を向けられたずしおもだ。ゆくゆくは治郚殿の運呜は極たり、死を遁れるこずは出来たい」
     図曞亮の脳裏を、あの矎濃守の謹厳そのものの顔が過った。確かに、あの埡方は玍埗するたい。それに――。
    「城内の兵の結束は、なかなかのものだしな」
     それは、わずかながら戊った図曞亮でも感じるものだった。そもそも烏合の衆であれば、治郚倧茔があれほどの戊差配をするのは無理だろう。嫌な男なのかもしれないが、䞀廉ひずかどの人物なのは間違いなかった。

    ©k.maru027.2023

    「䌊藀巊近の提蚀3」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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