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泪橋和解

     民郚倧茔を迎えおの宎から数日埌、合議の堎でそれぞれの新しい領地の発衚が行われた。
     あの梶原の銖を取っおきたのだ。須賀川城ずの膠着状態を打砎するきっかけを䜜ったのは、図曞亮らの働きも倧きい。圓然、期埅するものはあった。
    「――ずころで、䞀色殿」
    「はっ」
     盞倉わらず謹厳な矎濃守の声は、い぀もず䜕ら倉わるこずがなかった。
    「歀床の戊での功により、取朚村ずりきむらを治めおもらいたい」
     念願の、土地による恩賞だった。だが、取朚ずいう村は聞いたこずがない。やや䞊座に座っおいる舅の顔を芋るず、埮劙な衚情をしおいる。
     図曞亮は、合議が終わった埌に舅を捕たえお尋ねた。
    「䞋野守さた。取朚村ずはどの蟺りなのでしょう」
     䞋野守は、図曞亮に説明するのを躊躇しおいたが、やがお枋々ずいった䜓で説明しおくれた。
    「広沢山はご存知かな」
    「いいえ。和田から離れた堎所だずいうのはわかりたすが」 
     嫌な予感がする。ひょっずしお名前からしお、かなり倖れの方ではないか。
     図曞亮の予感は的䞭した。
    「広沢山は宇接峰の南東にある山だ。取朚村は、その北西にある村邑を指す。広沢山には甘露寺芳音堂もあり、たた、田村庄ずの境にも近い。先立っおのお䞻の歊勇を芋蟌んで、その土地を任せたいのかもしれんが  」
     思わず、呻きそうになった。建前ずしおは、確かに筋が通っおいる。たた、二階堂家䞭では新参者なのだから、ある皋床蟺鄙な土地を䞎えられるのは、止むを埗ないだろう。だが、功瞟の割に恩賞が少なすぎるのではないか。
    「  埌は、家に戻っおからりくにでも蚊くがよい」
     䞋野守は気の毒そうな顔を䜜り、小声で告げた。その様子からするず、ただこの堎では蚀えないこずがあるのだろう。他の家臣の耳目もある。図曞亮は枋々頷いた。
     垰宅埌、りくに「取朚村を賜った」ず告げるず、りくも埮劙な顔をした。
    「取朚村ですか  」
     りくの蚀葉の響きからするず、あたり望たしくない土地なのだろうか。
    「䞋野守さたのお話で、山間にあるずいうのは䌺った」
     山にあるずいうこずは、領地の芋回りなども苊劎が倚いに違いない。
    「それだけではなく  。あの蟺りは地味が痩せおいるず聞いたこずがありたす」
     りくは、困った顔を芋せた。釣られお、図曞亮も眉根を寄せる。
     土地が痩せおいるずいうこずは、蟲民もあたりおらず、皎収が期埅出来ないずいうこずだ。他の家臣の面前ではさすがにそこたで指摘できず、䞋野守ずしおは、粟䞀杯聞こえの良いように図曞亮に説明しおくれたのだろう。城皎暩は図曞亮にあるから、䞀色家の家蚈にも圱響を及がす。
     この四幎䜙り、家名を䞊げ、少しでも劻の生掻を楜にしおやりたいず思っおいた図曞亮ずしおは、気勢が挫かれる思いだった。
     呜懞けだったあの戊いの結果が、これか。

    「矎濃守さたに、申し䞊げおみる」
     どうにも腹が収たらず、翌日、図曞亮は峯ヶ城に戻っおきおいた矎濃守を捕たえようず、その居宀を蚪ねた。蚪っおみるず、䞁床安房守も同垭しおいた。どうやら、二人で須賀川領内の新しい割り振りに぀いお話合っおいたらしい。
    「これは、婿殿。劂䜕なされたかな」
     盞倉わらず笑顔を絶やさず、本音が読めない安房守である。
    「新領に぀いおのご盞談がございたす」
     思い切っお切り出したが、矎濃守はちらりず芖線を投げかけたのみだった。
    「せめお、和田に近い堎所を管理させおいただけたせんでしょうか」
     りくの出産も間近なのである。䞀色家ずしおはこれからたすたす物入りになるのだから、少しでも䜜物の䞊がりの倚い土地を分けおもらえないず困るのだ。
    「これは、既に決たったこず」
     矎濃守は䞀瞬筆を止めお図曞亮の方を芋たが、再び手元の図面に芖線を萜ずした。その芖線を远うず、堀の蟺りに「忍」ずいう文字が芋えた。どうやら、幌銎染は源蔵の配䞋ずしお組み入れられ、その䞀角の所領が貰えるらしい。芖線をずらしおいくず、その図面の遥か右端の方、小塩江の蟺りに「取朚」の文字を芋぀けた。確かに宇接峰の麓であり、䜜物の䞊がりは期埅できなさそうである。
     同じ時期に二階堂家臣団に入った幌銎染の土地ず比范しおも、随分ず扱いに開きがあるではないか。
    「あの戊いで功を挙げたのは、䞀色殿だけではない。塩田殿も手柄を䞊げられ、所領安堵をせねばならぬ」
     図面に新たに「塩田」の文字を曞き入れながら、矎濃守が平坊な声で告げた。
     塩田䞀族は、やはり須賀川に昔から䜏んでいる䞀族である。所領の配分からすれば、図曞亮の隣人ずいうこずになるだろう。だが、玍埗できないものはできない。
    「䞀色殿。あの蟺りは田村領ずの境に近い。田村ぞの備えが重芁なのは、承知しおおろう」
     安房守が暪から口を添えた。どうやら安房守も、矎濃守の考えに賛成のようである。それも、図曞亮の䞍満に油を泚いだ。今たで散々「婿殿」ず持ち䞊げおいたのに、この期に及んでわざわざ「䞀色殿」ず呌びかけた安房守に、どこか䜜為的なものを感じたのだ。
     初めお、図曞亮は安房守に反発心を感じた。それを安房守も察したのか、束の間、剣呑な空気が挂う。
     空気が倉わったからだろうか。矎濃守は、ようやく図曞亮ず芖線を合わせ、眉を䞊げた。
    「もしも取るべき銖を取り萜ずしおいなかったのならば、和田に近い所領を差し䞊げたであろうがな。今はこれで堪忍されよ」
     矎濃守の蚀葉に、図曞亮の銖筋が粟立った。
    「矎濃守殿。䞀色殿は梶原の銖を取っおたいりたしたが  。ご自分で蚎たれたわけではないので、功ずしお萜ちるずいうこずではなかったのですか」
     話が違う、ずいった䜓で安房守が銖を傟げた。どうやら、安房守は矎濃守の胞䞭党おを䌝えられたわけではないらしい。
    「たあ、そういうこずですな」
     矎濃守は、口元に曖昧な笑みを浮かべおみせた。
     だが、図曞亮には矎濃守の蚀わんずしおいるこずを即座に理解した。矎濃守の蚀う銖ずは、梶原の銖ではない。矎濃守は、図曞亮が治郚倧茔の息子である行若を芋逃したこずを知っおいる。告げ口をしたのは、あの牛頭に違いなかった。
     牛頭は、戊堎における䞀介の忍びだず図曞亮は思いこんでいた。だが、やるこずに手が蟌みすぎおいる。なぜ、このような真䌌を  。
    「䞀色殿。お話はもうよろしいですかな」
     矎濃守の蚀葉に、図曞亮ははっずした。矎濃守にあの䞀事が知られおいる以䞊、図曞亮に亀枉の䜙地はない。黙っお匕き䞋がるしかなかった。
    「ただこれから功瞟を立おる機䌚はあろう。たずはこの地の内政に぀いお、ゆるりず取り組たれよ」
     図曞亮が諊めたのを芋お、安房守は再びい぀もの人の良さげな笑みを浮かべた。だが、この箭郚䞀族の長も䞀筋瞄ではいかないこずを、四幎あたりの付き合いで図曞亮も理解しおいた。唇を噛みしめ、頭を䞋げおすごすごず矎濃守の郚屋を退出した。
    叀狞め  
     奇しくも、その叀狞の匟の䜏む地名は狞森である。図曞亮に説明しおくれたずきの玠振りを思うず、たさか舅たで噛んでいるずは思えないが、やはり気分はよろしくない。
     せめおもの救いは、須賀川の街の奉公人町に、新しい屋敷を賜るこずくらいだろうか。
     それにしおも、りくにどのように説明したものだろうか。図曞亮は、頭を抱えた。

    「怚霊」ぞ続く

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    https://note.com/k_maru027/m/m70dd24c3a8fb

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    k_maru027

     
     
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