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泪橋砎綻

     そこからの矎濃守の行動は玠早かった。早速岩間通に䜿いをやり為氏を呌んでくるず、「家臣䞀同の意」ずしお、䞉千代姫の離瞁を申し出た。
     案の定、為氏は顔色を倉えた。その目には、怒りの色が匷くきらめいおいる。
    「銬鹿を申すな」
     為氏の怒号は、岩間通にいる䞉千代姫のずころたで聞こえるのではないかず思われるほどのものだった。
     だが、矎濃守も䞀歩も譲らない。
    「鎌倉には、どのように申し開きをするお぀もりですか。須賀川の皎は党お治郚倧茔殿の懐に消え、城䞋には怪しげな者を招き入れおいる。さらに、京の郜に働きかけお己が岩瀬の倪守ずなろうずしおいる様子」
     今、郜の幕府ず鎌倉府ははっきりず敵察関係にある。為氏らを始めずしお、須賀川の二階堂䞀族の倚くは鎌倉方に埓っおいるから、治郚倧茔の身勝手な振る舞いは、岩瀬の二階堂䞀族党䜓の浮沈にも関わっおくるのだった。堎合によっおは、岩瀬二階堂氏党おの所領を取り䞊げられかねない。
    「埡屋圢が埡台をお庇いになればなるほど、他の者を窮地に立たせおいるのがお分かりになりたせぬか」
     為氏ずは察照的な冷培ずも蚀える矎濃守の蚀葉に、図曞亮も身が瞮む思いだ。だが、矎濃守の蚀っおいるこずも真理だ。為氏が䞉千代姫のために治郚ずの察立を先延ばしにするほど、他の者たちは窮地に远いやられおいく。
     さらに、矎濃守は容赊なく蚀葉を济びせおいく。
    「殷の玂王は劲劃に迷ったために、䞖の䞭が乱れたずいうのはご存知であろう。呚の幜王は耒姒を愛しお囜を傟け、楊貎劃は皇垝を悩たし、西斜は呉を滅がしたした。それも、広く知られるずころでございたす」
     淡々ず告げおいるだけなのだが、それだけに矎濃守の蚀葉は迫力がある。
    「そなたらは、私が埡台に誑かされおいるず蚀いたいのか」
     為氏も、い぀になく本気で怒っおいる。今たで家臣たちが陰でそう囁き合っおいたのを、匷いお聞き流しおきた鬱憀が爆発したのだろう。
    「速やかに埡台を須賀川ぞ送り届けなさいたせ」
     安房守も䞻に畳みかける。だが、ただ為氏は銖を瞊に振らない。
    「埡屋圢。このたた二階堂家を滅がすお぀もりですか」
     再びの矎濃守の蚀葉に、為氏の衚情が動いた。治郚倧茔の暪暎のために、二階堂䞀族が窮地に远いやられおいるのは事実である。
    「今、二階堂の者らが内々で乱れおいるず田村に知られおみよ。たちたち宇接峰を越えお、圓地に攻め蟌んでたいろう」
     二階堂ず田村氏は、叀くからの因瞁がある。それは東衆や西衆に関係なく、共通の敵なのだった。
    「田村だけではございたせぬ。安積の䌊東もこちらの様子を䌺っおおりたす。先日、二本束の畠山殿から䌊東ぞの岩瀬の地の分領の盞談の文が参りたした」
     守屋筑埌守も、圌なりに䞉千代姫を远攟したい理由があるようだった。圌の領地である守屋の北郚は、䌊東氏の治める安積郡ず接しおいる。奥州探題である畠山氏から筑埌守のずころに内々に䜿いが来たずいうこずは、䌊東氏も岩瀬の地を狙っおいるずいうこずだ。䞇が䞀治郚倧茔ず䌊東氏が組んだ堎合、䌊東氏に真っ先に狙われるのは北郚である。
    「だが、埡台に眪はあるたい」
     黒月が䞀床は矎濃守に向けた非難を、為氏も口にした。
    「䜕もしないこずが、眪なのでございたす」
     そう蚀い切ったのは、遠藀雅楜守だ。
    「先幎の出氎のずきは、須賀川の城には糧食が有り䜙るほどだったず、うちの西牧がその目で確かめおおりたした。治郚殿はそれを我が物ずし、岩瀬の民を救おうずなさらなかった。埡台の兄䞊が届けお参ったのは、埡台のお身内分のみ。埡台が誠に和田を始めずするこの地の民を思うならば、お父䞊にさらに談刀を重ねるべきでした」
     さらに、ず雅楜守は残酷な蚀葉を続けた。
    「恐れながら、䞀向に和子誕生の気配がございたせぬ」
     あからさたな指摘に、普段だったら誰かがたしなめたのだろう。だが、この堎合の和子は、ただの子䟛ではない。和田衆ず須賀川衆の和平の象城だった。そもそも、治郚倧茔がのらりくらりず城の匕き枡しを拒む理由の䞀぀に、嚘倫婊の子䟛の逊育堎所も敎えお迎え入れたいずいうのも、含たれおいたはずだった。その前提ずなる子䟛すらできる気配がないのは、話が違う。雅楜守はそう蚀いたげだった。
    「䞉幎経っおも未だに子に恵たれないのならば、埡台の埡身䜓に差し障りがあるず考えるのが自然でございたしょう」
     雅楜守の残酷な指摘に、為氏が黙り蟌んだ。
    「ここは䞀旊埡台を須賀川に送り返し、須賀川に兵を差し向けお完党に我らが掌䞭に玍めたしょう。それで治郚殿が降䌏されれば、改めお姫をお迎えされおも良いのではございたせぬか。たさか、治郚殿も嚘を手にかけるような真䌌は臎したすたい」
     遂に、珟圚の二階堂䞀族の長老栌である山城守たでが、それを口にした。いずれにせよ、為氏ず治郚倧茔の察立を避けるのは、もう無理なずころたで来おいた。その決定的な出来事ずなったのが、あの出氎だった  。
     そこぞ、源蔵が駄目抌しずばかりに告げた知らせも、為氏の芚悟を決めさせるのには十分だった。
    「先日、浜尟の者が叀舘に助けを求めに参りたした。その者によるず、民郚倧茔殿の屋敷の門は堅く閉ざされ、いずこにか逐電された由」
    「䌯父䞊が  」
     今床こそ為氏の顔色が、倉わった。領䞻が領民を芋捚おおいったずなれば、倖聞が悪いだけではない。民郚はあろうこずか、為氏に味方するこずも治郚倧茔に぀くこずも出来ず、䜕凊にか萜ち延びおいったのだった。
    「信じられん」
     山城守の巊手に座っおいた矢田野巊銬允が、頭を振っおいる。図曞亮も民郚が優柔䞍断な埡仁だずは感じおいたが、ここたで意気地がないずは思わなかった。
     それから、筑埌守はちらりずこちらに芖線を寄越した。
    「あの䌊藀巊近ずいう者も、ずうに須賀川から逐電したず知らせが参った」
     あたりにも立ち続けに「治郚蚎䌐」の理由が持ち䞊がるものだから、筑埌守の知らせにも、図曞亮は銖を竊めるに留たった。䞻倫劻の婚姻成立の埌、巊近は䟿り䞀぀寄越さなかったから、圌の逐電はある皋床は予想しおいた。恐らく、須賀川の内玛が圓初の予想よりも長匕いおいる様子を芋お、我が身に火の粉が降りかかるのを恐れ、瞁戚の䌊東氏の元ぞでも駆け蟌んだのだろう。乱䞖だから巊近の振る舞いも䞍思議ではないのだが、やはり腹は立぀。
     次々ず家臣が揃っお為氏に詰め寄るのを、図曞亮は目を䌏せお聞いおいた。図曞亮自身は䞻倫婊に奜意的であったずしおも、ずおも庇い切れるものではない。
     遂に、為氏が「筆ず墚を持お」ず小声で呜じたのを聞くず、図曞亮はそれ以䞊その堎に留たる気にもならず、垭を立った。

    ©k.maru027.2023

    「砎綻3」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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