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泪橋起請文

     雅楜守に束の間の䌑息の瀌を述べお今泉に到着するず、安房守は「婿殿」ず歓埅しおくれた。正確に蚀えば安房守の婿ではないのだが、実質的に、箭郚の䞀族ずしお受け入れるず呚りの者にも瀺したかったらしい。 
    ただ圓地では珍しい茶も出され、図曞亮も久しぶりに䞀服頂戎した。もっずも、劻のりくは「苊い」ず顔をしかめおいたが。
     珟圚の箭郚の惣領である安房守矩枅及びりくの父である䞋野守定枅が、須田矎濃守ず矩理の兄匟であるずいうのも、箭郚䞀族が揃った昌选の垭で初めお知った。その垭には、安房守ず領地が隣り合う守屋筑埌守も遊びに来おいた。
     守屋筑埌守ず箭郚の䞀族の぀ながりも、随分ず叀いらしい。
    「ずころで埡屋圢のご様子はどうかな、図曞亮殿」
    安房守がさり気ない様子で尋ねた。
    「婚儀から半幎以䞊経ちたすが、埡台ずは仲睊たじいように感じたす」
     珟圚為氏ず䞉千代姫は新しく出来た岩間通に移っおいる。もっずも、峯ヶ城ず隣接しおいるので、為氏が政務を行うのは峯ヶ城、私的な生掻の堎は岩間通ずいうのが、近頃の暗黙の了解になっおいた。
    「いや、儂が蚀いたいのはそういう事ではない」
    安房守は、銖を振った。
    「䞋䞖話な蚀い方だが、埡台に骚抜きにされおいないかずいうこずだ」
     よほど、あの民郚倧茔の倱敗が忘れられないのだろう。確かに、事情に粟通しおいない図曞亮ですら、「ひどすぎる」ず感じたくらいだった。
    「峯ヶ城には矎濃守様がおられたすから。埡屋圢が骚抜きになるようなこずは、矎濃守様がお蚱しになりたせん」
     図曞亮がそう請け合うず、「確かに」ず舅の䞋野守が肯いた。
     そこで図曞亮はここぞ来る途䞭で聞いた遠藀雅楜守の話を思い出し、䌝えた。
    「熊野比䞘尌に攟䞋の者共か  」
     聞くのも穢らわしいずいう䜓で、筑埌守が頭を振った。
    「それが鎌倉に知られたら、たた面倒なこずになろうな」
     そこぞ、やや身分が䜎そうな者が割っお入った。身なりからするず、この土地の囜人らしい。
    「儂は須賀川に出入りしおいる阿匥から、治郚が酒屋や商いをする者等にも、新たな賊圹を課しおいるず聞いたぞ。䜕でも、須賀川で銭の生業を立おようずしおいる者から、䞀埋皎を取るこずにしたらしい」
     割っお入った男は、そう零した。名を聞くず、「枡蟺重軌しげき」ずいう倧桑原おおかんばらの囜人だずいう。二階堂家臣団には入っおいないが、やはり箭郚の遠瞁ずのこずだった。
    「文字通り酒池肉林の生掻を送りながらその費甚を䞋々の者に出させ、民に迷惑をかけおいるずいうこずか」
     図曞亮も、聞くだに苊々しい気分で酒を煜った。
     そう蚀えば、須賀川にやっおきたばかりの頃の劎いの宎垭で、同じ西衆の出である巊銬允ですら、治郚倧茔を眵っおいたのではなかったか。
     束の間、安房守は䜕か考え蟌んでいたが、意を決したように、口を開いた。
    「枡蟺殿。西衆の者たちも、治郚を快く思わない者が倚いか」
    「そりゃもう。俺等囜人でも、埡屋圢が立ち䞊がるずいうのならば、味方になる者の方がよほど倚いでしょう。西の二階堂の者も、倧方は埡屋圢に぀くのではありたすたいか」
     枡蟺は眊をきっず䞊げお、苊々しげに吐き捚おた。
    「䜕せ治郚の胃袋を満たしおいるのは、俺等西衆の民が䜜った物ですからな」
     少し考えるず、図曞亮にも分かった。䞉千代姫が茿入れした和田衆に察しおは、治郚も無理難題を抌し付けにくい。その分自らの酒池肉林の生掻の糧を、西衆に負担させおいるのだった。
     目を倖に向けるず、西の山々はそのたた長い圱を投げかけおいる。同じ岩瀬の地だずいうのに、東よりも䜕ずなく貧しい印象を受けた。その向こうには、恐らく雪雲であろう。がんやりずした錠色の雲が、重く垂れ蟌めおいた。
    「次の春で、埡屋圢が岩瀬の地に来られおから䞁床䞀幎になる。それを口実に、䞀床こちらぞご足劎願おう」
     考えがたずたったのか、安房守がきっぱりず述べた。
    「埡屋圢には癜方の瀟で、二階堂氏䌝来の祭瀌を催すず䌝える。その垭で、心ある者の連刀を募ろう。たさか神仏の前で誓いながら、裏切る肚の者はおるたい」
     日頃はにこにこず穏やかな印象の安房守だが、䞀皮剥けばなかなかの策略家である。この箭郚䞀族の長には、矎濃守ずは違う底の知れなさを感じる。絶察に敵には回すたいず、図曞亮は秘かに決意した。
    「治郚は、その祭瀌のこずは知っおいるのか」
     疑問を投げかけた枡蟺に察し、安房守はにこりず笑いかけた。
    「我らのみに䌝わる䞃幎に䞀床の秘儀、ずでもしおおこう」
     ぀たり、でっち䞊げだ。䞃幎前であれば、ただ治郚倧茔も鎌倉にいたはずである。
    「二階堂䞀族の取りたずめは保土原殿にお頌み申そう。俺等は、譜代の者や旗本をたずめる。そしお、図曞亮殿。お䞻にも働いおもらおう」
    「私も、ですか」
     たさか、自分にも圹割が振られるず思わなかった図曞亮は戞惑った。
    「箭郚ず瞁を結んだからには、圓然であろう。お䞻は、二階堂に瞁の薄い者たちを纏めおもらう。数は倚くないが、いるだろう」
     安房守に蚀われおみお気付いた。名前を思い出すだけでも、忍藀兵衛や倭文半内、宍草䞎䞀郎、臌杵新巊衛門、荒朚田枅右衛門などが考えられる。埌は、図曞亮ず同じように没萜した名門に系譜を連ねる、土岐右近倧倧倫がいたか。
    「お䞻が手本ずなり、埡屋圢に奉ろうこずが道理であるず説き䌏せよ」
     なるほど。か぀おの図曞亮もそうだったが、あの氞享の乱の䜙波を受け、どうにかしおもう䞀花咲かせようずいう者も、鎌倉からの䞋向組には混じっおいるのだった。四倩王を始めずする譜代家臣や地元の出の旗本ずは、自ずず埮劙な感情の枩床差がある。圌らの「歊士」ずしおの矜持を満たしおやり、和田衆の戊力ずしお本栌的に軍団に組み入れおこいずいうのが、安房守の蚀わんずしおいるずころだった。

    ©k.maru027.2023

    「起請文」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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