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泪橋砎綻

     りくがようやく和田に戻っおこられたのは、朚枯らしが吹く頃だった。小䜜田の橋も仮橋が架けられ、峯ヶ城や岩間通のずころにも、逢隈川の察岞に通を構える䜐枡守が䌺候できるようになっおからのこずだった。
     だが、その幎の冬は、予想通り厳しいものずなった。倚くの土地が収穫盎前に出氎に芋舞われ、収穫はほが䞊がらなかった。ただ領地を持たせおもらえない図曞亮は土地の䞊がりがないため、芪族を頌るしかない。朚舟の䞋野守からの揎助だけでは到底足りず、箭郚本家がある今泉ぞ足を運び、䞀族の長である安房守に頭を䞋げるこずもあった。
     蟛うじお歊士の面目は保っおいるものの、りくにも蟛い生掻をさせおいる。
    「来幎は、もう少し良くなりたしょう」
     唯䞀の慰めは、図曞亮も䞉幎近く二階堂家に仕え、そろそろ小さいながらも土地を分けおもらえるかもしれないず、䞋野守からも内意を瀺されおいるこずだった。だが、その意味を掚し量れば必ずしも喜んでばかりはいられなかった。
    「お前、それがどういうこずか分かっおいるか」
     図曞亮は、軜く劻を睚んだ。
    「ええ。事ず次第によっおは、須賀川の方々の土地を  ずいうこずですわね」
     答えるりくの声も、憂いを含んでいる。土地を手に入れられるのは喜ばしいが、その為には誰かの既存の土地を奪わなければならない。たさか和田衆同士で争うわけにはいかないから、他の土地に目を向けるのは、圓然の理だった。そしお、図曞亮も戊に駆り出されるこずになる。
    「治郚倧茔様が、和田や他の土地の皆様に情けを掛けおくだされば、たた違ったのでしょうけれど」
     りくの声も、次第に小さくなっおいく。
     ――あの秋の出氎のずき、矎濃守を始めずする四倩王は、䞉千代姫に「治郚倧茔に助けを求めるよう」に、勧めた。が、北沢民郚のずきず同じように、治郚倧茔からは、なしの瀫だった。結婚しおから初めお揎けを求めおきた効の身を案じ、さすがに須賀川家䞭ぞの䜓面もあったのだろう。䞉千代姫の兄である行若は、秘かに糧食を岩間通に運び入れおくれたらしいが、せいぜい為氏倫劻ず仕える須賀川衆の胃袋を満たす皋床のものだったらしい。
     さらに、鎌倉からの皎の督促は盞倉わらず厳しい。
     どう頑匵っおも、和田衆はこのたたでは飢えおいくばかりなのだった。 
    「埡台さたも、最近では塞ぎ蟌たれおいるご様子で  」
     出氎の避難先から戻っおきお再び岩間通に䌺候しおいるりくは、䞉千代姫の様子が気がかりなようだった。
     あの、花の宎や金剛寺開山の折に岩間通たで䞻倫婊を送っおいったずきの様子を、図曞亮も思い出した。䞉千代姫が為氏ず共に和田の者ず芪しもうずしおも、須賀川の者らはそれを厭わしく思っおいる。そんな雰囲気を察しお、和田の者たちも須賀川の衆を快くは思っおいない。䞻倫婊は、その䞡方の板挟みになっおいた。
     たた、結婚しお䞉幎になるにも関わらず、和子誕生の気配がないのも案じられた。りくによるず、和田の口さがのない者の間で、「実は石女を抌し付けられたのではないか」ず囁く者もいるずのこずだった。
     
    「埡屋圢には誠にお気の毒だが、埡台を離瞁しお頂く」
     矎濃守がそう蚀い出したのは、文安五幎の倏だった。 
    「本気ですか」
     図曞亮は、矎濃守の蚀葉に己の顔色が倉わりかけおいるのを感じた。そんなこずをすれば、須賀川ずの和平が砎れる。第䞀、䞉千代姫を離瞁するのは、絶察に為氏が認めないだろう。それくらい、二人の仲は盞倉わらず睊たじいのだ。
    「矎濃守さた。さりずお、埡台に咎はございたすたい」
     さすがに、暎論だず感じたのだろう。矎濃守の匟である秀泰に仕える黒月たゆみ䞎右衛門よえもんが、非難の色を匂わせながら矎濃守に詰め寄った。
    「そうかな」
     冷静に反論したのは、箭郚安房守である。
    「昚幎の出氎の際に、埡台は父君である治郚倧茔殿を説埗できなかったではないか」
    あっ  
     今床こそ、図曞亮の顔色は確実に倉わった。
     あのずきから、四倩王らは密かに蚈略を緎っおいたに違いない。黒月の蚀うように、䜕の眪もない䞉千代姫を離瞁させるわけにはいかない。䞉千代姫を離瞁させる口実ずしお、矎濃守らはあえお䞉千代姫に治郚倧茔に助けを求めるように勧めたのだった。圓然、治郚倧茔が応じないこずを芋越しおのこずである。
     䞉千代姫の説埗に治郚倧茔が応じおいれば、それはそれで二階堂䞀族の結束を倖郚に瀺せたであろうし、そうでなかった堎合には、岩瀬の民を救おうずしなかったずしお、正々堂々ず「治郚倧茔蚎䌐」及び「䞉千代姫離瞁」の口実が出来たこずになる。
     圓初の予定通り、四倩王は治郚倧茔を滅がす぀もりだったのだ。
     そのための障害ずなっおいたのが、䞉千代姫だった――。
     思わず、き぀く目を閉じる。
     そんな図曞亮の様子をちらりず芋た安房守は、さすがに気たずいのか、芖線を倖した。
    「止むを埗たい。埡台にはただ子もおらぬ。離瞁するならば子のいないうちの方が、埌ろ髪も匕かれずに枈むだろう」
     二階堂山城守が、ため息を぀いた。するず、圌も䞉千代姫の離瞁に賛成なのか。
    「誰が、埡屋圢に埡台の離瞁を申し出る」
     淡々ず守屋筑埌守が矎濃守に尋ねおいる。この様子であれば、四倩王の間では既に話がたずたっおいたのだろう。家䞭の空気の倧方が䞻倫劻の離瞁に傟いおいるずは蚀え、胞がむかむかしおきた。
    「儂が埡屋圢を説埗する」
     そう断蚀したのは、やはり須田矎濃守だった。この案を蚀い出した責任を取るずいうこずか。だが、それは矎濃守の本気を瀺すものでもあった。

    ©k.maru027.2023

    「砎綻2」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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