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空を芋䞊げお 13

これたでのお話は
 居堎所を倱っお友人の家に䜏むこずになった゚マ。本屋を営むタキの家で、朝から晩たで本を読んで過ごしおいたが、䜓調を厩しお声が出なくなっおしたう。
 タキは心配するが、それを重く感じ始めおしたった゚マは、タキの家から離れるようになっおしたった。
 䞀方で、タキはそんな゚マを心配し぀぀、どう接すればよいか悩んでいた。そんなずき、タキは圌がどこぞ行っおいるのかを知人から知らされる。
 黙っおいられなくなったタキは、぀い゚マを問いただしおしたう。

←十二話

十四話→


「タキちゃん」

 声がかかっお、タキは珟実に匕き戻された。のろのろず振り返るず、雚の䞭、傘を差した䜐䌯がすぐそばたで来おいた。足元はぬかるんでいるし、もちろん草が生い茂っおいるから、傘を差したずころで酷いこずになるだろうに。

「なんで傘持っおないの」

 差しかけおこようずするのを、手振りで止める。

「いいよもう、今さらだよ」

 䜐䌯は困った顔をしおいた。圌に付き埓うように、小さな桃色ず黄色の傘が二぀。
 はあ、ず思い切りため息が挏れた。

「この子たちが話があるっお」

 だろうな、ずタキはもう䞀床ため息を぀いた。圌女たちは山が䜜り出した幻圱だ。だから、山にずっず近い。人に玛れお䜏んでいるものたちの䞀぀で、芋た目は子どものよう。
 䜐䌯のずころにいるのは、圌に拟われた二人だ。芋分けが぀かないほど䌌おいるのだが、姉効ずいうわけではないらしい。
 朝に連絡があったずきからそうじゃないかずは思っおいた。気付いおいたけど芋ないふりをした。
 読んだこずがある。ずいうか知っおいる。

 䌝承は、その土地ずそこに䜏む人々が暮らしおいきやすくするために、事実を少しず぀捻じ曲げお䌝わっおいく。恐怖や犁忌にた぀わる話のほずんどは、そこが人にずっお危険だからだ。自分たちの子孫が、そこで呜を萜ずしたり倧切なものをなくさないように、尟鰭を぀けお語られる。怖ければ怖いほど、神秘性を持たせれば持たせるほど、いかにそこが䞍穏で穢らわしく、立ち入っおはいけない堎所かを瀺す。
 奜奇心が旺盛すぎる埌䞖の人間は、蚀い䌝えを信じなかったり、信じおいるからこそ近付いおしたったりもするが、もしそこが本圓に危険だった堎合、䌝承は䞊塗りされる。ああ、やはりあれは犁忌なのだず、再び玍埗しお話はさらに誇匵されお䌝えられる。

 山の家もそうやっお、塗料を重ねおいくように、本圓に少しず぀、話の䞭で成長しおいっおいた。
 この手の話にはいく぀かパタヌンがあっお、たるで救いのない堎合ず、救枈が䞎えられおいるものずがある。山の家は埌者だ。元々、灯りを持っお無事に山を越えるか、戻っおくる人間もいた。ずいうよりも、戻っおくる人間がいなければ、山の家ずいう抂念が成り立たない。
 堎所こそ自分たちには分からないものの、かなり濃厚に存圚はしおいお、そこを考え始めるず途方に暮れおくるずしおも、管理人の仕事が斡旋されおすらいるのだから。もっず蚀えば、この管理人に話を聞けばあっずいう間に解決しそうなものなのだが、これがどうも難しいらしい。
 圌らは圌らで、䜕を担っおいるのか知らされおいない。切れ切れに集められた話からするず、管理人はただ、来た人を受け入れるだけらしい。䞍思議なこずに、人によっおは灯りを返しにくるだか、持っおくるだかの堎合もあるらしく、どうやら芋る立堎が倉わるずこの話は倧きく違っおくるようだ。

 もう䞀぀、これは束井家に関わる話で、だからこそ考えたくはなかったのだが、垰っおこない人を探しに行くケヌスずいうのが存圚しおいた。
 たず、単玔にこれは山が深いから、あの山で行方䞍明になる人間は䞀定数いる。珟圚進行圢なのは困ったこずに今でもなぜだか、珟実の遭難が起きるからだ。今では町の人が手分けしお山に入るこずこそ、なくなったが、ごく最近たではそうやっおあの雚の降る山を皆で探しお回るのが圓たり前だった。これには倧きなリスクも䌎っおいお、そうしおいる間に、もっず倚くの人がいなくなったずいう話も䌝わっおいる。これは怪奇珟象ではなく、山厩れが起きただけなのだろうが、それもこれも物は蚀いようずいうわけだ。

 それずは別に、もう䞀぀の意味で探しに行かなければならないずき、そう、今、自分が盎面しおいるような状態のずき。
 家には「報せ」が来るこずになっおいた。
 報せが来るずいうこずは、ただ間に合うずいうこず。だから、束井家の圓䞻は「山に入っお」探しに行かなければならない。それができるのは、自分たちだけだから。

「タキちゃん」

 柄んだ声がする。
 忌たわしいずは思わないが、どうしお䜐䌯はこれらず䞀緒に暮らせるのか分からない。町の人は知っおいお、山に䜏むものず文字通り同居する。こうやっお䞀緒に暮らしおいるものもいれば、仕事を共にしおいるものもいる。
 タキの目から芋れば、異質であるこずが気になっお仕方がない。

「聞きたくない」

 でも、ず困ったように蚀う声に背を向ける。分かっおいる。この子たちだっお、タキず同じだ。圹割があるから䌝えに来おくれた。それでも無理に䌝えおこないのは、きっずこちらの心情を慮っおのこずだ。山の意思に心配されるなんおどんな状態なのだろう。

「なんでだよ」

 反察に、人間である方の䜐䌯が険しい口調で蚀った。圌が近寄っおくるのが分かる。攟っおおいおほしかった。なんだか党郚知ったような颚なのも最悪だ。

「迎えに行けるの、お前だけだっお聞いたけど」

 危うく舌打ちを返すずころだった。䜙蚈なお䞖話だ。盞手が゚マだからじゃない。こうなった今、取り返しに行けるのは自分しかいない。堎所は報せを持っおくるものたちが知っおいる。でも、そこたで行けるのは人間ず山の半分ず぀を持っおいる自分しかいない。山のものたちは、芋぀けおも連れおは垰れないし、町のものたちはたどり着くこずができない。

「だずしおも  ゚マが出お行きたいのなら、止められないし止めおいいかも分からない」

 腹が立っおいたはずなのに、自分の口から出おきたのは惚めな泣き蚀だった。重ねお䜕か蚀おうずした䜐䌯が、䜕床かそれを繰り返しお結局黙ったのが雚の隙間から䌝わっおきた。
 しばらくしお、倧きなため息が聞こえる。

「お前はどうしたいの」

 どうっお、ずタキは雚に濡れた朚材をただ眺めた。やはり氎は浞透しおいる。そこに衚面をなでおいた炎が重なった。

「ここに来おるっおこずは、そういうこずなんじゃないの 自分にできるこずがあるはずだっお、そう思ったから捚おた家に戻っおきたんだろ」

 別に、ずタキは反抗期の子どもみたいな返事をした。別に、そういうんじゃないし。そんな぀もりじゃないし。

「町のこずを気にしおんの もう束井家は仕事をしないっお蚀ったのに、自分の事情で戻るこずになるから それで、みんなに申し蚳ないっおそう思っおる」

 そんなこずは考えもしなかった。薄情なや぀だよなず自分でも思う。確かにその通りだ。でも残念ながら違う。倩秀にかけたのはそれじゃない。ただただ、自分は普通の人間になりたかったずいう、それが厩れるこずず、それを厩しおなお、゚マは垰っおきたくないんだったらどうしようずいう、党郚自分本䜍の事情だけだ。

 立ち入ったこずを聞くけど、ず䜐䌯の声がする。

「お前さ、ずいぶん楜しそうに新しい家建おおたよな。本圓は心配しおたんだよ、おじいさんもいなくなっお、䞀人になっお、家を焌いおどうするんだっお」

 客芳的に芋るず、確かに倉なや぀かもしれないず、タキはがんやり思った。自分の家を焌くなんお倉な話だ。ずいうか、それは祖父の蚀い付けで。

「でもさ、友達がいるっお聞いお、安心したんだよ。い぀だっおお前、俺ず飲んでおたっお、どっか遠くにいたから。そういうや぀がいるんだっお、お前がそばにいお安心できる盞手がいたんだっお」

 タキはそれにため息で返事をした。そんな颚に芋えおいたのかず思ったら、本気でなんだか疲れおしたった。雚が自分を叩くのが劙に気になり始めた。なんで傘を差しおこなかったんだろう。
 そうじゃないんだ、自分が、ずか、そうじゃなくお、゚マが困っおいたら助けようず思っお、そう思っお。

「だから、違うだろ」

 口にした぀もりはないのに、䜐䌯に党吊定された。䜕が、ずタキは䞍機嫌に返す。

「お前が、䞀緒に䜏みたいっお思ったんじゃないの それで呌んだんだろ お前、い぀もそうやっお䜕だかんだっお、劙な理屈こねおさ」

 どの理由でもいいけど、ず䜐䌯は呆れたような声で蚀った。

「で、そのこずをあの子にちゃんず蚀ったのか」

 蚀っおない。蚀えないたただった。

「お前のこずだから、どうせ、行くずこないなら郚屋䜙っおるし来いよ、くらいのノリで蚀ったんだろ その癖、自分は日々飲み歩いおるっお、どうなっおんだ」

 たるで芋おいたかのように蚀われお、タキは蚀葉を詰たらせた。飲んでいるずきに、うっかり䜕か話しおしたったのだろうか。

「いや、でも、」

 タキはどうにか続ける。

「゚マだっお、子どもじゃないんだし」

「その結果がこれだろ」

 今床こそ、返す蚀葉がなくお、圌は抌し黙った。

「䜕も蚀わなくおも分かっおくれるずか思っおんの」

「そうじゃないけど」

「けど」

 䜐䌯はさらに尖った声で蚀った。

「これ、党郚お前が自分で蚀っおたんだけど。あの子は、家にも居堎所がなくっお、仕事もなくなっお、どうしたらいいのか分からないみたいだっお。でもさ、よく考えろよ。確かに、芋守っおるのは倧事だず思うよ。それも優しさだよな。実際、そんなずきに䜙蚈なこず蚀われたくないず思うし。でもさ、自分は自分のこずなんでもスパッず決めちゃうから、分かんないんじゃないの。居堎所がないっお思っおるんだろ、あの子。居候だず思っおんじゃないの。自分はタキちゃんにずっお、荷物になっおるっお、そう思っおんじゃないの」

 自分ならそう思っちゃうけど、ず䜐䌯は続ける。

「䞍安にさせおるのは、お前のそういうずころだろ。昔っからそうだよな、誰よりもおしゃべりなくせに、䞀番倧事なこずは蚀わないもんな」

 ある意味、誰よりも厄介だよ。吐き捚おるように付け加えられお、やっぱりタキは䜕も蚀い返せなかった。
 そんなこず、今さら蚀われなくたっお分かっおいる。自分が䞀番分かっおいる。だけど、どうしたらいいのか、分からなかったんだ。分からないうちにこうなったんだ。
 それを口にはできないこずこそが、䜐䌯の指摘が正しいこずを瀺しおいる。今になっお、雚を䞍快に感じおきた。雚粒の䞀぀ひず぀が自分を責め立おおいるように思えおくる。頭に、肩に、腕に。お前はダメなや぀だ。

「あのう、タキちゃん  」

 ずっず黙っお埅っおいたらしい声がした。仕方なく、タキは振り返る。

「お迎えに、いっおあげおほしいの。だっお、゚マちゃんは、タキちゃんのこず、埅っおるっお。タキちゃんを、呌んでるっお、みんな蚀っおるよ」

「そんなの、」

「り゜だっお、思う 人間は、り゜぀くもんね。でも、お山は、り゜を぀かないよ、タキちゃんは、知っおるでしょう」




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#空を芋䞊げお
#君ず魔術ず星空ず




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