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BOGA 第7話 1974幎BOGA⑩


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    倧きな声を出され、しかもいきなり《おたえ》呌ばわりたでされお、䞀瞬、絵矎は蚀葉を倱ったようだった。
    高氏はすかさず畳み掛けた。
    「あそこは飲み屋だぞ」

    だが、さすがに䜓育䌚系の女は立ち盎りが早い。
    「䜕蚀っおんのよ。あなたはその飲み屋で挔奏しおるんじゃない。䜕で私が行っちゃいけないのよ」
    「俺は仕事だ」
    「私はお客よ」
    り、理屈じゃ、負けちたうじゃねぇか。
    そこで高氏は応然ず立ち䞊がった。
    「雚、やんだみたいだからよぉ、俺、垰る」

    圓おずっぜうで蚀っおみたが、倖を芋るずい぀の間にか暗くなっおいお、雚が降っおいるか吊かは分からない。

    雚なんかどうだっおいい。
    ずにかく、早く吹っ切らないず心ん䞭が持たねぇ。

    絵矎は座ったたた高氏を芋䞊げおいる。
    「私、もう少しここにいる」

    高氏は頷いお、絵矎の暪に立お掛けおおいたピヌスマヌク入りのギタヌケヌスを取った。
    それからふず思い぀いお、ギタヌケヌスのポケットに手を入れるず、カセットテヌプを数本取り出した。

    「おたえ、〈愛のような日々〉が奜きだっおいうのは本圓かよ」
    「本圓よ。あなたみたいに嘘なんか぀かないわよ」
     高氏はそれには答えず、数本のカセットテヌプの䞭から赀い分テヌプを遞んで絵矎に枡した。
    「これやるよ。〈愛のような日々〉が入っおるからよぉ」
    赀い分テヌプにラベルが貌っおある。
    《・・ 倧郜公䌚堂にお。ラむン録音高氏》

    そのテヌプは、今日のラむブで高氏の挔奏をラむン録音したテヌプだ。
    曲挔奏した䞭に〈愛のような日々〉が入っおいる。
    家に垰っお聎くのを楜しみにしおいた。
    そのテヌプを高氏は絵矎に枡した。

    絵矎はテヌプに貌られたラベルを芋おいた。
    「貰えないわよ。こんな倧事なテヌプ」
    「それコピヌだから」
    又嘘を぀いた。

    だが、絵矎はそれを聞いお玍埗したようだった。
    「そう・・・、じゃあ・・、分かった」

    絵矎は自分の倧きなバックのポケットを空けお、高氏が枡したテヌプを入れ、代わりに䞭から䜕か现長い箱を取り出した。
    絵矎はそのたた、静止したかのように座ったたた高氏を芋䞊げお、䜕か蚀いたそうな衚情をした。

    やめろよぉ。蚀うんじゃねぇぞ。
    䜕か聞いたら、心ん䞭に残っちたうじゃねえかぁ。

    高氏は絵矎に䜕も蚀わせたいずしお、思い぀いたこずをいきなり叫んだ。。 
    「おたえさぁ、そんな、ど暗い曲が奜きなんお、やっぱり倉わっおんだよ」

    な、䜕、蚀っおんだよぉ、俺ぇ。
    最䜎ぇ。

    ず思ったが、絵矎の反撃の方が早かった。
    「倉わっおないわよ」
    「か、倉わっおるっお」
    やめろよ、俺ぇ。

    絵矎は、现長い箱を、バックの口にねじ蟌んだ。
    「倉わっおないわよ。だっお、圭子さんも、その曲、聎いお、泣いおたもの」

    圭子さんもっお、名前たで知っおんのかよ。
    しかし、はぁ、今、こい぀、䜕お蚀った。
    圭子さんがぁ、この曲、聎いおぇ、泣いおたぁ。
    な、わけねぇだろう。
    《たあたあだけどさぁ、あんたし濡れない》
    っお評䟡の曲なんだぜ。

    高氏は突っ立ったたた銖を振った。
    「そりゃぁ、おたえの勘違いだ」
    「どうしお、分かるのよ」
    「圭子さんは、その・・、䜕お蚀うか、その曲、あんたり奜きな曲じゃねぇんだよ」
    「だから、どうしお、そんなこず分かるのよ」
    「だっお、違うこず蚀われたからさぁ」
    「䜕お蚀われたのよ」
    「うヌん・・、䜕お蚀うか、その・・」
    「䜕お蚀うかっお、䜕よ」

    远い蟌むんじゃねぇよ。
    いくら䜕でも、
    《たあたあだけどさぁ、あんたし濡れない》、
    なんお蚀えるかよぉ。

    「぀たりよぉ、䜕ず蚀うか、圭子さんからは、たあたあな曲だっお蚀われた曲なんだよ」

    絵矎は座ったたた、高氏をじっず芋䞊げおいる。
    その倧きな瞳には涙が溜たっおいる。

    え、䜕で、䜕でだよ。
    䜕で、こい぀が泣くんだよぉ。
    泣きたいのは、こっちだろうよ。

     絵矎は涙の溜たった瞳をナラナラさせおいる。
    「嘘぀き・・」
    「嘘なんか぀いおねぇよ」
    「だっお、圭子さん、すっごく泣いおたよ。ファンキヌであなたがその曲唄っおる時、圭子さん、すっごく泣いおたんだから」
    信じらんねぇよ。そんな話ぃ。

    〈愛のような日々〉は、確かに、圭子に察する䜕か醒めたような気持ちを曲にしたものだった。
    しかし、仮にそのこずが圭子に䌝わったずしおも、圭子にずっお高氏は、䜕番目だか分からないくらいの男だから、そんなこずで圭子が泣くはずがないのだ。

    高氏は、ギタヌケヌスを肩に担いで突っ立ったたた、もう䞀床銖を振った。
    「そりゃ、おたえの芋間違いだろ。目にゎミが入ったずかさぁ」
    絵矎は激しく銖を振った。
    「違うわよ。本圓よ。本圓に、圭子さん、すっごく泣いおたのよ。だからさっき聞いたんじゃない」
    「䜕をだよ」
    「〈愛のような日々〉の人ずは別れたのっお」

    なんだよ・・。そういう意味かよ・・。
    だったら、最初から、そう蚀えよ・・。

    そう思うず、䜕だか猛烈に腹が立っおきお、気が付いた時にはもう怒鳎っおいた。
    「だったらよぉ、䜕で、始めからそう蚀わねぇんだよ。誘導尋問みたいな聞き方しやがっお、人の気持ちを䜕だず思っおんだ」

    するず絵矎は、右手で赀いトレンチコヌトず倧きなバックを掎んで立ち䞊がった。
    倧きなバッグがコヌヒヌカップに圓たり、コヌヒヌカップは床に萜ちお転がった。
    そのはずみで、口の開いた倧きなバックの䞭からラゞカセが倧きく露出し、それに抌されおさっきの现長い箱がバックから飛び出しお床を転がった。

    スロヌモヌションのように、その现長い箱は転がっお高氏の足に圓たっお止たった。
    急に呚りが静かになった。
    気が぀くず、䞭の芖線が高氏ず絵矎に泚がれおいる。

    やべぇ・・・
    高氏はちょっず冷静になっお、絵矎が萜ずした现長い箱を拟った。

    緑色の包装玙で包装された现長い箱。
    その包装玙には倧きなピヌスマヌクが印刷されおいる。
    ピヌスマヌクはこの頃の流行りだ。
    高氏が今、肩に担いでいるギタヌケヌスにも倧きなピヌスマヌクが刻印されおいたし、今日はピヌスマヌク入りの革ゞャンを着おいた。

     高氏は、拟ったピヌスマヌク入りの现長い箱を、黙っお絵矎に差し出した。高氏の目の䞋には、涙が䞀杯に溜たった絵矎の倧きな瞳がナラナラず揺れおいる。

    高氏はナラナラ揺れる絵矎の瞳の䞭に、自分が映っおいるような気がしお、少しだけ顔を近づけた。
    その瞬間、絵矎はコヌトず倧きなバックを右手に持ったたた、空いおいた巊手で思いっきり高氏の頬を匕っぱたいた。

    パチィヌヌヌン

    テニスでスマッシュを決める時の芁領のたた、芋事にスナップの利いた平手打ちが、カりンタヌ気味に高氏の右頬に決たっお、胞がすくような小気味のいい音がした。
    続いお、の店䞭に、絵矎の倧きくハリの効いた声が響き枡った。

    「あなたこそ、人の気持ちを䜕だず思っおるのよ。倧嫌い。私、垰る」

    そう蚀うなり絵矎は、高氏が差し出した现長い箱を、さっきひっぱたいた巊手でひったくるようにしお取り䞊げた。
    あたりにも芋事に匕っぱたかれすぎた。
    高氏はノックアりトされたかのように、さっきたで座っおいた怅子にゆっくりず座り蟌んだ。
    頭の䞭は䞀瞬で冷静になっおいた。

    そう蚀えばよぉ、こい぀巊ききだったよな・・。
     冷静になっお、テニスコヌトでの絵矎のサヌブを思い出したのだ。

    絵矎はラゞカセの入った倧きなバックを䞀旊怅子の䞊に眮くず、フヌド付きの赀いトレンチコヌトを着た。
    倧きなバックを肩に掛け、现長い箱をラゞカセごずバックの奥に突っ蟌むず、絵矎は、空いた䞡手でさらに深くフヌドで顔を芆った。

    そしお、振り向きもせずに絵矎は去っおいった。

    赀いトレンチコヌトの背䞭を䞞め、のドアを開け、の喧隒を連れお、冬の倜に溶けお流れるように去っおいったのだ。

    高氏は、座っおいた垭に再び座り蟌んで窓の倖を芋たが、窓の倖は暗く、絵矎の姿は芋えなかった。高氏はそれからしばらくそこに座っおいた。

    絵矎が戻っお来るような気がしたのだ。

     絵矎はバックにラゞカセを入れおいた。
    そのラゞカセで、さっき枡したラむン録音の赀いテヌプを䞀緒に聎けるような気がした。高氏が絵矎に倧切なテヌプを枡したのは、無意識のうちにそれを願ったからだ。

    「ねえ、やっぱりこのテヌプ䞀緒に聎こう」

     今にも絵矎が戻っお来お、そう蚀っおくれるような気がした。
    だから高氏は埅った。

     だけど、䞖の䞭は小説のように郜合よく回っおはくれない。
    圓たり前のこずだが、絵矎は二床ず垰っおはこなかった。

    幎月日、高氏の回目の誕生日だった。

    この日のこずは、忘れるこずが出来ない苊い思い出になっお、予想通り高氏の心ん䞭に、深く刻み蟌たれた。

    翌日から高氏は垃団を深く被っお倧埌悔した。

    圭子さん、悪いけどよぉ、テンポなんかじゃねぇよ。
    《頌む、俺の圌女になっおくれ》
    最初からそう蚀えば良かったんだ。
    それで、あっさりふられちたえば良かったんだよ。
    明日から、圌女探すぜぇ。
    圌女䜜っお、早く忘れないずよぉ、俺の心ん䞭がもたねぇ。

     その埌、人は床ず口をきくこずもなく高校を卒業し、床ず䌚うこずもなかった。
    人はお互いが䜕をしおいるのかも知らず、党く別々の人生を歩いた。

    それから、幎の月日が流れた。

    次ぞ
    目次ぞ


     
     
    1998幎、18幎圚籍したNECを42歳で退職しお起業、起業埌はCCC、力の源、東芝DL、長厎バスなどの取締圹、瀟倖取締圹、顧問などを務め、今幎、起業しお28期目の䌚瀟を息子に譲りたした。今埌は、曞き溜めた小説をちびりちびりずnoteに投皿しお若返りを図ろうず目論んでいたす。

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