メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【万博】微妙な評価の日本館が音声ガイドで神パビリオンに化けた

    (本記事は日本館の一部ネタバレを含みます)

    はじめに

    大阪・関西万博で、ホスト国でありながらイマイチ評価されていないのが「日本館」。

    絶賛するファンも一定数いるものの、「難しい」「藻キティちゃんや火星の石が唐突」「つまらない」といった否定的な声が多めです。

    最近発売された『大阪・関西万博ぴあ 完全攻略編』では、満足度ランキング84館中29位と微妙な順位。

    ◾ 音声ガイド、使ってますか?

    実は、日本館の評価を大きく下げてしまっている明確な理由が存在します。

    それは、
    必須級の音声ガイドを誰も使っていないため。

    このパビリオン、解説の大半をスマホの音声ガイドで聞くというシステム。スタッフや文章による解説は少なめで、音声ガイドなしでは「???」となってしまうこと必至です。

    そのため、入館時にQRコードを読み取って音声ガイドを使用するように丁寧な案内があります。

    しかし、残念ながら来館者の大半が案内を無視。
    館内で音声ガイドを使っているのは2割程度で、その結果が「難しい」という感想なのです。

    ◾ 音声ガイドで評価が一変

    では、案内に従って音声ガイドを使うとどうなのでしょうか?

    声を大にして言いますが、
    音声ガイドありの日本館は“神パビリオン”です。

    本記事では、実際の写真とともに、音声ガイドの有無でどれだけ印象が変わるかを説明していきます(一部ネタバレあり)。

    音声ガイドは、Google検索で誰でもアクセス可能。事前予習はもちろん、すでに来館した方が復習するのにもお勧めです。テキスト表示も可能で、イヤホンがない方や聴覚に配慮が必要な方でも安心です。

    画像
    テキストの出し方

    日本館の概要

    日本館の構造を簡単に紹介すると、3つのゾーンで構成されています。

    • プラントエリア

    • ファームエリア

    • ファクトリーエリア

    来館のたびに回る順番が変わるランダム要素があるのですが、今回はプラントエリアから回る場合を解説します。

    現代アート3連発

    ◾ 砂時計

    入場すると、砂時計のようなオブジェクトがお出迎え。画像には写っていませんが、上部では物質が崩壊して下に落ち、下部では植物が上に成長する映像が投影されています。

    画像

    音声ガイドによれば、砂時計は「終わり」と「はじまり」からなる「循環」を表し、日本館の3エリアのそれぞれの入口とのことです(ここ大事)。

    ◾ ベルトコンベアとイルミネーション

    次に進むと、ゴミを運ぶベルトコンベア、そして光の海に沈む多数の巨大タンクが展示されています(暗すぎて画像にタンクは映っていません)。

    画像

    これらは、万博会場で出されたごみが日本館へと運ばれ、発酵タンクで微生物によって分解される様子を表現しているそうです。水面に浮かぶ光の粒は微生物の命の輝き。

    これはただの比喩ではありません。日本館はゴミ再生施設としての機能があり、万博会場で出たごみを実際に分解しているのです。

    なにも知らずに訪れた来館者であれば「え、日本館って裏でそんなことやってるの!?」とワクワクすること必須、つかみは完璧です。

    ◾ 解説なしだと現代アート展?

    しかし、これら重要な説明は音声ガイドで説明されるのみで、館内にはほとんどヒントがありません。

    音声ガイドを使わない来場者からすると、「砂時計? ベルトコンベア? イルミネーション? リサイクルをテーマにした現代アートか…?」といきなり置いてきぼりにされます。

    微生物による分解の展示コーナー

    次は少し広めのスペースに、味噌や醤油を作る麹菌や、分解されるプラスチック容器をテーマとしたアートが展示されています。

    画像

    これらはいずれも「微生物による分解」を象徴し、伝統的な食品から環境問題まで、微生物のポテンシャルに目を向けさせるものです。

    そしてこのエリアの足元にはモニターがあり、BE@RBRICKという色とりどりの熊のようなマスコットが飛び回っています(以下)。

    彼らはごみの分解で発生した水分や熱を模したキャラクターとのこと。彼らの後を追うようにして次のコーナーに進むことになります。

    ◾ 解説なしだと意味不明?

    このように、音声ガイドを聞きながらだと、ゴミが徐々に分解され、循環が進んでいく様子を体験できます。

    しかし、例によって音声ガイド以外での説明は少なめ。使わない来館者は「醤油や味噌ということは食文化? でも分解される容器はなに? よく分からない熊のキャラクターもいる??? 適当に文化や技術を展示しているのか?」と完全に理解の範疇外。

    水の浄化コーナー

    少し進むと、通路の下に設置されたゴツゴツした装置に気づきます。これはごみから出た汚れた水を、純水に近いレベルにまで浄化する装置で、日本館が実際に使っているものと同じだそうです。

    画像

    次のコーナーは屋外で、中央に水をたたえた中庭が広がっています。音声ガイドの「なんて気持ちのいい場所!」という感嘆にもうなずけます。

    画像

    ここの水は、ごみの持つ水分を微生物の力を借りて先ほどの装置で浄化したとのこと。日本館の中心にあたるこの場所で、来館者は音声ガイドに沿って循環について思いを巡らせることとなります。

    ◾ 解説なしだと、単なる映えスポット?

    音声ガイドを聞きながらだと、中庭の美しさもあって、まるで自分の身体が浄化されるような爽快な気分になれます。

    しかし、音声ガイドで概要を把握していなければ、先ほど見た浄化装置はバックヤードの配水設備かなにか、中庭もただの"映えスポット"にしか見えないでしょう。

    万博の目玉展示"火星の石"

    そして次のエリアでは、いよいよ本万博の目玉の一つである"火星の石"とご対面します。

    この火星の石、ただの珍しい隕石というだけではなく、水の存在を証明する鉱物が含まれているとのことです。火星の地下には液体の水が大量に存在することが分かっており、生命が存在できる可能性も。

    火星の石を見て、そして触ることで、他の惑星にも水が存在し、その循環によって人間が暮らせるかもしれない。そんな壮大なイメージを膨らませることができる仕組みです。

    しかし、詳しい説明なしに火星の石を見ても、あまり感慨はないでしょう。「前回の大阪万博が月の石だったから今度は火星の石か」ぐらいにしか思えません(そういう側面も多少はあると思いますが)。

    プラントエリア終了

    火星の石を見て、プラントエリアは終了します。少し歩くと次のファームエリアの入口を示す砂時計と再開し、新たな循環へと進むのです。

    画像

    ◾ 解説なしだと、迷ったと勘違い?

    砂時計はエリアの入口を示す目印ですが、音声ガイドで説明を聞いていないとどうなるでしょうか。「あれ、また同じ場所に戻った?」と混乱してもおかしくありません。

    終わりに

    本記事は日本館の全体紹介が目的ではないので、紹介はここで終わります。

    ここまで見てきたように、日本館は来館者が建物を移動することで循環を体験できるというコンセプトです。しかもただの展示ではなく、裏では実際にごみの再生も行っているのです。テーマが地味で、ややアートに頼りがちな気もしますが、素晴らしい内容だったと思います。

    質・量ともに充実した展示を見終わったあとは、新しい循環が始まったかのような満たされた気分で退館しました。個人的にはトップ3には入る素晴らしいパビリオンです。

    ◾ 音声ガイドがないと意味不明

    しかし、音声ガイドなしではどうなるでしょうか。
    バラバラな現代アート風の展示を延々と見せられたかと思えば、唐突に登場する火星の石。「建物は綺麗で映えスポットもあったけど、よく分からなかった」といった低評価も仕方なしでしょう。

    全パビリオンでトップ争いしてもおかしくない内容でありながら、来館者が案内を無視するせいでポテンシャルを全く発揮できない。そんな悲しいパビリオンが日本館なのです。

    ◾ 筆者のケース

    なお、偉そうに語っていますが、筆者も音声ガイドをスルーした一人。最初は「資源循環をPRしたいのは分かるけど、全体的にまとまっていないな」と思いました。

    それが、万博ファンから音声ガイドを推奨され、せっかくだからと再訪問。すると入館5分で「これ、神パビリオンだった…」と気づいたのでした。

    「音声ガイド前提」という日本であまり馴染みのないスタイルを採用することに是非はあるかもしれません。ただ、この記事を読んだ方は、ぜひ音声ガイドをお供にしてください。ナレーターのクリス智子さんの落ち着いた声も癒されました。

    なお、日本館には音声ガイドですら語られないこだわりがあります。公式サイトの「まるごとガイド」で学べるので気に入った方は調べてみてください(なぜかサイトが激重ですが…)。

    他にも万博のお役立ち情報や展示物の解説を投稿しています。ぜひプロフィールから、気になる記事をのぞいてみてください。


     
     
    万博の話ばかりしています。本業は特許事務所に勤務する弁理士で、メーカーの開発した技術を特許化するための支援を行っています。専門は化学とバイオです。 このnoteでは、万博の情報と科学知識を紹介していきます。

    あなたへのおすすめ