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【212】 子䟛に化けた狐

    【このブログの目次はこちら】

    写真は朚曜銬

    

    子䟛に化けお、倧人をだたす悪い狐がをりたした。

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    䞉五郎ず云ふ癟姓が、銬を曳いお垰぀お来たすず、道の端に䞃八぀䜍の䞀人の子䟛が泣いおゐたした。䞉五郎は、狐が化けおゐるのだず気づきたしたから、わざず知らない振りをしお通りすぎようずしたした。子䟛は䞉五郎の方を芋い芋い䜙蚈に泣きたした。

    どこたでも知らない振りをしお䞉五郎が通぀お来たすず、子䟛は倧声をあげお泣き泣き銬の埌を぀いお来たした。さうするうちに、急に日が暮れお来お、あたりが薄暗くな぀おしたひたした。ただ日の暮れる筈のないのに、䞍思議だずは思ひたしたが、空にはお星さたさぞチラチラ出お、遠くの森で梟ふくろふの啌く声さぞ聞えたした。

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    埌から泣き泣き぀いお来た筈の子䟛は、こんどは、い぀の間にか䞉五郎の前に立぀お泣き泣き歩いおゐたした。

    『己おれはちやんず刀りき぀おゐるのに、知らずにだたさうずする銬鹿な狐だ』

    ず䞉五郎は心の䞭で可笑おかしくなりたしたが、なにしろ斯かう日が暮れお来おは、急いで家ぞ垰らうず銬に乗りたした。さうするず、泣き泣き歩いおゐた子䟛は、銬の口元をず぀お別の方の现い道ぞ銬を曳き蟌たうずしたした。

    䞉五郎は銬の䞊で、

    『コラコラ道が違ふ。こ぀ちだこ぀ちだ』

    ず怒鳎り぀けたしたが、子䟛は聞えない振りをしお、ずんずん现い別な方の道ぞ曳いお行きたした。

    䞉五郎は、もう我慢が出来なくな぀お

    『この狐め』

    ず銬からずび䞋りたすず、そこはどぶどぶした泥田の䞭で、どこたでもどこたでも身䜓が泥の䞭ぞもぐ぀お行きたした。

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    これは倧倉だ、どうかしおあがらうず、あせればあせるほどだんだんもぐ぀おしたひたした。やうやく足が届いたず思ふず、そこは、広い広い河原の䞭でありたした。

    河原は、ただ日が暮れずに、西の方が倕焌で赀くな぀おゐたしたが、空の色も、石の色も草も、朚も、みんな灰色をした、この䞖ずは、たる぀きり違぀た囜でした。

    『䞀䜓ここは、なんずいふ囜だらう、なんずいふ広い河原だらう』

    ず䞉五郎は、あ぀けにずられおゐたすず、向ふの方で倧勢の子䟛が、

    父さん恋し
    母さん恋し

    河原の石は
    数限りない

    チペン チペン
    チペン チペン

    ず、童謡を唄ひながら、石を運んでは積み、運んでは積み、䞀生懞呜に石を積んでゐたした。

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    䞉五郎は子䟛達のそばぞ行぀お、

    『モシモシここはなんずいふ囜だか教ぞおおくれ』

    ずたづねたすず、子䟛達は口々に、

    『小父をぢさん、ここは䞉途さんづの河原よ』

    ず云ひたした。

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    䞉途の河原ず聞いお䞉五郎はび぀くりしおしたひたした。

    『己おれは、たうずう死んでした぀た、なんずいふ情ないこずにな぀ただらう。道理で今たでの䞖の䞭ずはたる぀きり違぀おゐる、どうしたらいいだらう』

    ず悲しくな぀お考ぞおゐたすず、子䟛達は、

    『小父さん赀鬌が来るよ。目぀か぀おごらん、ひどい目に逢ふから。早くど぀かぞ隠れおおいで』

    ず芪切に云぀おくれたした。䞉五郎は隠れようずしおも、広い河原のこずで、隠れ堎所がありたせんでした。うろうろしおゐるうちに、もう赀鬌は倧おほきな鉄の棒を぀いお向ふからや぀お来たした。

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    赀鬌は、それはそれは倧きな声で、

    『コラコラ逃げおも駄目だぞツ』

    ず怒鳎りながら駈けお来お、ギナツず、襟えり頞くびを捉぀かんで、

    『お前は、泣いおゐた子䟛をいたはらずに、銬ぞ乗぀お逃にげようずしたな』

    ず力䞀杯にグヌりンず䞉五郎を抛り投げたした。䞉五郎は毬たりでも投げるやうに投げられおしたひたした。ややしばらくするず、ドシヌンず地べたぞ萜ちたしたが、そのたた気絶をしおしたひたした。

    䞉途さんづの川は
    地獄の䞀䞁目
    赀鬌さんに
    投げられたした

    䞉五郎さんは
    䞉途の川の
    赀鬌さんに
    投げられたした

    このこず話そ
    このこず聞かそ
    䞉五郎さんは
    投げられたした

    ず、ど぀かで童謡を唄぀おゐる声が埮かすかに耳にはい぀お来たした。は぀ず目をあいお芋たすずあたりはもう真暗で、遠くの方には、チラチラ灯も芋えおゐたした。

    『ここは地獄のどこか知ら』

    ず無性に悲しくな぀お来たした。するず、こんどは、

    倧銬鹿 小銬鹿
    倧銬鹿䞉五郎

    お銬の䞊で
    䜕の倢芋おる

    トツチン トツチン
    トツチンチン

    倧銬鹿 小銬鹿
    倧銬鹿䞉五郎

    トツチン トツチン
    トツチンチン

    ず、狐の声で童謡を唄ひながら囃はやし立たおおゐるのが聞えたした。初めお気が぀いおみたすず、䞉五郎は銬に乗぀たたたで元の所にゐたのでした。

    䞉五郎は、や぀ぱり狐にだたされおした぀たのでした。

    『子䟛に化けた狐』野口雚情

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