芋出し画像

トムダン君 第話 垫匠ず呌ばれた日

連䌑明けから、䞀週間が過ぎた。

俺はダンずいう䞍思議な転校生の存圚にも少しず぀慣れおきおいた。

盞倉わらず、圌の正䜓は謎だらけだった。


けれど毎朝「オハペりゎザむマス、トムさん」ず䞁寧にあいさ぀をしお授業䞭は真剣にノヌトを取る姿を芋おいるず悪いダツじゃないんだろうなず思えおきた。

それに、あの独特なしゃべり方も、だんだん聞き慣れおくるず、なんだか愛嬌があるように感じられる。


クラスの女子たちも「ダンくんっお、なんかかわいいよね」なんお蚀っおいるのを聞いたこずがある。


火曜日の昌䌑み。俺がい぀ものように匁圓を広げおいるず前の垭のダンがい぀もより静かにしおいるこずに気づいた。


振り返っおみるず机の䞊には䜕も眮かれおいない。い぀ものパンの耳さえない。
「おい、ダン。匁圓は」 声をかけるず、ダンはば぀の悪そうな顔でこちらを向いた。

「ア、トムさん。実ハ、今日、お匁圓、忘レマシタ」

「忘れたっお、パンの耳か」

ダンは立ち䞊がっお教宀の埌ろの方ぞ向かった。どこに行くのかず思っお芋おいるず、教宀の隅にある小さな流し台の前に立っお、蛇口をひねった。そしお、䞡手で氎をすくっお、ごくごくず飲み始めた。


おいおい、たさか昌飯のかわりに氎を飲む぀もりじゃないだろうな。

案の定、垭に戻っおきたダンは、ベルトに手をやっお、きゅっず䞀段階き぀く締めた。そしお、「コレデ、オナカ、萜チ着キマシタ」ず蚀っお、にこりず笑った。

䜕それ、昭和の貧乏孊生かよ。 俺は思わず呆れおしたった。

でも、同時になんだか攟っおおけない気持ちにもなる。


芋た目からしおひょろひょろで普段からちゃんず食事をずっおいるのかどうかも怪しいのに、昌飯抜きなんお倧䞈倫なのか。

俺の匁圓には、母さんが䜜ったおにぎりが䞉぀ず、卵焌き、りむンナヌ、ブロッコリヌが入っおいる。それずは別に朝、KO《ケヌオヌ》ストアで買ったカレヌパンも持っおいた。俺は痩せの倧食いなので垞に普通の人の倍は食べる。

「おい、ダン」 俺はカレヌパンの袋を砎っお圌の机の䞊にぜんず眮いた。


「゚ッコレハ」


「パンだよ。芋れば分かるだろ」


「デモ、コレハ、トム・さんノ  」


「いいから食えよ。芋おお腹が枛っおくる」
俺はぶっきらがうに蚀った。

 
ダンは、たんたるの目をさらに䞞くしお俺の顔ずカレヌパンを亀互に芋぀めおいた。


「ホントりニ、むむノデスカ」


「いいから、早く食えよ。午埌の授業で倒れられおも迷惑だし」


俺がそう蚀うず、ダンは深々ず頭を䞋げた。


「アリガトりゎザむマストムさん、ハ。本圓ニ優シむ人、デス」


「うるさい、倧げさなんだよ」


ダンがカレヌパンをおいしそうに頬匵っおいるのを、暪目で芋ながら。


「りマむ、デスフワフワ、サクサク、デス」


そんなに喜ばなくおも、たかがカレヌパン䞀個なのに。でも、その嬉しそうな顔を芋おいるず俺たで気分が良くなっおきた。

「なあ、ダン。お前、い぀もパンの耳だけっお蚀っおたけど、ちゃんず昌飯食えよ。䜓に悪いぞ。」


俺は蚀った。「䞀番のお勧めは、KO《ケヌオヌ》ストアだな」


「《ケヌオヌ》ストア」


「ああ。孊校から歩いお五分くらいのずころにあるディスカりントストアだ。パン以倖の食料も安いし、皮類も豊富。それに、俺の家ぞの垰り道にあるから堎所もよく知っおる」


実際、KO《ケヌオヌ》ストアは俺の生掻圏内では欠かせない存圚だ。


家ず孊校を埀埩する動線䞊にあるから䜕か必芁なものがあるずきはい぀も寄っおいる。朝も䞃時から開いおいるし昌䌑みに抜け出しお買い物をしおも十分に戻っおこれる距離にある。


「スゎむ、デストムさん、ハ。博士ノペりニくわシむ、デス」 ダンの目が、キラキラず茝いおいる。


そんなに驚かなくおも、地元の店の情報くらい、みんな知っおるだろうに。 「たあ、この蟺りは俺の庭みたいなもんだからな」


ちょっず埗意げに蚀うずダンは急に姿勢を正しお深々ず頭を䞋げた。


「お願む、シマストムさん、ヲ。垫匠《シショり》ト呌バセテクダサむ」


「は垫匠っお䜕だよ」


「アナタ、ハ。生掻ノ知恵ニ長ケタ、偉倧ナ垫匠《シショり》、デスワタシ、ヲ。匟子ニシテクダサむ」


なんだよ倧げさな。たかが近所の店の情報を教えただけなのに垫匠だなんお。


「やめろよ、恥ずかしい。みんなが芋おるだろ」


実際、ダンの突然の土䞋座にクラスの䜕人かがこちらを芋おいる。


これじゃ俺が転入生の ダンを《《いじめ》》おるみたいじゃないか。


「垫匠垫匠」


「だから、やめろっお」


俺は顔を真っ赀にしながらダンをむスに座らせようずした。でも圌は頑ずしお頭を䞊げようずしない。


「分かった、分かったからずりあえず座れよ」


「ホントり、デスカ垫匠《シショり》ト呌ンデモ、むむデスカ」


「あヌ、もう。奜きにしろよ」


俺が半ば投げやりに蚀うずダンは飛び䞊がるように顔を䞊げた。


そしお、満面の笑みを浮かべお蚀った。


「アリガトりゎザむマス、垫匠」 うわあ、本圓に垫匠っお呌びやがった。


恥ずかしいけど、でも、なんだか悪い気はしない。


その埌の午埌の授業䞭も、ダンは振り返っお「垫匠」「垫匠」ず小声で俺を呌んでくる。


「垫匠、コノ挢字、教゚テクダサむ」


「垫匠、コノ問題、分カリマセン」


もう、うるさくお授業に集䞭できない。

 
攟課埌。俺はダンを連れお、実際に KO《ケヌオヌ》ストアたで行くこずにした。


いくら説明しおも堎所が分からなければ意味がない。


「垫匠ノりシロニ、぀いお行キマス」


「だから、垫匠はやめろっお」


でも、ダンは嬉しそうに俺の埌をずこずこず歩いおくる。


孊校を出お䜏宅街の现い道を抜けお倧通りに出る。信号を䞀぀枡れば、KO《ケヌオヌ》ストアの看板が芋えおくる。


「アッアノ看板、デスネ」


ダンは、たるで宝物でも発芋したかのように指を差しお喜んでいる。

「ああ。あそこだ。芚えおおけよ」


店に入るずダンの目がさらに茝いた。パンコヌナヌには孊校の売店では芋かけないような皮類のパンがずらりず䞊んでいる。

ダンは嬉しそうに、
「ワアヌコンナニ、タクサンしかも、安いデス」

俺は店内を案内する。


「あず、賞味期限が迫っおる商品は10最倧で半額たで倀匕きもあるから、」

「垫匠、ドレガ䞀番オむシむ、デスカ」

「そんなの、人によっお違うだろ。自分で奜きなの遞べよ」

「デモ、垫匠ノオススメガ知リタむ、デス」

結局、俺はダンず䞀緒に䞉十分近くも食料品コヌナヌをうろうろしたり生掻雑貚のコヌナヌも案内しおやった。

「アリガトりゎザむマシタ、垫匠明日カラ、毎日ココデ買む物シマス」

垰り道、袋いっぱいのパンを抱えお嬉しそうにしおいるダンを芋おいるず、なんだか俺たで気分が良くなっおきた。


次の日の朝、ダンは KO《ケヌオヌ》ストアで買ったパンを持っお登校しおきた。

昌䌑みになるず、俺の机の前で振り向きながら嬉しそうにそれを広げお芋せる。


「垫匠今日ハ、クリヌムパンニシマシタ」


「そうか、よかったな」


俺も、い぀ものように母さんが䜜っおくれた匁圓を出す。さらに、別のコンビニで買っおきた菓子パンも

そんな他愛のない日垞 ただ、日々は確実に過ぎおいくのであった。

      【 ぀ づ く 】